株式会社フリークアウト・ホールディングス(東証グロース・6094)は、連結子会社37社・関連会社9社を抱える広告テクノロジーのグループ持株会社です。2026年9月3日の終値は566円、時価総額102億円。PER12.5倍、PBR0.83倍、無配です。
この会社を「フリークアウト単体」で見るとほぼ何も分かりません。2025年9月期の連結売上503億円のうち、米国子会社Playwireが171億円(34.0%)、UUUM株式会社が195億円(38.8%)を占め、親会社である株式会社フリークアウト(日本の広告事業会社)は52億円(10.3%)にすぎないからです。この銘柄は「グループ内のどの子会社が、どれだけ利益を出しているか」を分解しないと評価できません。
そしてもう一つ、投資家からよく名前が挙がるのが株式会社ZEALS(ジールス)です。フリークアウトHDは2017年からZEALSに出資し、2021年11月の東証マザーズ上場承認時には第2位株主でした。その上場は2021年12月に中止されています。本記事ではこのZEALSとの関係についても、開示で確認できる事実と、開示からは確認できないことを切り分けて整理します。
本記事では、決算短信・有価証券報告書・適時開示・決算説明資料・質疑応答集をもとに、①グループ子会社の実力分解 ②ZEALSとの関係の現在地 ③2026年9月期第3四半期決算 ④過去3年の株価 ⑤経営陣・株主構成・需給 ⑥テーマ適合度とレーティング ⑦適正株価レンジ ⑧中期経営計画との整合性を、強気材料と弱気材料の両面から整理します。
本記事は東証グロース個別銘柄の調査・分析です。事実(開示・一次情報)と推察を分けて記載し、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は2026年9月期第3四半期決算短信・同決算説明資料(いずれも2026年8月14日開示)、同質疑応答集(2026年8月18日開示)、2026年9月期第2四半期(中間期)決算短信(2026年5月15日開示)、2025年9月期有価証券報告書(EDINET・E30648/docID S100XCVT、2025年12月24日提出)、「事業計画及び成長性に関する事項」(2025年12月25日開示)、その他適時開示・大量保有報告書、株価は2026年9月3日終値に基づきます。投資判断はご自身の責任でお願いします(末尾の免責を必ずお読みください)。
※ 本記事はグロース株調査レポート一覧の一つです。
1. 会社概要|連結子会社37社の「グループ経営会社」
事実:株式会社フリークアウト・ホールディングス(証券コード6094、東証グロース、EDINETコードE30648、日本基準・連結、決算期9月末)は2010年10月1日設立、資本金35億5,205万円、本社は東京都港区六本木7-15-9(住友不動産六本木セントラルタワー7F)。代表取締役社長 Global CEO は本田謙氏、取締役CFOは永井秀輔氏です。ミッションは「人に人らしい仕事を。」。
事実:2025年9月期有価証券報告書によれば、当社グループは当社・連結子会社37社・非連結子会社1社・関連会社9社・その他の関係会社1社で構成されます。持株会社である当社単体の売上は8.89億円にすぎず、事業実体はすべて子会社にあります。連結従業員数は1,051名(2025年9月末)、グループ人員は1,118名(2026年6月末、決算説明資料)。
事実:2026年9月期第1四半期から報告セグメントを再定義し、従来の「広告事業」をプロダクト事業へ、「インフルエンサーマーケティング事業」をクリエイター事業へ名称変更したうえで、区分の一部を組み替えています。前年同期の数値も組替え後で表示されているため、旧セグメント名で書かれた過去記事との比較には注意が必要です。
2. グループ内子会社の実力分解|利益はどこで生まれているのか
事実:2025年9月期有価証券報告書「関係会社の状況」に記載された主要な連結子会社と、売上高が連結売上の10%を超える会社の主要な損益情報は以下のとおりです。
| 会社名 | 議決権比率 | 事業 | 売上高 (2025年9月期) |
経常損益 | 当期純損益 | 純資産 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| UUUM株式会社 | 100.0% | クリエイター(旧インフルエンサーマーケティング) | 195.15億円 | +3.23億円 | +3.70億円 | 32.81億円 |
| Playwire, LLC(米国フロリダ州) | 75.0% | プロダクト(北米・広告収益最大化) | 171.27億円 | ▲0.26億円 | ▲0.26億円 | 18.30億円 |
| 株式会社フリークアウト | 100.0% | プロダクト(日本・DSP/Scarlet/GP) | 52.03億円 | +4.96億円 | +3.08億円 | 9.32億円 |
| adGeek Marketing Consulting(台湾) | 66.7% | プロダクト(アジア) | ―(10%未満) | ― | ― | ― |
| FREAKOUT PTE.LTD.(シンガポール) | 100.0% | 投資事業・その他 | ― | ― | ― | ▲20.56億円 (債務超過) |
| 本田商事株式会社 | 100.0% | プロダクト | ― | ― | ― | ― |
| FreakOut China/PT.FreakOut dewina Indonesia | 100.0% | プロダクト | ― | ― | ― | ― |
事実:持分法適用関連会社は、株式会社IRIS(49.0%)(タクシー内デジタルサイネージ「TOKYO PRIME」)、株式会社インティメート・マージャー(37.5%)、株式会社デジタリフト(33.8%)のほか「その他4社」。「その他の関係会社」は伊藤忠商事株式会社でした(後述のとおり2025年12月25日に該当しなくなっています)。
ここが最重要ポイント:売上の大半は低採算の子会社が作っている。
Playwireは売上171億円(連結の34.0%)を稼ぎながら経常損益は▲0.26億円、UUUMは売上195億円(同38.8%)で経常利益3.23億円(利益率1.7%)。一方、売上52億円の株式会社フリークアウト(日本)が経常利益4.96億円(利益率9.5%)と、売上の1/4以下の規模で最大の利益を出しています(いずれも2025年9月期・単体)。推察:連結PSR(0.18倍)や連結売上成長率で評価すると、この構造を完全に見落とします。この会社は「売上」でなく「粗利・EBITDA」で見る必要があります。
