放置RPG『メメントモリ』の一本足で年商120億円を稼ぐ株式会社バンク・オブ・イノベーション(東証グロース・4393)。2026年8月14日の取引終了後、同社は2026年9月期第3四半期決算短信と第3四半期決算説明資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)を開示しました。
3Q累計は売上高90.9億円(前年同期比▲3.6%)・営業利益15.5億円(同▲5.6%)と減収減益。3Q会計期間(4〜6月)に至っては営業利益4.0億円(前四半期比▲25.4%)と、開発体制強化の費用増で利益が細っています。それでも株価は決算発表(8月14日の取引終了後)翌営業日からの8営業日で+9.3%上昇し、8月は月間+14.29%となりました。
市場が見ているのは、2026年6月15日に公開した「メメントモリWebストア」です。2026年8月1〜10日の課金額に占める自社提供経路での決済比率が約52%——同じ日(2026年8月26日)にモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)等が公表した業界調査では、アプリ内の代替決済の利用率はわずか8.8%でした。推察:両者は測定対象も分母も異なり単純比較はできませんが(§4で詳述)、スマホ新法(スマートフォンソフトウェア競争促進法)という規制変化を、業界平均と比べて相当に速いペースで自社の収益構造に取り込みつつある会社、という位置づけになります。
本記事では、決算短信・決算説明資料(MarkItDownで全文解析)・有価証券報告書・適時開示をもとに、①決算の中身 ②Webストアの実額インパクト ③9年目に入った新作パイプライン ④過去3年の大相場 ⑤テーマ適合度とレーティング ⑥適正株価レンジを、強気材料と弱気材料の両面から整理します。
本記事は東証グロース個別銘柄の調査・分析です。事実(開示・一次情報)と推察を分けて記載し、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は2026年9月期第3四半期決算短信および同決算説明資料(2026年8月14日16:00開示)、2026年9月期第2四半期決算説明資料(2026年5月15日)、2025年9月期有価証券報告書(EDINET・E34116、2025年12月25日提出)、2026年8月25日適時開示、株価は2026年8月26日終値に基づきます。投資判断はご自身の責任でお願いします(末尾の免責を必ずお読みください)。
※ 本記事はグロース株調査レポート一覧の一つです。
1. 会社概要|動画検索エンジンから始まり、創業社長が43.85%を握る
事実:株式会社バンク・オブ・イノベーション(証券コード4393、東証グロース、EDINETコードE34116、日本基準・連結、決算期9月末)は2006年1月12日設立。代表取締役社長 樋口智裕氏(1983年1月15日生)が開発した動画検索エンジン「Fooooo」の事業化が出発点です。2012年9月にスマートフォンゲーム事業を開始し、2018年7月に東証マザーズ上場、2022年4月のグロース市場移行を経て現在に至ります。本社は東京都新宿区新宿6-27-30 新宿イーストサイドスクエア3F、資本金562百万円。
事実:連結従業員数は273名(2026年6月30日時点、開発249名/管理24名。決算説明資料)。報告セグメントは「スマートフォンアプリ関連事業」の単一セグメントであり、セグメント別の売上構成比・利益率の開示はありません。そのため本稿ではタイトル別売上・費用項目別の四半期推移で売上の「質」を分解します。
事実:役員は代表取締役社長 樋口智裕氏、取締役人事部長 田中大介氏(2006年からの創業メンバー)、取締役CFO経営管理部長 河内三佳氏(公認会計士、監査法人トーマツ出身、2013年入社/2014年12月からCFO)の3名に、社外取締役(監査等委員)3名——熊倉安希子氏(公認会計士)、深町周輔氏(弁護士)、櫻田厚氏(モスフードサービス元代表取締役社長)。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(継続監査年数13年)。
2. 売上の「質」|メメントモリが94.5%、Apple+Googleが85.1%
事実:2025年9月期のタイトル別売上は『メメントモリ』11,683百万円(94.5%)、『恋庭』682百万円(5.5%)。有価証券報告書は「特定のタイトルにおける収益依存について」として、この94.5%を明示的なリスクとして記載しています。
事実:相手先別の販売実績はApple Inc. 6,184百万円(50.0%)、Google LLC 4,341百万円(35.1%)で、2社合計85.1%。有報の注記どおり両社は決済代行事業者であり、ユーザーからの代金回収を代行する立場です。つまり売上の8割超が2つのアプリストアを経由しており、そこに15〜30%の手数料が乗っている——これが後述するWebストアの経済的意味です。
事実:売上のパススルー要素はありません(アイテム課金収入が大部分)。持分法適用会社・合弁(JV)・非支配株主持分はいずれもゼロで、営業利益と実態の乖離は構造的に小さい会社です。連結子会社2社はいずれも債務超過(2025年9月末:株式会社Koiniwa ▲1,196百万円、株式会社バンク・オブ・インキュベーション ▲246百万円)ですが、100%子会社のため連結上は消去されます。
年次業績の推移(連結・百万円)
| 決算期 | 売上高 | 前期比 | 営業利益 | 営業利益率 | 当期純利益 | 営業CF |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年9月期 | 2,129 | — | ▲808 | — | ▲541 | ▲729 |
| 2022年9月期 | 2,428 | +14.0% | ▲1,008 | — | ▲838 | ▲974 |
| 2023年9月期 | 21,333 | +778.6% | 4,900 | 23.0% | 3,293 | 5,212 |
| 2024年9月期 | 13,615 | ▲36.2% | 1,329 | 9.8% | 895 | ▲1,716 |
| 2025年9月期 | 12,366 | ▲9.2% | 2,154 | 17.4% | 1,351 | 2,867 |
| 直近12ヶ月(TTM) | 12,029 | ▲2.7% | 2,062 | 17.1% | 1,510 | — |
出典:EDINET DB(有価証券報告書)、2026年9月期第3四半期決算短信。TTMは「2025年9月期通期 − 2025年9月期3Q累計 + 2026年9月期3Q累計」による当社試算。2022年9月期は『メメントモリ』リリース(2022年10月=2023年9月期1Q)前のため赤字。
事実:売上のピークは2023年9月期の213.3億円(『メメントモリ』リリース初年度)で、直近TTMの120.3億円はピーク比▲43.6%。2023年9月期→2025年9月期の売上CAGRは▲23.9%(当社試算)です。
推察:ただし「減収」の中身は二層に分かれます。2024年9月期3Q以降の四半期売上は、周年イベントのある1Qを除けば概ね28〜30億円で横ばい(下表)。急減したのはリリース直後のバーストが剥落した2024年9月期までで、その後は減衰の傾きがかなり緩やかになっている、というのが数字の示す姿です。会社も決算説明資料で「大型周年イベントのある1Qを除き、売上高が概ね横ばいで推移」と説明しています。
四半期売上高と営業利益の推移(連結・百万円)
| 四半期 | ’24/9期 1Q |
2Q | 3Q | 4Q | ’25/9期 1Q |
2Q | 3Q | 4Q | ’26/9期 1Q |
2Q | 3Q |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,177 | 3,634 | 2,965 | 2,837 | 3,534 | 3,049 | 2,843 | 2,939 | 3,301 | 2,871 | 2,917 |
| 営業利益 | 582 | 654 | 95 | ▲3 | 835 | 181 | 627 | 509 | 616 | 536 | 400 |
出典:2026年9月期第3四半期決算説明資料(p.7)。検算:’24/9期の4四半期合計=1,328百万円(同期通期実績1,329百万円)、’25/9期の4四半期合計=2,152百万円(同2,154百万円)、’26/9期1Q〜3Q合計=1,552百万円(3Q累計と一致)。差は表示単位未満切捨てによるもの。
3. 2026年9月期3Q決算|減収減益、しかし株価は上がった
3Q累計(2025年10月1日〜2026年6月30日)
