2026年9月17日 改訂:8月12日版(2026年6月期決算の精読)に、その後の開示3件——①8月31日発表の第8回新株予約権(行使価額修正条項付・いわゆるMSワラント)による資金調達、②9月7日の三井化学の保有割合5%未満への減少、③9月17日発表の「事業計画及び成長可能性に関する事項」(全47ページ)——を反映して書き直しました。潜在株式を織り込んで適正株価を再計算し、市場規模(TAM)とゲームチェンジャー性の節を新設しています。レーティング基準は前回と同じ equity-rating-framework v2.2 です。前回版からの修正点は記事末尾の「改訂履歴」にまとめました。
マイクロ波化学(9227)は、2027年6月期に売上高15億12百万円・営業利益50百万円の黒字化を計画しています。15カ月決算だった前期を12カ月に換算すると売上は+78.7%、12カ月ベースの営業損益は▲6億72百万円から+50百万円への改善です。
その計画を支える資金として、同社は8月31日に最大164万2,000株(議決権ベースの希薄化率10.34%)の新株予約権を発行し、9月16日に払込を完了し、9月17日からの行使を許可しました。当初行使価額979円で全部行使された場合の差引手取概算額は16億3百万円で、6月末の現預金4億1百万円の約4倍にあたります。
ただし、この16億円は「株価が上がれば増え、下がれば減る」お金です。行使価額は行使のたびに前日VWAPの90.5%へ修正され、9月17日の株価水準(VWAP 815円)で全部行使されると行使による払込額は約12億円にとどまります。9月17日の終値817円は、発行決議前日(8月28日)の979円から▲16.5%の水準です。
本記事では、①今期の伸びの中身、②新株予約権の条件と株価感応度、③成長可能性資料が示した2030年までの構想とその整合性、④市場規模とゲームチェンジャー性、⑤潜在株式を織り込んだ適正株価レンジ——を整理します。強気材料と弱気材料は対等な分量で並べます。
【市場】東証グロース 【決算月】6月期(2025年3月期までは3月決算。2026年6月期は決算期変更に伴う15カ月変則決算=2025年4月〜2026年6月) 【会計基準】日本基準 【単体決算】連結子会社なし 【商号】2026年10月1日付で「MWCC株式会社」へ変更予定(9月25日の定時株主総会での定款変更承認が条件)
本記事は適時開示・決算説明資料・成長可能性資料・EDINETの財務データに基づく調査分析の情報提供であり、売買推奨ではありません。適正株価は評価手法の例示として条件付きで示すもので、目標株価の断定ではありません。
この1カ月で何が変わったか
| 日付 | 開示 | 中身 | 記事への影響 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月31日 | 第三者割当による第8回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行及びファシリティ契約の締結 | 割当先SMBC日興証券。潜在株式1,642,000株、当初行使価額979円、下限588円、上限なし。差引手取概算額1,603百万円 | 財務基盤の再構築に道筋。一方で最大10.34%の希薄化と、行使に伴う継続的な売り供給 |
| 2026年9月7日 | 三井化学の大量保有報告書(変更報告書No.2) | 8月25日〜9月2日に市場内で1日2万株×7営業日=14万株を売却。保有は631,700株(3.97%)へ | 事業会社株主の保有縮小。売却理由は開示されていない |
| 2026年9月16日 | 払込完了・行使許可通知 | 全16,420個について、9月17日〜2027年9月13日(240取引日)の行使を許可 | 行使(=株式の供給)が可能な状態に入った |
| 2026年9月17日 | 事業計画及び成長可能性に関する事項 | MW回転炉床炉(MW-RHF)の実機1号機を2029年、標準機販売を2031年〜とするロードマップ。中外炉工業との戦略的提携。「FY2030時点で売上高100億円の達成を目指す」 | 中長期の構想が具体化。ただし中長期の数値は「参考値であり目標値ではない」と注記 |
今期の伸び|事業別の前期→当期→今期計画
| 項目(百万円) | 2025年3月期 (12カ月・実績) |
2026年6月期 (15カ月・実績) |
同12カ月換算 (算出値) |
2027年6月期 (12カ月・計画) |
計画の伸び (12カ月換算比) |
|---|---|---|---|---|---|
| マイクロ波ソリューション(MWS)事業※1 | 1,608 | 1,050 | 840 | 1,262 | +50.2%(会社表記は15カ月実績比+20%) |
| DualPoreソリューション(DPS)事業※2 | — | 7.3(会社開示) | — | 250 | 新規の通期寄与 |
| 売上高合計 | 1,608 | 1,057 | 846 | 1,512 | +78.7% |
| 営業利益 | +187 | ▲927 | ▲672(会社開示の2025年7月〜2026年6月実績) | +50 | +722百万円の改善 |
| 営業利益率 | 11.6% | ▲87.7% | — | 3.3% | — |
| 粗利率 | 66.8% | 33.5% | — | 59.9% | +26.4pt |
| MWS事業の構成比 | 100% | 99.3% | — | 83.5% | — |
※1 MWS事業は会社の経営指標「Phase別売上高」。※2 DPS事業の2026年6月期の数値は決算短信のセグメント別記載(低濃度貴金属回収事業:売上高7,289千円、売上総利益ベースのセグメント損失3,770千円。2025年9月の事業譲受後の寄与)。12カ月換算は実績×12÷15の単純換算(営業利益のみ会社開示の12カ月実績)。2025年3月期はEDINET(有価証券報告書)、2026年6月期と2027年6月期計画は決算短信・決算説明資料・成長可能性資料。
会社の営業利益の増減分析(成長可能性資料p.31)では、12カ月ベースの▲672百万円から①売上増に伴う粗利増+161、②粗利率の改善+418、③販管費の削減+143を積み上げて+50百万円に届く構図です。改善額722百万円の58%が粗利率の回復に依存しています。会社は理由を「収益性を押し下げた装置製作を伴う案件が一巡」と説明しています。
Phase別の内訳は、Phase 1(研究開発)245百万円、Phase 2(実証開発)847百万円、Phase 3(実機導入)120百万円、Phase 4(製造支援)50百万円。前期に細った入口のPhase 1を100→245百万円へ戻し、Phase 3を10→120百万円へ12倍に伸ばす計画です。Phase 2は契約数を32件→20件へ絞る一方、1件あたり単価の上昇で847百万円(前期887百万円)を維持するとしています。
🔴 DPS事業の250百万円は、前期実績7.3百万円からの立ち上げです。事業譲受は2025年9月で、前期のセグメント損益は売上総利益ベースで▲3.8百万円でした。導入済みは5ライン(2026年6月末)で、成長可能性資料は「複数顧客が商用稼働中」としていますが、1ラインあたりの回収量・単価は開示されていません。250百万円の達成は、ライン数の増加とパラジウム価格の両方に左右されます。
総合評価
| 品質スコア | ★☆☆☆☆(21/70)(前回22/70) |
| 価格判定 | D(割高)/中立ケース ▲20.8%、シナリオレンジ ▲74.7%〜+51.4%(潜在株式込み) |
| 資本イベント素地(TOB/MBO) | 1/10(該当なし) |
| 国策アライン度 | 5/10(中程度)(前回4/10) |
| テーマ適合度 | 22/40(中程度)(前回26/40) |
| 上抜け素地 | 2/6(⑥カタリストに ±0 調整) |
| ゲームチェンジャー判定(鉱山プロセス) | ×(現時点では確認できず) |
| 計画信頼度 | 低 |
| 需給の総合判定 | 重い(潜在株式 合計17.2%) |
採点基準は equity-rating-framework v2.2(品質7軸70点/価格判定A〜Eを分離/需給は直近3カ月・カタリストは今後3カ月の窓)に準拠しています。「良い技術であること」と「今の株価が妥当であること」は別問題という原則に沿い、品質と価格を分けて提示します。
7軸スコアと根拠
| 軸 | 点 | 根拠(数値付き) |
|---|---|---|
| ①成長性 | 2 | 売上高は2024年3月期18億63百万円をピークに、2025年3月期16億8百万円→2026年6月期12カ月換算8億46百万円(前年比▲47.4%)と2期連続で縮小。2027年6月期計画15億12百万円は12カ月換算比+78.7%だが、2025年3月期比では▲6.0%で「回復」の計画。うち2億50百万円は2025年9月の事業譲受によるDPS事業で、オーガニック成長と分けて評価した |