事実:2026年9月期第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)のセグメント別の外部顧客への売上高とセグメント損益は以下のとおりです(決算短信セグメント注記)。
| セグメント(2026年9月期3Q累計) | 外部売上高 | 構成比 | 前年同期比 | セグメント損益 | 前年同期 |
|---|---|---|---|---|---|
| プロダクト事業(日本・北米・アジアの広告プロダクト) | 250.20億円 | 58.5% | +16.3% | +5.18億円 | +4.80億円 |
| クリエイター事業(UUUM等) | 170.90億円 | 39.9% | +11.6% | +12.79億円 | +0.15億円 |
| 投資事業 | 6.44億円 | 1.5% | ―(前年0.52億円) | +5.82億円 | ▲0.06億円 |
| その他事業(本社機能等) | 0.25億円 | 0.1% | +0.6% | ▲11.50億円 | ▲4.94億円 |
| 調整額 | ― | ― | ― | ▲4.26億円 | +0.02億円 |
| 連結営業利益 | 427.80億円 | 100% | +15.9% | +8.04億円 | ▲0.05億円 |
事実:決算説明資料では地域別に分けており、2026年4〜6月期(第3四半期単独)はプロダクト事業(日本)27.7億円/EBITDA 3.7億円、クリエイタービジネス51.8億円/EBITDA 3.1億円、北米55.4億円/EBITDA 1.1億円でした。北米は売上で最大でありながらEBITDAは最小です。会社は質疑応答集で、北米の通期EBITDA見通しを第2四半期時点の「7億円」から「5〜6億円」へ引き下げたと説明しています(理由は「粗利率の高い直販領域の回復が想定よりやや後ろ倒し」)。
2-1. 新しい成長ドライバー:スミカ・ストアギーク・HAWK
事実:グループ内で会社が「次期中期経営計画の成長の柱」と位置づけているのは以下の会社・プロダクトです。
- 株式会社スミカ:不動産領域でAIを活用したBPaaS(Business Process as a Service)を展開。2026年6月度の売上は前年同月比+92%。すでに黒字化しており「収益の柱の一つ」(質疑応答集)。
- SNS広告運用AIエージェント「HAWK」:2026年6月5日提供開始。フリークアウトの広告技術とUUUMのSNS知見を融合。リリース早々に累計500件以上の案件実績(パイロット運用含む)。
- スミカ+HAWK 合算ARR:FY25Q3の3.9億円 → FY26Q3で7.5億円(四半期末月の月次売上×12による会社推計)。
- 株式会社ストアギーク:リテールメディア領域の「ストアギークサイネージ」。本格稼働開始からの1年間累計で売上1.2億円・EBITDA 0.6億円、導入台数は2027年春頃に現状の約2倍まで増加する見込み(会社計画)。
- UUUMマーケティング株式会社:2025年10月にUUUMのマーケティング部門を新設分割して設立。会社は「単一会社内でのコンフリクトを解消」した構造改革と説明。
- 株式会社UDN SPORTS:アスリートのエージェント・マネジメント会社。連結子会社である株式会社フリークアウト・インベストメントが現金を対価に株式取得し、企業結合日は2026年5月29日(予定)。第4四半期からPLの取り込みが開始されます。
事実:UDN SPORTSについて、2026年5月15日開示の中間期決算短信「重要な後発事象」には「取得する議決権比率:現時点では確定しておりません」「取得対価の額……現時点では最終確定していない」「発生したのれんの金額……現時点では確定しておりません」と記載されています。推察:買収規模とのれんの水準が不明なままPL取り込みが始まるため、第4四半期決算(2026年11月頃)で初めて全体像が見えることになります。
3. ZEALS(ジールス)との関係|出資は事実、現在の持分は開示から特定できない
ここが本記事で最も注意深く書くべき部分です。確認できる事実と、確認できないことを分けます。
3-1. 確認できる事実
| 時期 | 内容 | 出典ランク |
|---|---|---|
| 2017年5月18日 | フリークアウト・ホールディングスが、Messengerチャットボット事業を展開するZEALSの第三者割当増資を引受(会社プレスリリース) | A(会社開示) |
| 2018年1月29日 | ZEALSがジャフコ運営ファンドとフリークアウトから総額4.2億円を調達(ZEALS発表・日本経済新聞) | B |
| 2021年11月18日 | ZEALS(証券コード9255)が東証マザーズ上場承認。上場予定日2021年12月23日、想定発行価格1,530円、上場規模約130.4億円 | B(IPO情報サイト) |
| 同上(申請時の株主構成) | 清水正大氏(社長)32.75%、株式会社フリークアウト・ホールディングス22.47%(ロックアップ180日間)。別集計では実株ベースで310万7,200株・24.39%で第2位株主(🔴 実株ベースの数値は二次情報のみで、原本の新規上場申請のための有価証券報告書は未確認) | C(二次・IPO情報) |
| 2021年12月15日 | ZEALSが新規上場の中止を発表(売出株数の大幅削減後も需要が集まらなかったとされる) | B |
| 2022年5月12日 | ZEALSが総額50億円の調達を発表(うちみずほ銀行・三菱UFJ銀行からの当座貸越枠15億円を含む) | B(ZEALS発表) |
| 2026年2月27日 (第11期・2025年3月期) |
ZEALSの決算公告:純損失▲4億8,250万1千円(赤字縮小)、総資産32億8,699万5千円(前期比▲13.4%)。株主資本は22億5,873万円(前年比▲17.6%)とされるが、こちらは官報原本まで到達できず要確認 | B(官報決算データベース)/株主資本のみC |
| 2026年4月〜5月 | ZEALSはマルチモーダルAIエージェント「Omakase AI」を主力に転換。音声AIエージェント「Omakase AI」が「デジタル化・AI導入補助金2026」の対象プロダクトに採択(2026年5月21日・ZEALS発表/PR TIMES)。米国子会社の設立は日経ビジネス(2026年4月3日)の報道ベースで、会社発表は確認できず | B(日経ビジネス・PR TIMES) |
3-2. 確認できないこと(重要)
フリークアウトHDが現在ZEALS株を何%保有しているかは、開示から特定できません。