| 項目 | ’26/9期 3Q累計 | ’25/9期 3Q累計 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,090百万円 | 9,427百万円 | ▲3.6% |
| 売上原価 | 5,135百万円 | 4,718百万円 | +8.8% |
| 売上総利益 | 3,955百万円 | 4,708百万円 | ▲16.0% |
| 販管費 | 2,402百万円 | 3,064百万円 | ▲21.6% |
| 営業利益 | 1,552百万円 | 1,644百万円 | ▲5.6% |
| 営業利益率 | 17.1% | 17.4% | ▲0.3pt |
| 経常利益 | 1,572百万円 | 1,666百万円 | ▲5.7% |
| 親会社株主帰属四半期純利益 | 1,008百万円 | 849百万円 | +18.7% |
| 1株当たり四半期純利益 | 253.68円 | 213.76円 | +18.7% |
事実:3Q会計期間(2026年4〜6月)単独では、売上高2,917百万円(前四半期比+1.6%、前年同四半期比+2.6%)に対し営業利益は400百万円(前四半期比▲25.4%)、営業利益率13.7%。会社は減益要因を「開発・運営体制の強化に伴い、開発・運営費用が155百万円増加したこと等」と説明しています。
事実:3Q会計期間の四半期純利益は180百万円(前四半期比▲64.6%、純利益率6.2%)と、営業利益の減少幅を大きく上回って落ち込みました。会社は「2Q及び3Q会計期間における四半期純利益の変動は、株式会社Koiniwaの吸収合併に伴う債権放棄に関する費用計上等を踏まえ、当社単体の中間財務諸表及び四半期財務諸表の作成に特有の会計処理をそれぞれ適用し、税金費用を算定した影響を受けています」と注記しています。推察:これは税金費用の期間配分に起因する会計上の振れであり、事業の実態悪化を直接示すものではありませんが、四半期純利益ベースでの単純な前四半期比較がこの期は成立しないという意味です。
事実:決算説明資料は3Q会計期間の営業利益を次のように分解しています。これは「既存タイトルは十分に稼いでいるが、その稼ぎの半分以上を新作に突っ込んでいる」という構造を、会社自身が明示したものです。
| 区分 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 既存タイトル運営 | 売上高 | 2,917百万円 |
| 運営費用等(運営費・PF等手数料・広告宣伝費・バックオフィス費用) | ▲1,999百万円 | |
| 『運営利益』 | 918百万円 | |
| 新作ゲーム・新規サービス開発 | 『新作開発投資』(当3Qに計上した研究開発費、全額費用処理) | ▲518百万円 |
| 営業利益 | 400百万円 | |
出典:2026年9月期第3四半期決算説明資料(p.6)。参考:2026年9月期2Q会計期間の『新作開発投資』は429百万円(同2Q決算説明資料)。
事実:通期業績予想は非開示です。短信は「業界の変化が激しいこと、また機動的な投資判断を実施することから、現時点で適正かつ合理的な業績予想の算定が困難」と説明しています。配当も無配(実施時期未定)。
事実:前期(2025年9月期)については、期末11日前の2025年9月19日に非開示だった通期予想を初めて開示し(経常利益+54%増)、翌営業日の9月22日に株価が反発しています。推察:期末直前の予想開示は、投資家が期中に業績を見通す材料としてはほぼ機能しません。通期予想の非開示は、この銘柄のバリュエーションを「四半期実績と会社の定性説明だけで組み立てざるを得ない」状態にしています。
財政状態(2026年6月30日)|無借金・ネットキャッシュ54.7億円
| 項目 | ’26/9期 3Q末 | ’25/9期末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 2,769百万円 | 4,186百万円 | ▲1,417 |
| 有価証券(合同運用指定金銭信託) | 2,700百万円 | 1,200百万円 | +1,500 |
| 売掛金 | 1,464百万円 | 1,522百万円 | ▲58 |
| 総資産 | 8,278百万円 | 7,943百万円 | +334 |
| 有利子負債 | 0円 | 13百万円 | ▲13 |
| 未払法人税等 | 142百万円 | 733百万円 | ▲590 |
| 負債合計 | 1,454百万円 | 2,127百万円 | ▲673 |
| 純資産 | 6,824百万円 | 5,816百万円 | +1,008 |
| 自己資本比率 | 82.4% | 73.2% | +9.2pt |
| ネットキャッシュ | 5,469百万円 | 5,373百万円 | +96 |
出典:2026年9月期第3四半期決算短信・同決算説明資料。ネットキャッシュ=現金及び預金+有価証券−有利子負債(会社定義)。現預金の減少1,417百万円は主に有価証券(合同運用指定金銭信託)への振替1,500百万円と法人税等の納付によるもの。なお短信は、総資産増加の主因として「敷金及び保証金が222百万円増加」も挙げており、投資その他の資産は715百万円→937百万円へ増加している(当社注:オフィス増床に伴うものと推察され、固定費想定の43億円→53億円への引き上げと整合的)。
事実:営業キャッシュ・フローは2025年9月期で+2,867百万円(営業利益2,154百万円に対し1.33倍)。開発費は資産計上せず全額を当期費用(売上原価)として処理しており、会計上は保守的です。四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していません。
4. 「メメントモリWebストア」|業界8.8%に対して自社は約52%
事実:2026年6月15日、同社は「メメントモリWebストア」を公開し、アプリ外決済サービスを本格開始しました。決算説明資料によれば、2026年8月1日〜10日の課金額に占める自社提供経路での決済比率は約52%(6月15日〜7月15日に実施した期間限定キャンペーンの影響が落ち着いた10日間で集計)。
事実:この背景にはスマートフォンソフトウェア競争促進法(スマホ新法)の2025年12月18日全面施行があります。同法はApple・Googleに対し、代替アプリストアの許容や外部決済への誘導を認めることなどを求めるものです。
事実:ところが、施行から半年余りが経った2026年8月26日、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)を含む8団体が調査結果を公表し、アプリ事業者30社を対象とした調査でアプリ内の代替決済の利用率は8.8%、代替アプリストアの利用率は5.9%にとどまり、「法の目的が達成されていない」として適正な執行を訴えました(日本経済新聞・朝日新聞・ケータイWatch、いずれも2026年8月26日)。
PF等手数料率の実際の低下(当社試算)
| 四半期 | 売上高 | PF等手数料 | 対売上比(当社試算) |
|---|---|---|---|
| ’26/9期 1Q | 3,301百万円 | 897百万円 | 27.2% |
| ’26/9期 2Q | 2,871百万円 | 719百万円 | 25.0% |
| ’26/9期 3Q | 2,917百万円 | 696百万円 | 23.9% |
出典:2026年9月期第3四半期決算説明資料(p.8)の四半期連結営業費用推移。比率は当社試算。Webストア公開は3Q末の6月15日のため、3Qへの反映は約2週間分にとどまる。会社は「決済コストの低減効果は4Q以降に本格化する見込み」と記載。
会社が示す損益構造の前提|2Q資料と3Q資料で何が変わったか
| 前提 | 2Q決算説明資料 (2026年5月15日/’26/9期以降) |
3Q決算説明資料 (2026年8月14日/’27/9期以降) |
変化 |
|---|---|---|---|
| PF等手数料率 | 約25% | 約15% | ▲10pt |
| 広告宣伝費率 | 約30%(新作前は約20%) | 約30%(新作等リリース前は約20%) | 変更なし |
| 変動費率 | 約55% | 約45%(新作前は約35%) | ▲10pt |
| 限界利益率 | 約45% | 約55%(新作前は約65%) | +10pt |
| 固定費(年間) | 43億円程度 | 53億円程度 | +10億円(+23%) |
| 損益分岐点売上高 | 78億円程度/年(会社記載・広告宣伝費率20%前提) | 82億円程度/年(会社記載・限界利益率65%前提) | 約+4億円 |
| 営業利益率イメージ(売上240億円/年) | 営業利益65億円(利益率27%) | 営業利益79億円(利益率約33%) | +14億円 |
| 営業利益率イメージ(売上600億円/年) | 営業利益227億円(利益率38%) | 営業利益277億円(利益率約46%) | +50億円 |
