センサー編|自動運転の「目」の日本株を解剖

「自動運転の『目』の銘柄と言われても、カメラ・LiDAR・レーダーのどれに、どの日本企業が関わっているのか分からない」——そう感じていませんか。

トヨタが2028年めどの「レベル2++」を打ち出し、東京ではWaymoの無人タクシーが2027年中の商用化を目標に掲げました。どちらも周囲を認識するセンサーがなければ成り立ちませんが、使うセンサーの種類と数はまったく違います。

この記事では、自動運転の全体像で示した5つの層のうち①目(センサー)を取り上げ、関わる日本の上場企業を事業・製品・採用実績の開示から整理します。

読み終える頃には、センサー関連のニュースを「量産で採用されたのか、開発を発表しただけなのか」で見分けられるようになるはずです。

この記事の要点

  • 自動運転の「目」は、カメラ・LiDAR・ミリ波レーダーの3種類。レベル2++はカメラ中心、レベル4は3種類を重ねて使う
  • 車載LiDARの完成品は中国勢が約9割を握る(Yole調べ)。日本企業の強みは、受光素子・光源・精密モーターなどの部品にある
  • カメラはソニーのセンサーとタムロンのレンズ、レーダーはデンソーと古河電工に量産の実績がある
  • ソニーとTSMCの熊本合弁(2029年量産)はスマートフォン向けで、車載向けとは別の話
目次

なぜ今「目」に注目するのか

自動運転の市場は、自家用車の運転支援(レベル2++)と、無人で走るサービスカー(レベル4)の2つに分かれます。どちらもセンサーが入口ですが、求められるものが違います。

レベル2++は、年間数百万台規模の量販車に載せるため、1台あたりのコストが厳しく問われます。トヨタが示した方式はAIのエンド・ツー・エンド(E2E)にルールベースの安全機構を組み合わせるもので、カメラの映像が判断の中心になると考えられます(採用センサーの構成は公表されていません)。

レベル4は運転者がいないため、1つのセンサーが見落としても別のセンサーで補う「冗長性」が欠かせません。Waymoの第6世代システムはカメラ13個・LiDAR 4個・レーダー6個と外部音響センサーで構成され(2024年8月発表)、2026年2月にはこの世代で従業員向けの完全無人運行を始めたと発表しています。同社は、第5世代よりカメラの数を半分以下に減らしながら性能を上げたと説明しており、センサーの「数を減らしてコストを下げる」競争も始まっています。

「目」とは何か——3つのセンサーと役割分担

センサー 得意なこと 苦手なこと 主な使われ方
カメラ(イメージセンサー+レンズ) 色・形・文字(信号、標識、白線)の認識。安価 夜間・逆光・悪天候、距離の直接計測 レベル2++の主役。E2E AIの入力
LiDAR(レーザーで距離を測る) 数百m先までの距離と立体形状を正確に取得 高価。雨・霧で性能が落ちる レベル4ではほぼ必須。高級車のレベル2++にも一部搭載
ミリ波レーダー(電波) 雨・霧・夜間に強い。相対速度を直接測れる 形の細かい識別が苦手 衝突被害軽減ブレーキ、車間距離制御、死角監視

3種類はお互いの弱点を補い合う関係です。投資の観点では、カメラは量、LiDARは単価、レーダーは安定した採用実績で見るとそれぞれの特徴をつかみやすくなります。

LiDAR市場の現実——完成品は中国勢が9割

調査会社Yole Groupによると、車載LiDAR市場は2024年の8億5,900万ドルから2030年には35億6,000万ドルへ、年率24%で拡大する見通しです(2025年6月発表)。一方で、2024年の市場シェアは中国のサプライヤーが89%を占め、首位のHesai(禾賽科技)が33%を持っています。

完成品のLiDARで日本企業がシェアを取り返すのは簡単ではありません。日本企業にとって現実的な勝ち筋は、LiDARの中に入る部品です。光を受ける受光素子、光を出すレーザー、光を振るモーターや軸受は、中国のLiDARメーカーも買う側にいます。完成品で競うのではなく、部品で相手を顧客にできるかどうかが、日本の「目」の銘柄を見るときの要点です。