2025年9月期有価証券報告書「関係会社の状況」に記載された持分法適用関連会社はIRIS・インティメート・マージャー・デジタリフトの3社と「その他4社」で、ZEALSの社名はありません。2022年9月期有報でも同様に社名は記載されていません(当時は「その他5社」)。したがってZEALSが①「その他」に含まれる持分法適用関連会社なのか、②持分法を適用しない単なる投資有価証券なのか、③既に売却済みなのかは公開開示からは判別できません(取得不能)。2026年9月期第3四半期決算短信・決算説明資料・「事業計画及び成長性に関する事項」のいずれにもZEALSへの言及はありません。
事実:2026年3月19日にフリークアウトHDが公表した「投資有価証券の売却及び業績予想の修正に関するお知らせ」で売却されたのはZEALSではなく、採用管理システムを手掛ける株式会社タレンティオです。同社株式の全株(フリークアウトHDが完全希薄化後76.2%を保有)をjinjer株式会社へ譲渡価額総額790百万円で売却しました。この売却益が2026年9月期第2四半期の投資事業収益(売上高)と特別利益(投資有価証券売却益99,935千円)に計上されています。
推察:「フリークアウト=ZEALSの親会社」という理解は2021年時点では第2位株主として概ね正しかったが、2026年時点では裏付けが取れません。ZEALS自身の株主資本は2025年3月期末で22.6億円(前年比▲17.6%)まで減っており、複数回の資金調達を経て希薄化が進んでいる可能性があります。ZEALSがAIエージェントで再評価されればフリークアウトHDの保有有価証券の価値に効く、という筋書きは論理的には成立しますが、その前提となる保有比率が開示されていない以上、投資判断の根拠にはできません。
4. 2026年9月期第3四半期決算|経常は通期予想の109.8%、しかし第3四半期単独は営業赤字
事実:2026年8月14日開示の第3四半期決算短信の内容です。
| 項目(百万円) | 2025年9月期 3Q累計 |
2026年9月期 3Q累計 |
前年同期比 | 2026年9月期 通期会社予想 |
進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36,907 | 42,780 | +15.9% | 55,600 | 76.9% |
| 営業利益 | ▲4 | 803 | 黒字転換 | 1,300 | 61.8% |
| 経常利益 | 184 | 1,757 | +852.7% | 1,600 | 109.8% |
| 親会社株主帰属四半期純利益 | ▲273 | 1,346 | 黒字転換 | 790 | 170.4% |
| EBITDA | 1,373 | 2,454 | +78.7% | 3,100 | 79.2% |
| 調整後当期利益 | 499 | 884 | +77.0% | 950 | 93.1% |
| (参考)持分法投資利益 | 503 | 712 | +41.6% | ― | ― |
事実:通期予想は2026年3月19日にタレンティオ売却を織り込んで上方修正(経常10億円→16億円、純利益5億円→7.9億円)されて以降、第2四半期・第3四半期と2回連続で据え置かれています。会社は質疑応答集で据え置きの理由を「直近の不安定な為替動向や有価証券の減損の可能性を客観的に踏まえ」と説明し、「北米事業の事業進捗や第4四半期より取り込みを開始するUDN SPORTSの事業進捗も踏まえ総合的に検討し、合理的な算定が可能になった時点で速やかに修正を検討」としています。
累計の好調と、第3四半期単独の失速を混同しない。
第3四半期単独(2026年4〜6月)は、売上高134.1億円(+16.1%)に対しEBITDA 2.2億円(▲40.7%)、営業損益▲3.4億円、経常損益▲1.0億円、親会社株主帰属純損益▲0.5億円、調整後当期利益0.1億円(▲96.4%)と、営業段階では赤字でした(決算説明資料)。第1四半期のEBITDA 11.4億円・第2四半期10.9億円から急落しています。会社は要因を①プロダクト事業の主要顧客との商流変更による粗利減が3Qに最大化、②クリエイター事業の大型イベント・グッズ収益の上期偏重、③本社移転関連コスト約0.6億円、④UUUMのコーポレート機能移管に伴うセグメント間のコスト付け替え約3.0億円、と説明しています。
事実:財政状態は、第3四半期末の総資産38,854百万円(前期末比▲1,355百万円)、純資産13,663百万円(同+1,520百万円)、自己資本比率30.6%(同26.1%から改善)。ただし現金及び預金は9ヶ月で4,658百万円減少しています。負債側では短期借入金962百万円・長期借入金1,599百万円の返済が進みました。
事実:営業キャッシュフローは、2025年9月期通期が▲36百万円、2026年9月期中間期が+506百万円(同期の営業利益1,143百万円)。第3四半期は四半期連結キャッシュ・フロー計算書が作成されていません。推察:中間期の営業CF÷営業利益は0.44倍で、営業利益に見合うキャッシュが入ってきていません。運転資本(売掛金は中間期に11.88億円増加、第3四半期末には前期末比9.52億円増)の膨張が主因とみられます。
5. 過去3年の株価|「大相場」は無い。あるのは決算リバウンドと大株主売却
事実:月足ベースで直近3年(2023年9月〜2026年9月)を見ると、高値は2023年9月の1,042円、安値は2025年4月の430円。2026年9月3日終値566円は3年高値から▲45.7%の位置です。さらに遡ると2022年12月には1,713円を付けており、そこからは▲67%です。過去3年に「大相場」と呼べる持続的な上昇はありません。
事実:会社自身も「事業計画及び成長性に関する事項」(2025年12月25日)で、時価総額をFY21約360億円(株価約2,000円)→FY22約230億円(約1,300円)→FY25約90億円(約500円)と記載しており、4年で約1/4に縮小したことを認めています。
事実:直近1年で株価が大きく動いた2局面を日足で確認しました。
| 日付 | 出来事 | 始値/高値/安値/終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|---|
| 2026/2/13(金)16:00 | 第1四半期決算開示(営業利益+286.3%) | 572/582/565/569 | ▲0.52% | 17,500株 |
| 2026/2/16(月) | 決算を受けた最初の取引日 | 669/669/658/669 | +17.57% | 259,600株 |
