ローカルLLMとは?企業導入を担う日本株6社の稼ぎ方

「生成AIは使いたい。でも、社内の機密データを外部のクラウドには出せない」——金融・製造・医療・自治体などで、こうした悩みを抱える企業は少なくありません。

そこで2026年に一気に広がったのが、AIを自社のサーバーや閉じたネットワークの中で動かす「ローカルLLM」です。性能の高いオープンモデルが相次いで公開され、導入を請け負う企業も増えました。

この記事では、ローカルLLMとは何か、実際にどんなモデル・ソフト・機材を使っているのかを整理したうえで、企業へのローカルLLM導入を事業にしている上場企業6社のビジネスモデルと業績を、決算短信の数字で比較します。

読み終える頃には、「ローカルLLM関連」とひとくくりにされる企業が、それぞれどこで、どうやって稼いでいるのかが見分けられるはずです。

この記事の要点(2026年11月3日時点)

  • ローカルLLMは、公開されたAIモデルの重み(パラメータ)を自社の機材にダウンロードして動かす仕組み。データを外部に送らずに済むのが最大の利点。
  • 2026年は、Qwen(アリババ)、Gemma 4(Google)、gpt-oss(OpenAI)など、GPU 1枚で動く30B前後の高性能モデルがそろい、導入の敷居が下がった。国産ではtsuzumi 2(NTT)、Takane(富士通)、PLaMo(PFN)などがオンプレ提供に対応。
  • 上場企業の稼ぎ方は大きく3つ。①GPUサーバーなどの機材(ジーデップ・アドバンス、HPCシステムズ)、②自社モデルと専用機(AI inside)、③導入支援・システム構築(TIS、TDSE、ライトアップ)。
  • 業績が最も伸びているのは機材の2社。ジーデップ・アドバンスは第1四半期の営業利益が前年同期の2.4倍、HPCシステムズは今期営業利益52%増の計画。一方、導入支援の各社では、ローカルLLMはまだ売上の一部にとどまる。
目次

ローカルLLMとは|クラウドのAIと何が違うのか

ChatGPTやClaudeのようなクラウド型の生成AIは、入力した文章をインターネット経由で提供会社のサーバーに送り、そこで計算した答えを受け取ります。これに対してローカルLLMは、AIモデルそのものを自社のPCやサーバー、閉じたネットワーク(オンプレミス)の中で動かします。

観点 クラウド型の生成AI ローカルLLM
データの行き先 提供会社のサーバーに送られる 社内にとどまる(オフラインでも動く)
費用の形 利用量に応じた従量課金 GPUサーバーなどの初期投資+保守。使うほど1回あたりの費用は下がる
性能 最先端の巨大モデルを使える 機材の制約で中小型のモデルが中心
運用 提供会社に任せられる 自社または委託先でモデルの更新・保守が必要
向いている用途 一般的な文章作成・調査 機密文書の要約・検索、規制業種、工場や自治体の閉域網

ローカルLLMを構成する4つの層

実際の導入では、次の4つの層を組み合わせます。どの企業がどの層を担っているかを押さえると、後半の企業比較が分かりやすくなります。

④ 業務アプリ層:社内チャット、文書検索(RAG)、AIエージェント、ワークフロー(Difyなど)、安全対策(ガードレール)
③ 推論ソフト層:モデルを動かすソフト。Ollama、LM Studio、llama.cpp(1台向け)/vLLM、SGLang(多人数・複数GPU向け)
② モデル層:公開されたAIの重み。Qwen、Gemma、gpt-oss、Kimi、DeepSeek、国産のtsuzumi・Takane・PLaMoなど
① 機材層:GPUを積んだサーバー・ワークステーション(NVIDIA製GPUが中心)、DGX Sparkのような小型AI機

「RAG(検索拡張生成)」は、AIが答える前に社内文書を検索し、その内容を根拠に回答させる仕組みです。モデル自体に社内の知識を覚えさせなくても、手元の資料に沿った答えを出せるため、ローカルLLMと組み合わせるのが一般的になっています。

