Salesforce導入支援の国内大手株式会社テラスカイ(東証プライム・3915)は、2026年10月15日15時30分に2027年2月期の中間決算を発表しました。上期(3〜8月)の売上高は16,365百万円(前年同期比+22.9%)、営業利益は1,361百万円(同+117.3%、約2.2倍)で、いずれも上期として過去最高です。通期予想(売上高34,349百万円・営業利益2,541百万円)は据え置きました。
営業利益の通期予想に対する進捗率は53.6%で、前年同期の40.1%を13.5ポイント上回ります。けん引役はテラスカイ単体のSalesforce大型案件と、エンジニアの稼働率上昇、前期に実施したグループ再編(子会社2社の吸収合併・米国法人の解散など)の効果です。株価は翌10月16日に2,585円(+438円、+20.40%)まで上昇し、売買代金は24.1億円に膨らみました。
本記事では、①今期の伸び(事業別・四半期)、②上期決算の中身(利益率・キャッシュフロー)、③AI駆動開発「BLADE」やNTTデータとの協業といった成長戦略、④市場規模と当社のポジション、⑤株価(今期予想PER約22倍・EV/EBITDA約8倍)の評価を一次情報で整理し、強気材料と弱気材料を同じ分量で並べます。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
1. 総合評価サマリー
テーマ適合 21/40(中程度) / 国策アライン 5/10(中程度) / 資本イベント素地 構造のみ記載(NTTデータ15.9%保有・上場子会社あり)
上抜け素地 4/6(⑥カタリストに +1 調整) / 計画信頼度:中 / ゲームチェンジャー判定:○ 漸進的な改善
- 今期の伸び:売上高は28,056→34,349百万円(+22.4%)、営業利益は1,560→2,541百万円(+62.9%)の計画。上期だけで営業利益は前期の約87%に達した。
- 利益率:上期の営業利益率は4.7%→8.3%(+3.6pt)。2Q(6〜8月)単独では9.4%。ソリューション事業のセグメント利益率は12.0%→13.5%。
- 据え置きの理由:会社は「大型イベントや移転等の先行投資を進めつつ、当初予定通りとし確実な達成を目指す」と説明。下期の営業利益は計画上1,180百万円(前年下期比+26.3%)。
- 財務:現金及び現金同等物8,940百万円、借入金は短期200百万円のみ。上期の営業CFは1,324百万円(営業利益の約0.97倍)。
- 弱点:売上の約6割がSalesforce関連で、プラットフォーム依存が高い。AI駆動開発が普及すると「人月」型の売上が目減りする構造的な論点もある。
2. 今期の伸び|前期→上期→通期計画(事業別)
| 百万円 | 2026年2月期 実績 |
2026年2月期 上期実績 |
2027年2月期 上期実績 |
前年同期比 | 2027年2月期 通期計画 |
前期比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28,056 | 13,317 | 16,365 | +22.9% | 34,349 | +22.4% |
| ソリューション事業 | 25,819 | 12,358 | 15,173 | +22.8% | — | — |
| 製品事業 | 2,237 | 1,063 | 1,312 | +23.4% | — | — |
| 営業利益 | 1,560 | 626 | 1,361 | +117.3% | 2,541 | +62.9% |
| ソリューション事業 | 3,213 | 1,487 | 2,044 | +37.4% | — | — |
| 製品事業 | −126 | −80 | 86 | 黒字転換 | — | — |
| 全社費用等(調整額) | — | −780 | −769 | — | — | — |
| 営業利益率 | 5.6% | 4.7% | 8.3% | +3.6pt | 7.4% | +1.8pt |
| 経常利益 | 1,727 | 702 | 1,433 | +104.1% | 2,628 | +52.2% |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 1,572 | 407 | 880 | +116.3% | 1,526 | −2.9% |
| 1株当たり利益 | 121.81円 | 31.54円 | 68.22円 | +116.3% | 118.21円 | — |
出典:2027年2月期中間決算短信・決算説明資料(2026年10月15日)、2026年2月期有価証券報告書。セグメント売上はセグメント間取引を含む。セグメント別の通期計画は開示されていない。年間配当予想は17円(前期16円)。