| 2026/2/17(火) | 続伸 | 663/718/634/712 | +6.43% | 186,900株 |
| 2026/2/24(火) | 年初来高値796円 | 741/796/714/714 | +0.14% | 96,400株 |
| 2026/3/19(木)15:30 | 投資有価証券(タレンティオ)売却と通期予想の上方修正を開示 | ― | ― | ― |
| 2026年3月 | 上方修正後も月間では下落 | 月間 高値780/安値644/終値680 | 月間▲11.11% | 917,400株 |
| 2026/6/8(月)10:30 | 伊藤忠商事による当社株式の一部売却を開示 | 590/606/536/551 | ▲9.67% | 303,500株 |
| 2026年6月 | 月間で大幅安・出来高急増 | 月間 高値651/安値504/終値513 | 月間▲22.39% | 2,014,700株 |
推察:①2026年2月の急騰は第1四半期決算がトリガーで、2月13日終値569円から2月24日高値796円まで+39.9%。②3月19日の上方修正は一時的に買われた(3月23日に前日比+3.8%の678円との報道)ものの、月間では下落に転じており市場は上方修正を「投資有価証券の一過性売却益」として割り引いたと読めます。③6月8日の下落は明確に大株主売却の需給イベントで、出来高は平常時の5〜10倍でした。
6. 経営陣・株主構成・需給|創業者36.6%は実株。伊藤忠は「その他の関係会社」から外れた
6-1. 大株主
| 株主 | 保有株数 | 比率 | 出典・時点 |
|---|---|---|---|
| 本田謙氏(合計) | 6,600,200株 | 36.60% | 変更報告書(2025年8月5日提出) |
| うち MOTHERS OF INVENTION PTE. LTD.(資産管理会社) | 6,350,200株 | 35.23% | 同上 |
| うち 本田謙氏個人 | 250,000株 | 1.37% | 同上 |
| 伊藤忠商事株式会社 | 2,485,700株 | 13.79% | 変更報告書(2026年6月23日提出) |
| フィデリティ投信+FIL Investment Management (HK) | 1,291,600株 | 7.17% | 変更報告書(2026年6月12日提出) |
| 株式会社SBI証券 | 899,800株 | 5.18% | 半期報告書(2026年3月末) |
| スカパーJSAT株式会社 | 670,600株 | 3.86% | 同上 |
| 自己株式 | 646,412株 | 3.59% | 第3四半期決算短信 |
事実:大量保有報告書の「保有株券等」比率は新株予約権等を含むため、実株と分けて検算しました。本田氏側の合計6,600,200株 ÷ 36.60% = 分母約18,033,333株で、発行済株式総数18,022,924株とほぼ一致します。伊藤忠側も2,485,700株 ÷ 13.79% = 約18,025,381株。いずれも潜在株式による水増しはほぼ無く、比率はそのまま実株ベースと読めます。これはグロース株では珍しく、創業者社長のskin in the gameが数字どおりであることを意味します。
事実:伊藤忠商事は2025年9月末時点で2,835,700株(16.32%)を保有していましたが、2026年6月8日にSBI証券の「立会外トレード」の仕組みで一部を売却することを開示。2026年6月23日提出の変更報告書で13.79%(2,485,700株)となりました。推察:差分から売却株数は35万株(発行済の約1.94%)と推計されます(売却株数そのものの開示は確認できませんでした)。会社は「2018年12月17日に公表した資本業務提携の根幹には影響を及ぼさない」「主要株主としての地位を維持する旨を確認している」としています。
見落とされやすい事実:伊藤忠は2025年12月25日に「その他の関係会社」から外れています。
同日開示「その他の関係会社の異動に関するお知らせ」によれば、伊藤忠が派遣していた取締役1名が2025年12月25日開催の定時株主総会終結の時をもって任期満了により退任し、これに伴い伊藤忠は当社の「その他の関係会社」に該当しなくなりました。推察:役員派遣の終了(2025年12月)→ 一部売却(2026年6月)という順序は、資本業務提携の実質的な後退と読むこともできます。会社は提携継続を明言していますが、残る13.79%の今後の扱いは需給上の継続的な論点です。
6-2. 需給と希薄化
- 信用取引:買い残717.0千株、売り残0株(2026年8月28日時点、株探)。貸借倍率は算出不能。推察:買い残717千株×566円=約4.1億円は、直近の1日あたり売買代金(2026年9月3日で10百万円)の約40日分に相当し、上値の重石として意識されやすい水準です。踏み上げ余地はありません。
- 潜在株式(希薄化):2025年8月14日発行の第15回・第16回新株予約権は、全て行使された場合の増加株式数105,000株=発行済株式総数の0.60%。同時に経営陣からの申し出により既発行新株予約権の一部が放棄されています。中間期の1株当たり中間純利益80.48円に対し潜在株式調整後は80.44円で、希薄化率は0.05%。グロース株にありがちな大規模希薄化リスクは、現時点では確認できません。
- 流動性:直近の1日あたり売買代金は概ね1億円未満(2026年9月3日は約10百万円)。浮動株は本田氏36.60%+伊藤忠13.79%+自己株3.59%=約54%が固定されており、実質的な浮動株は薄い状態です。
- 株主還元:2025年9月期・2026年9月期とも無配。ただし会社は「投資事業で実現した利益の30%超を株主還元に充てる」方針を掲げており、タレンティオ売却益については「現時点で何らかの株主還元施策を実施するには金額の規模が不足しているため、まずは財源としてプールしている」(質疑応答集)としています。
6-3. 人員と人件費の生産性
| 指標 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 連結従業員数 | 1,054名 | 1,015名 | 1,051名(+3.5%) | UUUM連結後は横ばい圏 |
| 平均年間給与(提出会社) | 853.6万円 | 848.6万円 | 750.7万円(▲11.5%) | 提出会社単体ベース(従業員62名) |
| 一人当たり売上高 | 0.29億円 | 0.51億円 | 0.48億円 | M&Aによる売上増が主因 |
| 一人当たり営業利益 | 152.8万円 | 0.2万円 | 9.2万円 | 2023年9月期比で▲94% |
