ジーダット(3841)決算分析 上期で営業益8割達成

ジーダット(3841・東証スタンダード)は、アナログLSIやFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスクなどの設計に使うEDA(電子設計自動化)ソフトウェアを自社開発・販売する専業企業である。主力の「SX-Meister」はカスタム設計向けのレイアウト・検証プラットフォームで、代理販売製品とデバイス設計受託も手がける。親会社はアルゴグラフィックス(議決権51.46%)。
【需要ドメイン】主要: 産業/IoT・車載向けアナログ・パワー半導体の設計 / 副次: FPD・フォトマスク設計、AI関連(データセンター向けアナログ電源ICなど)の設計需要

本記事では、2026年11月6日に開示された2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信を中心に、有価証券報告書(EDINET)、中期経営計画、支配株主等に関する開示をもとに、四半期の利益構造、財務・資本構成、EDA市場での位置づけ、バリュエーション(株価アップサイド試算)を整理し、品質7軸スコア+価格判定によるレーティングを付与した。なお、本記事は調査分析の情報提供であり、投資判断の最終責任は読者にある。

目次

2027年3月期 中間期決算のポイント

項目(百万円) 26/3期 中間期 27/3期 中間期 前年同期比 通期予想(据え置き) 進捗率
売上高 1,026 1,143 +11.4% 2,200 52%
営業利益 102 236 +131.7% 290 81%
経常利益 100 242 +140.8% 300 81%
中間純利益 75 164 +118.4% 210 78%

出典: ジーダット 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(非連結・2026年11月6日)

会社は増収増益の理由を「5月に自社製品の大型案件を受注・売上したこと」とし、この案件が高粗利だったため営業利益が大きく伸びたと説明している。売上総利益率は62.8%→69.5%に上がった。通期予想は5月15日公表値から変更していない。

四半期では「4-6月期の大型案件」と「7-9月期の赤字」

四半期(百万円) 売上高 営業利益 営業利益率
25年7-9月 438 ▲9 ▲2.1%
25年10-12月 476 54 11.3%
26年1-3月 539 104 19.3%
26年4-6月 702 257 36.6%
26年7-9月 441 ▲21 ▲4.8%

出典: 株探(決算短信のXBRLに基づく四半期推移)

中間期の利益は4-6月期の1四半期に集中しており、7-9月期は営業赤字だった。前年も7-9月期は赤字で、ライセンス販売の計上が年度後半や特定の案件に偏る季節性がある。ただし7-9月期の赤字幅は前年より拡大した。

下期の会社予想は前年を大きく下回る:通期予想から中間期実績を引くと、下期の営業利益は54百万円で、前年下期の158百万円を約66%下回る。売上高は下期1,057百万円(前年下期1,015百万円)と横ばいを見込んでおり、利益だけが大きく減る計画である。大型案件の反動を織り込んだ保守的な計画なのか、下期に費用増を見込んでいるのかは、決算短信からは読み取れない。

前受金の減少:前受金は2.99億円で、3月末から0.94億円減った。年次では2023年3月期末の8.67億円から減少傾向にある。前受金は保守契約やライセンスの代金を先に受け取った残高で、将来売上の先行指標の一つになる。

中期経営計画との比較

百万円 26/3期 27/3期 28/3期
中計目標 売上高 2,200 2,400 2,600
実績・会社予想 売上高 2,041(実績) 2,200(予想) —
中計目標 営業利益 290 310 330
実績・会社予想 営業利益 260(実績) 290(予想) —

出典: 中期経営計画策定に関するお知らせ(2025年5月14日)、決算短信

中計1年目(26/3期)は売上・利益とも未達で、今期予想も中計の2年目目標を下回る。中計は「AIを用いたアナログ合成ツールの製品化」「TSMC最先端プロセス対応の開発加速」「代理販売製品の拡充」「海外販路の開拓」を柱に掲げている。

総合評価(レーティング v2.2)

★★☆☆☆
品質 33/70 / 価格 C(適正・中央値ベース −4%)
資本イベント素地 3/10(低い) / 国策アライン 低い / テーマ適合 23/40(中程度)
上抜け素地 3/6(⑥カタリストに調整なし)