実際に何を使っているのか|モデル・ソフト・機材

海外のオープンモデル

ローカルLLMの性能を大きく引き上げたのが、重みを公開する「オープンウェイト」モデルの進化です。2026年10月時点の主なモデルは次の通りです。

モデル 開発元 規模 ライセンス 動かす機材の目安
Qwen3.8-27B アリババ(中国) 270億 Apache-2.0 4ビット量子化で約16〜20GB。GPU 1枚
Gemma 4(31B/12B/E2B・E4B) Google 310億〜小型 Apache-2.0 31Bは約16〜20GB、12Bは12GB未満、E2B・E4Bはスマホでも動く
gpt-oss-20b/120b OpenAI 210億/1,170億(実際に動くのは一部) Apache-2.0 20bは16GBクラスのGPUで動く設計
Kimi K3 Moonshot AI(中国) 2.8兆 独自 高性能GPU複数台が必要
DeepSeek-V4-Pro DeepSeek(中国) 1.6兆 MIT 高性能GPU複数台が必要

※Morph(2026年10月)、Hexabase、ライトアップの資料に基づく。「4ビット量子化」は、モデルの数値を粗く丸めてメモリ使用量を4分の1程度に減らす技術。

ポイントは、数百億パラメータ級のモデルが、GPU 1枚(ビデオメモリ16〜24GB程度)で動くようになったことです。Hexabaseは2026年の追い風として、モデル全体のうち一部の「専門家」だけを動かすMoE(混合エキスパート)方式の普及を挙げています。必要なGPUの水準が下がり、中堅企業でも導入を検討しやすくなりました。

一方で、高性能なオープンモデルの多くは中国企業が開発しています。重みを手元で動かす限りデータが外部に送られることはありませんが、ライセンス条件や社内規程との整合を確認する企業は多く、国産モデルを選ぶ理由にもなっています。

国産モデル

デジタル庁は2026年3月、政府職員向けの生成AI環境「源内」で使う国産LLMを7件選定しました。このうちオンプレミスでの提供に対応しているのが次のモデルです。

モデル 開発元 規模 特徴
tsuzumi 2 NTT(9432)・NTTデータ 300億 GPU 1基(A100 40GB)で動く設計。金融・医療・自治体の知識を強化。図表を読む版も追加
Takane 32B 富士通(6702)×Cohere 320億 オンプレ提供に対応。1ビット量子化でメモリ消費を大きく削減できるとする
PLaMo 2.0 Prime Preferred Networks(非上場) 310億 独自開発。オンプレ対応、OpenAI互換のAPI
cotomi v3 NEC(6701) 非公開 日本語性能と速度を重視。AIエージェント向けの推論を強化

NTT西日本と富士通グループのエフサステクノロジーズは、2026年9月からtsuzumi 2を使ったオンプレ型の生成AIを提供しています。国産モデルは大手通信・電機各社の事業ですが、各社の売上全体に占める比率は小さく、本記事では導入を主力事業とする中小型株に焦点を当てます。

機材:GPUサーバーから小型AI機まで

中心はNVIDIA製GPUを積んだサーバーやワークステーションです。TDSEの資料では、320億パラメータ級のモデルを4ビットで動かす物理サーバーは200万円程度から、700億パラメータ級を16ビットで動かす場合は700万円程度からとされています。

2025年10月に発売されたNVIDIAの小型AI機「DGX Spark」は、128GBのメモリで最大1,000億パラメータのモデルを動かせます。2026年10月には64GBモデル(4,999ドルから)が追加されました。部署単位で試せる小型機の登場も、導入の裾野を広げています。

ローカルLLM関連の上場企業6社|稼ぎ方は3タイプ

ここからは、企業へのローカルLLM導入を事業として打ち出している上場企業を、先ほどの4つの層に当てはめて整理します。

タイプ 企業(コード・市場) 担う層 ローカルLLM関連の製品・サービス
①機材 ジーデップ・アドバンス(5885・スタンダード) ①機材 NVIDIA製GPUサーバー・AI開発用ワークステーションの企画・構築・保守
HPCシステムズ(6597・グロース) ①機材+③ HPC-AIサーバー、ローカルLLMのターンキー(一括納品)ソリューション
②自社モデル+専用機 AI inside(4488・グロース) ①〜④ 自社の日本語LLM「PolySphere」、オンプレ用の専用機「AI inside Cube」
③導入支援・構築 TIS(3626・プライム) ③④ グループのインテックが、GPUサーバーとLLM・RAGをまとめた導入支援を2026年1月に開始
TDSE(7046・グロース) ③④ DGX Sparkなどを基盤にしたオンプレ型AIエージェント基盤「TDSE AI Forge」
ライトアップ(6580・グロース) ②〜④ モデル選定から構築まで行う「ローカルLLM導入支援サービス」(2026年8月開始)