| 労働分配率(推計) | ― | ― | 約55% | 販管費人件費77.4億円÷売上総利益140.6億円(推計) |
推察:人員はほぼ横ばいなのに一人当たり営業利益が2023年9月期の152.8万円から2025年9月期9.2万円まで落ちています。これは増員のせいではなく、UUUMの連結取込によって「低採算の売上と人員」が大量に加わったことと、北米の販管費増(前年比3億円弱、円安と人件費高騰)が主因と読めます。会社が「低ROIC事業(FY25は約2%)→高ROIC事業へ(+6%以上改善)」を課題として明示しているのはまさにこの点です。
7. テーマ性の検証|◎/○/× を根拠付きで分ける
| テーマ | 判定 | 根拠(会社の公式開示ベース) | 売上寄与 |
|---|---|---|---|
| クリエイターエコノミー/インフルエンサーマーケティング | ◎ | UUUM(100%子会社)が国内最大級のクリエイターネットワークを運営。アドセンス・グッズP2C・タイアップ動画を実事業として展開 | 3Q累計170.9億円(39.9%) |
| AIエージェント(業務特化型) | ○ | スミカ(不動産BPaaS)が黒字化、HAWK(SNS広告運用AIエージェント)を2026年6月提供開始。会社が次期中計の成長ドライバーと明言 | ARR 7.5億円(会社推計)=通期予想売上556億円の約1.3%(推計) |
| リテールメディア/デジタルサイネージ | ○ | ストアギークサイネージ(小売店内)+IRIS「TOKYO PRIME」(都内タクシーの62.2%に導入、持分法49.0%) | ストアギークは1年間累計で売上1.2億円。IRISは持分法のため売上に非計上、持分法投資利益として3Q累計7.12億円の主因 |
| アスリートマネジメント | ○ | UDN SPORTSを2026年5月29日(予定)で連結子会社化。日本代表クラスの選手・指導者と契約 | 第4四半期から取込開始。規模は未開示 |
| 生成AI基盤・AI半導体・データセンター | × | 会社が自社事業として言及していない | ― |
| 国策・政府予算関連 | × | 予算計上・交付決定・落札等の到達経路は確認できず | ― |
7-1. テーマ適合度(4軸・40点満点)
評価対象テーマを「AIエージェント(人間の業務プロセスを自律実行するソフトウェア)」と定義します。認定根拠は判断軸6項目のうち、②技術的な非連続性(従来のBPO/人手運用の置換)、③第三者によるTAM推計の存在、④実装マイルストーンの公開(会社が次期中計の柱と明示)、⑤複数の大手が資金を投じている、の4項目を満たすためです。
| 軸 | 点数 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 3/10 | スミカ+HAWKのARR 7.5億円は通期予想売上556億円の約1.3%(推計)。5%未満のため3-4点レンジ |
| ②純度(pure play度) | 4/10 | 時価総額102億円の小型株だが、主業は広告プロダクト(58.5%)とクリエイター(39.9%)。AIエージェントは複数事業の一つですらない規模 |
| ③サイクル位置 | 6/10 | AIエージェント自体は市場で拡大〜成熟局面。ただし当社株はテーマとしての物色をほとんど受けておらず、3年で▲45.7% |
| ④希少性 | 4/10 | AIエージェントを標榜する上場銘柄は多数。ただし「不動産業務×AI(スミカ)」「広告運用×UUUMのSNS知見(HAWK)」の組み合わせは相対的に珍しい |
| 合計 | 17/40 | 中程度 |
①量的寄与と③サイクル位置の乖離を明記します。
AIエージェントというテーマは市場では拡大局面にありますが、フリークアウトHDの当該事業の売上寄与は約1.3%(推計)にとどまります。株価はテーマとして反応しうるものの、現時点でその値動きは業績の裏付けを伴いません。逆に、業績を実際に動かしているのは、テーマ性の低い「広告プロダクトの商流変更」「北米の直販回復」「UUUMのアドセンス収益」「IRISの持分法利益」です。
また純度・希少性・浮動株の薄さは両刃です。時価総額102億円・実質浮動株が薄い銘柄は、材料が出たときの値動きが大きくなる構造にありますが、それは悪材料でも同じだけ下に飛ぶということであり、有利さではなくボラティリティの高さを意味します。
8. 強気材料
- 利益進捗が会社予想を大きく超過している。第3四半期累計で経常利益は通期予想の109.8%、親会社株主帰属純利益は170.4%に到達。会社自身が質疑応答集で「合理的な算定が可能になった時点で速やかに修正を検討」と明言しており、上方修正の余地は会社が公式に認めている状態です。
- 持分法(IRIS)の利益が過去最高を更新中。3Q累計の持分法投資利益712百万円(+41.6%)。IRISのタクシーサイネージ「TOKYO PRIME」は都内タクシーの62.2%に導入済み(2025年9月期)。
- 北米(Playwire)が黒字回復。第3四半期単独で売上55.4億円(+40.6%)、EBITDA 1.1億円で黒字転換。前年同期の▲1.0億円から改善しています。
- クリエイター事業の構造改革が数字に出ている。3Q累計セグメント利益12.79億円(前年同期0.15億円)。UUUMマーケティングの分社化とコーポレート機能の本社移管が効いています。
- 希薄化リスクが極めて小さい。潜在株式による希薄化は0.05%、新規発行の新株予約権も発行済の0.60%。グロース市場では例外的な水準です。
- 保有有価証券の存在。会社は「現時点で試算可能なもので100〜150億円の資産価値」(自社試算)と開示しており、これは時価総額102億円と同等かそれ以上です。2022年9月期にはカンム社売却(総額150億円規模)の実績もあります。
- 創業者の持分が実株で36.60%。大量保有報告書の分母逆算で潜在株式による水増しがないことを確認済み。経営の継続性と株主との利害一致という点では明快です。
- PBR0.83倍・EV/EBITDA約4.3倍(推計)。絶対水準としては割安圏です(算出根拠は第10章)。
9. 弱気材料・リスク
- 第3四半期単独は営業赤字。営業損益▲3.4億円、調整後当期利益0.1億円(▲96.4%)。累計の好調は第1・第2四半期(EBITDA 11.4億円・10.9億円)で作られたもので、直近の四半期モメンタムは明確に悪化しています。
- 利益の質。3Q累計の営業利益8.04億円に対し、持分法投資利益が7.12億円。営業利益とほぼ同額を、連結していない会社(主にIRIS)から得ています。さらに投資事業のセグメント利益5.82億円(タレンティオ売却)は一過性です。営業利益・持分法・一過性売却益を分けずに「経常利益が8.5倍」と読むと実態を誤ります。