| ②収益性 | 2 | 2026年6月期は営業損失9億27百万円(営業利益率▲87.7%)、粗利率33.5%。1人当たり売上20.7百万円、1人当たり営業損失▲18.2百万円(期末51人で算出)。社員数は2025年3月末49人→2026年6月末51人(+4.1%)。2027年6月期計画は52人で営業利益率3.3%。労働分配率は人件費の総額開示がなくN/A(研究開発費内の人件費は326百万円) |
| ③収益の質・連結範囲 | 2 | 単体決算で持分法・非支配持分の論点はない。一方で①15カ月変則決算で期間比較が成立しない、②DPS事業の譲受(新規事業の取り込み)、③2024年3月期に貸倒引当金7億10百万円を含む特別損失11億9百万円の履歴、④営業CFは2025年3月期▲73百万円→2026年6月期▲459百万円とマイナスが拡大 |
| ④競争優位性 | 6 | マイクロ波プロセスの大型化・商業運転の実績(2014年に大阪で工場を立ち上げ。現在は製造していない)と、20の要素技術からなる技術プラットフォーム。三井物産・PMET Resources・大平洋金属・中外炉工業・三菱ケミカル等と提携。ただし成長可能性資料自身が、リチウム鉱石の煆焼では電気式ロータリーキルン(X社)を「実績多く商用に最も近い」と位置づけ、自社方式は「パイロット」段階と整理している |
| ⑤需給ポジション(直近3カ月) | 1 | 3カ月騰落率▲7.9%(6月19日週終値887円→9月17日817円)に対しTOPIXは+1.2%、▲9.1ptのアンダーパフォーム。加えて新株予約権の発行(最大10.34%)と三井化学の14万株売却という明確な需給悪化が重なった。信用倍率は8月14日1.42倍→9月11日1.64倍へ上昇(買い残1,002.6千株) |
| ⑥カタリスト(今後3カ月) | 6 | 日付が確定した材料は9月25日の定時株主総会と10月1日の商号変更の2件(いずれも概ね織込済)。影響度の大きい2027年6月期第1四半期決算(11月中旬見込み)は日付未確定だが、黒字化計画の初回検証点で未織込。上抜け素地2/6のため調整なし |
| ⑦リスク耐性 | 2 | 自己資本比率8.6%・純資産1億52百万円。現預金4億1百万円に対し借入金8億19百万円(リース債務2億60百万円を含めると10億79百万円)。継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在(会社は「重要な不確実性は認められない」として注記は非記載)。新株予約権の行使が進めば自己資本は厚くなるが、9月17日時点で行使実績は開示されていないため、現時点の点数は据え置いた |
| 合計 21/70 | ★☆☆☆☆(0-25)。前回から⑤需給を2→1へ引き下げ | |
上抜け素地チェック(2/6)
①売買代金:直近1カ月の平均出来高15.2万株÷直近3カ月平均24.0万株=0.63倍(1.3倍未満・✗)/②上値のしこり:52週高値1,620円まで+98%、8月28日終値979円(当初行使価額)までも+19.8%(✗)/③信用買残の重石:信用倍率は1.42倍→1.64倍へ上昇、買い残は877.0千株→1,002.6千株へ増加(✗)/④踏み上げ余地:売り残は615.8千株→611.6千株と横ばいで増加していない(✗)/⑤浮動株:時価総額129.9億円の小型株(○)/⑥未織り込み材料:第1四半期決算(○)。
🔴🔴 上抜け素地は「上がりやすさ」を意味しません。時価総額が小さい銘柄は、悪材料が出たときの下落も同じだけ大きくなります。本件ではさらに、新株予約権の行使で株価が上がるほど株式が供給される構造が加わっています。これはボラティリティと上値の重さの説明であって、売買タイミングを示唆するものではありません。
解釈
品質★1 × 価格D は、解釈マトリクス上もっとも慎重に見るべき組み合わせです。前回からの変化は「資金の手当てに道筋がついた(リスク耐性の改善余地)」と「その代償として需給が重くなった(需給の悪化)」が同時に起きたことで、差し引きで品質スコアはほぼ横ばいです。
第8回新株予約権(MSワラント)の中身
発行条件
| 割当先 | SMBC日興証券(第三者割当) |
| 発行新株予約権数/潜在株式数 | 16,420個/1,642,000株(行使価額が修正されても株数は一定) |
| 発行価額 | 1個あたり304円(総額4,991,680円)。払込は2026年9月16日に完了 |
| 当初行使価額 | 979円(発行決議日の直前取引日=8月28日の終値) |
| 行使価額の修正 | 各行使請求の効力発生日の直前取引日のVWAPの90.5%に修正 |
| 下限行使価額/上限 | 588円(8月28日終値の60%)/上限なし |
| 行使可能期間 | 2026年9月17日〜2029年9月28日(約3年) |
| 行使許可 | ファシリティ契約により、会社が許可した期間・数量の範囲でのみ行使可能。9月16日に全16,420個・240取引日(9月17日〜2027年9月13日)の行使を許可。許可は取消可能 |
| 買取義務 | 行使期間末日に残存する新株予約権は、会社が払込金額と同額で買い取る |
| 希薄化率 | 10.34%(2026年6月30日の総議決権数158,800個に対する比率)。発行済株式数15,904,500株に対しては10.32% |
| ロックアップ類似条項 | 行使完了等までの間、SMBC日興証券の事前承諾なく株式・新株予約権等を発行しない(ストックオプション等を除く) |
| 過去3年のエクイティ・ファイナンス | 該当なし(上場後初の資本調達) |
資金使途(差引手取概算額1,603百万円)
| 使途 | 金額 | 支出予定時期 | 中身 |
|---|---|---|---|
| ① 低濃度貴金属回収(DPS)事業の設備投資 | 300百万円 | 2026年12月〜2028年6月 | カートリッジ量産設備150百万円(2027年1月〜10月)、貴金属の溶出・精製設備80百万円(2027年4月〜12月)、物流・安全等のインフラ70百万円(2026年12月〜2027年6月) |
| ② 新規事業創出 | 500百万円 | 2026年10月〜2028年6月 | 半導体関連を中心としたマイクロ波応用の事業開発・研究開発、第3のソリューション獲得。小規模M&Aも模索するが現時点で具体的な案件はない |
| ③ 事業運営 | 803百万円 | 2026年10月〜2029年6月 | プロジェクト推進に必要な研究開発費・エンジニアの人件費等、発振器内製化・鉱山プロセス標準化の研究開発 |
会社は「行使が進まない場合は③へ優先的に充当」「不足分は手元資金・銀行借入等で賄うか事業計画を見直す可能性」と明記しています。最大の使途が③事業運営(803百万円・50%)である点は押さえておくべきです。2027年6月期は営業黒字化を計画していますが、会社自身は2029年6月までの運営資金を別枠で確保しにいっている、と読めます(推察)。
調達額は株価で決まる——感応度
| 行使時の前日VWAP | 行使価額 | 全部行使時の払込額 | 当初行使価額979円での払込額(16.08億円)比 |
|---|---|---|---|
| 650円以下 | 588円(下限) | 9.65億円 | ▲40% |
| 815円(9月17日の実績) | 737.6円 | 12.11億円 | ▲25% |
| 900円 | 814.5円 | 13.37億円 | ▲17% |
| 約1,082円 | 979円 | 16.08億円 | ±0% |
行使価額=前日VWAP×90.5%(下限588円)。払込額=1,642,000株×行使価額で、発行価額の払込(約5百万円)と発行諸費用(約9百万円)を含まない算出値です。VWAPが588円を下回る局面では、割当先が行使する経済合理性は乏しくなります。
🔴 会社が示す手取概算1,603百万円は「当初行使価額979円で全部行使された場合」の金額です。行使のたびに価額が修正される設計のため、実際にこの金額を得るには、行使期間を通じた前日VWAPの平均がおおむね1,082円(9月17日終値比+32%)である必要があります。
株価の反応(日足で確認)
| 日付 | 終値 | 前日比 | 出来高 | 出来事 |
|---|---|---|---|---|
| 8月28日(金) | 979円 | +3.49% | 211,700株 | 発行決議の直前取引日(当初行使価額の基準) |
| 8月31日(月) | 945円 | ▲3.47% | 144,100株 | 取引時間後の16:00に発行を開示 |