センサー層に関わる日本の上場企業マップ

判定は「◎:量産・採用・製品化の開示あり」「○:開発・サンプル段階」です。投資推奨ではなく、各社がセンサーのどこに関わるかを確認するための地図として使ってください。

分野 銘柄(コード) 関わり方 確度
カメラ ソニーG(6758) 車載イメージセンサー、LiDAR用SPAD距離センサー ◎
カメラ タムロン(7740) 車載カメラ用レンズ(センシング用途が9割) ◎
LiDAR部品 浜松ホトニクス(6965) 受光素子(APD・MPPC)、パルスレーザダイオード ◎
LiDAR部品 ローム(6963) LiDAR用高出力レーザーダイオード ○
LiDAR部品 ミネベアミツミ(6479) LiDAR向けモーター・ベアリング ◎
LiDAR部品 QDレーザ(6613) LiDAR光源を用途に掲げる(量産契約の開示なし) ○
LiDAR完成品 小糸製作所(7276) LiDARメーカーの米Ceptonを子会社化 ◎
LiDAR完成品 京セラ(6971) カメラとLiDARを一体化したセンサーを開発 ○
レーダー デンソー(6902) ミリ波レーダーと画像センサーの運転支援システム ◎
レーダー 古河電工(5801) 24GHz帯の周辺監視レーダー ◎

カメラ——量で稼ぐ「目」

ソニーグループ(6758)——イメージセンサーとLiDAR受光の両方を持つ

ソニーセミコンダクタソリューションズは、車載カメラ用のイメージセンサーに加えて、LiDAR用の受光センサーも手がけています。2025年6月10日には、車載LiDAR向けの積層型SPAD距離センサー「IMX479」を商品化すると発表しました。最長300m先の対象物を検知でき、520dToF画素のSPAD距離センサーとして最速の20fpsをうたい、サンプル出荷は2025年秋としています。

注意したいのは、2026年8月11日に確定契約を結んだTSMCとの熊本の合弁会社(Advanced Vision Semiconductor Manufacturing)です。ソニーが約4,650億円、TSMCが約2,820億円を出し、2029年の量産を目指しますが、対象はスマートフォン向けイメージセンサーと発表されています。自動運転の材料として語られることがありますが、車載向けの投資ではない点を区別しておく必要があります。

タムロン(7740)——車載レンズが100億円事業に

カメラの性能はセンサーだけでなくレンズでも決まります。タムロンの2025年12月期は、車載向けの売上が103億円となり、100億円を超えました。車載売上のうちセンシング用途(周囲を認識するためのカメラ)の比率は2024年の85%から2025年は90%に上がっています。同社は新しい中期計画で、車載事業を120億円規模に育てる目標を掲げています。ADASの普及とともに売上が伸びる、センサー層の中でも分かりやすい事例です。

LiDAR——部品で勝つ日本勢

浜松ホトニクス(6965)——光を「受ける」素子の老舗

浜松ホトニクスは、LiDAR用の光半導体を幅広く揃えています。波長905nmに対応したSi APD(アバランシェ・フォトダイオード)、微弱な光を検出するMPPC(SiPM)、そして光源となる870nm・905nmのパルスレーザダイオードです。受光と発光の両方の部品を持っているため、LiDARメーカーの国籍を問わず顧客にできる立ち位置にあります。

ローム(6963)——光を「出す」高出力レーザー

ロームは、LiDARの光源となる波長905nmの高出力レーザーダイオードを開発しています。120W品の「RLD90QZW8」は、発光幅を狭くして温度による波長の変化を抑え、LiDARの検知距離を伸ばせるとしています。2024年9月には1kW級の赤外レーザーダイオードの開発も発表しました。ただし、これらの製品ページでは開発段階と表示されているものもあり、車載LiDARでの量産採用は確認できていません。