公開情報に基づく独自の定量評価(equity-rating-framework v2.2)であり、投資判断を推奨するものではありません。

軸 点 根拠(数値)
①成長性 3 売上高はFY2022/3の19.7億円→FY2027/3予想22.0億円で年率約2.2%。FY2024/3〜FY2026/3は20.4〜20.6億円で横ばい。AI設計自動化ツールの提供は2027年からで、現時点の売上寄与はない
②収益性 4 通期予想の営業利益率13.2%、ROE約5.8%。従業員130名・平均年収652万円(前年比+1.3%)。一人当たり営業利益は約223万円(予想ベース)。労働分配率は給与総額ベースで約65%(推計・法定福利費等を含まず)
③収益の質・連結範囲 5 非連結で持分法・子会社なし。営業CF÷営業利益は1.06倍。一方で中間期利益の大半が5月の単一案件に依存し、7-9月期は赤字。前受金も減少傾向
④競争優位性 5 国内のアナログ・FPD・フォトマスク向けカスタム設計で実績を持ち、TSMCのOpen Innovation Platformに参加。ただし世界のカスタム設計ツールはCadence・Synopsys・Siemensの3強が支配
⑤需給(直近3ヶ月) 5 3ヶ月平均売買代金が概ね1億円未満のため中立固定(流動性低位)。参考: 8月7日週終値1,291円→11月6日1,138円で▲12%
⑥カタリスト(今後3ヶ月) 3 日付が見込めるのは2027年1月下旬(例年)の第3四半期決算のみ。CTGENなどAIツールの提供開始は2027年。上抜け素地3/6で調整なし
⑦リスク耐性 8 自己資本比率84.2%、有利子負債ゼロ。現金及び預金28.4億円+長期預金9.0億円で時価総額の約85%に相当。一方で小規模ゆえ大型案件の有無で業績が大きく振れる

会社概要・セクター位置づけ

項目 内容
証券コード 3841(東証スタンダード・情報・通信業)
セクター分類 EDA・IP(電子設計自動化ソフトウェア)
創業 2004年2月(東京都中央区)
従業員数 130名(2026年3月末・平均年齢47.8歳・平均勤続12.0年)
事業 自社EDA製品(SX-Meister、HOTSCOPE、PowerVolt等)、代理販売製品、保守、デバイス設計受託・EDA環境構築支援。単一セグメント
主要顧客 半導体メーカー、液晶パネルメーカー、電子機器メーカー、マスクメーカー、設計受託会社。海外(米国・台湾・中国・韓国等)は現地代理店経由
大株主 アルゴグラフィックス(親会社・51.46%)、セイコーインスツル(その他の関係会社・21.21%)
研究開発費 3.47億円(2026年3月期・売上高比17%)

出典: 有価証券報告書(2026年3月期)、支配株主等に関する事項について(2026年6月19日)

技術的強み:アナログ・カスタム設計の自動化

EDAは大きく、デジタル回路を論理合成・自動配置配線で作る領域と、アナログやパワー、メモリセル、イメージセンサーのように設計者が回路やレイアウトを手作業で詰める「カスタム設計」の領域に分かれる。ジーダットは後者に特化している。

強み 製品・取り組み 内容
① カスタム設計プラットフォーム SX-Meister(2026年6月にV21.0) アナログLSI・FPD・MEMS・フォトマスクのレイアウト設計・検証。2026年4月からは教育機関向けクラウド版も提供
② AIによる回路設計の自動化 SX-Meister/CTGEN(回路トポロジー生成) 2026年7月の米DAC(Design Automation Conference)で初公開。会社は「業界初となる実用的な回路トポロジー生成ツール」と説明。日本経済新聞は2027年から提供と報じた(2026年7月24日)
③ フォトマスク・電源解析 PowerVolt 2025年6月、フォトマスクの静電破壊リスク検証を「世界で初めて実現」と発表

アナログ設計は熟練設計者への依存度が高く、自動化の余地が大きい分野である。AI半導体の普及でデータセンター向けの電源IC・パワー半導体の設計需要が増えている点は追い風だが、同社の売上にどれだけつながるかは製品の提供開始後でないと判断できない。

競争環境:世界3強と中国勢

世界3強:カスタム設計ツールの世界市場は、Cadence(Virtuoso)、Synopsys(Custom Compiler)、Siemens EDAの3社が大半を占める。各社ともAIを使った設計自動化を前面に打ち出しており、AIによるアナログ設計の自動化はジーダットだけの取り組みではない。

中国勢:中国最大の国産EDA企業・華大九天(Empyrean)は2024年4月時点で中国EDA市場の約6%(国内勢首位)を占め、アナログ設計ツールを持つ。2024年12月に米国のエンティティリストに追加され、2025年には米国の対中EDA輸出規制を自社の拡販機会とする方針を示した(Wikipedia)。ジーダットは中国でも代理店経由で販売しており、中国の国産化は需要と競争の両面に影響しうる。