出典:各決算説明資料(2Q資料p.10〜11、3Q資料p.10〜11)。会社は3Q資料で「前回公表資料から、『メメントモリWebストア』の導入によるPF等手数料率の低下見込み及び開発・運営体制の強化に伴う固定費の増加を反映し、前提を更新しております」と明記。これらは前提を置いた計算例であり、業績予想ではありません。
推察:この更新は「良いニュースと悪いニュースの同時開示」です。手数料率▲10ptは限界利益率を10pt押し上げる強い改善ですが、同時に固定費が1四半期で10億円(+23%)引き上げられ、損益分岐点売上高はむしろ上がりました(78億円→82億円、いずれも会社開示値)。直近TTM売上120億円に対して余裕はありますが、売上が82億円まで落ちれば営業赤字になる構造である点は、無配・通期予想非開示の銘柄として押さえておくべき数字です。
🔴 さらに重要な点:この82億円は「新作等がリリースされるまでの期間」の前提(広告宣伝費率20%・限界利益率65%)で算出された数字です。会社想定どおり新作リリース後に広告宣伝費率が30%へ戻れば限界利益率は55%となり、損益分岐点売上高は約96億円へ上昇します(当社試算:53億円÷0.55)。つまり新作を出す局面では、必要な売上のハードル自体が上がります。会社自身も「売上高が損益分岐点を下回る期間には、営業損失を計上する可能性があります」と明記しています。
事実:3Q会計期間の固定費実額(開発・運営費用1,012百万円+その他207百万円=1,219百万円)を4倍すると年換算48.8億円で、会社想定の53億円に接近しています(当社試算)。
事実:会社は3Q資料で、2027年9月期以降の営業利益率イメージとして「売上高240億円/年 → 営業利益79億円(利益率約33%)」「売上高600億円/年 → 営業利益277億円(利益率約46%)」を提示しています。これは前提を置いた計算例であり、業績予想ではありません。
5. 新作パイプライン|第2弾RPGは開発開始から9年目、「本開発中」の表記は2年9ヶ月以上
事実:3Q決算説明資料が開示する開発ラインナップは以下のとおりです。具体的な進捗・リリース時期はいずれも非公開とされています。
| 事業区分 | タイトル/サービス | ステータス(’26/9期3Q資料) |
|---|---|---|
| ゲーム (自社IP×自社開発・運営×グローバル同時配信) |
第2弾 新作大型RPG(2017年開発開始) | 本開発中 |
| 第3弾 新作大型RPG(2023年開発開始) | 企画中 | |
| ゲーム(他社IP×共同開発・運営) | 他社IPのゲーム(2025年6月13日適時開示) | (非公開) |
| その他サービス | 恋庭 改良版/海外版 | 本開発中 |
| 新規サービス(未公表) | 本開発中 | |
| 新規サービス(未公表) | 本開発中 | |
| 新規サービス(ゲーム×プラットフォーム) | 企画中 |
出典:2026年9月期第3四半期決算説明資料(p.17)。このほか『メメントモリ』中国本土版の配信に関して中国企業と契約を締結し、中国本土での認可取得を進めている(申請済み、認可取得待ち)と記載。
事実:第2弾 新作大型RPGは、2023年9月期通期決算説明資料(2023年11月)の時点で既に「本開発中(開発人員を増強して開発)」と記載されており、2026年5月の2Q資料、2026年8月の3Q資料でも同じ「本開発中」です。開発開始(2017年)から9年目、「本開発中」の表記が続いて少なくとも2年9ヶ月ということになります。第3弾も2024年2月時点で「企画中」とされ、2026年8月時点でも「企画中」のままです。
事実:会社はこの長期化を「品質最優先」の方針として説明し、有報の「事業等のリスク」にも「開発フェーズの長期化について」という項目を立てて「開発期間の期限をあえて設けない」ことと、その結果として開発期間が長期化した場合の業績影響を明記しています。つまり会社は約束を破っているのではなく、そもそも期限の約束をしていません。
会社が掲げる新作の目標水準
| 区分 | 目標/実績 |
|---|---|
| 『爆発型』新作大型RPGの目標 | リリースから30日間で全世界100億〜200億円の課金高(事前登録者数500万人・事前広告宣伝費は必要額を前提)、その後全世界月額課金高40億円以上を1年以上維持。リリース1年後までの累計広告宣伝費は売上高の30%程度 |
| 『メメントモリ』の実績(参考) | リリースから30日間で全世界55億円の課金高(事前登録者数123万人、事前広告宣伝費2億円)、全世界月額課金高10億円以上を1年以上維持。リリース1年後までの累計広告宣伝費55億円(売上高の28.1%) |
| 『中長期成長型』 | 年間売上高100億円以上を目指せるサービスに絞って開発 |
出典:2026年9月期第3四半期決算説明資料(p.19〜20)。これらは会社が「目指す水準」として示すイメージであり、業績予想でもコミットメントでもありません。新作の目標は『メメントモリ』実績の約2〜4倍の課金規模、事前登録者数は約4倍を前提としています。
2026年8月25日の適時開示|新規事業が「株式会社PopOut」として分社
事実:2026年8月25日、同社は連結子会社に関する3件を同時に開示しました。
- 連結子会社株式会社バンク・オブ・インキュベーションを「株式会社Nido One」に商号変更(2026年9月1日予定)。理由は「新規事業を展開していくにあたり、『バンク・オブ・イノベーション』のゲームブランドとは異なるブランドイメージの形成を目指すため」
- 同社代表取締役社長が樋口智裕氏 → 古川貴博氏に交代(2026年8月25日)。理由は「当社代表取締役社長 樋口智裕がゲーム事業に専念する体制を整えるとともに、ゲーム事業と新規事業を明確に切り分けることで、両事業がそれぞれの領域で最大の成長を追求できる体制を構築するため」
- 同社で開発中の新規事業を簡易新設分割により株式会社PopOut(代表取締役社長 友永吉昭)へ承継。効力発生日2026年10月1日予定。理由は「本件事業の開発進展を踏まえ、配信開始に向けて独立した法人として分離すべく」
事実:承継する資産は20百万円・負債0円で、会社は「当社の連結業績に与える影響は軽微」としています。分割会社(バンク・オブ・インキュベーション)の2025年9月期は売上高「-」・営業利益▲152百万円・純資産▲246百万円で、本件事業の直前事業年度における収益寄与はありません。
推察:金額としては軽微な組織再編ですが、「配信開始に向けて」という文言と、社長がゲーム事業に専念する体制への移行は、非公開だった新規サービスの1本がリリース段階に近づいていることを示唆する開示と読めます。ただし会社はリリース時期を明示しておらず、これは推察であって確定情報ではありません。
6. 過去3年の大相場チェック|3,250円→14,450円の4.45倍、そこから▲61%
事実:過去3年(2023年9月〜2026年8月)の月足では、安値3,250円(2023年12月)→ 高値14,450円(2025年8月)=4.45倍。判定は「大相場あり」です。さらにさかのぼると、2022年10月の『メメントモリ』配信開始月に月足+376.56%(始値3,200円→終値15,250円)を記録し、翌11月に上場来高値16,300円を付けています。
| 局面 | 時期 | 株価 | 変化 | 特定できた要因(事実) |
|---|---|---|---|---|
| 3年安値 | 2023年12月 | 3,250円 | — | — |
| 上昇の起点 | 2024年4月 | 3,660円 | — | — |
| 上昇① | 2024年12月 | 月足 +30.02% | — | 特定できず |
| 上昇② | 2025年2月 | 月足 +27.60% | — | 2月14日 ’25/9期1Q決算(営業利益+43.3%) |
| 上昇③ | 2025年6月 | 月足 +29.00% | — | 6月13日「他社IPをベースとした新作ゲームの開発・運営にかかる契約締結」開示、6月24日ストップ高 |
| 3年高値 | 2025年8月 | 14,450円 | 安値比 4.45倍 | 8月12日 ’25/9期3Q決算(3Q累計経常+23%、4-6月期経常6.2倍、広告宣伝費抑制)→ 翌13日に年初来高値 |
| 調整 | 2025年9月 | 月足 ▲25.28% | — | 8月急騰の反落(9月19日に非開示だった通期予想を開示、9月22日反発) |
| 調整の底 | 2026年6月23日 | 4,225円 | 高値比 ▲70.8% | — |
| 現在値 | 2026年8月26日 | 5,640円 | 高値比 ▲61.0%/安値比 +33.5% | 8月月間 +14.29% |