業績比較(決算短信ベース)

企業 直近の通期実績 営業利益率 今期の会社計画 直近四半期の動き
ジーデップ・アドバンス 26年5月期:売上69.5億円、営業益11.2億円 16.1% 売上88.4億円(+27.2%)、営業益12.7億円(+13.6%) 1Q売上+62.5%、営業益2.4倍
HPCシステムズ 26年6月期:売上79.1億円(+11.9%)、営業益7.1億円(+12.1%) 9.0% 売上104億円(+31.5%)、営業益10.9億円(+52.2%) 138億円の大型受注(4月)を今期に計上予定
AI inside 26年3月期:売上47.5億円(+7.9%)、営業益3.1億円(前期比約2割減) 6.5% 売上52.3億円(+10.2%)、営業益5.2億円(+68.2%) オンプレ版の契約209件(26年3月末)→261件を計画
TIS 26年3月期:売上5,965億円、営業益762億円 12.8% 売上6,200億円(+3.9%)、営業益810億円(+6.3%) ローカルLLMは事業の一部
TDSE 26年3月期:売上30.1億円(+11.4%)、営業益2.1億円(+7.8%) 7.1% 売上32億円(+6.5%)、営業益1.3億円(−39.3%) 上期の営業益進捗61%
ライトアップ 26年3月期:売上35.3億円(−11.9%)、営業益4.7億円(−34.8%) 13.3% 売上46億円(+30.4%)、営業益7.1億円(+50.1%) 1Q営業益0.08億円(進捗1%)

※各社の決算短信(EDINET DB経由)。前期比は会社開示値。営業利益率は筆者の算出。

個別企業のビジネスモデル

ジーデップ・アドバンス(5885)|NVIDIA製品を「すぐ使える形」で届ける

NVIDIA製GPUを使ったサーバーやAI開発用ワークステーションを企画し、環境を構築して納め、保守まで行う会社です。売上の約9割がGPUサーバー・ワークステーションの提供と環境構築(DXサービス)、約1割が保守・運用支援です。顧客は大学と製造業が中心で、2027年5月期第1四半期は製造業の比率が35.2%(前年同期25.6%)に上がりました。

第1四半期は売上15.4億円(前年同期比+62.5%)、営業利益4.1億円(同2.4倍)と、いずれも第1四半期として過去最高でした。ローカルLLMを含む企業のAI開発・推論用の機材需要を直接取り込める位置にあります。ただし、GPUを先に仕入れるため在庫と前渡金が膨らんでおり(第1四半期末で合計約36.6億円)、大型案件の計上時期がずれると資金が寝る構造です。

HPCシステムズ(6597)|研究用スパコンからローカルLLMの一括納品まで

大学や研究機関向けの科学技術計算用コンピュータ(HPC事業、売上の63%)と、半導体製造装置などに組み込む産業用コンピュータ(CTO事業、同37%)の2本柱です。成長可能性資料では、ローカルLLMのターンキーソリューション(機材・ソフト・設定を一括で納める形)を提供していると説明しています。顧客分野別では、データサイエンス・AIが売上の13%、エッジAIが15%を占めます。

2026年4月に138億円のHPC用サーバーを受注しており、今期は売上104億円(+31.5%)、営業利益10.9億円(+52.2%)を計画しています。メモリ価格の高騰に備えて在庫を先行して確保した結果、総資産は45億円から114億円に膨らみ、短期借入金が約75億円増えました。受注の裏付けがある一方、在庫と借入の負担も大きい状態です。

AI inside(4488)|自社開発の日本語LLMと専用機

手書きの書類などを読み取るAI-OCR「DX Suite」が主力で、その基盤に自社開発の日本語特化LLM「PolySphere」を使っています。2025年10月に最新版の「PolySphere-4」を投入し、形式の決まっていない書類の月平均読み取り項目数は前年同期比405%に増えました。

ローカル運用の要が、自社のハードウェア「AI inside Cube」です。データを外に出せない顧客は、この専用機を社内に置いてDX Suiteを使います。この形の契約は2026年3月末で209件、2027年3月末に261件を計画しています。自治体向けには行政専用ネットワーク(LGWAN)での提供も行っています。モデル・ソフト・機材を一社でそろえる点が、他の5社との大きな違いです。

