ペルセウスプロテオミクス(4882)は、東京大学先端科学技術研究センター発の抗体医薬品開発企業である。主力パイプラインPPMX-T003は、トランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とするFirst-in-classの完全ヒト抗体で、真性多血症(PV)のPhase I試験を終了し、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)では医師主導Phase I/II試験が進行中である。本記事では、2026年8月13日公表の2027年3月期第1四半期決算短信および同年6月25日公表の事業計画資料を含む最新開示をもとに、パイプライン進捗・競争環境・rNPV試算・カタリスト・経営陣のコミットメント・レーティングを独自に整理した。なお、本記事は調査分析の情報提供であり、投資判断の最終責任は読者にある。
※ 本記事はバイオ医薬品パイプライン調査レポート一覧の一つです。
【改稿版について】本記事は初版(2026年6月10日公開)を、2027年3月期第1四半期決算および前回公開日以降の適時開示を受けて全面改稿したものである。あわせてレーティング基準を equity-rating-framework v2.2 に準拠して新規付与した。また、rNPV試算は前提を全面的に見直しており、初版の企業価値51.2億円(1株301円)とは直接比較できない(見直しの内容は「rNPV試算」の節に明記した)。
初版(2026年6月10日)からの主な変化
| 日付 | できごと | 評価への影響 |
|---|---|---|
| 2026/6/15 | 名古屋大学との共同研究による特許成立(特許第7875530号「抗トランスフェリンレセプター抗体の薬効又は感受性の判定方法」、登録日6/10) | プラス(患者選択の手法を権利化) |
| 2026/6/23 | 台湾EirGenix, Inc.と抗体医薬品の協業検討に向けた覚書(非拘束)を締結 | 中立(拘束力なし・業績影響なし) |
| 2026/6/24〜25 | 第29回新株予約権が全て行使完了。6月中に1,429,900株を交付(行使価額139〜145円) | マイナス(希薄化+調達手段の消尽) |
| 2026/6/25 | 「事業計画及び成長可能性に関する事項」を更新(6/30に一部訂正) | — |
| 2026/7/1 | PV第I相試験参加者を対象とした臨床研究で、6例中4例に投与終了後17ヶ月以上の瀉血不要期間を確認 | 大きくプラス(効果の持続性) |
| 2026/7/3 | PPMX-T003の多血症治療用途特許が米国で特許査定(日本・中国は成立済み) | プラス(導出交渉上の資産) |
| 2026/7/31 | 第85回日本癌学会学術総会でPPMX-T004b-PGAP-1のポスター発表が採択(9/24発表予定) | プラス(近接カタリスト) |
| 2026/8/3 | Eurus Therapeuticsと次段階の共同研究契約を締結(抗体・抗体遺伝子の取得に成果) | プラス(業績影響は軽微と会社明記) |
| 2026/8/13 | 2027年3月期第1四半期決算。売上高35,184千円(前年同期比+49.9%)、四半期純損失202,603千円 | — |
| 2026/8/21 | PPMX-T003が大腸がんの肝転移・胃がんの腹膜播種を抑制する前臨床成果が Signal Transduction and Targeted Therapy に掲載 | プラス(適応拡大の裏付け) |
| 2026/8/25 | TOKYO戦略的イノベーション促進事業(令和5年度採択)が完了 | プラス(基盤技術の確立) |
| 2026/8/28 | 【競合】武田薬品/Protagonist Therapeuticsのrusfertide(MIMRYLO)が真性多血症に伴う赤血球増加症を対象に米国FDA承認 | 大きくマイナス(主戦場に承認薬が出現) |
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社ペルセウスプロテオミクス(Perseus Proteomics Inc.) |
| 証券コード | 4882(東証グロース) |
| 設立 | 2001年2月1日 |
| 上場 | 2021年6月22日 |
| 本社 | 東京都中央区日本橋箱崎町30-1 |
| 研究拠点 | 名古屋ラボ(愛知県名古屋市千種区、2019年開設) |
| 代表取締役社長 | 横川拓哉(執行役員) |
| 従業員数 | 35名(うち臨時2名、2026年3月31日現在)/研究開発部24名・事業開発部5名・管理部6名 |
| 平均年齢・平均勤続年数 | 48.6歳・7.6年 |
| 平均年間給与 | 7,778,263円(前事業年度比+3.21%) |
| 事業内容 | 抗体医薬品開発(がん・血液疾患)、抗体研究支援、抗体・試薬販売 |
| 出自 | 東京大学先端科学技術研究センター(児玉龍彦・浜窪隆雄教授らの技術基盤) |
| 主要連携先 | 広島大学ほか10医療機関(ANKL治験)、UBE(ADC共同研究)、あすか製薬・Eurus Therapeutics(創薬共同研究)、湧永製薬(PTX3診断薬) |
