実装編|無人バス・タクシーを動かす日本株を解剖

「自動運転の技術はそろってきたのに、実際に無人のバスやタクシーで稼いでいる会社はどこなのか」——そう感じていませんか。

2026年9月には、GO・Waymo・日本交通が東京で2027年中の無人タクシー運行を目指すと発表し、豊田市ではNTTモビリティらによるe-Paletteを使った実証が始まりました。ニュースは車両やAIに目が向きがちですが、無人で走らせるには、車両のほかに遠隔監視・運行管理・配車・保険がそろわなければなりません。

この記事では、自動運転の全体像で示した5つの層のうち④車両と運行(実装)を取り上げ、「車両」「運行管理と遠隔監視」「配車」「保険」の4つの仕事に分けて、関わる日本の上場企業を整理します。

読み終える頃には、実装関連のニュースを「定常運行か実証か」「運賃で稼ぐのか補助金で回すのか」で読み分けられるようになるはずです。

この記事の要点

  • レベル4の実装地域は2026年3月時点で10地域。国は2027年度に100か所以上、2030年度に自動運転サービス車両1万台を目標にしており、実装の本番はこれから
  • 無人運行の採算を左右するのは、車両価格と遠隔監視の効率。NTTモビリティは少人数で複数台を見る「N:M型」の遠隔運行支援を2026年7月に始めた
  • 日本では、車両・ソフト・運行・配車を複数社で分担する形が中心。Waymoのように1社で担う米国型とは構造が違う
  • トヨタ・NTT・ソフトバンクにとって自動運転の売上は本業に比べて小さい。業績への影響を見るなら、GOやマクニカのように本業との比率が大きい企業のほうが分かりやすい
目次

なぜ今「実装」が焦点になるのか

自動運転のレベル4(特定条件下で運転者不要)は、2023年4月の改正道路交通法で「特定自動運行」として許可制が始まりました。国土交通省の2026年3月の資料では、レベル4の実装地域は大阪市(万博)、福井県永平寺町、茨城県日立市、東京都大田区(羽田)など10地域です。国は「2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上」「2030年度に自動運転サービス車両1万台」を掲げており、足元との差はまだ大きい状態です。

この差を埋める動きが、2026年に入って目立ってきました。

時期 出来事 確定度
2026/3/17 いすゞとティアフォーが、NVIDIA DRIVE Hyperionを搭載したレベル4バス(エルガ・エルガEV)の実装に取り組むと発表 公式発表(実装時期は未記載)
2026/3/25 マクニカが茨城県常陸太田市で定常運行中の自動運転EVバスについて、レベル4の認可を国交省から取得 公式発表
2026/7/8 NTTモビリティが遠隔運行支援「NTTモビリティ 運行アシスト」の提供を開始 公式発表
2026/9/14〜 豊田市で自動運転実証開始。e-Paletteは2027年2月の郊外ルートで公道走行予定(いずれもレベル2) 公式発表
2026/9/15 GO・Waymo・日本交通が、2027年中に東京でレベル4の無人タクシー運行を目指すことで合意 公式発表(時期は目標)
2026/10/1〜 日産が横浜市で自動運転モビリティサービスの実証を拡大(5台→10台、一般モニター約500名) 公式発表

「実装」とは何か——4つの仕事

仕事 中身 収益の形
車両 自動運転に対応した車両の製造・改造(バス、タクシー、小型シャトル) 車両の販売(1台あたりの単価が高い)
運行管理・遠隔監視 運行計画、遠隔からの監視と緊急時対応、車両の保守、許認可の取得支援 自治体や事業者からの運行受託、システム利用料
配車・予約 利用者が車を呼び、予約し、支払う仕組み 手数料・システム利用料
保険 自動運転システム提供者や運行事業者向けの賠償・補償 保険料

投資の観点では、車両は台数、運行管理と遠隔監視は運行地域の数と継続性、配車は利用者との接点で見ると特徴をつかみやすくなります。無人運行で最も費用がかかるのは、車両価格と、人の代わりに安全を見守る遠隔監視の人件費です。

実装層に関わる日本の上場企業マップ

判定は「◎:定常運行・認可・契約・製品の開示あり」「○:実証段階、または計画の段階」です。投資推奨ではなく、各社が実装のどこに関わるかを確認するための地図として使ってください。