ジーダットの位置:国内上場のEDA専業はほぼ同社に限られ、FPD・フォトマスクという日本に顧客が多い分野で地歩を持つ。一方、売上規模は年20億円台で、研究開発費(年3〜4億円)は海外大手と桁が違う。強みはニッチな用途への適合と国内顧客との近さにある。

株価指標と市場評価(2026年11月6日終値)

指標 数値 補足
株価 1,138円(前日比▲3.48%) 決算発表は大引け後(15:40)
時価総額 約44.5億円 発行済株式391万株ベース
PER(会社予想) 20.9倍 予想EPS 54.55円
PBR 1.21倍 BPS 約941円
配当利回り 3.51% 年40円予想(期末一括)。前期の配当性向は約89%
現金+長期預金/時価総額 約85% 現金及び預金28.4億円+長期預金9.0億円。有利子負債ゼロ
EV/営業利益(予想) 約2.2倍 EV=時価総額(自己株式控除後)−現金・長期預金

バリュエーション — アップサイド/ダウンサイド試算

同社は利益に比べて現預金が非常に大きいため、PER・PBRに加えて、現預金を足し戻すEV方式でも試算した。前提: 自己株式控除後株数384.9万株、現金及び預金+長期預金37.4億円(1株あたり約971円)。

シナリオ 前提 理論株価 現値比
Peer平均PER 予想EPS 54.55円 × 14.9倍(図研・アルゴグラフィックスの平均) 813円 ▲29%
PER 15倍 予想EPS 54.55円 × 15倍 818円 ▲28%
PBR 1.0倍 BPS 941円 941円 ▲17%
中計最終年度 28/3期目標純利益2.4億円 → EPS 62円 × 20倍 1,247円 +10%
現預金+事業価値(保守的) 現預金37.4億円+営業利益2.9億円 × 5倍 1,348円 +18%
現預金+事業価値(標準) 現預金37.4億円+営業利益2.9億円 × 8倍 1,574円 +38%

手法間のレンジは▲29%〜+38%、中央値は約1,094円(▲4%)で、価格判定はC(適正)とした。結論は「現預金をどう評価するか」で大きく変わる。現預金は時価総額の約85%に達するが、親会社が過半を握る構造のもとで少数株主がこれを享受できるのは主に配当(配当性向は高水準)を通じてであり、PER・PBRで見ると割安とは言えない。アナリストのコンセンサス目標株価は確認できなかったため記載しない。

東証上場 類似銘柄比較(2026年11月6日終値)

銘柄 コード 時価総額 PER PBR 配当利回り 主要事業・違い
ジーダット 3841 44.5億円 20.9倍 1.21倍 3.51% 半導体・FPDのカスタム設計向けEDA専業
図研 6947 1,104億円 18.3倍 2.55倍 3.02% プリント基板・電気設計CAD。対象は基板・機器で、LSI設計ではない
アルゴグラフィックス 7595 966億円 11.5倍 1.64倍 5.39% 機械系CAD/PLMの販売・HPC。ジーダットの親会社

出典: 株探。国内に同規模のLSI向けEDA専業の上場企業はなく、比較は設計ソフト企業で代用した

需給(直近3ヶ月)

週足終値は8月7日週の1,291円から11月6日の1,138円まで▲12%。週の出来高は1,400〜38,700株で、日々の売買代金は数百万円規模にとどまる。7月24日には日本経済新聞の「AIで回路設計を自動化」報道で大幅高となったが、その後は1,300円前後で推移し、10月30日週に▲7.6%下げた。親会社とセイコーインスツルで議決権の7割超を占め、浮動株は少ない。

地政学・規制リスク

要因 影響 影響度
米国の対中EDA輸出規制 2025年に米国が対中EDA販売を一時制限。日本企業である同社への直接の影響は限定的だが、中国の国産化を加速させる 中
顧客の設備・設計投資 会社は「スマートフォン、パソコン、産業機械向けの半導体デバイスは低調」と記載。市場の二極化が続く 中
熊本地震(2026年7月) 熊本オフィスに重大な被害はなく、業績への影響は軽微と開示 低

