MENU

キャンバス(4575) 免疫着火剤CBP501 rNPV分析

※ 本記事はバイオ医薬品パイプライン調査レポート一覧の一つです。

株式会社キャンバス(4575)は、免疫チェックポイント阻害剤では効きにくい「免疫コールド」ながんを「免疫ホット」に変換する独自コンセプト「免疫着火剤」CBP501を主力パイプラインとするバイオベンチャーである。本記事では、膵臓がん3次治療を対象とする欧州Phase 3試験の準備状況、可逆的XPO1阻害剤CBS9106の権利返還後の展望、rNPV試算、向こう6ヶ月のカタリストを独自に整理した。なお、本記事は調査分析の情報提供であり、投資判断の最終責任は読者にある。

目次

会社概要

項目 内容
会社名 株式会社キャンバス(CanBas Co., Ltd.)
証券コード 4575(東証グロース)
本社所在地 静岡県沼津市大手町2-2-1
代表者 河邊拓己(代表取締役社長)
従業員数 14名(少数精鋭体制)
決算月 6月
事業内容 抗がん剤の研究開発(免疫着火剤・XPO1阻害剤)
時価総額 約133億円(2026年5月時点)
発行済株式数 19,713,655株
PBR / PER 約5.7倍 / N/A(赤字)

キーパーソンリスク:河邊拓己氏が研究開発の中核と経営を兼任。従業員14名の少数精鋭体制であり、キーパーソン依存度は極めて高い。

パイプライン一覧

パイプライン 化合物 フェーズ 適応症 MOA 共同研究先 導出状況
CBP501 免疫着火剤 Ph2完了→欧州Ph3申請準備中 転移性膵臓腺がん3次治療 カルモジュリン結合→免疫原性細胞死誘導+免疫抑制マクロファージ抑制 自社(CRO連携) 未導出(自社開発)
CBS9106 Felezonexor(可逆的XPO1阻害剤) Ph1完了→開発方針未確定 血液腫瘍・固形がん 可逆的XPO1/CRM1阻害(XPO1分解型) Stemline社から全権利返還(2025/6)
CBT005 免疫スイッチ 前臨床準備中 がん全般 非開示 自社研究中
CBP-A08 CBP501後継 基礎研究段階 未定 CBP501改良型 自社研究中
IDO/TDO二重阻害剤 未命名 基礎研究段階 局所免疫抑制解除 IDO/TDO二重阻害 自社研究中

CBP501(免疫着火剤)の詳細

CBP501はキャンバスの中核パイプラインであり、「免疫コールド」ながんを「免疫ホット」に変換する独自の免疫着火剤コンセプトに基づく。シスプラチンによる免疫原性細胞死を増強しつつ、腫瘍周囲の免疫抑制性マクロファージを抑制し、CD8+ T細胞の腫瘍浸潤を促進する。ニボルマブ(免疫チェックポイント阻害剤)との3剤併用で、従来の免疫療法が効きにくかった膵臓がんに対する新たなアプローチを提示している。

Phase 2試験結果(NCT04953962)

項目 内容
試験デザイン 4群比較(3剤併用 vs 2剤併用対照群)
対象 転移性膵臓腺がん3次治療
主要評価項目 3ヶ月無増悪生存率
第1群(CBP501 25mg+シスプラチン+ニボルマブ) 9例中8名に投与、第1ステージで主要評価項目達成→早期有効中止
奏効率 約22%(9例中2例PR)。膵臓がん3次治療の通常奏効率5%未満を大幅に上回る
全生存期間 3剤群が2剤対照群に対し明確に上方のカプランマイヤー曲線
結論 安全性モニタリング委員会が「早期有効中止」を決定。臨床的に意義のある改善と評価

CBS9106(可逆的XPO1阻害剤)の詳細

CBS9106(Felezonexor)は、核外輸送タンパク質XPO1/CRM1を可逆的に阻害する経口剤。既承認のSelinexor(XPOVIO)が非可逆的に結合するのに対し、CBS9106はXPO1への結合後にXPO1を分解する独自の機序を持つ。これにより、Selinexorで問題となる高頻度の重篤副作用(悪心・血小板減少等、G3以上89%)の改善が期待される。2014年にStemline社にライセンスアウトされ、米国でPhase 1試験が完了したが、2025年6月に全権利が返還された。現在、追加基礎研究の成果を踏まえた次相開発方針を検討中。