- 営業キャッシュフローが利益に追いついていない。2025年9月期は通期で▲0.37億円、2026年9月期中間期は+5.07億円(営業利益11.44億円の0.44倍)。売掛金は第3四半期末で前期末比9.52億円増。現金及び預金は9ヶ月で46.58億円減少しています。
- 会社自身が「有価証券の減損の可能性」を上方修正見送りの理由に挙げている。投資有価証券簿価は2025年9月期末で40.05億円。減損が発生すれば通期の純利益予想(7.9億円)に対するインパクトは小さくありません。
- 為替感応度が高い。経常利益の四半期推移を見ると、為替差損益が▲4.6億円〜+4.0億円の幅で振れています。為替差損益を除いた経常利益は、FY26 1Q 8.1億円・2Q 7.3億円・3Q ▲1.6億円。経常利益の相当部分が為替で動きます。
- シンガポール子会社が債務超過。FREAKOUT PTE.LTD.(100%・投資事業)の債務超過額は2025年9月末で20.56億円(2022年9月末は13.53億円で、3年で拡大)。有報の注記で特定子会社として明示されています。
- 主要顧客の商流変更というかたちで交渉力の弱さが表面化した。プロダクト事業(日本)は「プレミアム媒体向けプラットフォームScarletの商流変更による粗利減」が3Qに最大化。会社は「当四半期にてマイナス要因は出尽くし」としていますが、単一顧客の判断で粗利が数億円単位で動く構造そのものは変わりません。
- 大株主の売却リスクが残る。伊藤忠は2025年12月に役員派遣を終了し「その他の関係会社」から外れ、2026年6月に一部を売却。残り13.79%の扱いは需給上の継続的な論点です。
- 中期経営計画が大幅未達。詳細は第11章。
- 流動性が低い。1日あたり売買代金は概ね1億円未満。信用買い残717千株は売買代金の約40日分に相当します。
10. 適正株価の考え方|SOTPと複数手法のクロスチェック
🔴 以下は「評価手法の例示」であり、目標株価でも投資推奨でもありません。前提が変われば結果は大きく変わります。
10-1. 前提となる数値
| 項目 | 数値 | 算出根拠 |
|---|---|---|
| 株価(2026/9/3終値) | 566円 | 東証 |
| 発行済株式数/自己株控除後 | 18,022,924株/17,376,512株 | 第3四半期決算短信 |
| 時価総額 | 102.0億円 | 566円×18,022,924株 |
| 有利子負債(第3四半期末・推計) | 148.7億円 | 2025年9月期末174.3億円 − 短期借入返済9.62億円 − 長期借入返済15.99億円 |
| 現金及び預金(第3四半期末・推計) | 117.1億円 | 2025年9月期末163.7億円 − 9ヶ月の減少46.58億円 |
| ネット有利子負債(推計) | 31.6億円 | 上記の差 |
| EV(推計) | 133.6億円 | 時価総額+ネット有利子負債 |
| 1株当たり純資産(第3四半期末) | 684.7円 | 自己資本118.98億円÷17,376,512株 |
10-2. 3シナリオの1株価値レンジ
| シナリオ | 1株価値の目安 | 現値比 | 成立する条件 | 崩れる条件 |
|---|---|---|---|---|
| 弱気 | 約550円 | ▲2.8% | EV/EBITDA 4.5倍(全社EBITDA 28億円)+投資有価証券を簿価40億円で評価。北米の直販回復がさらに遅れ、有価証券の減損が発生し、次期中計も現中計と同様に未達となるケース | ― |
| 中立 | 約700〜850円 (中心780円) |
+24〜50% (中心+38%) |
①EV/EBITDA 5.5倍×会社予想EBITDA 31億円 → 約800円 ②調整後当期利益9.5億円×PER13倍 → 約711円 ③PBR1.0倍(BPS684.7円) → 約685円 ④事業EBITDA 25億円×5.5倍+投資有価証券簿価40億円 → 約840円 |
第4四半期に想定外の減損・為替差損が出て通期の調整後当期利益が9.5億円を下回る場合 |
| 強気 | 約1,300円 | +130% | 次期中期経営計画でEBITDA 60億円への道筋が具体的に示され、かつ保有有価証券(会社試算100〜150億円)のExitがカンム社売却(2022年・総額150億円規模)と同型で実現するケース | 次期中計が現中計と同じく「目標だけ据え置き」で終わる場合 |
10-3. 第三者試算との横並び
| 出典 | 数値 | 時点 | 注記 |
|---|---|---|---|
| みんかぶ 総合目標株価 | 781円(買い) | 2026年9月3日 | 個人予想・株価診断の総合値 |
| みんかぶ AI理論株価(株価診断) | 624円(割安) | 2026年9月2日 | 「過去比較で割安・相対比較で割高」と両論を併記 |
| みんかぶ 個人投資家予想株価 | 1,018円(買い84%/売り16%) | 2026年8月17日 | 個人投資家の投稿ベース |
| 証券アナリスト予想 | 対象外(カバレッジなし) | ― | 予想人数0人 |
| (参考)会社の中長期イメージ | 時価総額900億円=株価約5,000円 | 2025年11月14日/12月25日開示 | 🔴 業績予想でも目標開示でもない「イメージ」。2029年9月期にEBITDA 60億円・調整後当期利益35億円を達成した場合の想定 |
推察:証券アナリストのカバレッジがゼロであるため、市場のコンセンサスは事実上存在しません。本記事の中立ケース中心値780円は、みんかぶ総合目標株価781円とほぼ一致しますが、これは偶然の一致であり両者が同じ前提に立っていることを意味しません。会社の「株価約5,000円」は、現在値の8.8倍にあたる長期イメージであり、達成の蓋然性を判断できる材料は現時点で開示されていません。
11. 中期経営計画との整合性|EBITDA 60億円目標に対し実績は約半分
事実:2023年12月に公表された中期経営計画(FY24〜FY26)は、最終年度である2026年9月期のEBITDA 60億円を目標としていました。これに対する会社の説明は以下のとおりです。
| 項目 | 2025年9月期実績 | 2026年9月期 当初中計目標 |
2026年9月期 会社予想(現在) |
達成率 |
|---|---|---|---|---|
| EBITDA | 19.5億円 | 60.0億円 | 31.0億円 | 51.7% |