| 9月1日(火) | 891円 | ▲5.71% | 285,800株 | 開示後の初日 |
| 9月2日(水) | 850円 | ▲4.60% | 185,900株 | — |
| 9月16日(水) | 811円 | ▲1.10% | 114,000株 | 払込完了・行使許可を開示(15:30) |
| 9月17日(木) | 817円 | +0.74% | 114,900株 | 行使可能期間の初日。取引時間後の17:30に成長可能性資料を開示 |
8月28日から9月2日までの4営業日で▲13.2%、9月17日までで▲16.5%。なお、8月31日の下落は開示(16:00)の前であり、発行を受けた反応は9月1日以降です。同じ期間に三井化学が1日2万株の売却を続けていました(後述)。
この調達をどう評価するか
| 良い面(事実と推察) | 悪い面(事実と推察) |
|---|---|
|
・自己資本1億20百万円・自己資本比率8.6%からの財務基盤の再構築に道筋がついた。全部行使なら自己資本は約11〜17億円規模へ(6月末の自己資本1億20百万円+払込額9.7〜16.1億円による単純推計) ・交付株式数が1,642,000株で固定され、株価が下がっても希薄化が10.34%を超えない(MSCBとの違い) ・行使許可・取消が会社側の判断で可能。下限588円の設定 ・使途①DPS設備投資が具体的(金額・時期・設備内容を開示) |
・既存株主の持分が最大10.34%薄まる。既存ストックオプションの潜在株式1,094,700株(6.9%)と合わせると潜在株式は合計17.2% ・割当先の行使→市場売却が見込まれる構造で、株価が上がる局面ほど売り供給が出やすい(上値の重さ) ・調達額は株価次第で、9月17日の水準では会社の想定より約25%少ない ・最大の使途が③事業運営(50%)で、成長投資というより運営資金の性格が強い(推察) ・②新規事業500百万円は具体的案件が未定 |
需給と株主構成
三井化学の保有縮小
三井化学は上場時から5%超を保有する事業会社株主(EDINET DBの保有目的分類は「戦略的保有」)でしたが、9月7日提出の変更報告書で、8月25日〜9月2日の7営業日に毎日2万株ずつ、計14万株を市場内で売却したことが分かりました。保有は771,700株(6月30日時点4.85%)→631,700株(3.97%)です。
売却の開始は新株予約権の発行開示(8月31日)より前で、売却理由は開示されていません。5%を下回ったため、今後の売却は大量保有報告書では報告されません。残る631,700株は、直近1カ月の平均出来高(約15万株)の約4日分にあたります。
大株主(2026年6月30日現在)と経営体制
| 株主 | 持株比率 | 備考 |
|---|---|---|
| 吉野 巌 | 7.92% | 代表取締役社長CEO(前職 三井物産) |
| 塚原 保徳 | 6.90% | 代表取締役CSO(大阪大学大学院理学研究科 博士後期課程修了) |
| 三井化学 | 4.85% | 9月2日時点で3.97%へ減少 |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 1.87% | — |
| 大和証券 | 1.55% | — |
| Mitsui Kinzoku-SBI Material Innovation Fund | 1.30% | — |
| 千島土地 | 1.26% | — |
出典:8月31日付「第8回新株予約権の発行に関するお知らせ」の「募集前の大株主及び持株比率」(発行済株式総数に対する実株ベース)。
代表取締役2名で実株14.82%を保有しており、経営陣のコミットメントは中〜強の水準です。執行体制には三井物産・双日・キーエンス・住友化学・三菱ケミカル・日本高周波・デロイトトーマツ出身者が並び、社外取締役3名(うち2名が監査等委員)と、公認会計士の常勤監査等委員が監督にあたります。経営体制の判定は「○(代表2名への依存は残るが、専門人材で補強中)」とします。社員数は2027年6月末計画で52人と「厳選採用」に転じており、売上+78.7%の計画に対して人員はほぼ横ばいです。
需給の総合判定:重い
| 潜在株式 | 第8回新株予約権1,642,000株(10.3%)+ストックオプション1,094,700株(6.9%)=2,736,700株(17.2%)。しきい値10%超 |
| 行使に伴う供給 | 240取引日で均等に行使された場合、1日あたり約6,800株(直近1カ月平均出来高の約4.5%)。実際の行使ペースは株価と出来高に依存 |
| 事業会社株主 | 三井化学が14万株を売却し、残631,700株(3.97%) |
| 信用残(9月11日) | 売り残611.6千株・買い残1,002.6千株・信用倍率1.64倍。買い残は発行済株式の6.3% |
大相場チェック(過去3年)
過去3年(2023年9月〜2026年9月)の株価レンジは、安値345円(2025年4月)〜高値1,729円(2023年9月)。うち2025年4月の安値345円から2026年1月15日の高値1,620円まで約4.7倍の大相場がありました。9月17日の817円は、この高値から▲49.6%、安値からは+136.8%の位置です。
| 局面 | 株価 | 確認できる材料(事実) | 読み(推察) |
|---|---|---|---|
| 2025年8月〜10月 | 月足で+19.5%、+10.9%、+2.8% | 9月8日 DPS事業の譲受、9月25日 三菱ケミカルとのアクリル樹脂リサイクル材のHonda採用、9月29日 三井物産とリチウム鉱石のパイロット実証開始(8月の上昇要因は本稿では特定できず) | 材料の連続で底入れ |
| 2026年1月(月足+71.8%) | 1月13日+17.2%、14日+29.4%(いずれもストップ高)、15日にザラ場高値1,620円(終値1,350円)、16日▲10.8% | 1月13日 CoreTissue BioEngineeringと組織再生型靱帯の量産装置開発を開示。株探は14日の急騰をこの材料と結びつけて報じた。15日は同社の市況記事が「マテリアル系が全軍躍動」と伝えた日(15日の出来高1,327万株) | 個別材料に、素材・資源テーマへの資金流入が重なった需給主導の上昇 |
| 2026年5月 | 5月22日・25日に2日連続ストップ高、27日にザラ場高値1,415円(出来高948万株)、その後2日で▲14.7% | 22日・25日の上昇要因は本稿では特定できず。26日の取引時間後に標準ベンチ装置による鉄鉱石の還元成功を開示し、27日は5連騰 | テーマ(鉄鋼の脱炭素)への反応。業績の裏付けは伴っていない |
| 2026年6月〜9月 | 907円→817円 | 8月12日 15カ月決算(営業損失9億27百万円、重要事象等の記載)、8月31日 新株予約権の発行、三井化学の売却 | 財務・需給要因による調整 |
いずれの急騰も業績の改善を伴わない材料・テーマ主導で、その後は剥落しています。過去の数倍化は再急騰への期待を生む一方、高値圏で買った投資家の戻り売りと、今回の新株予約権の行使売りが上値を抑える構造です。
成長可能性資料(2026年9月17日)を読む
今回の資料は全47ページ。前回(2025年5月)の成長可能性資料から、事業の区分と打ち出し方が大きく変わりました。要点は「広げて、継続収益へ」の一言です。
3つの「広げる」と事業区分の変更
| 軸 | 現在地(会社の実績記載) | 行き先(会社の目標・イメージ) |
|---|---|---|
| ① 領域|化学・材料 → 資源・金属 | 三井物産/PMETとリチウムで約700t/年規模のパイロット実証中。中外炉工業と戦略的提携 | MW-RHF(マイクロ波回転炉床炉)を標準機として確立。2029年に実機1号機、2031年〜標準機の販売 |
| ② 技術|マイクロ波+DualPore+第三のソリューション | 2025年9月にDPS事業を譲受。めっき排液工程で5ラインに導入済み | 製造・回収能力を整備し稼働ライン数を積み上げる。第三のソリューションを探索 |
| ③ 市場|国内 → 海外 | 既存顧客の適合工程がベトナムの拠点で商用稼働 | 商用運用の型が完成した工程を、顧客接点のある地域から順に置く |
前回資料の4分野は、「新規事業→新規事業/DPS(収益化段階へ移行したため分離)」「鉱山プロセス→MWS(資源・金属)」「ケミカルリサイクル→MWS(既存事業)(対象を金属・ガラスを含むリサイクル全般へ拡張)」「炭素繊維等→MWS(既存事業)」に組み替えられました。
中期ビジョン(FY2030までの結果指標)
| 区分 | FY2030までの主な打ち手 | 結果指標(会社記載) |
|---|---|---|
