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スリー・ディー・マトリックス(7777)パイプライン分析|初の通期黒字とrNPV試算

スリー・ディー・マトリックス株式会社(証券コード7777、東証グロース)は、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)発の自己組織化ペプチド技術(RADA16)を基盤とする医療バイオベンチャーである。本記事は2026年5月時点の公開情報に基づき、パイプライン進捗・財務状況・カタリストを独自に整理したものである。なお本記事は調査分析の情報提供であり、投資判断の最終責任は読者にある。

目次

会社概要

項目 内容
証券コード 7777(東証グロース)
設立年 2004年(米国3-D Matrix, Inc.は2001年設立)
本社所在地 東京都千代田区麹町3-2-4
従業員数(連結) 114名(親会社19名、子会社95名)
代表者 岡田淳(代表取締役社長)
株価(参考) 約414円
時価総額 約553億円(2026年5月末時点)
発行済株式数 124,027,001株(2026年1月末Q3時点)
PBR 約12〜14倍
PER 約16〜65倍(黒字転換初年度のため変動大)
出自 MIT(Shuguang Zhang博士、1992年発見)発スピンオフ
コア技術 自己組織化ペプチド(RADA16):外科止血・組織再生・DDS
Going Concern注記 なし(2026年4月期Q2)

パイプライン進捗一覧

製品名 適応症 フェーズ 市場 状況
PuraStat(TDM-621) 消化器内視鏡止血・局所止血 承認済 日本・欧州・米国・豪州 主力製品。米国+76.7%成長(Q3累計)。甲状腺手術への適応拡大(医師主導試験、日本2026年1月開始)
TDM-623 次世代局所止血材 欧州承認済(2025年12月) 欧州→米国 2025年12月18日欧州承認取得。米国申請準備中
PuraDerm 創傷治癒 米国FDA承認済 米国 適応拡大承認済み
PuraSinus / PuraGel 癒着防止 米国承認済 米国 販売中
TDM-812(siRNA核酸医薬) がん・ワクチンデリバリー 前臨床〜初期 グローバル DDS領域。RAMP技術でsiRNA局所送達。北海道大学とワクチン共同研究中

TDM-623の原価低減効果

TDM-623は現行PuraStat(TDM-621)と異なるアミノ酸配列のペプチドを使用しており、以下の原価低減メリットがある:

ペプチドコストの低減:新規ペプチド配列によりPuraStat比で原材料コストが低い。冷蔵管理不要:流通経路での冷蔵保管が不要となり、物流・保管コストを大幅削減。適応領域の拡大:脳神経外科・整形外科など新領域への展開でPuraStat未対応の売上を創出。ゲル化速度・硬度の向上:より速くゲル化し硬いゲルを形成するため、軽度〜重度の出血に幅広く対応可能。

これらの効果により、TDM-623はPuraStat対比で粗利率の改善が期待される。

最新の業績ハイライト(2026年4月期Q2)

指標 実績 前年同期比
連結売上高(中間期) 48億700万円 +46.8%
営業利益(中間期) 3億6,000万円 黒字転換
米国売上成長率 +80.5%
通期売上高計画 99億4,400万円(修正後) +43.4%
通期営業利益計画 9億6,100万円(修正後) 初の通期黒字
現金及び預金(Q2末) 15億7,900万円
自己資本比率 51.1% 前期末26.8%から改善

Q3累計実績と通期上方修正(2026年3月・5月発表)

指標 Q3累計実績 前年同期比
連結売上高(Q3累計) 73億4,600万円 +45.2%
営業利益(Q3累計) 7億700万円 黒字拡大
経常利益(Q3累計) 27億4,400万円 黒字転換
米国売上(Q3累計) 40億6,500万円 +76.7%
欧州売上(Q3累計) 18億5,200万円 +28.2%
現金及び預金(Q3末) 21億円 前期末比+5.19億増