出典:株探(月足四本値、2026年8月26日時点)、株探ニュースアーカイブ、各適時開示。52週高値12,500円(2025年8月27日)、52週安値4,225円(2026年6月23日)、年初来高値6,780円(2026年1月16日)。
推察:2024年4月〜2025年8月の約3.95倍(3,660円→14,450円)は、①決算での利益急回復(広告宣伝費の抑制)と ②他社IP契約という新規材料の合わせ技であり、テーマ買いや需給要因だけの急騰ではありません。その意味で「業績が後追いして正当化された」部分はあります。ただし2023年9月期の売上213億円という実績水準に戻ったわけではなく、直近TTMは120億円です。
7. 経営陣・株主構成・需給|潜在希薄化率0%、創業社長43.85%、信用倍率6.86倍
7-1. 経営のコミットメント
事実:樋口智裕氏は創業者社長(2006年1月の設立以来、在任21年目)で、43歳。持株は1,743,100株=43.85%(2025年9月期有報)。2020年9月期以降、持株数は1,743,100株から一度も変動していません(2019年9月期の1,715,100株からは増加)。上場後の売出し・市場売却は確認できません。取締役の田中大介氏は280,000株(7.04%)で、2021年の300,000株から緩やかに減少しています。役員合計の所有株式数は2,023,100株(50.5%)で、他の役員の所有株式数は有報上「-」(未開示または非保有)と記載されています。
推察:持株比率43.85%は「skin in the game」の基準(10%以上=強コミット)を大きく超え、有報で遡及できる2019年9月期以降に一度も減らしていない点は長期目線と整合的です(それ以前の保有推移は本稿では確認していません)。一方で有報自身が「代表者への依存について」をリスクとして立てており、後継体制の公開情報はありません。創業者社長・高持株であること自体は買い材料ではなく、キーパーソンリスクと表裏です。
7-2. 株主構成(2025年9月期有価証券報告書)
| 順位 | 株主 | 株式数 | 比率 | 推移メモ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 樋口 智裕(代表取締役社長) | 1,743,100株 | 43.85% | 2020年9月期以降 変動なし |
| 2 | 田中 大介(取締役) | 280,000株 | 7.04% | 2021年300,000株から漸減 |
| 3 | 楽天証券 | 152,700株 | 3.84% | 2024年116,600株から増加 |
| 4 | SBI証券 | 147,964株 | 3.72% | — |
| 5 | 株式会社Cygames | 79,100株 | 1.99% | 2021年150,000株(3.90%)から減少後、横ばい |
出典:EDINET DB(2025年9月期有価証券報告書 大株主の状況)。なお2018年9月期に8.98%を保有していた株式会社サイバーエージェントは、その後の上位株主リストから外れている。
7-3. 需給チェック
| 項目 | 数値 | 評価 |
|---|---|---|
| 潜在希薄化率 | 0%(新株予約権・SO・転換社債の発行なし) | 軽微(5%未満) |
| 発行済株式数/自己株式 | 4,003,000株/28,757株 | 変動なし |
| ロックアップ | 該当なし(2018年7月上場) | — |
| VCオーバーハング | サイバーエージェント・JPE第1号は既に上位から退出、Cygamesは1.99%で横ばい | 売り圧力は一巡 |
| 上場後の資本提携・第三者割当 | 確認できず | — |
| 固定株(推計) | 樋口43.55%+田中6.99%+Cygames1.98%+自己株0.72%=約53.2%(発行済ベース・当社試算) | 浮動株は約47%だが個人主体 |
| 信用倍率 | 6.86倍(買い長) | 上値で戻り売り圧力 |
| 売買代金 | 2026年8月26日 464百万円/直近1ヶ月平均 約2.5億円・直近3ヶ月平均 約2.0億円(当社試算、1M÷3M≈1.25倍) | 小型株として流動性は確保 |
| 3ヶ月騰落率 | +10.6%(2026年5月29日 5,100円 → 8月26日 5,640円) | — |
出典:2026年9月期第3四半期決算短信(「潜在株式が存在しないため」希薄化後EPSの記載なし)、有価証券報告書、株探。売買代金の月次平均は月間出来高÷営業日数×月中平均株価による当社試算。
需給の総合判定:留意。潜在希薄化率0%・ロックアップなし・VC退出済みという点では供給圧力の「実弾」はほとんどありません(軽微)。一方で信用倍率6.86倍の買い長と、上値10,000〜14,450円帯の厚いしこりが残るため、総合では「留意」としました。
7-4. 人的資本と生産性
| 指標 | ’24/9期 | ’25/9期 | 直近(’26/9期3Q) |
|---|---|---|---|
| 連結従業員数 | 199名 | 247名(+24.1%) | 273名(開発249/管理24) |
| 平均年間給与(単体) | 7,421千円 | 6,794千円(▲8.4%) | — |
| 平均年齢/平均勤続年数(単体) | 32.8歳/5.8年 | 33.3歳/5.8年 | — |
| 一人当たり売上高 | 68.4百万円 | 50.1百万円 | 44.1百万円(TTM) |
| 一人当たり営業利益 | 6.68百万円 | 8.72百万円 | 7.55百万円(TTM) |
| 労働分配率(推計) | — | — | 約35.4%(当社推計) |
| 研究開発費 | 874百万円 | 1,244百万円 | Q平均315百万円(’24/9〜’26/9 3Q、会社記載) |
| 離職率/有給取得率 | 2.2%/84.3%(いずれも2023年10月〜2025年9月の平均、決算説明資料) | ||
出典:有価証券報告書(従業員の状況)、決算説明資料。一人当たり指標・労働分配率は当社試算(労働分配率=単体平均年収6,794千円×連結273名の推計人件費÷TTM売上総利益5,245百万円)。人件費の実額は開示されていないため、この労働分配率は推計値です。
判定:○(創業者依存だが組織は補強中)。2年で連結従業員が199名(’24/9期末)→273名(’26/9期3Q末、+37%)と大幅に増えており、増員の中身は開発部門です(決算説明資料p.33の四半期別内訳では’24/9期末178名→’26/9期3Q末249名)。一人当たり営業利益は’25/9期の8.72百万円から直近7.55百万円へ低下していますが、これは新作開発への先行投資(『新作開発投資』が3Qで518百万円)が主因であり、固定費の無自覚な肥大とは区別すべきです。ただし「投資が回収されるかどうか」は新作リリース次第であり、現時点で検証できません。CFOは2014年から継続、監査等委員も安定しており、直近3年でCFO・監査役の退任は確認できません。
8. テーマ性の検証
8-1. 検討したテーマの3段階判定
| テーマ | 判定 | 根拠(出典) |
|---|---|---|
| スマホ新法によるアプリ外決済/脱プラットフォーム手数料 | ◎ 実事業 | 2026年6月15日「メメントモリWebストア」公開。2026年8月1〜10日の課金額に占める自社提供経路での決済比率 約52%。PF等手数料率は1Q 27.2%→3Q 23.9%(当社試算)へ低下。2027年9月期以降の想定手数料率を25%→15%へ引き下げ(3Q決算説明資料) |
| 日本IPのグローバル展開(海外配信) | ○ ビジョン+一部実事業 | 『メメントモリ』はグローバル同時配信で「2024年時点、海外売上高比率10%超」(3Q決算説明資料)。中国本土版は中国企業と契約締結・認可(版号)申請済み・取得待ちで売上寄与はゼロ。海外売上高比率の直近値は開示されていない |
| 生成AI | × 確認できず | 3Q決算説明資料は「AIは作業の効率化に寄与する一方、活用の仕方によっては成果物の表現が均質化し、独自性や作り込みが損なわれるリスクがある」とし、「開発スピードのみを追うのではなく、『品質最優先』および『こだわりの追求』を軸に」と記載。生成AI関連銘柄として扱う根拠は薄い |
| フィジカルAI/半導体/量子・PQC/防衛・宇宙/次世代エネルギー(全固体電池・ペロブスカイト・水素) | × 確認できず | 有報「事業の内容」「対処すべき課題」および会社IRのいずれにも記載なし。期待材料に織り込むのは根拠がありません |
8-2. テーマ適合度の採点(equity-rating-framework v2.2 §7)
テーマの定義(1文):2025年12月18日に全面施行されたスマートフォンソフトウェア競争促進法(スマホ新法)により、アプリ事業者がApple/Googleの課金システムを経由しない外部決済・自社ストアへ課金を移し、15〜30%のプラットフォーム手数料を圧縮できるようになる構造変化。