読み方:通期の純利益が−2.9%の計画になっているのは、前期に特別利益597百万円(キットアライブ連結化に伴う段階取得に係る差益341百万円と投資有価証券売却益238百万円)を計上していた反動です。本業の利益を示す営業利益は+62.9%の計画で、上期の実績(+117.3%)はその計画を上回るペースで進んでいます。
進捗率:営業利益は前年同期より13.5ポイント高い
| 通期計画に対する上期の進捗率 | 2026年2月期(前年同期) | 2027年2月期(今期) | 差 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 47.5%(13,317/28,056実績) | 47.6%(16,365/34,349) | +0.1pt |
| 営業利益 | 40.1%(626/1,560実績) | 53.6%(1,361/2,541) | +13.5pt |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 25.9%(407/1,572実績) | 57.7%(880/1,526) | +31.8pt |
前年同期の進捗率は、比較のため前期の通期実績を分母にしている。会社資料では、2Q累計の売上高は計画比+3.1%、営業利益は計画比+66.5%の上振れ。
四半期の推移:2Q単独で営業利益は2.6倍
| 百万円 | 1Q(3〜5月) | 2Q(6〜8月) | 上期計 | 下期(計画の残り) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(今期) | 7,946(+20.3%) | 8,419(+25.4%) | 16,365 | 17,984(前年下期比+22.0%) |
| 営業利益(今期) | 566(+79.0%) | 794(+156.5%) | 1,361 | 1,180(前年下期比+26.3%) |
| 営業利益(前期) | 316 | 310 | 626 | 934(実績) |
2Qの営業利益794百万円は四半期として過去最高です。会社は2Qに大型イベント費用を計上したと説明しており、製品事業の2Q損益は前四半期比で18.1%減ったものの黒字を保ちました。下期の計画(営業利益1,180百万円)は前年下期比+26.3%にとどまり、上期の伸び(+117.3%)と比べると控えめな前提です(事実)。会社は10月2日のTerraSkyDay 2026(大型イベント)や将来の本社移転に伴う先行投資を織り込んでいます。上振れの余地を示唆する数字ですが、会社は修正していないため、本記事では計画どおりを中立ケースとします。
3. 上期決算の中身|利益率の改善はどこから来たか
① ソリューション事業(売上の約93%)
売上高は15,173百万円(+22.8%)、セグメント利益は2,044百万円(+37.4%)、利益率は12.0%→13.5%です。短信によると、増収の理由はSalesforceを中心としたクラウド導入開発、子会社BeeX(東証グロース・4270)のAWSライセンス販売、グループ各社の好調、キットアライブ(札証アンビシャス・5039)の連結子会社化です。増益の理由には、外注費の抑制と、量子コンピュータ関連の子会社Quemix・タイ法人の赤字縮小が挙げられています。
決算説明資料では、2Q単独のセグメント利益は前年同期比+50.5%の11億円で、「テラスカイ単体のAI活用や大型案件の増加に伴うエンジニア稼働率の上昇」と「昨年実施した事業再編効果」を主因としています。2Qの粗利率は前年同期から2.1pt上昇しました。会社は、大型案件による単価上昇と、外部委託から自社社員(プロパー)中心の体制への切り替えを理由に挙げています。
② 製品事業(売上の約8%)
売上高は1,312百万円(+23.4%)、セグメント利益は86百万円(前年同期は80百万円の損失)で黒字に転換しました。グループウェア「mitoco」のサブスク売上の増加と、ERP製品(mitocoERP)の導入売上が寄与しています。上期のサブスク売上は前年同期比+14.6%でした。黒字化には、前年度の米国法人の解散と外注費の抑制も効いています。
③ キャッシュフローと財務
| 百万円 | 2026年2月期上期 | 2027年2月期上期 | 主な要因(短信) |
|---|---|---|---|
| 営業CF | 710 | 1,324 | 税金等調整前中間純利益1,433、減価償却費449、契約負債の増加271/売上債権の増加294、法人税の支払346 |