規制当局(PMDA/FDA/EMA)との協議状況

項目 状況
EMA(欧州) 膵臓がんに対するオーファンドラッグ指定取得(2024年8月)
EMA Ph3試験 欧州Phase 3試験開始申請・協議継続中(2026年中の承認取得を目指す)
FDA(米国) CBP501米国Phase 2b試験準備・FDAとの協議開始(2024年2月発表)。コスト効率の観点から欧州Ph3を優先、米国は保留中
FDA オーファン指定 悪性中皮腫に対するオーファンドラッグ指定(過去取得済み)
PMDA(日本) 現時点で国内開発活動なし

欧州Phase 3の戦略的意義:EMAのオーファンドラッグ指定により、欧州では10年間の市場独占権が付与される。膵臓がん3次治療は患者数が限定的であるため、少数症例(推定200〜300例規模)でのPhase 3試験設計が可能であり、コスト効率が高い。FDAとのPh2b協議も進行中のため、欧州Phase 3の成功後は米国申請への転用も視野に入る。

rNPV試算

前提条件

パラメータ CBP501(膵臓がん3次) CBS9106(血液腫瘍)
対象患者数(年間) 欧州: 約1.5万〜2万例、米国: 約2万〜3万例 DLBCL 2次以降: 全世界約3万〜5万例
想定薬価 €50,000〜€80,000/コース(オーファン薬価) Selinexor参考: $22,000/月
市場シェア(ピーク時) 15〜25%(3次治療限定市場) 10〜20%(Selinexor me-better)
ピーク売上 200〜500億円(欧州+米国) 50〜150億円
開発段階別PoS 35%(Ph2完了→Ph3→承認) 8%(Ph1完了→Ph2→Ph3→承認)
上市予定 2030年(欧州Ph3→承認申請) 2032年以降(開発再開の場合)
WACC 12%(小型バイオテック標準)

rNPV算出結果

項目 ベースケース アップサイド ダウンサイド
CBP501(膵臓がん)rNPV 80億円 180億円 20億円
CBS9106(血液腫瘍)rNPV 15億円 50億円 0億円
早期パイプライン(CBT005等) 5億円 20億円 0億円
R&D費用NPV控除 ▲35億円 ▲30億円 ▲40億円
現預金 22億円 22億円 22億円
合計rNPV 87億円 242億円 2億円
1株あたりrNPV 約441円 約1,228円 約10円

試算の留意点:ベースケースrNPV 87億円に対し、現在の時価総額は約133億円。市場はEMA Ph3開始承認の実現と、その先の海外大手への導出を一定程度織り込んでいると推測される。最大のバリュードライバーはCBP501の欧州Ph3開始承認であり、未取得の場合は現預金(22億円)が実質的な企業価値の下限となる。なお、Ph3試験の総費用は45〜50億円と見積もられており、現預金との差額(約23億円超)の追加資金調達が不可避。経営陣はPh3開始承認取得後の資本政策を予定している。

XPO1阻害剤の競合比較

企業名 化合物 MOA フェーズ 差別化ポイント 備考
キャンバス(4575) CBS9106 可逆的XPO1阻害(XPO1分解型) Ph1完了→方針未確定 可逆的阻害で副作用低減期待 2025/6全権利返還
Karyopharm(米) Selinexor(XPOVIO) 非可逆的XPO1阻害(SINE) 承認済(DLBCL・MM・子宮内膜がん) 市場唯一の承認品。年間売上$145M 副作用高頻度(G3+89%)
Karyopharm(米) Eltanexor 第二世代SINE/XPO1阻害 Ph1/2(MDS・骨髄線維症) Selinexorより毒性低減目標 DLBCL適応未確認
Antengene(中国) ATG-010 XPO1阻害(Selinexorライセンス) Ph2/3(中国) 中国NMPAで条件付き承認(MM) APACライセンス品

カタリストカレンダー(2026年6月〜12月)