| 株価・時価総額 | 144円・26.5億円(2026年9月1日終値ベース) |
| 発行済株式数 | 18,429,500株(2026年6月30日現在、自己株式90株を含む) |
| PBR / PER | 2.33倍 / N/A(赤字) |
出典: 2026年3月期 有価証券報告書「従業員の状況」(EDINET書類番号 S100YE8V)、2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月13日)、株探(2026年9月1日時点の株価・時価総額)。
パイプライン一覧
| パイプライン | 標的 | タイプ | フェーズ | 適応症 | 共同研究先 | 導出状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| PPMX-T003 | TfR1 | 完全ヒト抗体 | Phase I 完了(2024年6月) | 真性多血症(PV) | — | 導出活動中(未成立) |
| PPMX-T003 | TfR1 | 完全ヒト抗体 | Phase I/II 実施中(登録5例/目標7例) | アグレッシブNK細胞白血病(ANKL) | 広島大学ほか全国10医療機関 | 自社(医師主導治験・AMED支援) |
| PPMX-T002 | CDH3 | 225Ac標識抗体(RIT) | 非臨床 | 卵巣がん・胆道がん・頭頸部がん等 | — | 導出活動中(未成立) |
| PPMX-T004 (T004b-PGAP-1等) |
CDH3 | ADC | 非臨床(非GLP毒性試験実施中) | 固形がん | UBE | 共同研究中 |
| PPMX-T005 | 非開示 | 非開示 | 標的の評価・検討 | 非開示 | — | — |
出典: 「事業計画及び成長可能性に関する事項」(2026年6月25日、同6月30日訂正)、2027年3月期第1四半期決算短信。2026年6月版の資料でPPMX-T004は臨床パイプラインから探索パイプラインへ区分が移り、あらたにPPMX-T005が2028年3月期までの成長計画に「標的の評価・検討」として登場した。
PPMX-T003 — First-in-classの抗TfR1抗体
作用機序
トランスフェリン受容体1(TfR1)に結合し、鉄の細胞内取り込みを阻害する完全ヒト抗体である。がん細胞は正常細胞と比べて鉄の需要が高く、鉄枯渇により選択的にがん細胞を死滅させる。ファージディスプレイ法(同社独自のICOS法)で取得され、臨床で使用可能なレベルのTfR1阻害抗体は世界で他に報告されていない(同社公表ベース)。2024年6月には大阪大学との共同研究で、PPMX-T003の治療効果がアミノ酸輸送体LAT1の発現量に規定されることが発見され、Leukemia誌に発表された。
真性多血症(PV)Phase I 試験と、その後の臨床研究
2019年11月に日本で第I相試験を開始し、6名の被験者に投与。2024年6月に試験終了、2025年3月18日にCSR(治験総括報告書)が完成した。2024年12月の第66回米国血液学会(ASH)年次総会で発表が採択されている。最高用量群(0.25 mg/kg)でレチクロサイト50%超の低下、ヘマトクリット・ヘモグロビンの持続的低下が確認された。安全性に重大な問題は報告されていない。
初版以降の新情報として、2026年7月1日、同第I相試験の参加者を対象とした臨床研究(jRCT1050250129、研究代表医師:関西医科大学附属病院 血液腫瘍内科 伊藤量基主任教授)において、「6例中4例で本剤の投与終了後17ヶ月以上の瀉血不要期間が確認された」ことが開示された。真性多血症の治療目標がヘマトクリット管理と瀉血負担の軽減にある以上、投与終了後1年以上にわたって瀉血が不要であったという持続性は、単回コースの投与で効果が保たれる可能性を示唆する点で臨床的な意味が大きい。ただし、これは第I相の6例という極小規模での探索的な臨床研究の結果であり、対照群を置いた比較試験ではない。詳細データは今後の医学学会で発表される予定とされている。
あわせて、2026年7月3日には多血症治療用途の特許(発明の名称「多血症治療薬」、出願番号17/640,645)が米国特許庁から特許査定を受けた。同特許は日本・米国・欧州・中国・香港に出願され、日本と中国では既に成立している。出願人はペルセウスプロテオミクスと学校法人順天堂の共同である。
ANKL Phase I/II(医師主導治験)
2023年3月にPMDAへ治験計画届を提出し、2023年4月から広島大学病院を中心に実施中(jRCT2061230008、治験調整医師:広島大学病院 血液内科 安藤潔氏)。試験デザインは非盲検・用量漸増で、主要評価項目は忍容性および安全性。超希少疾患(日本で年間数十例、FDA承認薬ゼロ、OS中央値5.5ヶ月)のため被験者登録が難航し、治験期限を2027年3月31日まで2回延長している。目標症例数は7名。
初版以降の更新点は3つある。第一に、2026年3月期中に2例の登録があり累計登録症例数は5例となった(目標7例に対する進捗率71%)。第二に、治験実施施設として大阪大学病院が新たに参加し、全国10医療機関体制となった。第三に、AMEDの令和8年度「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択され、当該治験費用として助成金1億円を獲得した(AMED採択は2022年3月・2025年2月に続くもの)。会社の成長計画では、治験終了後の2028年3月期にオーファン(希少疾病用医薬品)指定の申請を予定している。