| 投資CF | −629 | −655 | 無形固定資産(自社製品のソフトウェア等)の取得428、投資有価証券の取得182 |
| フリーCF | 80 | 668 | — |
| 財務CF | 85 | 7 | 非支配株主からの払込254(Quemixの増資)/配当支払206 |
| 現金及び現金同等物(期末) | 6,676 | 8,940 | — |
営業CFは営業利益の約0.97倍で、利益の質に大きな問題は見られません。ただし、前受金にあたる契約負債の増加(+271百万円)が営業CFを押し上げています。受注が鈍ると逆回転する項目である点は留意事項です。2026年8月末の総資産は23,953百万円、自己資本比率は57.4%、借入金は短期借入金200百万円のみで、実質的に無借金です。
4. 成長戦略|BLADE・NTTデータ協業・コンサルティング
| 施策 | 開示内容(事実) | 業績への効き方(推察) |
|---|---|---|
| AI駆動開発モデル「BLADE」 | 2026年6月に運用開始。会社資料では、要件定義〜テスト設計の期間を4ヶ月→2ヶ月、仕様変更1件の影響調査を最大3時間→約30分に短縮したと説明。プラットフォーム製品「BLADE SAYA」を11月1日に提供開始予定 | 同じ人員でこなせる案件が増え、利益率の改善につながる。一方で、工数に比例する売上は減りやすく、価格体系の見直しが必要になる(両刃) |
| NTTデータとの協業 | 2024年4月に資本業務提携(NTTデータは当社株15.92%を保有)。協業による売上は2026年2月期6億円→2027年2月期累計目標20億円。金融(地方銀行・保険)から、ライフライン・通信・行政へ拡大 | 目標どおりなら、今期の売上増加額(約63億円)のおよそ2割強を占める |
| コンサルティング統括本部 | 2026年8月に新設。元デロイト トーマツのグループCIOを統括本部長に招聘 | 上流工程(要件定義の前段)に入れれば単価が上がる。成果が数字に出るのは来期以降とみられる |
| Salesforceとの関係 | 2026年6月にSalesforceのForward Deployed Engineering Partner Networkへ参画。「Japan Partner of the Year – 東日本 -」を受賞 | AIエージェント「Agentforce」の導入案件を取りやすい立場 |
| M&A・提携 | キットアライブを2025年10月に子会社化。ブリッジインターナショナルグループ(7039)と2026年6月に資本業務提携(同社株113,100株・議決権約3%を引受け)。オリックスの法人顧客向けにSalesforceの販売・導入を開始(10月1日) | 非連続な成長の手段。ただし、上期の増収のうちM&Aによる分は開示されていない |
5. 会社概要|国内最大級のSalesforce導入パートナー
- 設立・上場:2006年3月設立(2026年3月に創業20周年)。東証プライム上場。代表取締役CEO社長執行役員は佐藤秀哉氏。
- 事業:①ソリューション事業=Salesforceを中心としたクラウドの導入開発・保守運用、AWS関連(子会社BeeX)、SAPのクラウド移行、運用監視(スカイ365、ベトナム拠点)、セキュリティ(リベルスカイ)、量子コンピュータのソフトウェア開発(Quemix)。②製品事業=グループウェア「mitoco」、データ連携ツール「mitoco X(旧DataSpider Cloud)」、ERP製品などの自社製品。
- 規模:グループ従業員は2026年8月末で1,738人(今期末の計画は1,871人)。2026年4月の新卒採用はグループ合計で105人。平均年収は660万円(2026年2月期、提出会社)。
- 上場子会社:BeeX(東証グロース・4270)、キットアライブ(札証アンビシャス・5039)。いわゆる親子上場の親会社にあたる。
- 株主還元:2026年2月期に初めて配当(16円)を実施し、累進配当を基本方針とする。株主優待は2026年2月28日で廃止。
6. 市場規模(TAM)と当社のポジション
| 事業 | 市場の定義 | TAM | 出典 | CAGR |
|---|---|---|---|---|
| ソリューション事業(売上の約93%) | 国内のパブリッククラウドサービス市場(IaaS・PaaS・SaaSの利用料。導入開発などのSIサービスは含まない) | 4兆1,423億円(2024年)→8兆8,164億円(2029年予測) | IDC Japan「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2024年~2029年」を会社資料が引用(IDC Japan 2025年2月20日発表)【第三者】 | 16.3%(2024→2029年) |