| 基盤|MWS全般 | 新規案件の獲得と継続/小型装置の標準化・事業モデルの確定/発振器の内製化と大型化 | 5機の社会実装(ケミカルリサイクル・グリーン関連/鉱山関連(回転炉床炉)/小型装置) |
| 基盤|MWS鉱山・資源 | MW-RHFの標準化/経済性試算/提携先・販売先の確保 | (個別の結果指標の記載なし) |
| 成長|DPS | 供給力強化(設備投資)/新排液・元素・地域への展開 | (個別の結果指標の記載なし。FY28/6以降の定量目標は未開示) |
| 探索|新規・第3のソリューション | 案件を仕入れる体制の確立 | 30/6期 継続収益比率 50%(小型装置販売事業/DPS/新規事業) |
| 全社 | — | 26/6期〜30/6期の5期累計 130〜140億円(内訳 MWS 60〜70%/DPS 20〜25%/新規 10〜15%。指標名の記載なし) |
さらに「長期成長イメージ」のページには、「FY2030時点で売上高100億円の達成を目指す」と記載されています。一方で同資料は、中期ビジョンのページに「本資料中の中長期の数値は参考値であり、目標値ではありません」、DPS事業のページに「FY28/6以降の定量目標は未開示」と注記しています。
🔴 資料内の数値をそのまま足し合わせると整合しない
「5期累計130〜140億円」には指標名(売上高かどうか)が明記されていません。仮にこれが売上高の累計だとすると、既に確定・計画済みの26/6期(10.6億円)と27/6期計画(15.1億円)を差し引いた残りは、28/6期〜30/6期の3期合計で104〜114億円です。30/6期単年で100億円を達成するなら、28/6期と29/6期の合計は4〜14億円となり、27/6期計画(15.1億円)を下回ります。
つまり「5期累計130〜140億円(売上高)」と「FY2030に売上高100億円」は、同時には成立しにくい組み合わせです。考えられる解釈は、①累計の指標が売上高ではない、②「FY2030」が30/6期より後の期を指す、③長期イメージのグラフ上の到達点を指している——などですが、資料からはどれか特定できません。本記事では中長期の数値を適正株価の前提に使わず、会社への確認事項として扱います。
MWS事業のロードマップ
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 足元〜2028年 | Phase 1・2と小型装置の販売で収益を回しながら、中外炉工業およびパートナーとの開発でMW-RHFの技術基盤を確立 |
| 2029年 | パートナー企業へMW-RHF実機1号機を納入・運転開始 |
| 2031年〜 | 標準機の販売(装置販売+ライセンス+保守の継続収益モデルへ) |
| 2035年〜 | 再エネが豊富で電力コストの低い地域を中心にグローバル拡販 |
会社は「記載の時期は現時点の想定であり、実機の納入・標準機の販売時期はパートナー企業および顧客の投資判断を前提とします」と注記しています。発振器の内製化は、試作機の完成・評価を28/6期に計画(当初計画から部品・部材の遅延で約6カ月後ろ倒し)。
鉱山プロセスの開発案件(成長可能性資料p.20)
| 対象鉱種 | パートナー | プロセス | Phase | 進捗(会社記載) |
|---|---|---|---|---|
| リチウム | 三井物産/PMET Resources | 煆焼 | Phase 2 | 約700t/年規模のパイロット実証中。三者MOU締結(2026年6月30日) |
| ニッケル | 大平洋金属 | 煆焼・還元 | Phase 2 | 小型検証を継続。2030年度を目処に実機導入 |
| ベリリウム | MiRESSO | 溶解 | Phase 2 | 核融合炉向けパイロット設備を2024年度に受注 |
| 鉄鉱石 | 自社開発 | 還元 | — | 標準ベンチ装置で約15kgの還元に成功(2026年5月) |
| マンガンノジュール | 東京大学/東京都GX | 煆焼 | Phase 2 | 数十kg規模の煆焼試験を完了。数t規模へ移行予定 |
| 非開示 | 非開示 | 煆焼 | — | スケールアップに向けた検証・引合い段階 |
リチウムのパイロットは約700t/年規模で、会社が競合比較の前提に置く実機は「25t/h・年20万t」。パイロットから実機までの規模差は約285倍(算出値)です。
DPS事業の段階計画
| Step | 時期 | 主な取り組み | 通過目標 |
|---|---|---|---|
| Step 0(進行中) | 〜FY27/6 | 複数顧客・ラインで運用手順を標準化、製造設備投資に着手(2026年12月〜)、銀製錬・化学合成排液の実証継続 | 回収量・原価・リードタイムを実績値で把握し、同じ手順を他ラインで再現できる |
| Step 1 | 〜FY28/6 | 量産製造体制の立ち上げ、回収工程の処理能力確保、製造原価の把握と改善 | カートリッジの安定供給体制の確立 |
| Step 2&3 | 〜FY29/6 | 対象排液(ENIG/ENEPIG、錫パラ等)の適合判断、他元素(Pt・Rh・Ir・Au)の初期見極め、ASEANを中心に展開 | テーマごとに計画算入の可否を判定し、保留・撤退を明示 |
| Step 4 | FY29/6以降 | 製造最適化によるコスト低減、溶離・精錬条件の最適化、バリューチェーンの前後強化 | ライン数の拡大に依存せず1ラインあたりの収益性が改善 |
地域展開の順序は「日本・ベトナム(最優先)→ASEAN・台湾(次の重点)→中国(中期以降)」。収益式は「回収金属販売額=導入ライン数×1ラインあたり年間回収Pd量×Pd価格」で、回収した貴金属の価値を顧客と分け合うモデルです。パラジウム価格の変動が売上に直結する点は、計画を見る際の前提として押さえておく必要があります。
2026年6月期決算の要点(前回版から再掲・修正)
予実の乖離
| 項目 | 期初計画(2025年5月9日) | 修正計画(2026年5月12日) | 実績 | 期初計画比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,613百万円 | 1,044百万円 | 1,057百万円 | ▲556百万円(▲34.5%) |
| 営業利益 | ▲853百万円 | ▲954百万円 | ▲927百万円 | ▲74百万円 |
| 経常利益 | — | — | ▲948百万円 | — |
| 当期純利益 | — | — | ▲964百万円(1株当たり▲60.77円) | — |
売上未達の理由を会社は「複数の大型プロジェクトの受注遅延」「脱炭素投資の足踏みを背景とした大型案件の進捗遅延」と説明しています。売上が5億56百万円ショートしても営業損失の拡大を74百万円に抑えたのは、遅延案件に付随する原材料・設備の調達時期の先送りと採用の抑制によるもので、コスト統制は機能したが、稼ぐ力が改善したわけではない点は区別が必要です。
Phase別売上高の推移
| Phase(百万円) | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年6月期(15カ月) | 2027年6月期計画 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Phase 1(研究開発) | 309 | 567 | 565 | 258 | 100 | 245 |
| Phase 2(実証開発) | 320 | 593 | 1,274 | 1,330 | 887 | 847 |
| Phase 3(実機導入) | 30 | 35 | — | 15 | 10 | 120 |
| Phase 4(製造支援) | 200 | — | — | 0 | 52 | 50 |
| その他 | — | 19 | 24 | 4 | 0 | — |
| 合計 | 860 | 1,215 | 1,863 | 1,608 | 1,050 | 1,262 |
| 契約総数(件) | 41 | 61 | 64 | 71 | 61 | 63 |
| 新規契約獲得数(件) | 18 | 27 | 27 | 24 | 25 | 25 |
契約総数の前期比▲10件は主にPhase 1の減少(32件→26件)で、Phase 2以降は34件と前期並み。2027年6月期はPhase 1を40件へ増やし、Phase 2を20件へ絞る計画です。新規契約25件のうちPhase 2以降からの開始が5件と過去最多で、会社は「基礎検証を経ずに実証段階から入る案件が増加し、獲得案件の質が向上」と説明しています。
貸借対照表とキャッシュ・フロー
| 項目(百万円) | 2025年3月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現預金 | 507 | 401 | ▲106 |