認定根拠(§7.1 の6項目のうち5項目を充足):
| # | 判断軸 | 充足 | 確認内容 |
|---|---|---|---|
| 1 | 政策・規制の裏付け | ○ | スマホソフトウェア競争促進法(2025年12月18日 全面施行) |
| 2 | 技術的な非連続性 | × | 技術ではなく規制起点の変化。決済経路の置換に技術的障壁はない |
| 3 | 第三者によるTAM推計 | ○ | 2025年の世界モバイルゲーム市場12兆6,001億円・国内1兆6,634億円(角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2026」、3Q決算短信の引用による)。手数料15〜30%が是正対象 |
| 4 | 実装マイルストーンの公開 | ○ | 施行日の明示、Apple・Googleの手数料体系改定(2025年12月時点) |
| 5 | 複数の大手・官公庁が資源を投じている | ○ | 公正取引委員会による執行、MCF等8団体による調査・要望(2026年8月26日)、決済代行各社の参入 |
| 6 | 市場の関心の上昇(単独では認定不可) | ○ | 2026年8月26日に日経・朝日ほかが一斉報道 |
| 軸 | 点数 | 根拠(数値付き) |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 8/10 | 売上の94.5%を占める『メメントモリ』の課金のうち約52%(2026年8月1〜10日)が自社経路。会社は’27/9期以降のPF等手数料率想定を25%→15%へ引き下げ=限界利益率+10pt。ただし利益寄与の実額はまだ開示されておらず、会社も「4Q以降に本格化する見込み」としている |
| ②純度(pure play度) | 9/10 | 時価総額226億円の小型株・単一タイトル依存で、手数料率の変化が限界利益率に直接効く構造。🔴 両刃:純度が高いということは、Apple/Googleの規約変更や還元施策で自社経路の比率が押し戻された場合、下方向にも同じだけ大きく反応するという意味であり、有利さではありません |
| ③サイクル位置 | 7/10(拡大) | 施行2025年12月、業界全体の代替決済利用率は8.8%(2026年8月26日 MCF調査)で普及は初期。一方、当該銘柄はこの材料で2026年6月24日に反発、8月も+14.29%と既に一定の反応。初動は過ぎ拡大局面にあると観察(予測ではない) |
| ④希少性 | 6/10 | アプリ外決済の実装自体に技術的参入障壁はなく、大手も追随可能。ただし課金額の約半分を自社経路へ移した実績を数値で開示している上場ゲーム会社は限定的(MCF調査ではアプリ内代替決済8.8%・代替ストア5.9%) |
| 合計 | 30/40 | やや高い |
9. レーティング(equity-rating-framework v2.2 準拠)
■ 総合評価(2026年8月26日終値 5,640円ベース)
品質 ★★★☆☆(42/70) / 価格 C(適正・中立ケース中央値比 +9.9%)
テーマ適合 30/40(やや高い) / 国策アライン 4/10(中程度) / 資本イベント素地 2/10(低い)
上抜け素地 2/6(⑥カタリストへの調整なし)
価格判定の閾値(equity-rating-framework v2.2 §4):A=アップサイド+40%以上/B=+15〜40%/C=▲15〜+15%/D=▲15〜▲30%/E=▲30%超。本稿の中立ケース中央値6,200円は現値5,640円に対し+9.9%であり、C(適正)に該当します。品質スコアには加算していません。
9-1. 品質スコア(7軸・各10点)
| 軸 | 点 | 根拠(数値付き1行) |
|---|---|---|
| ①成長性 | 3 | ’23/9期213.3億円→’25/9期123.7億円でCAGR▲23.9%、TTM120.3億円はピーク比▲43.6%。ただし’24/9期3Q以降の四半期売上は28〜30億円で下げ止まり、3年区分(’21-’23 vs ’24-’26 3Q)では増収増益(当社集計:258.9億→350.7億) |
| ②収益性 | 7 | 営業利益率TTM 17.1%・ROE 23.9%(当社試算/’25/9期の会社開示ROEは26.3%)はゲーム系Peerの中で上位。一人当たり営業利益は8.72百万円→7.55百万円へ低下したが、要因は新作開発投資(3Qで518百万円)の先行投資であり固定費の無自覚な肥大とは区別。労働分配率は約35.4%(推計) |
| ③収益の質・連結範囲 | 8 | 持分法・JV・非支配株主持分はいずれもゼロ、特別損益なし、営業CF÷営業利益は’25/9期で1.33倍。開発費は資産計上せず全額費用処理。減点要因は3Q会計期間の税金費用算定に係る特有の会計処理(Koiniwa吸収合併に伴う債権放棄の費用計上等)で四半期純利益が▲64.6%と大きくブレた点 |
| ④競争優位性 | 5 | 水彩調2Dの内製一貫開発と自社IPは差別化要素だが、単一タイトル依存94.5%・Apple+Google依存85.1%・セガとの特許権侵害訴訟(請求10億円)が係争中。Webストアで決済経路の自社化は進展 |
| ⑤需給ポジション(直近3ヶ月) | 6 | 3ヶ月騰落率+10.6%(5,100円→5,640円)、増資・売出し・大株主売却なし、潜在株式ゼロ。一方で信用倍率6.86倍の買い長。東証グロース市場250指数との相対騰落は本稿では未算出のため、業種指数比では中立として評価 |
| ⑥カタリスト(今後3ヶ月) | 7 | 日付が確定した材料が3件(9/1子会社商号変更、10/1 PopOut設立、11月中旬の通期決算)。うち通期決算はWebストアのフル寄与初四半期を含み業績直結かつ未織り込み。上抜け素地は2/6のため調整なし |
| ⑦リスク耐性 | 6 | 自己資本比率82.4%・有利子負債ゼロ・ネットキャッシュ54.7億円(時価総額の24.2%)は極めて堅固。一方で単一タイトル94.5%依存・単一顧客(Apple)50.0%依存・係争中の訴訟という減点要因が重なる |
| 合計 | 42/70 | ★★★☆☆(36-45=★3) |
9-2. 上抜け素地チェック(6項目)
| # | 項目 | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 売買代金が増加(1M÷3M≧1.3倍) | × | 約1.25倍(当社試算) |
| 2 | 上値のしこりが薄い | × | 年初来高値6,780円まで+20.2%。さらに10,000〜14,450円帯に2025年7〜9月の厚い出来高 |
| 3 | 信用買い残の重石が軽い | × | 信用倍率6.86倍の買い長 |
| 4 | 踏み上げ余地 | × | 貸借銘柄だが売り残増加・空売り比率の一次データは本稿では未取得 |
| 5 | 浮動株が少ない/時価総額が小さい | ○ | 固定株約53.2%(推計)、時価総額226億円 |
| 6 | 未織り込みの材料がある | ○ | 通期決算(4Q=Webストアのフル寄与)、中国版号、訴訟の進展 |
| 合計 | 2/6 → ⑥スコアへの調整なし | ||
9-3. 国策アライン度 4/10(中程度)
充足項目:④重要政策文書(デジタル市場競争政策)、⑥法制度で需要が担保(スマホソフトウェア競争促進法)、⑨複数年度にわたり継続(法律であるため)、⑩会社が業績前提に組み込んでいる(2027年9月期以降のPF等手数料率想定を15%に引き下げ)。
🔴 未充足で重要な項目:⑦当該企業の到達経路(落札・交付決定・採択事業者)と⑧過去の政策予算での受注実績はいずれも該当なしです。本件は「予算が配られるタイプの国策」ではなく「規制緩和で手数料負担が軽くなるタイプ」であり、予算の枠を企業の売上と混同する余地はありません。ただし規制の効果は事業者ごとの実装力に依存するため、法施行=業績改善ではありません。進行段階は「④商業化」に相当(Webストアは既に稼働し課金の約52%が通過)ですが、利益寄与の定量的な検証は2026年11月の通期決算待ちです。
9-4. 資本イベント素地(TOB/MBO) 2/10(低い)
充足は④創業家・経営陣の持株比率が高い(樋口氏43.85%+田中氏7.04%=50.9%)と⑦浮動株比率が低い/流動性が低いの2項目のみ。PBRは3.28倍で1倍割れではなく、ネットキャッシュも時価総額の24.2%にとどまり、上場親会社・支配株主・アクティビストの大量保有はいずれも確認できません。創業社長が約44%を保有し無配・成長投資優先を明言している構造は、外部からの経営権移動が起きにくいことを意味します(これは予想ではなく、公開情報から確認できる構造の記述です)。
10. 適正株価の検証(評価手法の例示)