| (参考)Salesforceの事業規模 | Salesforce社の全世界売上 | 2030年度の売上目標630億ドル(600億ドル超から引き上げ) | Salesforce社の自社目標を会社資料が引用【自社推計(Salesforce社)】 | — |
| 製品事業(売上の約8%) | 国内のグループウェア・データ連携ツール市場 | 取得不能 | 第三者推計は確認できず | — |
SAMと浸透率:当社が実際に売っているのは、クラウドの利用料そのものではなく、その導入・開発・運用のサービスです。そのため、上のTAMは当社の売上と同じ物差しではありません。国内のSalesforce導入支援市場(SAM)の第三者推計は確認できませんでした。参考として、2026年2月期の連結売上280億円を2024年のパブリッククラウド市場4兆1,423億円で割ると約0.7%です。ただし定義が違うため、伸びしろの根拠には使いません。言えるのは「クラウド利用が年16%前後で伸びる限り、その導入需要も広がる」ところまでです。
バリュエーションとの整合:適正株価(第11節)では、市場シェアではなく会社計画(来期の営業利益+20%)を前提に置いています。TAMの大きさは評価に加点していません。
ゲームチェンジャー判定:○ 漸進的な改善
| 5問 | 判定材料 |
|---|---|
| ①置換対象 | 人手中心のSI開発(設計書の作成、影響調査、テスト設計)。現在その支出を受け取っているのは国内のSIer各社 |
| ②優位の定量 | BLADEで要件定義〜テスト設計を4ヶ月→2ヶ月、影響調査を最大3時間→約30分(会社資料。社外の検証値ではない) |
| ③普及の障壁 | 顧客側の受け入れ(AI生成物の品質保証、契約形態の変更)。業界全体での価格体系の見直し |
| ④実装エビデンス | 社内運用は開始済み。外販製品「BLADE SAYA」は11月1日に提供開始予定で、採用企業名はまだ開示されていない |
| ⑤既存側の反撃 | 大手SIer・コンサル各社も生成AIによる開発の効率化を進めており、Salesforce自身もAIによる開発支援を提供している。技術としての独占性は低い |
判定は○です。BLADEは当社の利益率を押し上げる道具ですが、産業構造を作り替える性質のものではありません。なれなかった場合に残るものは、国内最大級のSalesforce認定資格者を抱える導入パートナーとしての地位と、約89億円の手元現金です。
7. テーマ性の検証
テーマの定義:「企業の業務にAIエージェントを組み込む(Agentforce等)導入・開発支援」。判断軸6項目のうち、③第三者TAM(クラウド市場)、④実装マイルストーン(BLADE SAYAの提供開始)、⑤大手の資金投入(Salesforce・NTTデータ・みずほ銀行との取り組み)、⑥市場の関心の4項目を満たします。
| テーマ | 判定 | 根拠(出典) |
|---|---|---|
| AIエージェントの導入支援(Agentforce) | ○ | Salesforce FDE Partner Networkへの参画(2026年6月)。主力のSalesforce事業の延長線上にある実事業だが、Agentforce関連の売上は非開示で量的寄与は未確認 |
| AI駆動開発(BLADE) | ○ | 社内運用は開始済み、外販は11月から。売上寄与はまだ確認できない |
| 量子コンピュータ(Quemix) | ○ | NEDOの大型実証に採択(7月)。ホンダ・三井金属が出資(8月)し、トヨタ・日産・SCSKなどと共同研究。現時点では赤字子会社で、短信は「赤字の減少」と記載。売上寄与は小さい |
| クラウド移行(SAP・AWS) | ◎ | BeeXのSAPクラウド移行・AWSライセンス販売は実事業(ただし非支配株主持分あり) |
| セキュリティ | ○ | リベルスカイがGoogle Cloudのセキュリティ部門賞を2年連続受賞。全社に占める規模は小さい |
テーマ適合度(4軸・40点):21点
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 4 | Salesforce関連は売上の約6割だが、そのうちAIエージェント関連の売上は非開示。推計できないため5〜20%帯の下限に置く |
| ②純度 | 7 | クラウドSIの専業で、時価総額は約334億円。🔴 純度が高く小型なほど、テーマ失速時の下落も大きい(両刃) |