| 売掛金 | 598 | 137 | ▲461 |
| 資産合計 | 2,124 | 1,399 | ▲725 |
| 借入金(1年内返済分を含む) | 382 | 819 | +437 |
| リース債務 | 280 | 260 | ▲20 |
| 純資産 | 1,064 | 152 | ▲912 |
| 自己資本比率 | 50.1% | 8.6% | ▲41.5pt |
| 営業CF(期間) | ▲73 | ▲459 | — |
| 投資CF(期間) | ▲147 | ▲87 | — |
| 財務CF(期間) | +198 | +440 | 長期借入れ500、株式発行21 |
営業CFのマイナスは15カ月で4億59百万円に拡大し、第4四半期に実行した長期借入5億円(みなと銀行3億円・日本政策金融公庫2億円、いずれも期間5年)で現預金の減少を1億6百万円に抑えた構図です。総額5億円のコミットメントラインも更新しています。
🔴 継続企業の前提に関する重要事象等
会社は「売上高が当初予想を下回り、営業損失、経常損失及び当期純損失を計上」「純資産が減少し、自己資本比率が低下」したことから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると開示しています。対応策(鉱山プロセス事業・DPS事業による顧客基盤と収益源の多様化、長期借入5億円、コミットメントライン5億円の更新)を踏まえ、「重要な不確実性は認められない」として注記は付していません。新株予約権の発行理由にも「財務基盤の再構築を図ることが必要」と明記されました。
テーマ性の検証
テーマの定義:「重要鉱物・金属製錬の熱プロセスを、化石燃料の燃焼からマイクロ波による電気の直接加熱へ置き換える(あわせて、排液からの貴金属回収で供給源を増やす)」。
認定は判断軸で行い、①政策・規制の裏付け(経済安全保障・重要鉱物、GX)、②技術的な非連続性(外部からの伝熱加熱からマイクロ波の内部加熱への置換)、④実装マイルストーンの公開(MW-RHF実機1号機2029年、大平洋金属の実機導入2030年度目処)、⑤複数の大手・大学が資金と資源を投じている(三井物産、PMET Resources、大平洋金属、中外炉工業、東京大学)——の4項目を満たすため、テーマとして扱います。③第三者によるTAM推計は、次節のとおり会社の推計が中心で、第三者の裏付けは部分的です。
提携・案件の◎○×判定(2026年9月17日時点の開示ベース)
| 領域 | 案件 | パートナー | 公表 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 鉱山・資源 | 低炭素リチウム鉱石製錬のパイロット実証(約700t/年規模) | 三井物産 | 2025年9月29日 | ○ 実証段階(Phase 2) |
| リチウム鉱石製錬技術の商業化検討に向けたMOU | PMET Resources/三井物産 | 2026年6月30日 | ○ MOU段階(商業化の契約ではない) | |
| ニッケルの煆焼・還元(2030年度目処に実機導入) | 大平洋金属 | 2026年9月17日の成長可能性資料に記載 | ○ 実証段階(Phase 2) | |
| 核融合炉向けベリリウム溶解のパイロット設備 | MiRESSO | 2024年度に受注(同資料に記載) | ◎ 受注確認(売上計上時期・金額は非開示) | |
| MW-RHFの装置開発での戦略的提携 | 中外炉工業 | 同資料に記載 | ○ 提携段階 | |
| 標準ベンチ装置による鉄鉱石の還元(約15kg) | 自社開発 | 2026年5月26日 | ○ ベンチ実証完了 | |
| マンガンノジュールの煆焼試験(数十kg規模完了) | 東京大学/東京都GX | 2026年4月28日 | ○ 研究段階 | |
| リサイクル・化学 | 低濃度貴金属回収事業の譲受(5ラインに導入済み) | ㈱ディーピーエス | 2025年9月8日 | ◎ 事業化・収益計上 |
| 共同開発技術で再生したアクリル樹脂リサイクル材がHondaの新型軽乗用EVに採用 | 三菱ケミカル | 2025年9月25日 | ◎ 量産採用 | |
| 太陽光パネルガラスのカレット水平リサイクル実証 | TREホールディングス | 2025年10月28日 | ○ 実証段階 | |
| マイクロ波真空溶剤蒸留回収装置の開発 | コーベックス | 2026年2月3日 | ○ 開発着手 | |
| その他 | 膝前十字靱帯再建用「組織再生型靱帯」の量産装置の開発 | CoreTissue BioEngineering | 2026年1月13日 | ○ 開発着手 |
| 半導体 | 半導体関連のマイクロ波応用(新規事業) | —(自社) | 成長可能性資料・新株予約権の開示 | ○ 自社の探索・検証段階(提携案件・売上は未開示) |
◎=収益計上・受注・量産採用が確認できるもの、○=実証・研究・MOU・提携段階、×=会社開示で確認できないもの。すべて会社が公式に発表・記載した案件で、市場で「関連」と呼ばれているだけの事業は含めていません(株探のテーマ欄にある「核酸医薬」「ペプチド」などは、今回の会社資料で現在の事業として確認できないため数えていません)。
三井物産の事業全体については 三井物産(8031)の分析記事 も参照してください。
テーマ適合度の4軸採点(22/40・中程度)
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 3 | 鉱山・資源領域の売上は開示されていない。DPS事業(貴金属回収)の2026年6月期売上は7.3百万円(全社の0.7%、決算短信)、2027年6月期計画250百万円(同16.5%)。鉱山プロセスは実機1号機が2029年の想定で、現時点の売上寄与は小さいと見られる(推計)。前回4点から、ロードマップの開示で売上化時期が年単位で先と確認できたため1点引き下げ |
| ②純度 | 9 | マイクロ波プロセスが主業。時価総額129.9億円の小型株で、テーマの成否が企業価値を直接左右する構造 |
| ③サイクル位置 | 3 | 一巡。2026年1月(高値1,620円)と5月(高値1,415円)に2度の急騰をこなし、9月17日は817円(1月高値比▲49.6%)。新株予約権の行使売りが加わり、再燃には新しい材料が要る |
| ④希少性 | 7 | マイクロ波プロセスの産業実装を専業とする上場企業は国内で実質同社のみ。ただし会社自身の競合比較で、リチウム鉱石の煆焼には電気式ロータリーキルン(X社・商用に最も近い)、電気フラッシュ煆焼(Y社・大型実証中)という「電化」の別方式が並ぶ。前回9点から、テーマ内の相対位置を反映して2点引き下げ |
| 合計 22/40 | 中程度(前回26/40・やや高い) | |
🔴 ①量的寄与と③サイクル位置の乖離を明記します。鉱山プロセスは会社が重点領域と位置づけ、ロードマップも具体化しましたが、売上に乗るのは2029年の実機1号機以降という想定で、現時点の業績の裏付けは乏しい状態です。テーマとしてはすでに2度の急騰をこなした一巡局面にあります。株価はテーマとして反応しうるが、業績の裏付けを伴わない——グロース株で最も誤読されやすい構図です。
🔴 純度・希少性は両刃です。テーマの純度が高く時価総額が小さいほど材料への反応は大きくなりますが、失速時の下落も同じだけ大きくなります。有利さの指標ではありません。
市場規模(TAM)と当社のポジション
事業別のTAM
| 事業 | 市場の定義 | TAM | 対象年・地域 | 出典・格 | CAGR |
|---|---|---|---|---|---|
| MWS(資源・金属) | 非鉄金属溶解炉とロータリーキルンの市場を合算し、重複を調整したもの | 1.4兆円 | 2030年・世界(USD/JPY=140円) | 会社推計(成長可能性資料p.20)。元資料は①非鉄金属溶解炉市場(LinkedIn掲載の記事)、②Credence Researchのロータリーキルン市場 | 約7%(会社記載) |
| ロータリーキルン(元資料②単独) | 6億7,299万ドル→8億5,120万ドル(140円換算で約942億円→約1,192億円) | 2024年→2032年・世界 | Credence Research(調査会社)。本稿で公表ページを確認 | 2.98%(2024→2032年) | |
| DPS(貴金属回収) | 電気・電子機器産業のパラジウム需要 | 350億円+α(国内350億円、東南アジアは+α) | 国内は2020年実績ベース | 会社試算(JOGMEC「鉱物資源マテリアルフロー2022 白金族」等をもとに算出) | — |