単一セグメントのため事業別SOTPは成立しません。本稿では「既存タイトルのラン・オフ価値+ネットキャッシュ」を下限、「既存の利益水準の継続」を中立、「新作が『メメントモリ』並みにヒットした場合」を上限とする3シナリオで組み立てます。
10-1. 前提となる現在値(2026年8月26日終値 5,640円)
| 指標 | 数値 | 算出 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 226億円(株探)/自己株控除ベース 224.1億円 | 5,640円×4,003,000株/×3,974,243株 |
| ネットキャッシュ | 54.69億円(時価総額の24.2%) | 会社開示(3Q末) |
| 事業価値(EV) | 約169億円 | 224.1億−54.69億(当社試算) |
| EPS(TTM) | 380.0円 | TTM純利益1,510百万円÷3,974,243株(当社試算) |
| 実績PER(TTM) | 14.8倍 | 5,640円÷380.0円(当社試算) |
| BPS | 1,717円 | 純資産6,824百万円÷3,974,243株 |
| PBR | 3.28倍 | 株探 |
| EV/営業利益(TTM) | 8.2倍 | 169億円÷20.62億円(当社試算) |
10-2. 3シナリオの1株価値レンジ
| シナリオ | 主要前提 | 1株価値レンジ | 現値比 | 成立条件/崩れる条件 |
|---|---|---|---|---|
| 弱気 (ラン・オフ) |
新作は一切リリースされず、既存タイトルが減衰。限界利益率65%(新作リリース前の会社想定)、開発体制を縮小して固定費を段階的に削減。実効税率35%、割引率10%、5年で運営終了。 ケースA(年▲20%減衰・固定費35→22億円):事業価値の現在価値38.0億円+ネットキャッシュ54.7億円=92.7億円 ケースB(年▲10%減衰・固定費45→30億円):同52.0億円+54.7億円=106.7億円 |
2,330〜2,690円 (PBR 1.36〜1.57倍) |
▲58.7%〜▲52.3% | 成立:新作の開発中止・大幅延期、または『メメントモリ』の急減衰。崩れる:新作が1本でもリリースされ収益化する/会社が固定費削減に踏み切らず赤字が拡大する(その場合は下限がさらに下がる) |
| 中立 (現状継続) |
既存タイトルが緩やかに減衰する一方Webストアで手数料率が改善し、営業利益がTTM水準(20.6億円)近傍で数年推移。 手法①EV/営業利益 8〜11倍:5,530〜7,080円 手法②PER 14〜17倍(TTM純利益15.1億円):5,320〜6,460円 両手法の外縁を取る |
5,300〜7,100円 (中央値 6,200円) |
▲6.0%〜+25.9% (中央値比 +9.9%) |
成立:四半期売上28〜30億円のレンジ維持+固定費53億円想定内。崩れる:四半期売上が25億円を割る/固定費が想定を超えて増える/Apple・Googleの規約変更でWebストア誘導が制限される |
| 強気 (新作ヒット) |
第2弾 新作大型RPGがリリースされ『メメントモリ』並み(月額課金10億円以上を1年以上維持)に到達し、全社売上200〜240億円。会社の損益構造イメージ(限界利益率55%・固定費53億円)に準拠すると営業利益57〜79億円、実効税率35%で税後利益37.1〜51.4億円、PER 12〜15倍 | 11,200〜19,400円 | +99%〜+244% | 成立:新作がリリースされ、かつ会社目標の下限に届く。崩れる:リリースが更に後ろ倒しになる/リリースしてもヒットしない(会社目標は事前登録500万人・30日で100〜200億円課金と、メメントモリ実績の約4倍・約2〜4倍の水準) |
いずれも当社試算であり、会社が公表した数値ではありません。リリース時期は非公開のため、強気シナリオの時間軸は特定できません。本表は評価手法の例示であり、目標株価ではありません。
10-3. 現在株価が織り込んでいるもの(リバース試算)
事業価値169.5億円 − ラン・オフ事業価値38.0億円(当社試算)= 約131.5億円
1株換算で約3,310円。現在株価5,640円のうち約59%が、まだ1円の売上も立っていない新作パイプラインへの評価という計算になります(当社試算)。
この1つの数字が、強気と弱気の両方に効きます。強気側から見れば、会社が示す新作の目標水準(売上240億円→営業利益79億円)が実現するなら131.5億円は明らかに過小です。弱気側から見れば、その131.5億円は「2017年に開発を始め、2023年11月時点で既に『本開発中』と記載され、2026年8月時点でもリリース時期が非公開のタイトル」に対する評価です。どちらの見方が正しいかを本稿は判定しません。判定材料が開示されていないからです。
10-4. Peer比較(2026年8月26日終値・株探)
| 銘柄 | 市場 | 時価総額 | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|
| バンク・オブ・イノベーション(4393) | グロース | 226億円 | 14.8倍(実績TTM・当社試算/会社予想は非開示) | 3.28倍 |
| ガンホー(3765) | プライム | 1,304億円 | -(予想非開示) | 1.12倍 |
| MIXI(2121) | プライム | 2,512億円 | 9.6倍 | 1.27倍 |
| コロプラ(3668) | プライム | 571億円 | - | 0.84倍 |
| ドリコム(3793) | グロース | 150億円 | 24.3倍 | 2.80倍 |
| gumi(3903) | プライム | 152億円 | - | 0.73倍 |
推察:PBR3.28倍はPeer中で最も高く、PER14.8倍(実績)はPeer中位。PBRが高いのはROE 23.9%という収益性の裏返し(PBR=ROE×PER の関係)であり、単純に割高と断じられる数字ではありません。一方でガンホー・コロプラ・gumiのPBR 0.7〜1.1倍は「ヒットタイトルの減衰局面にあるゲーム会社が市場からどう評価されるか」の実例でもあります。
10-5. 第三者試算との比較
| 出所 | 数値 | 現値(5,640円)比 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| みんかぶ 目標株価 | 5,351円(総合判定「売り」) | ▲5.1% | 個人投資家予想を含む合成値 |
| みんかぶ AI理論株価(2026年8月25日) | 6,577円(「割安」判定) | +16.6% | 過去比較・相対比較によるモデル値 |
| IRBANK(2026年8月25日) | PER 16.18倍/PBR 3.2倍/ROE 23.23% | — | 直近通期実績(’25/9期)ベース |
| 証券会社アナリスト | 対象外(カバレッジなし) | — | 小型グロースのためコンセンサスが存在しない |
| 本稿 中立レンジ | 5,300〜7,100円(中央値6,200円) | ▲6.0%〜+25.9% | 当社試算・評価手法の例示 |
留意:アナリストカバレッジがなく通期業績予想も非開示のため、この銘柄には「市場のコンセンサス予想」が存在しません。モデル系の理論株価(みんかぶ6,577円)は直近通期の実績EPS・BPSに倍率を機械適用する性質があり、減収トレンドや新作の不確実性を織り込みません。本稿の中立レンジ(5,300〜7,100円)は、みんかぶの目標株価5,351円とAI理論株価6,577円の両方を内包しています。
10-6. 環境オーバーレイ
推察:グロース株のバリュエーションは金利に最も敏感ですが、この銘柄はネットキャッシュが時価総額の24.2%・有利子負債ゼロであり、金利上昇に対する財務的な感応度は低い部類です。むしろ効くのは①小型グロース全体への資金流入 ②単一タイトル依存銘柄に市場がどれだけプレミアムを払うかの2点です。2025年8月の高値14,450円は、後に確定した’25/9期通期実績EPS 339.99円に対してPER約42.5倍に相当し、現在の14.8倍(TTM実績)とは市場が払っている倍率そのものが違います。同じ会社でも「新作期待に対して市場が払う値段」は大きく振れるという事実は、上下どちらの方向にも当てはまります。
11. 成長可能性資料・計画との整合性|計画信頼度=低(ただし「未達が多い」のとは意味が違う)
事実:同社は東証グロースの求める「事業計画及び成長可能性に関する事項」を四半期ごとの決算説明資料に併載しています(直近開示:2026年8月14日)。中期経営計画は別途策定されていません。
事実:計画の中身は「規模拡大型」で、内容は次のとおりです。
- 持続的成長フェーズの目標水準:売上高1,000億円(海外50%超)・営業利益300億円以上。達成年限の記載はありません