| ③サイクル位置 | 5 | AIエージェントの普及は拡大局面。一方、2026年初からは「生成AIがSaaS・SIを代替する」との懸念でソフトウェア関連株が売られた(会社資料もPBR低下の要因として言及) |
| ④希少性 | 5 | Salesforce導入を主業とする上場企業は少ないが、大手SIer・コンサルもAgentforceを扱っており、代替は可能 |
①と③の乖離:テーマは拡大局面にありますが、AIエージェント関連の売上寄与は開示がなく、確認できません。株価がテーマで動いても、業績の裏付けは「Salesforce事業全体の伸び」でしか測れない状態です。
8. 大相場チェック(過去3年)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 3年レンジ(2023年10月〜2026年10月) | 安値1,353円(2024年4月)→高値3,715円(2026年6月4日・ザラ場)=約2.7倍 |
| 判定 | 5倍以上の大相場は無い。2026年6月に短期の急騰(テーマ相場)が1回 |
| 基準日の位置 | 2,585円は6月の高値から約30%下 |
| 日付 | 値動き(日足) | 背景 |
|---|---|---|
| 2026年6月1日 | 2,063→2,563円(+24.24%、ストップ高) | 事実:子会社Quemixが6月1日11時10分に共同研究成果を開示(デンソー・三井金属・トヨタ/豊田中央研究所/東京大学)し、株探はこれを好感したストップ高と報道。同日13時10分に日産、6月2日にSCSK、6月3日に本田技術研究所との成果も開示。6月3日にはBLADEの運用開始も発表 |
| 2026年6月3〜4日 | 6/3 +19.81%(ストップ高、+501円・高値引け3,030円)、6/4 高値3,715円・終値3,485円(+15.02%、出来高695万株) | 事実:6/4は米量子コンピューター新興クオンティニュアムのナスダック上場を受けた量子関連株の一斉高(株探6月4日報道) |
| 2026年6月8日 | 3,375→2,841円(−15.82%) | 急騰の反動。6月末には2,255円まで戻り売りが続いた |
| 2026年10月16日 | 2,147→2,585円(+20.40%、売買代金24.1億円) | 事実:前日15時30分の中間決算(営業利益2.2倍)への反応 |
9. 経営陣・株主構成・需給
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 経営体制 | ◎ 創業者の佐藤秀哉氏がCEO。役員の持株合計は3,777,300株(発行済株式の約29.2%、2026年2月期有報)。CFOは取締役専務執行役員の塚田耕一郎氏 |
| 大株主(2026年2月期末) | 佐藤秀哉氏28.27%(有報の役員所有株式数3,649,800株と一致)、NTTデータ15.92%、マレスカイ7.75%(佐藤氏が代表取締役社長を務める会社。資産管理会社とみられる)、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)4.70%、サーバーワークス2.73% |
| 固定的な株主 | 上位3者で約52%。浮動株は相対的に少なく、値動きが大きくなりやすい(両刃) |
| 希薄化 | 新株予約権は純資産上10.7百万円で、希薄化は軽微(推定1%未満)。発行済株式数は2025年2月期から12,918,380株で変わっていない |
| 流動性 | 直近1ヶ月の平均売買代金は約1.5〜2億円/日。10月16日は24.1億円と急増 |
| 信用需給 | 信用倍率12.05倍(株探、10月16日時点の表示)。買い残が売り残を大きく上回る |
| 上値の重さ | 6月の急騰時(2,500〜3,700円)の高値づかみの株が残っている。8月高値2,510円は10月16日に上抜けたが、6月下旬の2,500〜2,700円帯は戻り売りが出やすい価格帯 |
| 需給総合判定 | 留意(信用買い残の多さと、6月の急騰時の高値づかみ) |
10. 計画との整合性|計画信頼度=中
| 期 | 計画と実績 | 評価 |
|---|---|---|
| 2026年2月期 | 期中に営業利益予想を1,402百万円へ修正→実績1,560百万円(修正計画比111.2%)。売上高は修正計画比100.6% | 修正後は上回った(期初計画との比較は未確認) |
| 2027年2月期(今期) | 上期の営業利益は計画比+66.5%の上振れ。通期は据え置き | 上振れ中 |
| 中期の数値目標 | 2027年2月期末までに営業利益25億円・ROE10%(「資本コストや株価を意識した経営」の開示)。前期のROEは13.3% | 今期計画どおりなら達成 |