| SAM:PCB/FCBめっき業界のパラジウム使用量 | 118億円 | 日本+東南アジア | 会社試算(有償調査・経産省生産動態統計等) | — | |
| 対象排液:低濃度排液に含まれるパラジウムの金属価値 | 59億円 | 日本+東南アジア | 会社試算。🔴 会社は「売上高・獲得可能市場ではない」と注記 | — |
🔴 第三者推計として確認できたのはロータリーキルン市場(約942億円・2024年)のみで、会社が示す1.4兆円の大部分は「非鉄金属溶解炉」市場に由来すると読めます(推察。元資料の金額は本稿では未確認)。溶解炉はアルミ・銅などを溶かす炉で、会社が狙う鉱石の煆焼・還元とは工程が異なるため、1.4兆円は「当社の装置が置き換えうる市場」より広い定義と見るのが妥当です。またCAGRも、確認できた第三者推計(2.98%)は会社記載(約7%)の半分以下です。
SAMと浸透率
| 事業 | 分母 | 分子(直近の売上) | 浸透率 | 分母を絞った理由 |
|---|---|---|---|---|
| MWS(資源・金属) | 1.4兆円(会社推計TAM) | MWS事業全体の12カ月換算8億40百万円(鉱山分は非開示のため上限値) | 最大0.06% | 鉱山領域の売上が非開示で、SAMを絞る根拠データがない |
| DPS | 59億円(対象排液の金属価値) | 2026年6月期 7.3百万円(会社開示) | 0.1%(計画250百万円なら4.2%) | 既存手段で回収できない低濃度排液に限定。ただし「金属価値」であり売上の上限そのものではない |
浸透率が1%に満たないことは、「伸びしろが大きい」と「まだ何も証明されていない」の両方を意味します。分母を広く取るほど浸透率は小さく見え、伸びしろは自動的に大きく見えます。これは発見ではありません。
本記事の適正株価では、この浸透率を前提として共有します。DPS事業は対象排液59億円に対するシェアを弱気2.0%(118百万円)/中立4.2%(250百万円=会社計画)/強気6.0%(354百万円)、鉱山プロセスは1.4兆円に対し弱気・中立0%/強気0.1%(14億円・2031年以降の売上として割引)と置きます。
ゲームチェンジャー判定(鉱山プロセス):×(現時点では確認できず)
| 問い | 現在地(開示ベース) | 評価 |
|---|---|---|
| 1. 置換対象は何か | 化石燃料バーナーを使う従来型ロータリーキルン(LNG燃焼)による鉱石の煆焼・還元。確認できた第三者推計ではロータリーキルン市場は約942億円(2024年) | 置換対象は明確 |
| 2. 優位の定量 | 従来型キルン比で年間総コスト10〜30%低減、エネルギー効率60〜120%改善、ダスト発生60〜90%低減、CO2排出90%削減(再エネ利用前提)。いずれも「実機25t/h・年20万t・豪州立地・CAPEX5年償却」を前提とした当社概算 | 数字はあるが第三者検証・実機実績ではない |
| 3. 普及の障壁 | パイロット(約700t/年)から実機(年20万t)への約285倍のスケールアップ、発振器の供給制約(会社自身が「事業化のボトルネック」と記載)、顧客の設備投資判断、電力コスト(再エネが豊富な地域が前提) | 障壁は高い。中外炉工業との提携で装置面は補強 |
| 4. 実装エビデンス | 鉱山領域はPhase 2(パイロット)が最上位。商業化はMOU段階。実機1号機は2029年の想定、大平洋金属の実機導入は2030年度目処。ベリリウムのパイロット設備は受注済み | 商用採用に未到達 |
| 5. 既存側の反撃と代替技術 | 会社の整理でも、電気式ロータリーキルン(X社)が「実績多く商用に最も近い・既存キルンからの置き換えが容易」、電気フラッシュ煆焼(Y社)が「大型実証中・高速・微粉対応」 | 「電化」自体は差別化にならないと会社も認識。差別化は熱効率・歩留まり・低CAPEX |
判定基準では、②優位の定量が第三者・実機で裏付けられ、④商用採用に到達して初めて◎とします。現状は②が当社概算、④がパイロット段階のため×(現時点では確認できず)です。これは技術の否定ではなく、2029年の実機1号機が「産業を作り替えうるか」の最初の検証点という意味です。
なれなかった場合に何が残るか:①化学・材料分野のMWS事業(Phase 1・2の開発受託が中心。Phase別売上は2022年3月期〜2026年6月期に12カ月換算で年8〜19億円)、②DPS事業(ストック型の回収収益。2027年6月期計画250百万円)、③20の要素技術と特許・ノウハウ、④新株予約権で調達する資金(株価次第で約10〜16億円)。一方で、鉱山プロセスに投じた研究開発費と時間は回収できない可能性があり、その場合は調達資金が運営費に充当されていく(使途③)構図になります。
適正株価の考え方(評価手法の例示・断定はしない)
以下は独自の前提に基づく推計であり、目標株価ではありません。前提:株価817円(2026年9月17日終値)、発行済株式15,904,500株、時価総額129.9億円、ネットデット4億18百万円(借入金8億19百万円-現預金4億1百万円。リース債務は含めず)。事業の経済性が異なるため、MWS事業とDPS事業を分けたSOTPで評価し、今回から第8回新株予約権の潜在株式1,642,000株と払込額を織り込みました。
シナリオ別レンジ(潜在株式込み)
| シナリオ | MWS事業 | DPS事業 | 鉱山プロセスのオプション価値 | 新株予約権 | 1株価値 | 現在株価比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 弱気 | 売上10.0億円×EV/売上3倍=30.0億円 | 1.18億円(対象排液の2.0%)×6倍=7.1億円 | 0(シェア0%) | 株価が下限588円付近を割り込み行使されない(株数15,904,500株) | 207円 | ▲74.7% |
| 中立 | 12.62億円(会社計画)×6倍=75.7億円 | 2.50億円(会社計画・4.2%)×12倍=30.0億円 | 0(シェア0%) | 9月17日の水準(行使価額737.6円)で全部行使、払込額から諸費用を引いた12.0億円を加算(株数17,546,500株) | 647円 | ▲20.8% |
| 強気 | 12.62億円×9倍=113.6億円 | 3.54億円(6.0%)×20倍=70.8億円 | 20.9億円(TAM1.4兆円の0.1%=売上14億円×3倍を5年・15%で割引) | 行使価額979円相当で全部行使、16.0億円を加算(株数17,546,500株) | 1,237円 | +51.4% |
株式価値=事業価値合計−ネットデット4.18億円+新株予約権の払込額(純額)。倍率は同社の過去PSRレンジ(2023年3月期26.0倍〜2025年3月期4.9倍)を参照した独自の前提で、DPS事業にはストック型収益の継続性を反映して高めの倍率を置きました。シェア前提は「市場規模(TAM)と当社のポジション」の節と同じ数字です。ストックオプションの潜在株式1,094,700株は行使価額の内訳を確認できていないため株数に含めておらず、行使されれば追加の希薄化要因になります。
中立ケースは前回の638円(潜在株式を含めず、株価898円に対し▲28.9%)からほぼ横ばいですが、株価が817円へ下がったため、割高度は▲20.8%へ縮小しました。価格判定はD(割高)のままです。
各シナリオの成立条件/崩れる条件
| シナリオ | 成立する条件 | 崩れる条件 |
|---|---|---|
| 弱気(207円) | 2027年6月期も大型案件が後ろ倒しになり黒字化が未達。株価が下限行使価額を下回り、新株予約権による調達が進まない。DPS事業のライン数が伸びない | 第1・第2四半期で受注と粗利率の改善が確認され、新株予約権の行使が進む |
| 中立(647円) | 2027年6月期計画をほぼ達成し、現在の株価水準で新株予約権の行使が完了。ただし鉱山プロセスの売上化は2029年以降のまま | Phase 3(実機導入)の120百万円が計画どおり立ち、鉱山案件で実機の発注が見える |
| 強気(1,237円) | 黒字化に加え、DPS事業のライン数拡大と対象排液・元素の拡張が進み、MW-RHFの実機1号機(2029年)に向けた商業契約が見える | 脱炭素投資の足踏みが長期化し、Phase 1の細り(258→100百万円)が2〜3年後の売上減として顕在化する。パラジウム価格の下落 |
クロスチェック
| PBRによる下値 | 1株当たり純資産7.59円(会社開示)でPBR約108倍。資産面からの下値はほぼなく、株価は将来収益への期待で構成されている。新株予約権が9月17日の水準で全部行使されると、1株当たり純資産は単純計算で約75円(PBR約11倍)へ上がる(推計) |
