「介入で円安は止まったのか、それとも一時的な小休止なのか」——この週末、判断を迫られている方は多いはずです。
東京エレクトロンとキオクシアの好決算という強材料の裏で、米国のイラン攻撃予告と中止、そして日米当局による円買い介入という桁違いのニュースが同時に走りました。値動きだけを追っても、この4つの出来事がどうつながっているのかは見えてきません。
この記事では、日経平均採用銘柄の想定為替レート151.4円と予想EPSを軸に、過去の日米協調介入(プラザ合意・東日本大震災)が相場をどう変えたのかという教訓と重ね、この先しばらくの相場の分岐点を整理します。
読み終える頃には、「介入の規模」ではなく「何が起きたら流れが本当に変わるのか」が明確になっているはずです。
1. 主要指数の現在地(2026年7月31日終値ベース)
まず全体像です。米国株は堅調、原油は急落、そして円は介入で急騰——という「地政学リスク後退」の教科書的な構図に見えます。ところが日本株だけが週間マイナスで、7月月間では8%超の下落です。この非対称性が、今回のレポートの出発点になります。
| 指数/資産 | 7/31終値 | 週間騰落 | 注目点 |
|---|---|---|---|
| NYダウ | 52,485.03 | +1.04% | 4カ月連続の月間上昇 |
| S&P 500 | 7,489.72 | +1.05% | 7月月間はほぼ横ばい(−0.1%) |
| ナスダック総合 | 25,373.85 | +1.59% | 7月月間は−3.2%と調整 |
| SOX(半導体) | 11,311.08 | −4.30% | 7/30に+8.19%の急反発も週間はマイナス。6/22高値から約−23% |
| WTI原油 | $84.67 | 約−7.7% | 停戦観測で急落、月間では約+20% |
| ブレント原油 | $90.12 | 約−10.2% | 7/23には一時$100超 |
| 米10年債利回り | 4.75% | +6bp | 30年債5.28%は2007年以来19年ぶり高水準 |
| ドル円 | 157.43 | −3.91% | 7/23に163.99の約40年ぶり安値→介入で急反転 |
| ゴールド | $4,053.60 | −0.27% | 5週連続で$4,000台を維持 |
| VIX | 15.99 | −13.94% | すでに「戦時」水準ではない |
| バルチック海運(BDI) | 2,732 | −0.40% | ホルムズ混乱下でも横ばい圏 |
| ビットコイン | $62,897 | −1.88% | 月間では約+7.5% |
| 日経平均 | 64,362.02 | −0.39% | 7/31は+4.03%も、7月月間は−8.14% |
| TOPIX | 4,003.30 | −0.20% | 7/31は+1.29%にとどまる |
| 東証グロース250 | 685.97 | −0.02% | 7/29に年初来安値659.08 |
| NT倍率(算出) | 16.08 | −0.19% | 7/31単日で+2.71%と急拡大 |
VIXが16を割り、金が$4,400台から$4,053へ調整している事実は重要です。市場はすでに「デエスカレーション」をかなりの程度織り込んでいます。つまり中東情勢の改善で追加的に買われる余地は限られ、逆に決裂した場合の下振れのほうが非対称に大きい局面にあります。
2. 焦点その1:日米協調による円買い介入は「流れ」を変えるか
本レポートの核心です。まず何が起きたのかを事実で確認します。
2-1. 7月30〜31日に起きたこと
| 日時 | 出来事 | 規模・水準 |
|---|---|---|
| 7/23 | ドル円が163.99円をつける | 約40年ぶりの円安水準 |
| 7/30 | 日本政府・日銀が円買い介入(韓国当局もドル売りで協調) | 約8兆4,500億円と推計=日本の単日介入として史上最大級。163円台→157.8円へ |
| 7/30 | 米財務省がNY連銀経由で複数銀行に介入の可能性を事前通告 | サプライズ効果を捨てた異例の運用 |
| 7/31 | 日本が2日連続で介入。NY連銀が米財務省の代理でユーロ売り・円買いを執行 | 米国の円買い介入は1998年6月以来28年ぶり |