カタリストカレンダー

時期 イベント 影響度 織り込み度
2026年12月(例年) SEMICON Japan(国内半導体の設計・製造投資の動向) ★★☆☆☆ 一部
2027年1月下旬(例年) 第3四半期決算(下期の受注、通期予想の修正有無) ★★★★☆ 未織込
2027年 AI回路設計ツール(CTGEN等)の提供開始(報道ベース) ★★★☆☆ 一部
2027年5月 本決算・来期予想(中計最終年度の目標との比較) ★★★★☆ 未織込

上抜け素地 3/6(該当: 10月30日週に出来高が増加、浮動株が少ない、中間期の高い進捗率に対し通期予想が据え置き)。該当2〜4項目のため⑥は調整なし。浮動株が少なく売買が細い銘柄は、悪材料でも同じように大きく値が飛ぶ点に注意したい。これらは値動きの振れ幅の構造を示す項目であり、上昇しやすさを意味しない。

資本イベント素地・国策アライン度・テーマ適合度

項目 判定 内容
資本イベント素地 3/10(低い) 該当は「現金+投資有価証券が時価総額の50%以上(約88%)」「親子上場(アルゴグラフィックスが51.46%)」「浮動株が少なく流動性が低い」の3項目。本項は公開情報で満たす構造的特徴の数を数えたもので、資本政策上のイベントを予想するものではない
国策アライン度 低い 国内半導体産業の支援策は続くが、同社への補助金交付や政策予算の受注など到達経路は開示から確認できない。日本OSAT連合会への賛助会員入会(2026年4月)は業界連携であり、売上寄与ではない
テーマ適合度 23/40(中程度) テーマ定義:「AIによるアナログ半導体の設計自動化」。①量的寄与2(AIツールは2027年提供予定で売上寄与はゼロ)②純度9(時価総額44億円のEDA専業)③サイクル位置6(AIを使った設計自動化はEDA大手も推進し、認知は拡大段階)④希少性6(国内上場のLSI向けEDA専業は同社に限られるが、世界では大手3社が先行)

テーマとしての関心(③)と現在の売上寄与(①)の間には大きなずれがある。7月の株価急伸はAI設計自動化の報道によるもので、業績の裏付けを伴わない値動きだった。純度が高い小型株であることは、テーマが失速した場合に下落も大きくなることを意味する。

財務リスク分析

項目 2026年3月末 2026年9月末
総資産 43.3億円 43.0億円
自己資本比率 83.5% 84.2%
現金及び預金 27.4億円 28.4億円
長期預金 9.0億円 9.0億円
前受金 3.94億円 2.99億円

中間期の営業CFは2.51億円、配当支払は1.53億円。財務リスクは極めて小さい。リスクは事業側にあり、①少数の大型ライセンス案件で業績が大きく変わる、②世界大手との研究開発規模の差、③中計目標の未達が続いている点である。

まとめ

ジーダットの中間期は、5月の高粗利の大型案件によって営業利益が前年同期の2.3倍となり、通期予想の8割を上期で稼いだ。一方で7-9月期は営業赤字で、会社は下期の営業利益を前年下期の3分の1程度と見込んで通期予想を据え置いた。業績は案件の有無で大きく振れる構造にある。

財務は無借金で、現金と長期預金は時価総額の約85%に達する。AIによるアナログ回路設計の自動化ツールは2027年に提供が始まる見込みで、関心は高いが現時点の売上寄与はない。品質スコアは33/70(★★☆☆☆)、価格判定はC(適正)とした。豊富な現預金と高い配当利回りがある一方、成長は横ばいで中計目標にも届いていない。財務の厚さと成長性は別の問題であり、AIツールの提供開始後の受注と、中計最終年度の達成度が評価の分かれ目になる。

▶ 他の半導体銘柄の分析は半導体銘柄調査分析ポータルへ。

主な出典: ジーダット「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年11月6日)、「2026年3月期決算短信」(2026年5月15日)、「中期経営計画策定に関するお知らせ」(2025年5月14日)、「支配株主等に関する事項について」(2026年6月19日)、「令和8年熊本地震に関するお知らせ」(2026年7月29日)、有価証券報告書(EDINET、2026年3月期)、株探(株価・指標・四半期推移・2026年7月24日の報道)、Wikipedia(Empyrean Technology)

免責事項・ディスクレーマー

本記事は半導体企業に関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。マルチプル比較・レーティングは独自の前提条件に基づく推計であり、実際の企業価値や将来の株価を保証するものではありません。半導体産業は景気循環・技術変化・地政学リスク等により業績が大幅に変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任において、十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。

本記事の情報は2026年11月6日時点の公開情報に基づいています。筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。

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