TIS(3626)|大手SIerによるパッケージ型の導入支援

グループのインテックが2026年1月、オンプレミス向けのローカルLLM導入支援を開始しました。専用のGPUサーバーとLLM、社内文書を検索するRAG機能、ローコードのワークフローツールをパッケージにし、最短1か月で環境を作るとしています。従量課金ではない点も特徴です。

TISの売上は約6,000億円規模で、ローカルLLMの寄与は現時点では小さいとみられます。ただし、金融機関や製造業などの大口顧客を多く持つため、導入が本格化した際に案件を取り込みやすい立場にあります。

TDSE(7046)|小型AI機を使ったオンプレ型AIエージェント

データ分析とAIの活用支援を手がける会社で、オンプレ型のAIエージェント基盤「TDSE AI Forge」を提供しています。NVIDIAのDGX Spark(または互換機)を土台に、オープンソースのLLM、ワークフローツールのDify、安全対策のNeMo Guardrailsを組み合わせる構成です。

2027年3月期は構造改革と成長投資を理由に、営業利益1.3億円(前期比39.3%減)を計画しています。上期の営業利益は0.8億円で、通期計画に対する進捗率は61%です。

ライトアップ(6580)|中小企業にも届くローカルLLM導入支援

中小企業向けのDX支援を手がける会社で、2026年8月に「ローカルLLM導入支援サービス」を始めました。特定のモデルを前提とせず、業務に合うモデルを評価・選定します。小〜中規模のモデルは顧客の社内サーバーに置き、Kimi K3のような大規模モデルは他社と共有しない専有クラウドで外部通信を制限して運用する、という2つの形を用意しています。

前期は売上35.3億円(−11.9%)、営業利益4.7億円(−34.8%)と減収減益でした。今期は営業利益7.1億円(+50.1%)の回復を計画していますが、第1四半期の営業利益は0.08億円で、下期に偏った計画です。ローカルLLMは始まったばかりのサービスで、業績への寄与はこれからです。

投資テーマとしての見方|「ローカルLLM関連」の中身を分ける

6社を並べると、ローカルLLMという同じテーマでも、業績への効き方は大きく異なります。

  • 機材(ジーデップ・アドバンス、HPCシステムズ):企業や研究機関のGPU投資を直接売上にできるため、テーマが最も業績に表れやすい。一方、NVIDIA製品の調達やメモリ価格、在庫・前渡金の負担に左右されやすい。
  • 自社モデル+専用機(AI inside):モデルから機材までを押さえ、契約数の積み上げで収益を伸ばす形。主力はAI-OCRで、汎用のローカルLLM市場とは競争の土俵が少し異なる。
  • 導入支援(TIS、TDSE、ライトアップ):モデルや機材の選択肢が増えるほど「選んで、組んで、運用する」手間の価値が上がる。ただし現時点では各社の売上に占める比率は小さく、案件数の拡大が確認できるまでは業績への寄与を見極める段階。

今後の注目点は、2026年11月に始まる予定のデジタル庁「源内」の2027年度有償調達の公募と、評価結果の公表(2026年冬〜2027年1月頃)です。政府が国産モデルを本格採用すれば、自治体や規制業種でのローカル運用が広がるきっかけになる可能性があります。

まとめ|「AIを手元に置く」需要は機材から先に表れている

ローカルLLMは、公開されたモデルを自社の機材で動かし、データを外に出さずに生成AIを使う仕組みです。2026年は、GPU 1枚で動く高性能モデルの登場と、導入を請け負う企業の増加で、規制業種や中堅企業にも現実的な選択肢になりました。

上場企業の業績を見ると、需要が最も早く数字に表れているのはGPUサーバーなどの機材で、ジーデップ・アドバンスとHPCシステムズが大きな増益を見込んでいます。導入支援の各社は、サービスを始めた段階で、業績への本格的な寄与はこれからです。「ローカルLLM関連」とひとくくりにせず、各社がどの層で稼いでいるのかを確認することが、テーマを読み解く近道です。

関連記事:ジーデップ・アドバンス(5885)の分析/HPCシステムズ(6597)の分析

出典

免責事項・ディスクレーマー

本記事はローカルLLMと関連企業に関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。各社のローカルLLM関連の売上規模は開示されていない場合が多く、記事中の「寄与」に関する記述には筆者の推察を含みます。投資判断はご自身の責任において、十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。

本記事の情報は2026年11月3日時点の公開情報に基づいています。筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。

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