| 7/31 11:33 ET | ベッセント財務長官のメモ「Buy Japanese Yen (JPY) $5-10 bil.」が公開取材中の写真から発覚 | 50〜100億ドル規模 |
| 7/31 NY引け | ドル円157.40円で終了 | 5月初め以来の円高水準 |
なお7月31日は東京時間に160円台へ戻す場面もあり、NY時間の再介入で157円台へ押し戻された経緯です。市場のドル円観がどれだけ急変したかは、予測市場にも表れています。Polymarketの「2026年中に165円到達」確率は8月1日時点で70%(前日比−4pt)だったものが、8月2日時点では45%まで低下しました。わずか1日で市場の想定シナリオが書き換わった格好です。
2-2. 過去の日米協調介入が教えること
ここが最も重要な論点です。為替介入が相場の流れを本当に変えたケースと、変えられなかったケースを分けたものは何だったのか。
| 事例 | 方向 | 規模 | その後のトレンド |
|---|---|---|---|
| 1985/9 プラザ合意(G5) | ドル売り・円買い | 数カ月で約100億ドル | 約240円→1988/1に120.45円。ドルがほぼ半減し、トレンドが完全に転換 |
| 1998/6 日米協調 | 円買い | 米側8億3,300万ドル | 米国が円を買った最後の事例(今回まで) |
| 2011/3 G7協調(震災直後) | 円売り(円高阻止) | 日本分692.5億円 | 一時的に円安化するも同年10/31に75.32円の史上最高値。トレンドは覆らず |
| 2011/10-11 日本単独 | 円売り | 計約9兆9,160億円 | 2012年末のアベノミクス(金融政策の転換)まで円高継続 |
| 2026/7/30-31 | 円買い | 日本約8.45兆円+米$5-10億ドル規模 | 進行中 |
この並びから読み取れることは一つです。プラザ合意が効いたのは「介入したから」ではなく、G5が金融・財政の政策協調に踏み込んだからでした。逆に2011年3月のG7協調は、震災という一過性の投機的な円買いは止めたものの、日米の金融政策の方向が変わらなかったため、円高トレンドそのものは覆せませんでした。実際にトレンドが変わったのは、翌年の金融政策レジーム転換を待つ必要がありました。
つまり判定基準は介入の規模ではなく、日米金利差が縮まるかどうかです。そして現状はこうです。
| 項目 | 現状 | 方向 |
|---|---|---|
| FF金利誘導目標 | 3.50〜3.75%(7/29 FOMCで据え置き、採決9対3) | 反対3名は全員「利上げ」を主張 |
| 日銀 政策金利 | 1.00%(7/30-31会合で8対1の据え置き) | 次回9/17-18。市場のメイン利上げ予想は12月 |
| 日米金利差 | 最大275bp | 拡大方向 |
| CME FedWatch(7/30時点) | 9月の利上げ確率81% | 7/28時点では「利下げ54%」から劇的に反転 |
ウォーシュ新FRB議長が「インフレは選択である」と述べ、地区連銀総裁3名が利上げに票を投じた事実を踏まえると、金利差経路での円高は当面期待しにくい構図です。過去の教訓に照らせば、金利差の裏付けを欠く介入の効果は短命に終わる公算が大きい——これが第一の結論です。
3. 焦点その2:ホルムズ開放こそが本当の分岐点
ただし今回は、金利差とは別のルートが存在します。原油です。
8月1日夜、トランプ大統領は「米国はイラン・イスラム共和国に対しlocked and loaded」と投稿した直後に、イランと中東諸国からの要請を受けて攻撃を中止し、「ホルムズ海峡の即時・完全・全面開放」と「イランの核脅威の終結」を柱とするディールに合意したと表明しました。イスラエルも同調しています。
これがなぜ日本の相場にとって決定的なのか。日本のエネルギー依存構造を見ると分かります。
| 項目 | 数値(2025年実績) |
|---|---|
| 原油の中東依存度 | 94.0%(UAE 43.3%、サウジ 39.4%) |
| 原油のホルムズ海峡依存度 | 93.0% |
| LNGのホルムズ依存度 | 6.3%(豪州39.7%が主力のため相対的に耐性あり) |
