「国産のサイバーセキュリティ銘柄はどれか」と聞かれて、真っ先に名前が挙がる会社のひとつが株式会社FFRIセキュリティ(東証グロース・3692)です。2026年10月1日に能動的サイバー防御の関連法が施行され、10月上旬にはサイバー関連株が一斉に急騰しました。FFRIの株価も3ヶ月で約6割上がっています。
ただ、テーマで買われている銘柄ほど、「実際の業績がどこまで付いてきているか」は見えにくくなります。FFRIは前期(2026年3月期)に売上高43.48億円(+43.1%)、営業利益13.64億円(+67.0%)と大きく伸びた一方、今期の第1四半期は営業利益が30.0%減となり、決算翌日の株価は10%下げました。
本記事では、①何で稼いでいる会社か、②前期の急成長と今期1Qの減益をどう読むか、③国策(Kプログラム・能動的サイバー防御)がどこまで売上に結びついているか、④競合と弱点、⑤株価の水準(予想PER約58倍)を、決算短信・有価証券報告書・決算説明資料などの一次情報で整理します。強気材料と弱気材料を同じ重さで並べます。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
1. 総合評価サマリー
| 項目 | 評価 | ひとことで |
|---|---|---|
| 品質スコア | ★★★★☆(50/70) | 高い利益率・無借金・国策との接点。製品の伸び悩みと官需集中が減点 |
| 価格判定 | D(やや割高・中立ケース比 約−18%) | 中立レンジ5,900〜7,600円に対し基準日8,270円 |
| 国策アライン度 | 10/10(高い) | Kプログラム・内閣官房・防衛関連の受注が売上に計上済み |
| テーマ適合度 | 30/40(やや高い) | 売上の9割がサイバー事業の小型株。ただしテーマは2025年に一度大相場を経験済み |
| 資本イベント素地 | 1/10(該当なし) | 創業者2名で約43%保有。それ以外の項目は該当せず |
| 計画信頼度 | 高 | 売上は計画どおり、利益は2期連続で期初計画を約5割上回る(保守的な計画) |
結論を先に書くと、事業の質は高く、国策の追い風が「予算の話」にとどまらず実際の売上に表れている点は、テーマ株の中でも数少ない強みです。一方で、株価は会社計画ベースで予想PER約58倍・PBR約17倍まで買われており、「良い会社であること」と「今の株価が割安であること」は別の問題として考える必要があります。次の焦点は11月12日予定の第2四半期決算です。
2. 会社概要|「日本でセキュリティの研究開発をする」ほぼ唯一の専業
FFRIは2007年、Windowsなどの脆弱性を100件以上発見した経歴を持つ鵜飼裕司氏(現社長)が設立したサイバーセキュリティの研究開発企業です。社名は「Fourteenforty Research Institute」の略で、成長可能性資料では「国内でサイバーセキュリティの研究開発を行う有力なベンダーはほぼ当社のみ」と説明しています(会社の自己評価)。
事業は大きくサイバー・セキュリティ事業(売上の91.7%)と、子会社シャインテックのソフトウェア開発・テスト事業(8.3%)の2つです。サイバー事業はさらに3つに分かれます。
| 販売区分 | 内容 | 2026/3期 売上 | 前期比 | 今期計画 |
|---|---|---|---|---|
| セキュリティ製品 | EDR/次世代型ウイルス対策「FFRI yarai」、マルウェア自動解析「FFRI yarai analyzer」など。販売パートナー・OEM経由が中心 | 1,756 | +44.7% | 1,767(+0.6%) |
| ナショナルセキュリティ・サービス | 官公庁・防衛産業向けの安全保障関連の調査・研究・分析・教育。Kプログラム案件を含む | 1,576 | +66.9% | 2,159(+37.0%) |
| その他セキュリティ・サービス | 安全保障以外の官公庁・法人向けの調査・受託開発・情報提供 | 654 | +52.3% | 870(+32.9%) |
| ソフトウェア開発・テスト事業 | 子会社シャインテックの品質保証・テスト業務 | 361 | −20.0% | 338(−6.2%) |
| 合計 | 4,348 | +43.1% | 5,135(+18.1%) |
FFRI yaraiは、ウイルスの特徴を登録した「パターンファイル」に頼らず、プログラムの構造やふるまいから未知の攻撃を見分ける製品です。会社は、2017年のランサムウェア「WannaCry」を、その半年以上前にリリースした検出エンジンで防げたことなどを実績として公表しています。