| リバースDCF的な逆算 | 現在のEV134.1億円をEV/営業利益20倍で正当化するには営業利益6.7億円が必要。営業利益率20%なら売上33.5億円(2027年6月期計画の2.2倍)、15%なら44.7億円(同3.0倍) |
| PSR | 12.3倍(2026年6月期15カ月実績)/15.4倍(同12カ月換算)/8.6倍(2027年6月期計画)。過去は2023年3月期26.0倍、2025年3月期4.9倍 |
| 第三者試算 | みんかぶ理論株価 487円(9月16日時点、現在株価比▲40.4%)・株価診断「割高」。証券会社のアナリストカバレッジは対象外で、コンセンサス目標株価はN/A。理論株価は連結の実績値に業種平均的な倍率を当てはめる性質上、赤字・自己資本の薄い企業では低く出やすい点に留意 |
環境オーバーレイ
グロース株のバリュエーションは金利と資金フロー環境に敏感です。「ファンダメンタルズ上の適正値」と「今の環境で市場が払う値段」は別物で、上表は前者の試算にすぎません。本件では加えて、新株予約権の行使が株価の上昇局面で売り供給になるため、テーマ材料で株価が跳ねても、その上昇の一部は行使によって吸収される構造があります。
中期計画・成長可能性資料との整合性
| 項目(2026年6月期の約束) | 計画 | 結果 | 分類 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,613百万円 | 1,057百万円 | 未達(▲34.5%)・下方修正で説明 |
| 営業利益 | ▲853百万円 | ▲927百万円 | 未達(▲74百万円) |
| 新規契約獲得数 | 22件 | 25件 | 達成 |
| 契約総数 | 62件 | 61件 | ほぼ達成(未達1件) |
| 鉱山プロセス技術標準化(標準化装置の製作) | 実施 | 受注遅延により製作をリスケジュール | 未達 |
| 発振器内製化 | 横浜ラボ立上げ・開発開始 | 立上げ・開発開始。試作機完成は部品・部材の遅延で約6カ月後倒し(28/6期に試作機の完成・評価) | 部分達成 |
| 新規事業・Small M&A | 少額での仮説検証から開始 | DPS社から低濃度貴金属回収事業を譲受。半導体関連の研究開発を開始 | 達成 |
| 事業区分 | 前回(2025年5月)4分野 | 今回、MWS(既存)・MWS(資源・金属)・DPS・新規へ組み替え | 定義の変更(理由は開示) |
計画信頼度:低。根拠は次のとおりです。
数値・マイルストーンの7項目のうち達成は2件(新規契約・M&A)で、ほぼ達成・部分達成を含めても達成率は6割に届きません。売上の未達(▲34.5%)の理由である大型案件の受注遅延は、2024年3月期の売上ピーク以降、2期にわたって繰り返されています。
一方で、コスト側の統制は機能しています。売上が5億56百万円ショートしても営業損失の拡大を74百万円に抑えました。したがって2027年6月期計画も、販管費855百万円(12カ月換算比▲16.6%)の達成確度は相対的に高く、売上1,512百万円は下振れ余地があるという非対称な見方が妥当です。
今回の成長可能性資料は、中長期の数値を「参考値であり目標値ではない」と明記し、年度単位のマイルストーンを順次開示する方針を示しました。検証可能性を高める姿勢と読める一方、前述のとおり「5期累計130〜140億円」と「FY2030に売上高100億円」の関係が資料から読み取れず、中長期の数値は現時点では検証の物差しとして使いにくい状態です。第三者で裏付けられたTAMも一部にとどまります。
強気材料(注目される理由)
- 財務基盤の再構築に道筋がついた。新株予約権が全部行使されれば払込額は約10〜16億円(株価次第)で、6月末の自己資本1億20百万円を大きく上回る。行使許可は会社がコントロールでき、交付株式数は固定。
- 2027年6月期の営業黒字化計画の中身が開示された。12カ月ベースの▲672百万円から、粗利率改善+418・売上増+161・販管費減+143で+50百万円。改善の過半は「装置製作案件の一巡」という構造要因で、粗利率59.9%は過去(2023年3月期71.1%、2025年3月期66.8%)の水準への回帰。
- 鉱山プロセスのロードマップが具体化した。MW-RHF実機1号機2029年、標準機販売2031年〜。工業炉の中外炉工業と戦略的提携を結び、ニッケルでは大平洋金属が2030年度目処の実機導入を掲げる。
- 会社概算で従来型キルン比10〜30%の年間総コスト低減。差別化の軸を「電化」ではなく熱効率・歩留まり・低CAPEXに置き、競合の電化方式も自ら比較表に載せている。
- DPS事業はストック型。顧客の既存排液ラインにカートリッジをつなぐだけで導入でき、ベトナムでは商用稼働中。設備投資300百万円の中身(量産・回収設備)も開示された。
- 獲得案件の質の向上(会社説明)。Phase 2以降から開始する新規契約が5件と過去最多。2027年6月期はPhase 3を10→120百万円へ伸ばす計画。
- 経済安全保障という追い風。IEAの見通し(会社資料引用)では、2040年の主要エネルギー鉱物需要は現在の約2倍、主要鉱物の精錬における首位国シェアは72%(2025年)。
弱気材料・リスク(確認すべき点)
- 最大10.34%の希薄化と継続的な売り供給。ストックオプションと合わせた潜在株式は17.2%。行使は株価が上がる局面ほど進みやすく、上値を抑える要因になる。
- 調達額は株価次第。9月17日の水準では全部行使でも払込額は約12億円で、会社が示す手取概算16億円を約25%下回る。株価が下限588円を下回れば調達は進まない。
- 事業会社株主の三井化学が保有を縮小。14万株を市場で売却し、残631,700株(3.97%)。今後の売却は大量保有報告書に表れない。
- 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在。自己資本比率8.6%、営業CFは15カ月で▲459百万円。黒字化計画の未達はこの判定に直接効く。
- 黒字化計画は粗利率+26.4ptと売上+78.7%(12カ月換算比)に依存。売上は顧客の投資判断次第で、前期の未達理由(脱炭素投資の足踏み)は解消が確認されていない。
- DPS事業の250百万円は、前期実績7.3百万円(売上総利益ベースで▲3.8百万円)からの立ち上げ。売上はパラジウム価格にも連動する。
- 鉱山プロセスの売上化は2029年以降の想定。パイロットから実機まで約285倍のスケールアップが必要で、会社自身が電気式ロータリーキルンを「商用に最も近い」と認めている。
- 中長期の数値に整合性の疑問。「5期累計130〜140億円」と「FY2030売上高100億円」は、同時には成立しにくい。いずれも「参考値」。
- TAM1.4兆円は会社推計で、定義が広い。確認できた第三者推計(ロータリーキルン市場)は約942億円(2024年)・CAGR2.98%。
- 最大の資金使途は事業運営(803百万円)。新規事業500百万円は具体的な案件が未定。
- 過去に大口債権の焦げ付き歴(2024年3月期に貸倒引当金7億10百万円)。無配で配当予想も未定。
カタリストカレンダー(2026年9月〜2027年9月)
| 時期 | 内容 | 影響度 | 織り込み度 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月25日 | 第19回定時株主総会(商号変更に伴う定款変更の承認) | ★★☆☆☆ | 概ね織込済 |
| 2026年9月17日(決算短信に記載の提出予定日) | 2026年6月期の有価証券報告書。ストックオプションの行使価額の内訳、継続企業の前提に関する記載を確認できる(本稿執筆時点で内容は未確認) | ★★★☆☆ | 未織込 |
| 2026年10月1日 | 商号変更「MWCC株式会社」(証券コード・上場市場は変更なし) | ★★☆☆☆ | 概ね織込済 |
| 2026年10月以降(毎月・予定) | 第8回新株予約権の行使状況の開示。行使ペースと行使価額から調達額の進み具合が分かる | ★★★☆☆ | 一部 |
| 2026年11月中旬(予定) | 2027年6月期 第1四半期決算。黒字化計画の初回検証点(粗利率・受注・DPSの立ち上がり) | ★★★★☆ | 未織込 |
| 2026年12月 | DPS事業の設備投資に着手(インフラ設備、2027年6月完了予定) | ★★☆☆☆ | 一部 |
| 2027年2月中旬(予定) | 2027年6月期 第2四半期決算。10〜3月に売上が偏る傾向があり、通期計画の達成可否が見えやすい | ★★★★☆ | 未織込 |
| 2027年9月13日 | 第8回新株予約権の行使許可期間の末日(会社は再度の許可・取消が可能) | ★★★☆☆ | 一部 |