| 営業利益 | 1.0億円 | 非開示 | 13.0億円 | ― |
| 経常利益 | 5.6億円 | 非開示 | 16.0億円 | ― |
| 当期純利益 | 2.8億円 | 非開示 | 7.9億円 | ― |
| 調整後当期利益 | 6.9億円 | 非開示 | 9.5億円 | ― |
事実:会社は差分▲35億円の内訳を①北米事業の不振 ▲15億円、②インフルエンサーマーケティング事業のM&A時の計画と実績との乖離 ▲10億円、③動画・Connected TV領域の粗利減少 ▲10億円と開示しています。そのうえで「EBITDA 60億の達成は、次期中計での実現を目指す」としています。
事実:次期中期経営計画(2027年9月期〜)は2026年11月頃に開示予定で、会社は「改めてEBITDA 60億円、調整後当期純利益35億円の達成を目指す方針」「中長期的な企業価値向上により、時価総額900億円(株価約5,000円)の実現へ」と述べています。なお2025年11月時点で示された2026年9月期のEBITDA予想は25.0億円であり、2026年3月19日の上方修正で31.0億円に引き上げられています。
計画信頼度の判定:低〜中。
低いと判断する理由:現中計の最終年度で目標の約半分(51.7%)にとどまり、その未達額の全額を「次期中計で再挑戦」として同じ数値のまま先送りしている点。未達の3要因(北米・M&A後のUUUM・動画/CTV粗利)のうち、動画・CTVの粗利減は2026年9月期第3四半期に「影響が最大化」した進行中の問題です。
中に押し上げる理由:2026年9月期については、第3四半期時点で経常利益・純利益が通期予想を超過しており、直近1年の会社予想の精度自体は改善していること。EBITDA進捗も79.2%と順調です。
推察:2026年11月頃の次期中計開示は、この会社にとって「3年前と同じ数字をもう一度置くのか、それとも到達経路を具体的に示すのか」が問われる場面になります。単年度の予想(信頼度は改善)と、3年計画(実績は大幅未達)を分けて評価すべきです。
12. カタリストカレンダー(今後3ヶ月)
| 時期 | イベント | 影響度 | 織り込み度 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年11月中旬 (前年は11月14日) |
2026年9月期 通期決算発表。第4四半期からUDN SPORTSのPL取り込み開始 | ★★★★★ | 一部 | 会社IR実績・第3四半期決算説明資料 |
| 時期未定 (合理的な算定が可能になった時点) |
通期業績予想の上方修正の可能性。3Q時点で経常109.8%・純利益170.4%に到達済み | ★★★★☆ | 一部 | 2026年8月18日 質疑応答集 |
| 2026年11月頃 | 次期中期経営計画(FY2027〜)の公表。EBITDA 60億円・調整後当期利益35億円を目指す方針 | ★★★★☆ | 未織込 | 2025年12月25日「事業計画及び成長性に関する事項」 |
| 時期未定 (確定次第公表) |
タレンティオ売却益を財源とする株主還元施策(投資事業の実現利益の30%超) | ★★☆☆☆ | 未織込 | 2026年8月18日 質疑応答集 |
| 2026年12月頃 (前年は12月25日) |
「事業計画及び成長性に関する事項」の年次開示(グロース市場の義務開示) | ★★☆☆☆ | 未織込 | 会社IR実績 |
| 時期未定 | UDN SPORTSの取得議決権比率・取得対価・のれん金額の確定開示 | ★★★☆☆ | 未織込 | 2026年5月15日 中間期決算短信「重要な後発事象」 |
13. レーティング(equity-rating-framework v2.2 準拠)
品質 ★★☆☆☆(35/70) / 価格 B(割安・中立ケースで+38%)
資本イベント素地 6/10(やや高い) / 国策アライン度 1/10(該当なし) / テーマ適合度 17/40(中程度) / 上抜け素地 2/6(⑥への調整なし)
| 軸 | 点数 | 根拠(数値付き1行) |
|---|---|---|
| ①成長性 | 6/10 | 売上はFY23 306億→FY24 517億→FY25 503億→FY26予想556億。FY24の急増はUUUM連結によるもので、オーガニックではFY25が減収・FY26が+10.5%。M&A込みのため上限8点ルールを適用し6点 |
| ②収益性 | 3/10 | FY25の営業利益率0.19%、FY26予想でも2.3%。ROE予想6.6%。一人当たり営業利益はFY23の152.8万円からFY25の9.2万円へ▲94% |
| ③収益の質・連結範囲 | 3/10 | 3Q累計の持分法投資利益7.12億円が営業利益8.04億円とほぼ同額(経常利益17.57億円に対して40.5%)。投資事業のセグメント利益5.82億円は一過性。中間期の営業CF÷営業利益は0.44倍。加えてセグメント再定義で期間比較に注意が必要 |
| ④競争優位性 | 5/10 | IRISは都内タクシーの62.2%に導入、UUUMは国内最大級のクリエイターネットワークと差別化はある。一方で主要顧客1社の商流変更で粗利が数億円動いており価格・交渉力は限定的 |
| ⑤需給ポジション(直近3ヶ月) | 5/10 (N/A固定) |
3ヶ月平均売買代金が1億円未満(9/3は約10百万円)のため、フレームワークのN/A規定に従い5点固定。参考として6/3の615円→9/3の566円で約▲8% |
| ⑥カタリスト(今後3ヶ月) | 8/10 | 通期決算(11月中旬)・次期中計(11月頃)・上方修正余地・UDN SPORTS取込開始と、影響度中〜大の材料が4件以上。うち次期中計と株主還元は未織込。上抜け素地は2/6のため調整なし |
| ⑦リスク耐性 | 5/10 | 自己資本比率30.6%・ネット有利子負債31.6億円(推計)と財務は極端に悪くない。一方でシンガポール子会社の債務超過20.56億円、のれん13.03億円(2026年3月末)、為替差損益の振れ(四半期で▲4.6億〜+4.0億)、会社が明言する有価証券の減損可能性を織り込み中立圏に |
| 合計 | 35/70 | ★★☆☆☆(26-35=★2) |
13-1. 資本イベント素地(TOB/MBO)6/10 — やや高い
🔴 買収される/されるだろうという予想ではありません。公開情報で確認できる構造的特徴の集計です。該当したのは以下6項目です。
- PBR 1倍割れ(0.83倍)
- ネットキャッシュ+保有有価証券が時価総額の50%以上(会社試算100〜150億円 vs 時価総額102億円。ただし会社の自社試算であり第三者検証はありません)