このほか、NTTドコモビジネスとの合弁会社エヌ・エフ・ラボラトリーズ(持分40%)がセキュリティ人材の教育・研修を手がけ、前期は持分法投資利益74百万円(+70.2%)を計上しました。2026年1月には請負開発を担う子会社「FFRIセキュリティワークス」を設立しています。
3. 前期の急成長|何が伸びたのか
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 | 営業CF | 従業員数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 1,952 | 202 | 10.4% | 187 | 302 | 186 |
| 2024/3 | 2,446 | 497 | 20.3% | 432 | 390 | 199 |
| 2025/3 | 3,039 | 817 | 26.9% | 687 | 641 | 215 |
| 2026/3 | 4,348 | 1,364 | 31.4% | 1,099 | 1,360 | 236 |
| 2027/3(計画) | 5,135 | 1,452 | 28.3% | 1,133 | — | — |
直近3期の売上高の年平均成長率は約30.6%、営業利益は3年で約6.7倍です。伸びた理由は会社の説明では3つあります。
- ナショナルセキュリティ・サービスの需要増:政府のサイバー防衛強化で案件が増え、「期初よりエンジニアの稼働が高水準で推移」(有報)。
- 製品のOEM販売とyarai analyzerのライセンス増:Sky株式会社やアレクソンなど戦略的販売パートナーによる中小企業向けOEMが好調。
- 1年超の長期案件の獲得:その他セキュリティ・サービスで期初から稼働が埋まった。
主要な販売先|官需が売上の半分超
| 相手先 | 2025/3期 | 2026/3期 | 売上比 |
|---|---|---|---|
| 一般社団法人サイバーリサーチコンソーシアム(CRC) | 623 | 1,107 | 25.5% |
| 日本電気(NEC) | 451 | 686 | 15.8% |
| 内閣官房 | —(10%未満) | 499 | 11.5% |
| 防衛省 | 341 | —(10%未満) | — |
最大顧客のCRCは、Kプログラム(経済安全保障重要技術育成プログラム)の「先進的サイバー防御機能・分析能力強化」でNEDOから採択された組織です。FFRIはCRCと業務委託契約を結び、製品や役務を提供しています(補足説明資料)。上位3先で売上の52.8%を占め、いずれも政府予算に連なる取引です。国策の追い風が「予算の話」ではなく売上として表れている証拠である一方、政府の予算配分や案件の切れ目に業績が左右される構造でもあります。
人員と生産性
| 指標 | 2025/3期 | 2026/3期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 従業員数(連結) | 215人 | 236人 | +9.8% |
| 平均年間給与(単体) | 755.9万円 | 765.6万円 | +1.3% |
| 一人当たり売上高(期中平均人員) | 1,468万円 | 1,929万円 | +31% |
| 一人当たり営業利益(同) | 395万円 | 605万円 | +53% |
人を1割増やしながら、一人当たり営業利益は5割増えました。前期は増員と賃上げを売上の伸びで十分に吸収できたと言えます。ただし後述のとおり、今期1Qはこの関係が逆転しています。
4. 今期1Qの減益をどう読むか
| 項目 | 2026/3期 1Q | 2027/3期 1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 896 | 907 | +1.2% |
| 営業利益 | 264 | 185 | −30.0% |
| 営業利益率 | 29.5% | 20.4% | −9.1pt |
| 純利益 | 196 | 121 | −37.9% |
| 販管費 | 358 | 424 | +18.6% |
| うち研究開発費 | 26 | 57 | +120.2% |
| うち採用費 | 14 | 27 | +88.1% |
| 原価の労務費 | 292 | 355 | +21.3% |