| 時期未定 | 三井物産/PMET Resourcesとのリチウム鉱石パイロット試験の結果と、商業化協議への移行判断 | ★★★★★ | 未織込 |
| 時期未定 | 三井化学の残り631,700株の扱い(5%未満のため大量保有報告書は出ない) | ★★☆☆☆ | 未織込 |
| 2028年6月期(計画) | 発振器の試作機の完成・評価 | ★★★☆☆ | 未織込 |
| 2029年(会社想定) | MW-RHF実機1号機の納入・運転開始 | ★★★★★ | 一部 |
レーティング⑥カタリストの採点は「今後3カ月(2026年9月17日〜12月17日)」の窓に限定しています。第1四半期決算と有価証券報告書の日付は会社の公表前のため「予定」です。
国策アライン度(5/10・中程度)
該当項目:④GX推進戦略等の重要政策文書に脱炭素・重要鉱物が明記/⑤経済安全保障の枠組みに関連(会社が「経済安全保障の重要性が高まる中、重要鉱物に関連する鉱山プロセス事業の開拓に注力」と明記)/⑥法制度・計画で需要が担保/⑦当該企業の到達経路(TREホールディングス傘下のタケエイと共同で申請した環境省の補助事業「マイクロ波を利用した太陽光パネルガラス付着有機物除去によるガラスカレット水平リサイクルの実証事業」が採択。2026年6月期に補助金収入54百万円を特別利益に計上)/⑨政策が複数年度にわたり継続。
🔴 到達経路は一部のみ確認できます。環境省の補助事業の採択は開示済みですが、補助金は特別利益であり売上ではありません。鉱山プロセス(重要鉱物)については、会社が2027年6月期の施策として「グラント活用」に言及し、マンガンノジュール案件のパートナー欄に「東京都GX」と記載しているものの、採択事業名・交付決定額は開示されておらず、項目⑧(政策予算による受注・売上計上の実績)は確認できません。政策の追い風は確認できるが、予算枠や支援制度の金額を同社の売上機会と混同してはいけません。進行段階は③実証で、業績への本格寄与は会社想定でも2029年以降です。
資本イベント素地(1/10・該当なし)
10項目のうち該当は「④経営陣の持株比率が高い(代表取締役2名で実株14.82%、2026年6月30日現在)」の1項目のみ。PBRは約108倍で1倍割れではなく、ネットデットで、支配株主・親会社も存在しません。特記すべき事項はありません。
🔴 本項は「買収提案が出た場合に成立しやすい構造的特徴を公開情報でいくつ満たすか」の集計であり、TOB/MBOの可能性を予想・断定するものではありません。
まとめ|増資で時間を買った。その時間で何を証明するか
8月12日の決算で「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況」を開示したマイクロ波化学は、その19日後に最大164万2,000株の新株予約権で資金調達に動き、9月17日に2030年までの構想を示しました。
今期(2027年6月期)の伸びは、売上15億12百万円(12カ月換算比+78.7%)・営業利益50百万円。12カ月ベースの▲672百万円からの改善のうち58%は粗利率の回復、つまり装置製作案件の一巡という構造要因に拠っており、この部分の確度は相対的に高いと読めます。一方で売上は顧客の投資判断次第で、DPS事業の250百万円も前期実績7.3百万円からの立ち上げです。
新株予約権は、自己資本1億20百万円の会社に約10〜16億円の払込をもたらしうる一方、最大10.34%の希薄化と行使に伴う売り供給を伴い、調達額そのものが株価に左右されます。9月17日の株価水準では、会社が示す手取概算を約25%下回ります。同じ時期に三井化学が保有を5%未満へ減らしたことも、需給面では重しです。
成長可能性資料は、MW-RHF実機1号機を2029年、標準機販売を2031年からと示しました。鉱山プロセスがゲームチェンジャーになりうるかの最初の検証点は2029年で、それまでの約3年間を、化学分野のMWS事業、DPS事業、そして今回の調達資金でつなぐ構図です。中長期の数値は会社自身が「参考値」とし、資料内でも整合を確認できない部分があるため、本記事では株価評価の前提に使いませんでした。
潜在株式を織り込んだSOTPの中立ケースは647円で、9月17日の817円に対して▲20.8%(価格D)。品質は★1(21/70)です。これは「技術が悪い」という意味ではなく、財務の余裕が乏しく、需給が重く、株価が織り込む成長のハードルが高いという意味です。
次に見るもの:①2027年6月期の四半期ペース(売上1,512百万円=四半期平均378百万円。ただし10〜3月に偏る季節性あり)と粗利率、②毎月の新株予約権の行使状況(行使株数と行使価額)、③DPS事業の導入ライン数、④リチウム鉱石パイロットの結果と商業化協議の進展。
参考文献・データの出典
| ランク | 資料 |
|---|---|
| 一次(会社開示) | マイクロ波化学「事業計画及び成長可能性に関する事項」(2026年9月17日・全47ページ)/「第三者割当による第8回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行及びファシリティ契約の締結(行使許可条項付)に関するお知らせ」「同 補足説明資料」(2026年8月31日)/「第8回新株予約権の発行に係る払込完了に関するお知らせ」「ファシリティ契約に基づく第8回新株予約権の行使許可通知に関するお知らせ」(2026年9月16日)/「2026年6月期 決算短信」「2026年6月期 通期決算説明資料」「商号の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ」(2026年8月12日)/有価証券報告書(2022年3月期〜2025年3月期) |
| 一次(公的DB) | EDINET(財務時系列、大量保有報告書:三井化学 変更報告書No.2=2026年9月7日提出) |
| 第三者(市場規模) | Credence Research「Rotary Kiln Market」(公表ページ、2026年9月17日閲覧) |
| 二次(市場データ) | 株探(日足・週足・月足、信用残、ニュース見出し)、みんかぶ(理論株価・株価診断・アナリストカバレッジ) |
| 採点基準 | equity-rating-framework v2.2(品質7軸70点/価格判定A〜E/テーマ適合度4軸40点) |
資料取得についての注記:適時開示PDFはすべてファイルとして取得し、MarkItDownでテキスト化して読みました。成長可能性資料のうち図表中心のページ(p.14・15・31)は画像で内容を確認しています。
改訂履歴
- 2026年9月17日:新株予約権・三井化学の保有減少・成長可能性資料を反映。潜在株式込みで適正株価を再計算(中立638円→647円)。品質22→21(⑤需給2→1)、テーマ適合26→22(①4→3、③4→3、④9→7)、上抜け素地4→2。国策アライン度4→5(環境省補助事業の採択を到達経路として反映)。市場規模(TAM)・ゲームチェンジャー判定の節を新設。計画信頼度「低〜中」→「低」。テーマ判定表で、三井物産とのリチウム鉱石パイロット実証を「◎」→「○(実証段階)」に変更(◎は収益計上・受注・量産採用に限る定義に合わせた修正)。
前回版の数値の修正:期初計画比の売上未達率「▲35.2%」→「▲34.5%」(1,057÷1,613−1)、2026年6月期の経常損失「▲950百万円」→「▲948百万円」、2027年6月期計画の経常利益「20百万円」→「23百万円」、当期純利益「5百万円」→「4百万円」、1株当たり利益「0.3円」→「0.25円」(いずれも決算短信の記載値)。 - 2026年8月12日:2026年6月期 通期決算説明資料に基づき全面改訂。
- 2026年7月19日:初版公開。
免責事項・ディスクレーマー
筆者は財務アドバイザーではありません。本記事は公開情報に基づく調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。記載した適正株価レンジ・レーティングは独自の前提条件に基づく推計であり、目標株価の提示や将来の株価の保証ではありません。とくに本記事の対象は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在すると会社が開示し、行使価額修正条項付新株予約権を発行した東証グロース市場の小型株であり、業績・財務・株価が短期間に大きく変動する可能性があります。投資はご自身の判断と責任において、十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。
本記事の情報は記載日(2026年9月17日)時点の公開情報に基づいています。筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。