| ホルムズ通航量(平時) | 日量約2,000万バレル |
| ホルムズ通航量(7月末) | 日量約650万バレル=通常比▲約67% |
この供給制約が、日本の物価に一直線で効いています。
| 指標 | 数値(対象月) | コメント |
|---|---|---|
| 輸入物価指数(円ベース) | +29.7%(6月・前年比) | 4月以降4カ月連続で20%超 |
| 国内企業物価指数(CGPI) | +7.1%(6月) | 2023年3月以来3年3カ月ぶりの高い伸び |
| 全国コアCPI | +1.6%(6月) | 5カ月連続で1%台、7月からの値上げで拡大見込み |
| 実質賃金 | +1.4%(5月・5カ月連続プラス) | 現金給与総額+3.2%は34年ぶりの水準 |
| 実質消費支出 | −0.4%(5月・6カ月連続減) | 賃金は伸びても消費は戻らない |
注目すべきは伝播の進捗です。輸入物価+29.7%に対し企業物価+7.1%、消費者物価+1.6%——輸入物価ショックのうちCPIに現れているのはまだ一部にすぎず、波及は今なお途上ということです。逆に言えば、ホルムズが本当に開いて原油が下がれば、この波及そのものが止まります。
そして原油安は日本の貿易収支を改善させ、介入よりはるかに強力で持続的な円の下支え要因になります。円安の主因は金利差だけではなく、原油高による貿易赤字でもあるからです。(原油と相場の連鎖については原油急落で円・株はどう動く?年末予測でも詳しく整理しています)
3-1. ただしディールの信頼度は高くない
両論併記が必要な箇所です。強気に傾く前に、以下を押さえておくべきです。
| ディール実現を疑う材料 | ディール実現を支持する材料 |
|---|---|
| イラン国営メディアが「単なる新たな嘘」と一蹴、政府の公式コメントなし | イスラエルも合意完遂にコミットと明記 |
| 2月の開戦以来、停戦・合意・崩壊を最低4サイクル反復(6/17のMOUは7/18にイランが破棄) | 6月末には単日2,000万バレルと戦前超えの通航実績があり、開けば供給は即座に戻ることが実証済み |
| ハメネイ師死亡後、革命防衛隊と外務省が公然と矛盾する発表を繰り返し、履行主体が不明確 | OPEC+が5カ月連続増産(8月分+18.8万b/d)、米シェールは日量約1,360万バレルと過去最高 |
| 中央水路は依然として機雷敷設状態、戦争保険料は危機前の8倍超 | 米商業原油在庫は5年平均比−6%ながら、SPR取り崩しで需給を緩和中 |
4. 焦点その3:想定為替151.4円と予想EPS——円高はどこから痛いのか
ここからが日本株の実務的な話です。介入で円高に振れたことは、日本の輸出企業にとって単純な朗報ではありません。
主要上場メーカー103社の2027年3月期の期首ドル想定為替レートは、平均1ドル=151.4円です(150円が58.2%、155円が23.3%)。調査開始の2011年以降で初めて150円を突破した水準でした。
| 銘柄 | 想定為替レート(27/3期) | 為替感応度 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車(7203) | 150円 | 1円の円安で営業利益+500億円(対ドル) |
| ホンダ(7267) | 145円 | 足元との乖離が最大 |
| 三菱電機(6503) | 2Q以降 USD150円/EUR175円 | 1円で売上約50億円、営業利益はその約1/4 |
| ファナック(6954) | 150円/EUR175円 | 短信に感応度の記載なし |
| アドバンテスト(6857) | 2Q以降150円/EUR170円 | 通期を大幅上方修正(営業益6,275→8,460億円) |
| 日立(6501) | 160円/EUR185円 | 1円でAdj.EBITA約12億円。すでに足元水準を織り込み済み |
| 信越化学(4063) | 160円程度 | 同上、上振れ余地なし |
| キオクシア(285A) | 1Q実績160円→2Q想定162円 | 同上 |