減益の理由は、会社の説明では①人員増と採用強化によるコスト増、②Kプログラムの「利益排除」案件の増加です。Kプログラムには、研究成果(プログラム著作物など)がFFRIに帰属する代わりに、ほぼ原価しか請求できない案件があります。こうした案件が増えると、売上は立っても利益率が下がります。会社は「将来的に研究成果を製品・サービスとして提供することで利益貢献する見込み」としていますが、いつ・どの程度かは示されていません。
補足説明資料のグラフ値から販売区分別に見ると、ナショナルセキュリティ・サービスは売上229→301(約+31%)でも売上総利益率は58.1%→55.0%に低下、その他セキュリティ・サービスは売上134→84・総利益率62.4%→54.6%、製品は売上434→436で総利益率88.6%→86.2%でした。原価の労務費と販管費の人件費を足して売上総利益で割った比率(研究開発費等への振替前の粗い目安)は、73.8%→86.2%に上がっています。増員のコストが先に出て、売上が追いついていない状態です。
それでも「計画どおり」と言える理由
会社は1Qについて「売上・利益ともに計画通りに進捗」としています。通期営業利益計画1,452に対する1Qの進捗率は12.7%で、一見低く見えます。しかしFFRIは官公庁の年度末に向けて売上と利益が12〜3月に集中する会社です(有報「季節的要因」)。2025年3月期は3Q累計の営業利益がわずか194で、第4四半期だけで623を稼ぎました。前期の1Q(264、通期実績の19.4%)がむしろ例外的に強かった、と読むのが自然です。
加えて、2026年春入社のセキュリティエンジニア18名は8月末ごろから各部門に配属される予定でした。1Qは研修中の人件費だけが乗っていた計算になり、2Q以降に稼働が始まって売上につながるかが確認ポイントになります。
貸借対照表とキャッシュ
1Q末の現金及び預金は3,335で前期末と同水準、借入金はありません。売掛金及び契約資産は1,288→684に減りました(サービス案件の入金)。前期は営業CF1,360が営業利益1,364とほぼ同額で、利益がきちんと現金になっているのは評価できる点です(2024/3期・2025/3期は営業CF÷営業利益が約0.78で、売掛金の増加が重しでした)。前受けにあたる契約負債は1,245と前期末から5.6%増えています。
5. 計画の信頼度|「保守的な期初計画」の繰り返し
| 決算期 | 期初計画(売上/営業利益) | 実績(売上/営業利益) | 達成率(売上/営業利益) |
|---|---|---|---|
| 2025/3期 | 3,158/515 | 3,039/817 | 96.2%/158.6% |
| 2026/3期 | 4,260/914 | 4,348/1,364 | 102.1%/149.3% |
| 2027/3期 | 5,135/1,452 | 1Q:907/185 | 進捗 17.7%/12.7% |
売上は計画どおり、利益は2期連続で期初計画を約5割上回りました。会社自身も前期について「計画上は保守的に見積もっていたため、業績予想を上回る着地となった」と説明しています。また、2025年5月に公表した中期計画(2027/3期 営業利益1,112)は、2026年5月に1,452へ引き上げられました。ゴールポストを下げた例はなく、計画信頼度は「高」と判定します。
ただし注意点もあります。前期は3Q累計の営業利益904が通期計画914にほぼ届いていたにもかかわらず、期中の上方修正は出ませんでした。「計画は控えめに出し、期中は修正しない」傾向があり、今期も同じ運営なら、業績の上振れは期末の決算発表(2027年5月)まで数字として見えにくいと考えられます。
| 中期計画(2026年5月修正) | 2027/3(予想) | 2028/3(計画) | 2029/3(計画) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,135 | 6,069 | 7,029 |
| 営業利益 | 1,452 | 1,730 | 1,951 |
| 営業利益率 | 28.3% | 28.5% | 27.8% |
| 1株利益(会社計画の純利益÷自己株除く株式数で算出) | 143.25円 | 約169円 | 約189円 |
6. 国策との接点|予算額ではなく「到達経路」を確認する