仕事 銘柄(コード) 関わり方 確度
車両 トヨタ(7203) e-Paletteを販売(2027年度にレベル4準拠車の導入を目指す)、Waymoと戦略的パートナーシップの枠組みに基本合意 ◎
車両・運行 日産(7201) 横浜で自動運転モビリティサービスを実証、2027年度以降にドライバーレスでの提供を目指す ○
車両 いすゞ(7202) ティアフォーと資本業務提携し、路線バスのレベル4を開発 ○
運行・遠隔監視 NTT(9432) 子会社NTTモビリティが車両提供・遠隔運行支援 ◎
運行・遠隔監視 ソフトバンク(9434) 子会社BOLDLYの運行管理システム、トヨタと設立したMONET Technologies ◎
運行・遠隔監視 マクニカHD(3132) 自動運転EVバスの導入・運行支援(常陸太田市でレベル4認可) ◎
運行・遠隔監視 アイサンテクノロジー(4667) グループ会社A-Driveが自治体の自動運転バスの運行を受託 ◎
配車 GO(581A) Waymo・日本交通と東京の無人タクシーで合意。配車アプリ利用率約7割 ◎
保険 SOMPOホールディングス(8630) 損保ジャパンがティアフォー・アイサンと自動運転システム提供者向けの保険を開発 ○

車両——「売る台数」はまだ少ない

トヨタ(7203)——e-Paletteと、Waymoとの枠組み

トヨタは2025年9月15日に次世代モビリティ「e-Palette」を発売しました。価格は2,900万円(税込)からで、現時点ではレベル2相当の自動運転システムに対応し、2027年度にレベル4準拠の自動運転システム搭載車の市場導入を目指しています。豊田市ではNTTモビリティ・May Mobility Japan・MONET Technologiesが実証を担い、e-Paletteが公道を走るのは2027年2月の予定です。

また、Waymoとは2025年4月に戦略的パートナーシップの枠組みに基本合意し、トヨタ車をWaymoの配車サービスに導入することも検討対象にしています。ただし、協業の範囲や詳細は「引き続き議論」の段階です。トヨタにとってレベル4車両の売上は、年間数百万台を売る本業に比べてごく小さい点も押さえておく必要があります。

日産(7201)——自社で「走らせる」ところまで

日産は、横浜市のみなとみらい・桜木町・関内を含む市街地で自動運転モビリティサービスの実証を続けています。2026年10月1日から12月18日までの実証では、運行台数を5台から10台に増やし、一般モニターを約500名募集しています。実証はセーフティドライバーが同乗するレベル2相当で、2027年度以降に遠隔監視設備を備えたドライバーレス(レベル4相当)のサービス提供を目指しています。車両を作るだけでなく、サービスとして運行するところまで自社で担う計画である点が、トヨタ・いすゞとの違いです。

いすゞ(7202)——路線バスのレベル4

いすゞは2024年3月にティアフォーと資本業務提携し、路線バスの自動運転システムを共同で開発しています。2026年3月17日には、NVIDIAの自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion」(SoCはDRIVE AGX Thor)とAutowareを使ったレベル4バスの実装に取り組むと発表しました。対象は大型路線バスの「エルガ」「エルガEV」です。運転手不足が深刻な路線バスは、レベル4の需要が最もはっきりしている分野の一つですが、実装や量産の時期は示されていません。

運行管理と遠隔監視——採算を決める仕事

NTT(9432)——NTTモビリティの遠隔運行支援

NTTは2025年12月に、自動運転専業の子会社NTTモビリティを設立しました(NTTが100%出資)。同社は2026年7月8日に「NTTモビリティ 運行アシスト」の提供を始めています。遠隔での運行状況の把握と運行業務の支援をまとめたもので、少人数で複数車両を運行管理する「N:M型」の運用を想定し、特定の車両や自動運転システムに依存しない「マルチADK対応」をうたっています。

無人運行では、運転手の人件費がなくなる代わりに遠隔監視者の人件費がかかります。1人の監視者が見られる台数が増えるほど、1台あたりのコストは下がります。遠隔監視の効率化は、レベル4の採算を左右する中心的な課題です。NTTモビリティは2030年代に1,000台規模の自動運転車両の運行を支援する目標を掲げていますが、NTTグループ全体の売上から見れば規模は小さく、業績への影響は限定的です。

ソフトバンク(9434)——BOLDLYとMONETの2本立て

ソフトバンクは、子会社BOLDLYを通じて自動運転バスの運行管理システム「Dispatcher」を提供しています。BOLDLYは2022年12月の時点で、羽田イノベーションシティ、北海道上士幌町、茨城県境町でのレベル4に向けた定常運行の方針を示していました。また、トヨタと設立したMONET Technologiesは、豊田市の実証で予約アプリの運営と全体マネジメントを担っています。自治体向けの運行管理と、予約・配車のプラットフォームの両方に関わる形です。