ここから逆算できることがあります。日本経済新聞の試算では、1ドル161円が期末まで定着すれば自動車大手7社だけで27年3月期に9,000億円超の増益要因となります。想定平均151.4円との差9.6円で9,000億円ですから、感応度はおよそ1円あたり約940億円。
これを足元の157.4円に当てはめると、上振れ余地は約5,700億円まで縮小します。つまり今回の介入だけで、自動車7社の上振れ余地のうち約3,300億円が消えた計算になります。仮に想定レートの151.4円まで円高が進めば、上振れ余地はゼロです。
そして日経平均のバリュエーションはこうなっています。
| 指標 | 値(7/31) |
|---|---|
| 日経平均 | 64,362.02円 |
| 予想EPS(加重平均ベース) | 3,677.83円 |
| 予想PER(加重平均) | 17.50倍 |
| PBR/配当利回り | 1.87倍/1.66% |
| 予想EPSの月内推移 | 7/1に3,855.30円 → 7/29に3,516.55円 → 7/31に3,677.83円 |
7月に日経平均が月間−8.14%と急落した局面で、予想EPSも一度3,516円まで削られています。株価の下落は単なるバリュエーション調整ではなく、利益見通しそのものが揺らいだ結果でした。円高はこのEPSを直接削る変数です。
逆に、日立・信越化学・キオクシアのようにすでに160円を前提に置いている企業には上振れ余地がなく、円高はストレートに下方修正リスクとして効きます。「円安メリット銘柄」を一括りにすると判断を誤る局面です。(機械セクターの為替余力についてはファナック(6954)1Q決算分析|上方修正と円安余力も参照ください)
4-1. 半導体の好決算は本当に強かったのか
週末の話題となった好決算も、素直に強気材料とだけ読むのは早計です。
| 銘柄 | 1Q実績 | 評価 |
|---|---|---|
| 東京エレクトロン(8035) | 売上7,323.88億円(+33.3%)、営業益2,114.07億円(+46.1%) | 中間期を上方修正、7/31株価+6.24%。ただし通期予想は非開示 |
| キオクシアHD(285A) | 売上1兆7,671億円(+415.5%)、営業益1兆2,700億円 | 市場予想1兆3,700億円に未達。2Q計画1兆8,900億円も予想1兆9,500億円を下回る |
| アドバンテスト(6857) | 営業益1,900億円(+53.3%)、営業利益率51.7% | 通期営業益を6,275→8,460億円へ大幅上方修正 |
キオクシアの決算は7月31日の大引け後の発表であり、株価に反映されるのは8月3日以降です。数字の絶対値は圧巻ですが市場予想には届いておらず、1対3の株式分割と8,000億円上限の自社株買いという還元策がどこまで支えになるかが試されます。
5. 資金フロー分析:どこからどこへ動いたか
7月最終週の資金の流れを整理すると、性質の異なる3つのフローが同時に走っていたことが分かります。
| 売られた/資金が抜けた | 買われた/資金が向かった | ドライバー |
|---|---|---|
| 原油(WTI −7.7%、ブレント −10.2%) | 米国株(ナスダック +1.59%、S&P +1.05%) | 地政学プレミアムの剥落 |
| VIX(−13.94%)・金(横ばい圏) | リスク資産全般 | デエスカレーション観測 |
| ドル(対円 −3.91%) | 円 | 政策介入。市場の自発的フローではない |
| 米国債(10年+6bp、30年5.28%=19年ぶり高) | 短期金利・キャッシュ | 9月利上げ確率81%の織り込み |
| 日本の内需・ディフェンシブ(TOPIX +1.29%止まり) | 日本の値がさ半導体(日経 +4.03%、NT倍率 +2.71%) | 米AI設備投資と国内決算 |
| 小型株(グロース250、7/29に年初来安値) | 大型株 | 流動性の一極集中 |
ここで最も注意すべきなのは、3行目です。円高は市場が円を買いたくて起きたものではなく、当局が買ったから起きた——この一点で、他のフローとは性質がまったく異なります。自発的な資金移動は放置すれば継続しますが、政策フローは弾切れとともに止まります。