テーマ株でよくある誤解は、「政府がサイバー対策に○○億円を付けた=関連銘柄の売上が増える」という読み方です。予算額は業界全体の枠であり、個社の売上ではありません。FFRIについては、政府予算から売上までの経路が開示で確認できる点が他のテーマ銘柄と違います。
| 政策 | 時期 | FFRIへの到達経路 | 段階 |
|---|---|---|---|
| 経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム) | 2022年5月〜(基金方式) | NEDO→CRC→FFRI(業務委託)、JST「不正機能の意図性評価」の研究にも参加。CRC向け売上1,107(売上比25.5%) | ④商業化(売上計上済み) |
| サイバーセキュリティ産業振興戦略(経済産業省) | 2025年3月 | 10年以内に国内企業の売上を約0.9兆円→約3兆円へ。政府調達での実績づくりを掲げる。FFRI個社の受注は未確認 | ②〜③ |
| サイバー対処能力強化法(能動的サイバー防御) | 2025年5月成立、2026年10月1日施行 | 無害化措置は警察・自衛隊が実施。内閣官房向け売上499(11.5%)はあるが、法施行と個別案件の対応関係は非開示 | ③(関連案件の売上は計上、施行による増分は未確認) |
| NICTの政府端末向けセキュリティソフト実証 | 2023年11月〜 | 開発サポートを実施(補足説明資料) | ③実証 |
今期計画では、ナショナルセキュリティ・サービスを+37.0%(2,159)と最も大きく伸ばす想定です。成長の中心は製品ではなく、政府案件を人手で請け負うサービスに移っています。これは「需要はあるが、エンジニアの人数で売上の上限が決まる」ビジネスであることを意味します。会社も「現状ではまだエンジニアの人数がボトルネック」と明記しています。
7. 競争環境|製品は海外勢と戦い、サービスは国内の土俵
製品(FFRI yarai):規模では海外勢に大きく劣る
EDR(端末の脅威検知・対応)市場の主役はCrowdStrike、Microsoft Defender、Cybereasonなど海外製品です。USEN ICT Solutionsが2026年2月に公表した利用EDRのランキングでは、上位5製品にFFRI yaraiは入っていません。FFRIの強みは「ほぼ唯一の純国産NGAV/EDR製品」であることで、官公庁・重要インフラ・医療など国産製品を選ぶ理由がある顧客に向けた販売を強化しています。
気になるのは足元の数字です。yaraiシリーズのライセンス数は前期末の619,056から1Q末に615,600(−3,456)へ減りました。官公庁は大口顧客の解約で245,708→233,876(−11,832)と落ち、OEM経由の「その他業種・個人」の増加(+10,416)で補った形です。今期の製品売上計画も+0.6%とほぼ横ばいで、製品は成長の柱ではなくなりつつあると読めます。
サービス:国内大手との「協業と競合」が同居
安全保障分野のサービスでは、海外企業は参入しにくい一方、NEC・富士通・NTTグループなど国内の大手SIerも力を入れています。NECは売上の15.8%を占める大口顧客ですが、同時にこの分野の大手プレーヤーでもあります。2026年8月27日にはNECが、NECネッツエスアイ・デジタルアーツ・FFRIと組んだ国産セキュリティサービス「NEC Cyber Secure Package powered by CyIOC」を発表しました(同日の株価は+14.4%)。大手と組めば販路は広がる一方、価格決定力は大手側に寄りやすい点は両面で見ておく必要があります。
サイバーセキュリティ関連の上場銘柄は、サイバーセキュリティクラウド、HENNGE、セキュアヴェイル、ブロードバンドセキュリティ、カウリスなど十数社あります。ただ、マルウェア解析や脆弱性研究といった「コア技術の研究開発」まで自社で持つ専業は限られます。研究開発型である点がFFRIの差別化要因で、同時に研究者・エンジニアの採用が成長の上限を決めるという制約にもなっています。
8. テーマ性の検証
テーマの定義:「サイバー安全保障(国家・重要インフラをサイバー攻撃から守る官民の体制整備)と、それに伴う国産セキュリティ技術の需要」。判断軸6項目のうち、①政策の裏付け(サイバー対処能力強化法・Kプログラム)、③第三者による市場規模推計(JNSA)、④実装マイルストーン(2026年10月施行)、⑤複数の官公庁・大手の資金投入、⑥市場の関心の5項目を満たすため、テーマとして扱います。
テーマ適合度(4軸・40点):30点(やや高い)