5月19日付上方修正:通期経常利益予想を14.1億円→33.5億円へ2.4倍上方修正(為替差益計上による)。14期ぶりの過去最高益予想をさらに上乗せ。通期売上高も92.8億円→99.4億円、営業利益も4億円→9.6億円に修正済み。

rNPV試算(WACC=12%)

パイプライン フェーズ PoS ピーク売上想定 rNPV概算
PuraStat グローバル 承認済 100% ピーク¥200億/年(米国主導) ~¥500〜700億
TDM-623(欧州→米国) 欧州承認済/米国準備 85%(米国) PuraStat補完、ピーク¥50億 ~¥100〜150億
PuraDerm/PuraSinus 承認済(米国) 100% ピーク¥30億/年 ~¥80億
TDM-812(DDS) 前臨床 5% TAM巨大、ピーク未定 ~¥20〜50億
合計rNPV ~¥700〜980億

時価総額約553億円(2026年5月末時点)に対し、既承認品のみで¥700億前後のrNPVが試算される。初の通期黒字転換という財務マイルストンと合わせ、バリュエーション的には興味深い水準にある。

競合パイプライン比較

消化器内視鏡止血材

企業 製品 MOA/技術 承認状況 差別化ポイント
3-D Matrix PuraStat / TDM-623 自己組織化ペプチド(RADA16)→ヒドロゲル形成 EU・日本・米国承認済 透明・吸収性・止血と創傷治癒の二重機能。ESGE 2025ガイドライン収載
Cook Medical Hemospray(TC-325) 無機鉱物粉末→血液成分濃縮・栓形成 EU・米国・日本承認済 大出血に高速対応。粉末のため視野遮断あり
Endoclot Plus EndoClot PHS 植物由来多糖類→血液脱水・凝固促進 米国・EU承認済 安価。止血率76〜100%
Next Biomedical Nexpowder(UI-EWD) 生体高分子→赤血球ネットワーク形成 韓国・EU展開中 難治性上部GI出血で94%止血

外科止血材(カテゴリ別)

カテゴリ 企業/製品 MOA 市場シェア
酸化セルロース系 J&J/Ethicon:Surgicel 内因系凝固経路活性化 最大手、市場の約43%
ゼラチン+トロンビン系 Baxter:Floseal ゼラチン顆粒膨張+トロンビン 業界2位
多糖類系 BD:Arista AH 植物デンプン→脱水・凝固促進 外科全般
フィブリン糊系 Baxter:Tisseel / J&J:Evicel フィブリノーゲン+トロンビン 組織接着兼用
自己組織化ペプチド系 3-D Matrix:PuraStat/TDM-623 RADA16ヒドロゲル 新興・拡大中

創傷治癒(PuraDerm競合)

企業 製品/技術 特徴
3-D Matrix PuraDerm(RADA16ヒドロゲル) FDA clearance済。透明ECM模倣で組織再生を積極促進
Smith+Nephew PICO(陰圧閉鎖療法)、Allevyn 慢性創傷最大手
Mölnlycke Mepilex(シリコンフォーム) 欧州主要プレーヤー
ConvaTec Aquacel Ag(ハイドロファイバー) 抗菌・慢性創傷
Integra Integra Dermal Matrix 皮膚再建・熱傷

DDS・核酸医薬デリバリー(TDM-812競合)

技術 代表企業/製品 特徴 状況
ペプチドDDS(RAMP) 3-D Matrix:TDM-812 局所投与・固形腫瘍浸透 前臨床〜初期
LNP(脂質ナノ粒子) Alnylam:Onpattro 肝臓標的。FDA承認唯一のLNP siRNA 承認済(2018)
GalNAc結合体 Alnylam:Inclisiran等 肝細胞標的。皮下注・簡便 複数承認済(主流化)
次世代LNP Moderna、BioNTech等 肝外組織・腫瘍標的 研究〜前臨床

カタリストカレンダー(2026年5月〜11月)