時期 イベント インパクト 内容
2026年6〜8月 CBP501 EMA Ph3開始承認の動向 ★★★★★ 欧州Phase 3試験開始の可否。承認取得は最大のカタリスト
2026年8月頃 2026年6月期 通期決算発表 ★★★ 臨床開発費・現預金・EMA進捗がポイント
2026年秋 CBS9106 次相開発方針の決定・開示 ★★★★ DLBCL適応明示やPh2開始予告があれば大きな材料
2026年10〜11月 ESMO 2026(欧州臨床腫瘍学会) ★★★ CBP501データ発表の可能性。欧州Ph3開始後であれば試験デザイン開示
2026年11月頃 Q1決算発表(FY2027) ★★ Ph3開始後の費用加速度合い確認
2026年12月12〜15日 ASH 2026年次総会 ★★★★ DLBCL・XPO1阻害剤の最新データ集中。CBS9106発表があれば大型材料

財務・資金リスク分析

項目 数値
現預金残高(FY2025末・2025年6月) 28.3億円
現預金残高(FY2026 Q2末・2025年12月推定) 約21.5億円
自己資本比率 95.4%
FY2025実績 営業損失▲11.1億円、純損失▲11.6億円
バーンレート(推定) 四半期あたり約1.9〜2.8億円
ランウェイ(推定) 約2〜3年(2028〜2029年頃まで)
増資リスク評価 (Ph3費用45〜50億円に対して現預金不足)
累積損失 140億円超
継続企業の前提注記 確認されず

大株主構成(FY2025)

順位 株主名 比率
1 楽天証券(カストディ) 2.21%
2 SBI証券(カストディ) 1.18%
3 マネックス証券(カストディ) 0.91%
4 西村彰 0.86%
5 三星住発 0.63%

財務面の最重要リスク:安定大株主が不在の完全分散型株主構成。Ph3試験の総費用45〜50億円に対し、現預金は約22億円(FY2026 Q2末推定)で、約23億円超の追加調達が不可避。経営陣はPh3開始承認取得後の時価総額が上昇した段階での増資を計画しており、EMA承認取得の成否が資金調達の成否にも直結する構造にある。

その他リスク要因

リスク 内容 評価
EMA Ph3不承認リスク EMAがPh3試験計画を承認しない場合、開発全体が停滞
Ph3失敗リスク 膵臓がん3次治療は極めて難易度の高い領域。Ph3成功率は歴史的に約50〜60%
キーパーソンリスク 14名体制で河邊社長に技術・経営が集中
資金調達リスク Ph3費用45〜50億円に対し現預金不足。増資時の希薄化不可避
競合リスク(膵臓がん) daraxonrasib(RAS阻害剤)が2026年に「3次治療で生存期間ほぼ倍増」との結果を報告 中〜高
CBS9106権利返還リスク Stemlineが返還した理由が不明。開発再開の見通し立たず
導出未実現リスク CBP501は全適応で未導出。Ph3データ不在での導出は困難

まとめ

キャンバスは、免疫チェックポイント阻害剤が効きにくい「免疫コールド」ながんに対する独自の「免疫着火剤」CBP501を主力とする創薬ベンチャーである。膵臓がん3次治療を対象としたPhase 2試験で安全性モニタリング委員会が「早期有効中止」を決定するという例外的な結果を出しており、EMAの膵臓がんオーファンドラッグ指定も取得済みで、欧州Phase 3試験開始の承認を目指している。

投資判断上の最大のポイントは以下の3点である。第一に、EMAによる欧州Phase 3開始承認の可否。これが得られなければ開発全体が停滞するリスクがあり、逆に承認されれば時価総額の上昇と資金調達の道が開ける。第二に、Ph3試験費用45〜50億円に対する資金調達。現預金約22億円では不足が明白であり、増資は不可避。経営陣はPh3承認後の増資を計画しているが、市場環境次第では希薄化圧力が大きくなる。第三に、CBS9106の全権利返還後の開発方針。Stemline社が返還した背景と今後の再開発方針の明確化が待たれる。

14名の少数精鋭体制、安定大株主不在の分散型株主構成、累積損失140億円超という財務構造は、典型的なハイリスク・ハイリターン型の創薬ベンチャーである。CBP501の臨床データは膵臓がん3次治療としては異例の好成績を示しているが、Ph3での再現性が確認されるまでは不確実性が高い。

免責事項・ディスクレーマー

本記事は特定企業のパイプラインに関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、
特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。rNPV試算は独自の前提条件に
基づく推計であり、実際の企業価値を保証するものではありません。バイオ医薬品の開発には
高い不確実性が伴い、臨床試験の失敗、規制当局の判断、競合状況の変化等により
開発品の価値が大幅に変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任において、
十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。

本記事の情報は記載日時点の公開情報に基づいています。
筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。

Follow me!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次