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 9 | サイバー・セキュリティ事業が売上の91.7%(セグメント開示)。安全保障関連のサービスだけで36.3% |
| ②純度 | 9 | 時価総額約677億円の専業。🔴 テーマが失速すれば株価の下落も大きくなる両刃の構造 |
| ③サイクル位置 | 5 | 成熟〜再燃。2025年10月27日に52週高値12,500円を付けた後、2026年6月26日には4,395円(−65%)まで下落。今回の上昇は「2度目の物色」にあたる |
| ④希少性 | 7 | 研究開発型の国産専業は少数。ただし「サイバー関連」と呼ばれる上場銘柄は十数社あり、代替が全く効かないわけではない |
量的寄与(①)は高く、「テーマの名前だけで業績が伴わない」タイプではありません。一方、サイクル位置(③)を見ると、このテーマは1年前にすでに大相場と大幅な下落を一度経験しています。テーマ適合度が高いことは「材料が出たとき株価に効きやすい構造」を示すだけで、上昇を示すものではありません。
9. 株価と需給|3ヶ月で+63%、信用買いが積み上がる
| 日付 | 終値 | 前日比 | 出来事 |
|---|---|---|---|
| 2026/6/26 | 4,395円(安値) | — | 年初来安値 |
| 2026/8/14 | 4,730円 | −10.1% | 1Q決算(営業利益−30%)の翌日 |
| 2026/8/27 | 5,610円 | +14.4% | NECが国産セキュリティサービスを発表(FFRI参加) |
| 2026/10/8 | 9,960円 | +17.7% | サイバー関連株が一斉高(情報漏えい事案の相次ぐ報道) |
| 2026/10/13 | 9,770円(高値10,780円) | +4.4% | 年初来高値。株探は空売りの買い戻し(踏み上げ)相場と報道 |
| 2026/10/14 | 8,520円 | −12.8% | 関連銘柄に利益確定売り |
| 2026/10/22 | 8,890円 | +9.6% | 出来高324万株。会社開示なし(要因は未確認) |
| 2026/10/23 | 8,270円 | −7.0% | 基準日 |
- 3ヶ月騰落率:7月23日終値5,080円→10月23日8,270円で+62.8%。
- 売買代金:直近1ヶ月(9/24〜10/23)の1日平均は約88億円で、3ヶ月平均(約38億円)の約2.3倍(株探の日足から算出した概算)。
- 信用残:買い残は9月25日の40.3万株から10月22日には66.1万株(+64%)に増え、自己株を除く発行済株式の約8.4%に相当。信用倍率は1.95倍→3.35倍に上昇。売り残も13.7万株(9/30)→19.7万株に増えています。
- 値動きの幅:10月は1日で±7〜18%動く日が続いています。業績ではなく需給で動いている局面です。
信用買い残の増加は、今後の売り圧力(返済売り)の予備軍でもあります。値動きの大きさは上下どちらにも働くため、ここから先も同じだけ下に振れる可能性があることを前提に見る必要があります。
10. 適正株価の考え方(評価手法の例示・目標株価ではありません)
| 手法 | 前提(いずれも推計・仮定) | 試算値 |
|---|---|---|
| PER法(中立) | 今期EPS 143円(会社計画)〜168円(営業利益が計画を約17%上回り1,700百万円程度になる場合の推計)× PER 35〜45倍(高成長の国内セキュリティ専業として置いた仮定) | 5,000〜7,560円 |
| EV/EBIT法 | 今期営業利益計画1,452 × 30倍 + 現預金3,335(無借金) | 約5,930円 |
| 中期計画法 | 2029/3期の計画EPS 約189円 × PER 40〜45倍を、年10%で2年割り引く | 約6,240〜7,020円 |
| 中立レンジ | 上記の重なる範囲 | 5,900〜7,600円(中央約6,750円) |
| 強気ケース | 2028/3期に計画を上振れてEPS 200円、PER 50倍が維持される | 約10,000円 |
| 弱気ケース | 今期が計画どおり(EPS 143円)で、テーマの関心が薄れPER 25倍に戻る | 約3,580円 |