時期 イベント インパクト
2026年6月(予定) 2026年4月期通期決算発表 — 初の通期営業黒字達成確認 ★★★★
2026年中 TDM-623欧州販売開始・米国申請準備 ★★★
2026年中 甲状腺手術PuraStat臨床研究中間報告 ★★★
2026年通年 米国PuraStat/PuraDerm拡販継続 ★★★
2025年10月(実績) Science誌掲載(ハーバード大共同研究 — iPS心筋細胞×RADA16不整脈抑制) ★★★(認知度向上)

財務・資金リスク分析

財務指標 数値 評価
現金及び預金(Q3末) ¥21.00億 前期末比+5.19億増
Q3累計営業利益 ¥7.07億 黒字拡大
自己資本比率 51.1%(Q2末) 前期末26.8%から大幅改善
バーンレート N/A(営業黒字転換済み)
増資リスク 中〜低 黒字化・CB全額転換済み
Going Concern注記 なし

転換社債・新株予約権の状況

項目 内容
第9回CB(2025年7月発行) 額面¥11.03億。当初転換価額294円(修正条項付、下限134円)。2026年2月24日までに全額転換完了。第5回CBのリファイナンス目的
第36回新株予約権(2023年7月発行) 当初行使価額218円。目的株式総数1,262万株。一部行使済み(2026年3月までに300万株、¥1.86億調達)
潜在希薄化 第36回新株予約権の未行使分による希薄化リスクが存在

CBは全額転換完了済みで追加希薄化リスクなし。第36回新株予約権の未行使残による希薄化は継続するが、営業黒字転換により追加の資金調達ニーズは低下している。

リスク要因

米国拡販リスク(最大):米国売上+76.7%の高成長が継続できるかが最大の不確実性。PuraStat競合製品(Hemospray、Surgicel等)は多数存在し、病院採用の継続・拡大が前提条件。外科止血材市場はJ&J(43%シェア)・Baxterが寡占しており、自己組織化ペプチドは新興カテゴリとして認知拡大途上。

特許リスク:RADA16の基本特許は1990年代のMIT出願であり、出願から20年経過で基本特許は満了の可能性が高い。現在は派生特許・製法特許による保護が中心とみられ、ジェネリック参入リスクに注意。

キーパーソンリスク:岡田淳社長への経営依存。従業員114名(親会社19名)の小規模組織であり、主要人材の離脱が事業継続に大きな影響を与える可能性。

TDM-623米国承認:欧州で2025年12月に承認取得したが、米国FDA承認取得のタイミングはコントロール外の要素。審査遅延リスクあり。

DDS領域:TDM-812は開発初期であり商業化への道筋は長い。GalNAc・LNPが主流化する核酸医薬デリバリー市場で、ペプチドDDS(RAMP)は固形腫瘍局所投与というニッチ差別化だが、実証データはまだ不十分。

為替リスク:米国・欧州売上が収益の大部分を占め、円高は逆風。Q3の経常利益27.4億円には為替差益が大きく寄与しており、為替反転時の利益剥落リスクがある。

まとめ

スリー・ディー・マトリックスは2026年4月期に初の通期営業黒字を達成しようとしており、「赤字バイオ」から「黒字化バイオ」へのフェーズ転換点にある。米国売上+76.7%という成長速度と、TDM-623の欧州承認・米国準備が重なる2026年は事業の転換点として注目に値する。止血材市場ではJ&J・Baxterが寡占する中、透明ヒドロゲル・ESGE公式ガイドライン収載という明確な差別化を有する。時価総額約553億円に対しrNPV700〜980億の試算は保守的に見ても割安感がある。CBは全額転換完了済みで追加のCB希薄化リスクはない。

免責事項・ディスクレーマー

本記事は特定企業のパイプラインに関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、
特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。rNPV試算は独自の前提条件に
基づく推計であり、実際の企業価値を保証するものではありません。バイオ医薬品の開発には
高い不確実性が伴い、臨床試験の失敗、規制当局の判断、競合状況の変化等により
開発品の価値が大幅に変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任において、
十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。

本記事の情報は記載日時点の公開情報に基づいています。
筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。

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