もう一つ、7月31日の日経平均+4.03%の中身も見ておく必要があります。値上がり96銘柄に対し値下がり129銘柄と過半数が下落しながら指数だけが4%上昇し、アドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで約1,615円を押し上げました。NT倍率が単日+2.71%に跳ねたのはこのためです。指数の強さと市場全体の強さは、いま乖離しています。
需給面では、海外投資家が2026年上期(1〜6月)に日本株現物を約9.7兆円買い越し、半期として過去最大を記録しました。この巨額のポジションが円高局面でどう扱われるかは、今後の下値を考えるうえで無視できない変数です。
5-1. 8月の市場参加者——誰が、どんな持ち高で相場にいるのか
フローを読むうえで、いま誰がどちらに賭けているのかも押さえておく必要があります。とくに8月は欧米の夏季休暇で市場参加者が減り、値動きが増幅されやすい時期です。
| 主体 | 足元の持ち高・状況 | 含意 |
|---|---|---|
| 投機筋(CFTC・IMM通貨先物) | 円のネット売り越しが16万3,400枚(7/31公表分、前回15万2,100枚から拡大) | 2024年7月の介入直前(約18万枚=過去最大級)に迫る水準。売りが積み上がりきった所に介入が入った |
| 海外投資家(日本株現物) | 2026年上期に約9.7兆円の買い越し=半期で過去最大 | 含み益が厚く、円高局面での利益確定余地も大きい |
| 市場全体の流動性 | 8月は欧米の夏季休暇+お盆で薄商い | 同じ注文量でも値幅が出やすく、方向が定まると一方向に走りやすい |
ここが今回の介入のタイミングの妙です。投機的な円売りが歴史的な規模まで積み上がった状態で当局が買い向かったため、踏み上げ(ショートカバー)の燃料は十分にありました。7月30日に単日3%超という約2年ぶりの値幅が出たのは、介入額の大きさだけでなく、この持ち高の偏りが効いたためと考えられます。
ただし裏返せば、金利差という円売りの根拠が変わらない限り、踏み上げが一巡した後にポジションは再構築されます。2024年7月の介入後も、円高は数カ月しか続きませんでした。加えて8月の薄商いは、介入の効き目を増幅する一方で、材料が出た際の逆方向の振れも増幅します。CFTCの建玉は為替取引全体のごく一部を映す指標にすぎない点も含め、この数字は「方向の証拠」ではなく「振れやすさの目安」として扱うのが適切です。
6. TimesFM 2.5による年末までの統計的予測
ここからは、Google Researchの時系列基盤モデルTimesFM 2.5(200M)による、相場観に依存しないベースライン予測です。2022年1月〜2026年7月の月末終値(55カ月)を入力に、2026年末までの5カ月を点予測+不確実性レンジ(10〜90%分位)で算出しました。
| 指数 | 現在(7/31) | 年末点予測 | 80%レンジ(q10〜q90) | 含意 |
|---|---|---|---|---|
| ドル円 | 157.43 | 157.9 | 144.5 〜 169.2 | 横ばい、ただしレンジは拡大 |
| 日経平均 | 64,362 | 65,601 | 54,858 〜 78,985 | 山型(10月67,851がピーク)、確信度は低い |
6-1. ドル円:157〜159円での横ばい、レンジは年末に向け拡大
TimesFMはドル円を8月157.6円、10月158.8円、年末157.9円と、ほぼ横ばいで推移すると予測します。介入で押し戻された水準がそのまま定着するという、やや素っ気ない見立てです。注目すべきは点予測ではなく、80%レンジが8月の149.7〜164.0円から12月には144.5〜169.2円へと大きく広がる点です。

円安方向の上振れ材料は9月FOMCでの利上げと日銀の正常化停滞、円高方向の下振れ材料はホルムズ開放による原油安と日銀の前倒し利上げです。レンジが末広がりに開くのは、モデル自身が「どちらにも大きく振れうる」と判定していることを意味します。
6-2. 日経平均:秋にかけて戻したのち年末に軟化する山型
日経平均は8月66,693円、10月67,851円をピークに、年末65,601円へ軟化する山型の予測です。7月の急落からいったん戻すものの、年末にかけて再び上値が重くなる形を示しています。