基準日の8,270円は中立レンジの上限を約9%上回り、中央値との比較では約−18%の位置です。現在の株価は、過去2期と同じように期初計画を大きく上回る利益が出ること、そしてテーマとしての高い評価(PER50倍前後)が続くことの両方をある程度織り込んだ水準と考えられます。価格判定はD(やや割高)としました。なお、2026年6月の安値4,395円は弱気ケースに近い水準で、この銘柄の評価がテーマの熱量によって大きく振れることを示しています。
11. レーティング(equity-rating-framework v2.2)
| 軸 | 点 | 根拠(数値) |
|---|---|---|
| ①成長性 | 8 | 直近3期の売上CAGR 30.6%、今期計画+18.1%。ただし1Q売上+1.2%、製品計画+0.6%で伸びがサービスの人員数に依存するため9点以上は見送り |
| ②収益性 | 8 | 営業利益率31.4%、ROE 33.5%、一人当たり営業利益+53%。一方で今期は利益率28.3%の計画、1Qは20.4%で人件費の比率が上昇 |
| ③収益の質・連結範囲 | 7 | 持分法投資利益は税前利益の5.1%と軽微、営業CF÷営業利益0.997。Kプログラムの利益排除案件、第4四半期への利益集中で減点 |
| ④競争優位性 | 7 | 研究開発型の国産専業で安全保障分野に強み。製品はEDR上位に入らず、官公庁の大口解約でライセンス減少 |
| ⑤需給(直近3ヶ月) | 7 | 3ヶ月+62.8%で市場平均を大きく上回るが、信用倍率1.95→3.35倍と信用買い残の急増(+64%)で減点 |
| ⑥カタリスト(今後3ヶ月) | 6 | 日付が確定した材料は11/12の2Q決算のみ。補正予算・来年度予算案は日付未確定。上抜け素地4/6で調整なし |
| ⑦リスク耐性 | 7 | 自己資本比率64.3%(1Q末70.6%)、無借金・現預金33億円。上位3顧客で52.8%と官需集中、季節性の大きさで減点 |
| 合計 | 50/70 | ★★★★☆ |
上抜け素地(6項目):4/6(⑥への調整なし)
- ✅ 売買代金の増加:直近1ヶ月平均÷3ヶ月平均 ≈ 2.3倍
- ❌ 上値のしこり:年初来高値10,780円まで約30%(10%以内ではない)
- ❌ 信用買い残の重石:信用倍率は上昇傾向
- ✅ 踏み上げ余地:貸借銘柄で売り残が増加(9/30比+44%)
- ✅ 浮動株:創業者2名で約43%、自己株約3.4%を保有し、時価総額も600億円台と小さい
- ✅ 未織り込みの材料:2Q決算(結果は未知)
🔴 浮動株の少なさや売買代金の急増は、悪材料が出たときに同じだけ下にも振れやすいことを意味します。上昇のしやすさを示すものではありません。
国策アライン度:10/10(高い)
当初予算(防衛・サイバー関連)、補正予算・基金(Kプログラム)、重要政策文書(サイバーセキュリティ戦略)、経済安保の枠組み、法制度(サイバー対処能力強化法)、到達経路(CRC・内閣官房向け売上)、過去の受注実績、複数年度の継続、中計での前提化——の10項目すべてに該当します。ただしこれは「政策と業績のつながりが確認できる」という意味であり、株価の上昇を示すものではありません。また、能動的サイバー防御の施行がFFRIの売上を新たにどれだけ増やすかは、現時点で開示がなく未確認です。
資本イベント素地:1/10(該当なし)
創業者・経営陣の持株比率が高い(鵜飼氏24.55%・金居氏18.23%)の1項目のみ該当。PBRは約17倍で、それ以外の項目にも該当しません。
12. カタリストカレンダー(今後3ヶ月)
| 時期 | イベント | 影響度 | 織り込み状況 |
|---|---|---|---|
| 2026/10/1(済) | 能動的サイバー防御関連法の施行 | ★★★ | 概ね織り込み済み(10月上旬の急騰) |
| 2026/11/12(予定) | 2027年3月期 第2四半期決算 | ★★★★ | 未織り込み。新卒18名の稼働開始、ナショナルセキュリティ・サービスの進捗(計画2,159)、利益排除案件の比率、ライセンス数を確認 |
| 2026年12月(日付未確定) | 補正予算・2027年度予算案の閣議決定(例年の日程) | ★★ | 一部織り込み。サイバー・Kプログラム関連の予算額は業界の枠であり、FFRIの売上ではない点に注意 |
| 随時 | サイバー攻撃・情報漏えい事案の報道、信用買い残の動き | ★★★ | 需給要因。業績とは別に株価を大きく動かしうる |
| (参考)2027年2月中旬 | 第3四半期決算(3ヶ月の範囲外) | ★★★ | — |
13. 強気材料 vs 弱気材料