直近の計画は上回っていますが、2026年2月期は9ヶ月時点で営業利益が前年同期比−7.5%と一時減速し、期中に予想を修正した経緯があります。このため計画信頼度は「中」とします。2028年2月期以降の中期計画(売上・利益の目標)はまだ開示されておらず、4月の本決算で示されるかが次の確認点です。
11. 適正株価の考え方(評価手法の例示・目標株価ではありません)
現在の評価:株価2,585円は、今期予想EPS118.21円に対してPER21.9倍、PBR2.43倍(8月末の自己資本ベース)です。EV(時価総額334億円−ネット現金87億円+非支配株主持分25億円=約272億円)を、今期のEBITDA見込み約34.4億円(営業利益2,541+減価償却費約900百万円〈上期449百万円×2〉)で割ると、EV/EBITDAは約7.9倍です。
| ケース | 前提 | EPS | PER | 株価 | 基準日比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 弱気 | 今期は計画どおり(営業利益2,541)。AIによるSI代替懸念で、ソフトウェア株の評価が一段と下がる | 118.2円(今期) | 15倍 | 約1,770円 | −31% |
| 中立 | 来期の営業利益は+20%(約3,050)。純利益は営業利益の約60%(今期計画と同じ比率) | 141.9円(来期) | 19倍 | 約2,700円 | +4% |
| 強気 | 今期は上振れ、来期の営業利益は約3,600(2期で約2.3倍)。AIエージェント案件が拡大 | 167.5円(来期) | 24倍 | 約4,020円 | +55% |
成立条件:中立ケースは、下期も稼働率が維持され、NTTデータとの協業売上が目標(今期20億円)に届くことが前提です。崩れる条件:①Salesforceの国内需要の鈍化、②エンジニアの採用・稼働率の低下(新卒105人が下期から稼働)、③AI駆動開発による受注単価の下落。PER19倍は、前期末(14.7倍)と直近(約22倍)の間に置いています。
12. レーティング(equity-rating-framework v2.2)
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①成長性 | 8 | 今期計画は売上+22.4%・営業利益+62.9%。上期実績は売上+22.9%・営業利益+117.3% |
| ②収益性 | 5 | 営業利益率は上期8.3%・通期計画7.4%。SIとしては平均的。ROEは前期13.3%(特別利益込み) |
| ③収益の質・連結範囲 | 6 | 営業CF÷営業利益は0.97倍。ただし契約負債の増加が寄与し、M&A分は非開示、上場子会社の利益の一部は非支配株主に帰属 |
| ④競争優位性 | 7 | Salesforceの主要パートナー(受賞・FDE参画)。NTTデータが15.9%出資。一方でSalesforceへの依存度が約6割と高い |
| ⑤需給(直近3ヶ月) | 4 | 信用倍率12.05倍。6月の急騰時の高値づかみが上値を抑える |
| ⑥カタリスト(今後3ヶ月) | 7(6+1) | BLADE SAYAの提供開始(11月1日)、3Q決算(2027年1月中旬予定)。上抜け素地4/6で+1調整 |
| ⑦リスク耐性 | 7 | 自己資本比率57.4%、ネット現金約87億円、実質無借金。プラットフォーム依存とAIによる代替が主なリスク |
| 合計 | 44/70 | ★★★☆☆(36〜45点) |
| 上抜け素地(6項目) | 判定 |
|---|---|
| 売買代金の急増 | ○(10月16日24.1億円、平常時の10倍超) |
| 信用需給 | ×(信用倍率12倍の買い長) |
| 浮動株の少なさ | ○(上位3者で約52%) |
| 節目までの距離 | ×(6月下旬の2,500〜2,700円帯がすぐ上にある) |
| 業績のモメンタム | ○(営業利益の進捗率53.6%) |
| テーマ性 | ○(AIエージェント・量子) |
🔴 上抜け素地は両刃です。売買代金が膨らみ浮動株が少ない銘柄は、材料が出尽くしたときの下落も同じだけ大きくなります。6月の急騰後に1ヶ月足らずで約−35%(6月4日終値3,485円→6月30日2,255円)となった例があります。
- 価格判定:C(中立ケース約2,700円に対して+4%。−15%〜+15%の範囲)
- 国策アライン度:5/10(DX・クラウド推進は政策と整合するが、当社固有の予算計上や交付決定は、QuemixのNEDO採択以外に確認できない)