マクニカHD(3132)——半導体商社がレベル4の認可を取った

半導体商社のマクニカは、自動運転EVバスの導入と運行支援を手がけています。同社の資料によると、定常運行は6件、実証運行は累計50件で、今後25件が予定されています。2026年3月25日には、茨城県常陸太田市で2025年2月から2台で定常運行している自動運転EVバス「EVO」(仏Navya Mobility製)について、一般道の一部区間でレベル4の認可を国交省関東運輸局から取得しました。

一方で、同社はこの事業(CPS)について、レベル4の政策とは接点があるものの営業赤字の段階にあります。遠隔運行管理では携帯電話網の通信の安定性が課題だとも説明しています。詳しくは個別記事で整理しています。

アイサンテクノロジー(4667)——地図から運行まで

アイサンテクノロジーは、グループ会社A-Driveを通じて自治体の自動運転バスの運行を支援しています。2026年9月2日には軽井沢町から自動運転バスの運行事業を受託したと開示しました。高精度3次元地図の作成(地図編参照)から運行までを一体で担えるのが同社の特徴です。

配車——利用者との接点を持つ会社

GO(581A)——Waymoの日本での窓口

タクシーアプリのGOは、アプリ利用率(MAUベース)約70%を持つ国内の配車最大手です。2026年9月15日、Waymo・日本交通と、2027年中に東京で国内初のレベル4完全無人タクシーの商用運行を目指すことで合意しました。GOがサービス設計と連携窓口、Waymoが運用基盤と技術支援、日本交通が現場の運行管理を担い、段階的に100台規模まで増やす計画です。

2026年5月期の決算では、配車などのGO事業の営業利益率は約39%と高い一方、自動運転などを含む「インキュベーション事業」はセグメント損失12.2億円でした。高収益の配車事業が、自動運転への先行投資を支える構造です。無人タクシーが実現すれば、利用者との接点を持つ配車アプリの価値は高まります。ただし、運行開始は許認可の取得後に決まるとされ、「2027年」は目標です。詳しくは個別記事で分析しています。

保険——無人運行の「責任」を引き受ける

SOMPOホールディングス(8630)——自動運転システム提供者向けの保険

運転者がいないレベル4では、事故の責任を誰がどう負うかが課題になります。損保ジャパンは2022年2月、ティアフォー・アイサンテクノロジーと、対人・対物賠償や車両保険などをサービスに組み込む「自動運転システム提供者専用保険」を開発したと発表しました。無人運行が増えれば新しい保険の需要が生まれますが、現時点の規模は保険会社の業績から見てごく小さく、長期のテーマとして見るのが妥当です。

「実装」の銘柄を見る3つの物差し

  1. 定常運行か、実証か:実証は期間が決まった試験で、定常運行は毎日の路線として続く運行です。レベル4の認可を取ったか、何台で何便走っているかが、事業の実態を示します。
  2. 運賃で稼ぐのか、補助金で回すのか:自治体の自動運転バスの多くは国の補助金に支えられています(国交省の支援事業は令和7年度に67事業、補助上限は重点支援で3億円)。補助が減っても続く事業かどうかを見る必要があります。
  3. 本業に対してどれだけ大きいか:トヨタ・NTT・ソフトバンクにとって自動運転の売上は本業のごく一部です。自動運転の成否が業績に表れやすいのは、GO、マクニカ、アイサンテクノロジー、ティアフォーのように、本業との比率が大きい企業です。

まとめ——実装は「分業の日本」と「垂直統合の米国」の比較

実装層を整理すると、日本では車両(トヨタ・日産・いすゞ)、運行管理と遠隔監視(NTT・ソフトバンク・マクニカ・アイサン)、配車(GO)、保険(SOMPO)と、複数の企業が役割を分担して無人運行を組み立てています。開発から運行まで1社で担うWaymoとは構造が違い、どこが利益を取るかはまだ決まっていません。

国の目標である2027年度の100か所以上に向けて、定常運行とレベル4の認可が増えるかどうか。そして遠隔監視の効率化で、補助金に頼らない採算を作れるかどうか。実装関連株は、この2点で見ていくのが実態に近いでしょう。

続く⑤ITS(道路・通信・信号)はITS編で取り上げています。全体像と他の層は、特集ページからたどれます。

自動運転 関連銘柄 特集記事一覧へ →

主な出典

本記事は2026年9月23日時点の公開情報にもとづく調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

気になる商品の最安値、まとめて比較しませんか?

楽天市場とYahoo!ショッピングの価格を横断検索できます

🔍 最安値検索くんで探す →

Follow me!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次