| 今この銘柄に注目すべき理由(強気) | 手を出す前に考えるべき理由(弱気) |
|---|---|
| 3期で売上CAGR約31%、営業利益率31%、ROE 33%と、テーマ株の中では業績の裏付けが厚い | 今期1Qは営業利益−30%。人件費・採用費の増加が先行し、利益率は20.4%まで低下 |
| Kプログラム・内閣官房など、政府予算から売上までの経路が開示で確認できる | 上位3顧客(すべて官需系)で売上の52.8%。政府の予算配分や案件の切れ目で業績が振れる |
| 過去2期は営業利益が期初計画を約5割上回った。今期計画も保守的な可能性がある | 期中の上方修正を出さない運営のため、上振れは期末まで数字で確認しにくい |
| 無借金・現預金33億円、営業CFが営業利益とほぼ同額で財務は堅い | 予想PER約58倍・PBR約17倍。中立レンジ(5,900〜7,600円)を上回る |
| 国産製品を求める官公庁・重要インフラの需要、NECなど大手との協業で販路が広がる | yaraiのライセンスは官公庁の大口解約で減少。製品計画は+0.6%と横ばい |
| 研究開発型の国産専業という希少なポジション。Kプログラムの研究成果を将来製品化できる可能性 | エンジニアの人数が成長の上限。利益排除案件の製品化の時期・規模は未開示 |
| 能動的サイバー防御の運用開始など、政策は複数年にわたって続く見込み | 2025年に12,500円→4,395円(−65%)の急落を経験済み。信用買い残は3週間で+64% |
14. まとめ|事業は本物、株価は「上振れ」を先取り
FFRIセキュリティは、サイバー安全保障というテーマの中で、政策から売上までのつながりを開示で確認できる数少ない専業企業です。前期は売上+43%・営業利益+67%と急成長し、利益は現金としてきちんと積み上がっています。過去2期、期初計画を大きく上回ってきた実績もあります。
一方で、成長の中心は製品から「人が請け負う政府案件」に移っており、伸びはエンジニアの採用数に縛られます。今期1Qはその増員コストが先に出て減益となり、製品ライセンスも減りました。株価はテーマ物色で3ヶ月+63%となり、予想PER約58倍まで上がっています。現在の株価は、今期も計画を大きく上回ることをある程度前提にした水準と考えられます。
11月12日の第2四半期決算では、①新卒エンジニアの稼働でナショナルセキュリティ・サービスの売上が伸びているか、②利益排除案件の影響で利益率がどこまで下がっているか、③yaraiのライセンス減少が止まったか、の3点が、テーマの熱量とは別に「業績が株価に追いつけるか」を判断する材料になります。
サイバーセキュリティ関連のほかの銘柄はサイバーセキュリティ株 調査レポート一覧にまとめています。テーマの全体像はサイバーセキュリティ関連株とは?、同じ端末セキュリティ分野の世界大手はトレンドマイクロ(4704)、同じグロース市場のセキュリティ銘柄はサイバーセキュリティクラウド(4493)・HENNGE(4475)、FFRIの大口顧客でもあるNEC(6701)の分析もあわせてご覧ください。
15. 参考文献(出典ランク)
- 【A】株式会社FFRIセキュリティ「令和8年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」「決算短信補足説明資料」2026年5月15日
- 【A】同「令和9年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「第1四半期決算短信補足説明資料」2026年8月13日
- 【A】同「事業計画及び成長可能性に関する事項」2026年6月29日
- 【A】同 有価証券報告書(2026年3月期、2026年6月25日提出、EDINET DB経由で取得)
- 【A】同「2025年3月期 決算短信補足説明資料」2025年5月14日、「2025年3月期 第3四半期決算短信補足説明資料」
- 【A】日本電気「オールジャパン体制でサプライチェーン全体を守る国産セキュリティサービスを提供開始」2026年8月27日
- 【A】経済産業省「サイバーセキュリティ産業振興戦略」2025年3月
- 【B】ScanNetSecurity「10月1日 能動的サイバー防御関連法施行」2026年10月14日、「首位 CrowdStrike ~ 利用している EDR サービス TOP 5」2026年2月17日
- 【C】株探(株価・日足・信用残・ニュース見出し、2025年3月期の期初計画)