- 重要な経営指標:「翌期以降3年間の累計売上高及び累計営業利益」。単年度目標は設定されていません。理由として「それぞれの指標を意識しすぎた場合には結果として業績にマイナスの影響を与えてしまう可能性がある」と記載
- 開発方針:「開発期限を設けず納得のいくまで品質を高める」(品質最優先)
- 非連続的成長:「概ね数年ごとの新作RPGや新規サービスのリリースによって年間売上高をそれまでの数倍規模に一気に引き上げる」。同時に「開発費用を全て即時費用処理していること、また開発・運営のライン数を絞ることによって、売上高が損益分岐点を下回る期間には、営業損失を計上する可能性があります」と明記
- 資金調達:「必要な成長投資資金が保有している現預金を超える場合には新規借入を行い、それでもなお資金が不足すると判断した場合には、新株発行による資金調達を行う可能性があります」と明記
11-1. 年次照合|検証可能なコミットが存在しない
| コミット項目 | 分類 | 照合結果 |
|---|---|---|
| 通期業績予想 | — | ’26/9期は非開示。’25/9期は期末11日前の2025年9月19日に初開示。期中の達成率照合が構造的に不可能 |
| 売上高1,000億円・営業利益300億円 | 期限なし | 達成年限が示されていないため、達成/未達の判定自体ができない |
| 3年累計の売上高・営業利益 | 実績あり | ’21/9〜’23/9期:売上258.9億円・営業利益30.8億円 → ’24/9期〜’26/9期3Q:売上350.7億円・営業利益50.4億円(当社集計)。3年区分では増収増益は事実 |
| 第2弾 新作大型RPGのリリース | 期限なし | 2017年開発開始、2023年11月時点で「本開発中」、2026年8月時点も「本開発中」。リリース時期は一貫して非公開 |
| 損益構造の前提(固定費) | 前提の更新 | 2026年5月時点の43億円/年 → 2026年8月時点の53億円/年(+23%)。会社は理由を明記して更新しており、隠れた「ゴールポストの移動」ではない |
計画信頼度:低。ただしこの「低」は「約束を守っていない」という意味ではなく、「達成率を照合できる形の約束が存在しない」という意味です。通期予想は非開示、KPIは3年累計、新作のリリース時期は非公開——この3点が揃うと、外部の投資家が計画の実行力を定量的に検証する手段がありません。
公平を期すために書いておくべき反対材料:同社は2021年9月期・2022年9月期に営業赤字(▲8.1億円・▲10.1億円)を出しながらエクイティ・ファイナンスに頼らずに『メメントモリ』を完成させ、翌期に営業利益49億円を計上しています。発行済株式数は2021年9月期の3,951,000株から現在の4,003,000株まで、5年間で1.3%しか増えていません。「期限を約束しないが、株主を希薄化させずにやり切った実績が1回ある」——これが計画信頼度を測るうえで最も重い事実です。
11-2. TAMの外部裏取り
事実:会社が引用する市場規模は「2025年における世界のモバイルゲーム市場規模は12兆6,001億円、そのうち日本国内では1兆6,634億円」(角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2026」)。これは第三者調査機関の数値ですが、売上高1,000億円という目標は日本国内市場の約6%に相当します(当社試算)。有報自身も「市場の成熟化と海外メーカーの参入により競争が激化し、企業間格差が広がっております」と記載しています。
12. カタリストカレンダー(今後3ヶ月:2026年9月〜11月)
| 日付 | 内容 | 影響度 | 織り込み度 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月1日(予定) | 連結子会社バンク・オブ・インキュベーションが「株式会社Nido One」へ商号変更 | ★★☆☆☆ | 一部織込(8/25開示) |
| 2026年10月1日(予定) | 株式会社PopOut 設立(簡易新設分割の効力発生)。「配信開始に向けて独立した法人として分離」 | ★★★☆☆ | 一部織込 |
| 2026年10月(予定) | 『メメントモリ』配信4周年。過去、周年イベントのある1Qは売上が跳ねる傾向(’26/9期1Q 3,301百万円 vs 2Q 2,871百万円) | ★★★☆☆ | 概ね織込(季節性として既知) |
| 2026年11月中旬(前年実績:11月14日) | 2026年9月期 通期決算発表。4Q(7〜9月)はWebストアがフル寄与する初の四半期。あわせて①’27/9期通期予想の開示有無 ②固定費・PF等手数料率の前提更新 ③配当方針の3点が焦点 | ★★★★★ | 未織込 |
| 時期未定 | 『メメントモリ』中国本土版の認可(版号)取得。現状は「申請済み、認可取得待ち」 | ★★★★☆ | 未織込 |
| 時期未定 | 新作大型RPG・新規サービスのリリース時期に関する開示 | ★★★★★ | 未織込 |
| 時期未定 | セガとの特許権侵害差止等請求訴訟の進展 | ★★★★☆ | 未織込 |
13. 強気材料(この銘柄に注目する理由)
- Webストアが業界の例外的な水準で機能している。2026年8月1〜10日の課金額に占める自社提供経路の比率が約52%。同日発表のMCF調査ではアプリ内代替決済の業界利用率が8.8%(定義は異なる)。PF等手数料率は1Q 27.2%→3Q 23.9%(当社試算)と実際に下がり始めており、会社は’27/9期以降の想定を25%→15%へ引き下げました=限界利益率+10pt。
- フル寄与の初の四半期がまだ決算に出ていない。Webストア公開は6月15日で、3Qへの反映は約2週間分。会社も「決済コストの低減効果は4Q以降に本格化する見込み」と明記しており、2026年11月の通期決算が最初の検証機会です。
- 財務が極めて堅い。自己資本比率82.4%、有利子負債ゼロ、ネットキャッシュ54.7億円(時価総額の24.2%)。営業CF÷営業利益は1.33倍(’25/9期)。新作が遅れても資金繰りで追い込まれる構造ではありません。
- 潜在希薄化率0%。新株予約権・ストックオプション・転換社債の発行がなく、発行済株式数は5年で+1.3%。小型グロースでは珍しい水準です。
- 四半期売上が下げ止まっている。’24/9期3Q以降、周年イベントのある1Qを除けば28〜30億円で横ばい。3Q(2,917百万円)は前四半期比+1.6%・前年同四半期比+2.6%と、減衰ではなく微増でした。
- 創業社長が43.85%を保有し、有報で遡及できる2019年9月期以降は一度も減らしていない。上場後の売出し・市場売却は確認できず、赤字2期を外部調達なしで乗り切って『メメントモリ』を成功させた実績があります。
- 未織り込みの材料が複数残っている。中国本土版の版号取得(申請済み・認可待ち)、10月1日のPopOut設立(「配信開始に向けて」)、新作のリリース時期開示。
14. 弱気材料・リスク(手を出す前に確認すべき点)
- 売上の94.5%が1タイトル。『メメントモリ』は2022年10月配信で、2026年10月に配信4周年を迎えます。有報も「特定のタイトルにおける収益依存について」をリスクとして明記。このタイトルが崩れた場合、代替収益は現時点で存在しません。
- 株価の約59%が「まだ売上ゼロの新作」への評価(当社試算)。事業価値169.5億円のうち約131.5億円(1株約3,310円)がパイプラインへの期待に相当します。その中核である第2弾 新作大型RPGは2017年開発開始で9年目、2023年11月時点で既に「本開発中」と記載され、2026年8月時点でもリリース時期は非公開です。
- 通期業績予想が非開示で、アナリストカバレッジもない。市場コンセンサスが存在せず、投資家は四半期実績と会社の定性説明だけで判断せざるを得ません。前期は期末11日前に初めて通期予想を開示しました。
- 固定費が1四半期で+23%引き上げられた。会社想定の固定費は43億円/年(2026年5月)→53億円/年(2026年8月)。手数料率の改善と相殺され、損益分岐点売上高はむしろ上昇(78億円→82億円、いずれも会社開示値)。会社自身も「売上高が損益分岐点を下回る期間には、営業損失を計上する可能性があります」と明記しています。
- セガとの特許権侵害訴訟が係争中。2024年10月21日に訴状(2024年9月30日付、東京地裁)を受領し、『メメントモリ』のゲームプログラム等の差止請求と損害賠償10億円+遅延損害金を請求されています(各社報道)。2025年9月期有価証券報告書(2025年12月25日提出)の「事業等のリスク」には「係争中の重要な訴訟の詳細については…偶発債務(係争事件)に記載」とあり、提出時点で係争中でした。2026年8月26日時点で、和解・判決に関する適時開示は確認できません。訴訟の内容は各当事者の主張であり、司法判断が確定したものではありません。