ただし80%レンジは54,858〜78,985円と極端に広く、上下で2万4,000円の幅があります。これはモデルの確信度が著しく低い=統計的に予測困難な局面であることを率直に示す数字です。点予測の65,601円を「見通し」として読むのではなく、レンジの広さそのものを情報として受け取るべきでしょう。
そしてTimesFMはゼロショット予測であり、介入・利上げ・地政学ディールといった構造変化は原理的に織り込めません。だからこそ、以下のシナリオ分析で補正する必要があります。
7. 今後の注目イベント
| 時期 | イベント | 影響度 |
|---|---|---|
| 8/3(月) | 東京市場がディールと介入を初めて織り込む/キオクシア決算の株価反応 | ★★★ |
| 8月上旬 | トヨタ・ホンダ等の1Q決算=想定為替レートの見直し有無 | ★★★ |
| 8/7 | 米7月雇用統計 | ★★ |
| 8月中 | G20(アッシュビル)でベッセント財務長官と植田総裁が会談予定 | ★★ |
| 8月中旬 | 米7月CPI・PPI | ★★★ |
| 9/15-16 | FOMC(利上げ確率81%を織り込み済み) | ★★★ |
| 9/17-18 | 日銀金融政策決定会合 | ★★★ |
| 随時 | ホルムズ海峡の通航量回復ペース/機雷除去の進捗 | ★★★ |
この中で最も見落とされやすいのが8月上旬の自動車決算です。各社が想定為替レートを据え置くのか、それとも足元を反映して引き上げるのか。ここが日経平均の予想EPSに最も直接的に効きます。
8. 結論:3つのシナリオと、見るべき一点
介入とホルムズを軸に、年末までを3シナリオで整理します。確率は筆者の評価です。
| シナリオ | 確率 | ドル円 | 想定される展開 |
|---|---|---|---|
| ベース:ディール部分履行+介入効果の減衰 | 50% | 152〜160円 | 原油$75〜90。9月FOMC利上げで金利差が再拡大し、円は数週間で軟化。日経は62,000〜68,000円のレンジで、EPSは維持されるが上値は重い |
| リスク:ディール決裂・ホルムズ再封鎖 | 30% | 160〜168円 | 原油$100超。輸入物価が再加速し「円安→物価高」のスパイラルへ。再介入でも止まらず、日銀が緊急利上げに追い込まれる可能性。日経は円安メリットと金利上昇のせめぎ合いで乱高下 |
| 円高:ディール履行+日銀の前倒し利上げ | 20% | 145〜152円 | 原油$65〜75。輸出企業が想定レートに接近し下方修正が相次ぐ。日経は58,000〜62,000円へ調整する一方、内需・小売・電力・空運が主役に交代 |
3つのシナリオを貫く教訓は、冒頭に戻ります。プラザ合意が流れを変え、2011年の協調介入が変えられなかった差は、介入額ではなく金融政策が動いたかどうかでした。今回、日米金利差275bpは9月FOMCで拡大する可能性が8割方織り込まれています。この構図が変わらない限り、8兆円の介入も時間を買う手段にとどまります。
ただし今回に限っては、金利差以外の経路——ホルムズ海峡の通航量——が存在します。日本の原油の93%が通るこの海峡が本当に開けば、輸入物価+29.7%の圧力が緩み、貿易赤字が改善し、介入よりはるかに持続的な円の下支えになります。
したがって、この先しばらく見るべき一点はシンプルです。「介入がいくら入ったか」ではなく、「ホルムズの通航量が日量650万バレルから戻るか」と「9月FOMCと日銀会合で金利差が動くか」。この2つが動かないうちは、円高も株安も一時的な振れとして扱うのが妥当です。逆に片方でも動けば、想定為替151.4円という日本企業の前提そのものが書き換わり、日経平均のEPSも連動して修正されます。そこが本当の分岐点になります。
※本記事は公開情報とTimesFM 2.5による統計的予測に基づく情報提供であり、投資助言ではありません。指数・為替の数値は2026年7月31日終値ベースで、取得元により若干の差異があります。予測は過去データの外挿であり、地政学イベントや政策変更などの構造変化は織り込めず、将来を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。