- 資本イベント素地:NTTデータが15.92%を保有する資本業務提携先であり、当社自身もBeeX・キットアライブを上場子会社として抱える。いずれも構造の記載にとどめ、TOB等を予想するものではない
13. カタリストカレンダー(今後3ヶ月+)
| 時期 | イベント | 影響度 | 織り込み度 |
|---|---|---|---|
| 2026年11月1日 | AI駆動開発プラットフォーム「BLADE SAYA」の提供開始 | ★★ | 一部 |
| 2026年11月30日〜12月4日 | AWS re:Invent 2026(BeeX等のAWS事業の案件機会) | ★ | 概ね織込済 |
| 2027年1月中旬(予定) | 2027年2月期 第3四半期決算。営業利益の進捗率と、通期予想の修正有無 | ★★★ | 一部 |
| 2027年4月中旬(予定) | 2027年2月期 本決算と来期計画。営業利益25億円・ROE10%目標の達成確認、新たな中期目標の有無 | ★★★★ | 未織込 |
| 時期未定 | 本社移転(会社は先行投資として通期計画に織り込み済みと説明) | ★ | 概ね織込済 |
決算発表の時期は前年同期の開示日(2026年1月14日・4月14日)からの推定。
14. 強気材料 vs 弱気材料
| 強気材料 | 弱気材料 |
|---|---|
| 営業利益の進捗率は53.6%で、前年同期(40.1%)を大きく上回る。下期計画は前年下期比+26%と控えめ | 会社は通期予想を据え置き。下期にはイベント費用・移転費用・新卒の立ち上がりコストが重なる |
| 2Q単独の営業利益率9.4%は過去最高水準。稼働率の上昇と再編効果は、一過性ではなく構造的な改善と会社は説明 | 稼働率の上昇は大型案件に支えられている。大型案件が一巡すれば稼働率と利益率は戻る可能性がある |
| NTTデータとの協業売上は6億円→20億円目標。金融から公共・通信へ拡大 | 協業売上の上期実績は開示されていない(「着実に進捗中」のみ) |
| 実質無借金でネット現金約87億円。EV/EBITDAは約7.9倍とSIとして割高ではない | PERは約22倍で、前期末(14.7倍)より切り上がっている。非支配株主持分を除くと実質的な取り分は小さくなる |
| BLADEで開発期間を半減。利益率を押し上げる余地 | AIで工数が減れば、人月型の売上は縮みうる。「生成AIがSIを代替する」との懸念は、2026年初にソフトウェア株を押し下げた |
| Quemix(量子)にホンダ・三井金属が出資し、NEDO採択も獲得。テーマ性を持つ | Quemixは赤字子会社。量子の売上寄与は小さく、6月の急騰はその後1ヶ月足らずで約−35%と剥落した |
15. まとめ|利益率の改善は本物、次は下期の「据え置き」の中身
今回の中間決算で確認できたのは、売上の2割増が続くなかで、営業利益率が4.7%→8.3%へ大きく改善したことです。会社はその理由を、稼働率の上昇・自社社員中心の体制への切り替え・前期のグループ再編の効果と説明しており、いずれも数字(粗利率+2.1pt、外注費の抑制、製品事業の黒字化)と整合します。
一方、通期予想は据え置かれ、下期の営業利益の伸びは+26%という控えめな計画です。株価は決算翌日に+20%上昇し、中立ケース(約2,700円)との差は+4%まで縮まりました。ここから先の上値は、①3Q決算で上期のペースが続くか、②4月の本決算で示される来期計画が、AIによる効率化を売上の目減りではなく利益率の改善として示せるかにかかっています。強気・弱気のどちらに振れるかは、その2点の開示で判断できる局面です。
16. 参考文献(出典ランク)
- 【A】株式会社テラスカイ「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年10月15日
- 【A】同「2027年2月期 第2四半期 決算説明資料」2026年10月15日
- 【A】同「2026年2月期 決算説明資料」2026年4月14日(中期の数値目標、IDC Japanの市場予測の引用)
- 【A】同「ブリッジインターナショナルグループ株式会社との資本業務提携及び第三者割当による自己株式処分の引受に関するお知らせ」2026年6月5日
- 【A】同 有価証券報告書(2026年2月期)・半期報告書(EDINET、EDINET DB経由で取得)
- 【B】IDC Japan「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2024年~2029年」2025年2月20日発表
- 【C】株探(株価・月足・日足・信用倍率・ニュース:2026年6月1日・6月4日の量子関連株の報道を含む)