- 創業者・経営陣の持株比率が高い(本田謙氏36.60%・実株ベース)
- 浮動株比率が低く流動性も低い(固定株約54%、1日あたり売買代金は1億円未満)
- 同業種でのTOB事例(当社自身が2024年11月〜12月にUUUMへTOBを実施し完全子会社化)
- 政策保有株の縮減・売却の動き(伊藤忠が2025年12月に役員派遣を終了、2026年6月に一部売却)
該当しなかった項目:上場親会社の存在(なし)、アクティビスト/PEの大量保有(直近1年で確認できず)、東証「資本コストや株価を意識した経営」への対応(ROIC経営を明示しており未対応ではない)、事業承継の論点(本田氏は現役の代表)。
13-2. 国策アライン度 1/10 — 該当なし
予算計上・交付決定・落札実績など当該企業の到達経路は確認できませんでした。ZEALSの「デジタル化・AI導入補助金2026」対象採択はZEALS側の事象であり、フリークアウトHDの業績とは直接結びつきません。
14. まとめ
フリークアウトHDは「連結の数字を見ても分からない会社」です。売上503億円のうち73%を占めるPlaywire(171億円・経常▲0.26億円)とUUUM(195億円・経常3.23億円)はいずれも低採算で、利益の実質的な源泉は売上52億円の株式会社フリークアウト(経常4.96億円)と、連結していないIRIS(持分法投資利益3Q累計7.12億円)です。売上でも連結営業利益でもなく、EBITDAと持分法と一過性を分解して初めて評価できる銘柄です。
ZEALSについては、「2021年時点で第2位株主だった」という事実までは確認できますが、「現在も株主か、何%か」は開示されていません。ZEALSがOmakase AIで再評価されればフリークアウトHDの保有有価証券に効く、という筋書きは論理としては成立しますが、前提が確認できない以上、投資判断の根拠にはできません。2026年3月に売却したのもZEALSではなくタレンティオでした。
数字の評価は「品質★2/価格B」で分かれます。営業利益率2%台・一人当たり営業利益9.2万円・営業CFが利益に追いつかない——品質面の点数は低く出ます。一方でPBR0.83倍、EV/EBITDA約4.3倍(推計)、会社試算で時価総額と同等以上の保有有価証券、希薄化0.05%という価格面は割安圏です。フレームワークの解釈マトリクスで言えば「品質★1-2 × 価格A・B=バリュートラップに注意(安いには理由がある)」の枠に位置します。安い理由は明確で、①中計目標の半分しか達成できていない実行力、②利益の質(持分法・一過性依存)、③大株主の売却圧力の3点です。
今後3ヶ月の焦点は、2026年11月の通期決算と同時期の次期中期経営計画です。会社が3年前と同じEBITDA 60億円という数字を、今度は到達経路とともに示せるかどうか。第3四半期単独が営業赤字だった直後だけに、通期決算の中身と上方修正の有無を含めて、判断材料が集中して出てくる局面になります。
15. 参考文献
| 資料 | 開示日 | 出典ランク |
|---|---|---|
| 2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結) | 2026年8月14日 | A(一次・TDnet) |
| 2026年9月期 第3四半期決算説明資料 | 2026年8月14日 | A(一次・TDnet) |
| 2026年9月期 第3四半期決算 質疑応答集 | 2026年8月18日 | A(一次・TDnet) |
| 2026年9月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結) | 2026年5月15日 | A(一次・TDnet) |
| 投資有価証券の売却及び業績予想の修正に関するお知らせ | 2026年3月19日 | A(一次・TDnet) |
| 主要株主である伊藤忠商事株式会社による当社株式の一部売却、および資本業務提携の継続に関するお知らせ | 2026年6月8日 | A(一次・TDnet) |
| その他の関係会社の異動に関するお知らせ | 2025年12月25日 | A(一次・TDnet) |
| 事業計画及び成長性に関する事項 | 2025年12月25日 | A(一次・TDnet) |
| 新株予約権(有償ストック・オプション及び税制適格ストック・オプション)の発行及び既発行新株予約権の一部放棄に関するお知らせ | 2025年8月14日 | A(一次・TDnet) |
| 2025年9月期 有価証券報告書(EDINET・E30648/docID S100XCVT) | 2025年12月24日 | A(一次・EDINET) |
| 2026年9月期 半期報告書(docID S100Y4DW)/大量保有変更報告書(S100Y7OQ・S100YB07・S100WGBW) | 2025〜2026年 | A(一次・EDINET) |
| 株探(かぶたん)株価・時系列・信用残 | 2026年9月3日 | B(二次・市場データ) |
| みんかぶ 株価予想・AI株価診断 | 2026年9月3日 | B(二次・第三者試算) |
| ZEALSのIPO申請時株主構成(やさしいIPOのはじめ方・ダイヤモンドZAi・船井総合研究所) | 2021年11〜12月 | C(二次・IPO情報) |
| 株式会社ZEALS 第11期決算公告(官報決算データベース catr.jp) | 2026年2月27日 | B(官報の二次収録) |
| ZEALS 会社発表・PR TIMES・日経ビジネス(Omakase AI関連) | 2026年4〜5月 | C(二次・報道) |
16. 免責事項
本記事は公開情報(適時開示・有価証券報告書・決算短信・決算説明資料・市場データ)に基づく調査・分析であり、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。筆者は financial advisor(金融商品取引業者・投資助言業者)ではなく、本記事は投資助言を構成しません。記載した「適正株価レンジ」「レーティング」は評価手法の例示であり、目標株価でも将来の株価予想でもありません。前提が変われば結果も変わります。
「事実」と明示した箇所は出典のある開示情報、「推察」と明示した箇所は筆者の解釈です。「推計」と付した数値は開示された数値からの算出であり、会社が開示した値ではありません。開示から確認できなかった事項は「取得不能」と明記しています。
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