ミネベアミツミ(6479)——LiDARを「動かす」精密部品

LiDARの多くは、レーザー光を振って周囲を走査するためにモーターを使います。ミネベアミツミは、LiDAR向けに往復駆動モーター(LATM)、高精度ベアリング、ブラシレスDCモーター、流体動圧軸受モーターなどを提供しています。同社は成長分野の1つに「完全自動運転(LiDAR)」を挙げており、ベアリングで培った精密加工を光学センサーへ広げる狙いです。

小糸製作所(7276)——完成品のLiDARに踏み込んだ

自動車用ランプ大手の小糸製作所は、2025年1月7日(現地時間)に米国のLiDARメーカーCeptonの子会社化を完了しました。短・中・長距離のLiDARを製品群に加え、低消費電力・薄型の特長を生かして自動車メーカーや建機・農機メーカーに提案するとしています。ランプとセンサーを一体で提案できるのが同社の強みですが、完成品の市場では前述の中国勢と正面から競うことになります。

京セラ(6971)・QDレーザ(6613)——開発段階の新方式

京セラは2024年11月11日、カメラとLiDARの光軸を一致させて1つのユニットにした「カメラ‐LiDARフュージョンセンサ」を開発したと発表しました。100m先にある30cmの落下物も検知できるとしていますが、製品化の時期は示されていません。QDレーザも量子ドットレーザーの用途としてLiDAR光源を挙げていますが、量産契約の開示はありません。どちらも「○:開発段階」として見ておくのが妥当です。

レーダー——雨と夜に強い「目」

デンソー(6902)——カメラとレーダーをセットで供給

デンソーは、ミリ波レーダーと画像センサーを組み合わせた運転支援システム「Global Safety Package」を量産しています。2022年1月に発表した第3世代では、レーダーの検知角度と距離を広げ、部品点数を従来の半分以下に減らしました。画像センサーにはAI技術を使い、認識性能を上げています。採用車種には日野レンジャー、レクサスNX、トヨタのノア・ヴォクシーが挙がっています。トヨタのレベル2++でもセンサー供給の有力候補と考えられますが、採用は公表されていません。

古河電工(5801)——死角を見張る準ミリ波レーダー

古河電工はグループ会社の古河ASを通じて、24GHz帯の周辺監視レーダーを量産しています。2022年4月には、体積と重量を約30%減らした新型「MMR2」の量産を始め、マツダのCX-60に採用されました。交差点の右左折時や車線変更時など、前方以外の広い範囲を見張る用途です。自動運転では車の周囲360度を見る必要があるため、こうした側方・後方のレーダーの搭載数も増える方向にあります。

「目」の銘柄を見る3つの物差し

  1. 量産で採用されたか、開発を発表しただけか:車種名や量産開始の時期が開示されているかを確認します。開発発表で株価が動いても、売上になるのは数年後です。
  2. 完成品か、部品か:完成品のLiDARは中国勢との価格競争になります。部品であれば、中国のLiDARメーカーも顧客にできます。
  3. レベル2++向けか、レベル4向けか:レベル2++は台数が多く単価が低い市場、レベル4は台数が少なく単価が高い市場です。同じ「自動運転関連」でも、業績への効き方と時期が違います。

まとめ——日本の「目」は部品とレーダーに実績がある

センサー層を整理すると、日本企業が実績を持つのは、カメラのイメージセンサーとレンズ、LiDARの受光素子・光源・精密モーター、そしてミリ波・準ミリ波レーダーです。完成品のLiDARでは中国勢が先行しており、日本企業の多くは「LiDARの中身」を供給する立場にあります。

レベル2++の量販車が2028年以降に立ち上がればカメラとレーダーの台数が、レベル4の車両が増えればLiDARとその部品の需要が伸びます。どちらの市場の話なのかを確かめてからニュースを読むことが、センサー関連株で判断を誤らないための基本です。

続く②地図(高精度3D地図・位置特定)は地図編で取り上げています。全体像と他の層は、特集ページからたどれます。

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主な出典

本記事は2026年9月23日時点の公開情報にもとづく調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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