- Apple・Googleへの依存が依然85.1%。Webストアで自社経路が増えても、アプリ配信そのものは両社のストアに依存します。規約変更・ランキング仕様変更・還元施策で自社経路への誘導が制限されるリスクは有報にも記載があります。
- 資金調達の可能性が明記されている。会社は成長投資資金が現預金を超える場合「新規借入」、それでも不足する場合「新株発行による資金調達を行う可能性があります」と決算説明資料に記載しています。現在の潜在希薄化率0%は将来を保証しません。
- 上値に厚いしこりがある。2025年7〜9月に月間270万〜410万株の出来高を伴って10,000〜14,450円で推移した価格帯があり、信用倍率は6.86倍の買い長。2025年8月高値から2026年6月安値までの下落率は▲70.8%で、この銘柄のボラティリティの大きさを示しています。
- 『恋庭』の位置づけが後退している。2026年3月24日に「連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)及び債権放棄に関するお知らせ」を開示し、7月1日付で株式会社Koiniwa(同社の2025年9月末の債務超過額1,196百万円)を吸収合併しました。『恋庭』改良版/海外版は「本開発中」ですが、売上構成比は5.5%です。
- 会社は生成AIの活用に対して慎重な立場を明示しています。「AIは作業の効率化に寄与する一方、活用の仕方によっては成果物の表現が均質化し、独自性や作り込みが損なわれるリスクがある」(3Q決算説明資料)。生成AIによる開発効率化を織り込むことはできません。
15. まとめ|「規制の追い風を現金化した会社」と「9年目のパイプライン」の同居
バンク・オブ・イノベーションの現在の姿は、次の3つの数字にほぼ集約できます。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 約52% | 2026年8月1〜10日の課金額に占める自社提供経路での決済比率。同日発表のMCF調査による業界のアプリ内代替決済利用率は8.8%(測定対象・分母が異なるため単純比較は不可)。推察:スマホ新法という規制変化を、業界平均より相当に速いペースで収益構造に取り込みつつある |
| 約131.5億円(1株約3,310円) | 事業価値169.5億円からラン・オフ事業価値38.0億円(ケースA)を差し引いた残り(当社試算)。現在株価の約59%が、まだ売上ゼロの新作パイプラインへの評価 |
| 9年 | 第2弾 新作大型RPGの開発開始(2017年)からの経過年数。2023年11月時点で既に「本開発中」、2026年8月時点でもリリース時期は非公開 |
強気側の論理は明快です。手数料率が25%→15%になれば限界利益率は10pt上がり、売上が横ばいでも利益は増えます。財務は無借金・ネットキャッシュ54.7億円で、潜在希薄化率は0%。四半期売上は下げ止まり、Webストアのフル寄与はまだ決算に出ていません。
弱気側の論理も同じくらい明快です。売上の94.5%が、2026年10月に配信4周年を迎えるタイトル1本。固定費は1四半期で+23%引き上げられ、損益分岐点はむしろ上がった。通期予想は非開示でアナリストカバレッジもなく、市場が払っている値段の約6割は「時期未定のパイプライン」に対するものです。加えて主力タイトルの差止を求める訴訟が係争中です。
この2つは矛盾していません。同じ会社の同じ決算を、どちらの目で見るかの違いです。品質★★★☆☆(42/70)・価格C(適正)という評価は、解釈マトリクス上「品質★3 × 価格C=中立」の位置に当たります。優良企業であることと割安であることは別問題であり、この銘柄は現時点でどちらでもない、というのが本稿の整理です。
次に見るべき日付は明確です。2026年11月中旬の通期決算——Webストアがフル寄与する初の四半期の実額、’27/9期の通期予想を出すかどうか、固定費とPF等手数料率の前提が再び動くかどうか。ここで初めて「約52%」が利益としていくらだったのかが検証できます。それまでは、この銘柄の株価は期待に対して動いている段階であることを踏まえて見る必要があります。
16. 参考文献(出典ランク)
| 出典 | ランク |
|---|---|
| 2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年8月14日16:00開示) | A |
| 2026年9月期 第3四半期決算説明資料 -事業計画及び成長可能性に関する事項-(2026年8月14日16:00開示、全41ページ) | A |
| 2026年9月期 第2四半期決算説明資料(2026年5月15日開示)/同 第2四半期(中間期)決算短信 | A |
| 連結子会社の商号変更、代表取締役の異動及び会社分割(簡易新設分割)による子会社(孫会社)設立に関するお知らせ(2026年8月25日16:00開示) | A |
| 連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)及び債権放棄に関するお知らせ(2026年3月24日)/法定事後開示書類(合併)(2026年7月1日) | A |
| 他社IPをベースとした新作ゲームの開発・運営にかかる契約締結に関するお知らせ(2025年6月13日) | A |
| 2025年9月期 有価証券報告書(EDINET・E34116、2025年12月25日提出)/EDINET DB(財務・大株主・役員の構造化データ) | A |
| 2023年9月期 通期決算説明資料(第2弾 新作大型RPGの「本開発中」記載の確認)/2024年2月公表の決算説明資料(第3弾「企画中」の確認) | A |
| 2025年9月期 通期業績予想の開示に関するお知らせ(2025年9月19日)/2025年9月期 決算短信(2025年11月14日)/2024年9月期 決算短信(2024年11月12日) | A |
| スマートフォンソフトウェア競争促進法(2025年12月18日 全面施行) | A |
| MCF(モバイル・コンテンツ・フォーラム)等8団体によるアプリ事業者30社調査(2026年8月26日公表。日本経済新聞・朝日新聞・ケータイWatch各報道) | B |
| 角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2026」(3Q決算短信の引用による) | B |
| セガによる特許権侵害差止等請求訴訟の提起に関する各社報道(ファミ通・GameBusiness.jp・AUTOMATON・電ファミニコゲーマー、2024年10月21〜22日) | B |
| 株探(株価・月足四本値・信用倍率・時価総額・Peer指標・ニュースアーカイブ)/みんかぶ(目標株価・AI理論株価)/IRBANK(PER・PBR・ROE) | C |
※ 決算短信・決算説明資料・適時開示の各PDFはMarkItDownで全文解析のうえ、数値を本文に反映しています。業績・財務・株数・希薄化率などの事実クレームはすべてA/B出典(EDINET・適時開示・会社IR)に基づき、C出典(株探・みんかぶ・IRBANK)は株価・時価総額・信用倍率・Peer指標・第三者試算の紹介に限定しています。レーティングは equity-rating-framework v2.2 に準拠しています(v1の★とは基準が異なるため単純比較できません)。
免責事項・ディスクレーマー
本記事は特定企業に関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。筆者は財務アドバイザー・投資助言者ではなく、投資はご自身の責任において行ってください。適正株価レンジ・レーティング・テーマ適合度は独自の前提に基づく評価手法の例示であり、将来の株価や企業価値を保証するものではありません。「推計」「当社試算」と記載した数値は筆者による試算であり、会社が公表した数値ではありません。会社が示す「目指す水準」(売上高1,000億円・営業利益300億円以上、新作の課金目標等)は業績予想でもコミットメントでもなく、達成年限も示されていません。記載の数値・進捗は各記載日時点の公開情報(主に決算短信・決算説明資料・有価証券報告書・適時開示)に基づき、今後の開示・訂正により変動し得ます。同社は2026年9月期の通期業績予想を非開示としており、証券会社によるアナリストカバレッジもありません。小型グロース銘柄は株価変動が大きく、流動性のリスクも伴います。経営陣の発言・会社見通しは当該企業の見解であり、客観的事実とは区別してお読みください。訴訟に関する記載は各当事者の主張および報道に基づくものであり、司法判断が確定したものではありません。筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。