新たに開示された前臨床成果(大腸がん・胃がん)
2026年8月21日、群馬大学との共同研究成果として、PPMX-T003が患者由来大腸がん移植モデルで腫瘍増殖を抑制し、肝転移および胃がんの腹膜播種の発生を抑制したこと、胃がん腹膜播種モデルへの反復投与で生存期間が延長したことが Signal Transduction and Targeted Therapy 誌にオンライン掲載された(掲載日2026年8月20日、DOI: 10.1038/s41392-026-02917-9)。血液疾患に限られていたPPMX-T003の適応候補が固形がんの転移抑制にも広がりうることを示す前臨床知見であり、会社が「真性多血症に加え他の疾患への適応拡大を視野に導出活動を推進する」としている方針を裏づける。ただし現段階はマウスモデルであり、ヒトでの有効性は未検証である。
CDH3標的パイプライン(PPMX-T002 / T004)
PPMX-T002(225Ac標識抗体・放射線免疫療法)
カドヘリン3(CDH3)を標的とした放射線免疫療法(RIT)。2016年に米国でPhase Iを実施したが、富士フイルムからの返還後に標識核種を90Y(ベータ線)から225Ac(アルファ線)へ変更し、非臨床段階で再開発中。2024年EANM(欧州核医学会)でポスター発表済み。会社は導出活動について「これまで数少ない放射性医薬品開発企業に対しアプローチを繰り返し実施」「本剤に興味を持つ企業はある」「今後は、最近、放射性医薬品の開発を強化している候補先を中心に導出活動する予定」と説明している(2026年6月25日 事業計画資料)。
PPMX-T004(CDH3-ADC、UBE共同研究)
2024年10月にUBEと共同研究契約を締結。UBEのリンカー・ペイロード技術を活用し、薬物・リンカーの最適化を進めている。2027年3月期第1四半期時点で予備毒性試験を実施中で、2026年9月までに薬効と毒性のバランスを見極める計画。その後は非GLP毒性試験を終了し、2027年1月に抗体MCB(マスターセルバンク)の製造に着手、2028年3月期にGLP毒性試験へ進む工程が示されている。
2026年7月31日には、第85回日本癌学会学術総会(2026年9月24〜26日、国立京都国際会館)のポスターセッションに「新規CDH3標的抗体薬物複合体 PPMX-T004b-PGAP-1 の先行抗体薬物複合体との比較研究における特性評価」が採択されたことが開示された(発表予定日 2026年9月24日午後)。会社は「非臨床試験において先行品に対する差別性を示唆する良好なデータと今後のポテンシャル」を発表するとしている。
なお、会社はADC市場について「Towards Healthcare の予測によれば、2025年の135億ドルから2035年には326億ドルへ成長(年平均成長率9.23%)」と開示している(2027年3月期第1四半期決算短信)。これは会社が引用した第三者予測であり、当社の売上見通しではない。
次世代創薬・提携・診断薬(初版以降に厚みが増した領域)
| 取り組み | 相手先 | 状況(2026年9月1日時点) |
|---|---|---|
| 抗体ライブラリ2 × ゲノム編集の創薬 | Eurus Therapeutics(神奈川県藤沢市、2021年2月設立) | 2025年12月開始の共同研究で目的の抗体・抗体遺伝子を取得。2026年8月3日に、プロファイリングと最適化を進める新たな共同研究契約を締結。会社は「現時点での業績への影響は軽微」と明記 |
| 抗体技術を用いた新薬創出 | あすか製薬 | 2025年11月開始。2027年3月期第1四半期時点で「予定通り進捗」 |
| 抗体医薬の研究・開発・製造受託の協業検討 | EirGenix, Inc.(台湾、CDMO) | 2026年6月23日に覚書締結。非拘束的な合意であり具体的な取引を約束するものではない |
| PTX3迅速計測キット | 湧永製薬 | 心血管疾患の一種(対象は非公開)を対象に、体外診断用医薬品としての製造販売承認申請およびQMS適合性調査の申請を完了し、各申請業務に対応中 |
| 新規機能性抗体取得プラットフォーム技術 | 東京都中小企業振興公社(TOKYO戦略的イノベーション促進事業・令和5年度採択) | 2026年8月25日に完了検査終了。抗体分泌細胞の選別から抗体遺伝子情報の取得までを一連の工程として実施可能な技術基盤を確立 |
| 研究用試薬 | 自社 | 2026年7月に抗S100A4タンパク質抗体を発売。抗体・試薬販売は第1四半期に前年同期比+53.7% |
これらは現時点でいずれも売上・契約一時金として計上されておらず、会社も業績影響を「軽微」または言及なしとしている。ただしPTX3診断薬は承認申請段階にあり、承認されれば創薬以外で初の医薬品規制下の収益源となりうる点で、他とは性格が異なる。
規制当局(PMDA/FDA)との協議状況
日本(PMDA)
ANKL適応では2023年3月にPMDAへ治験計画届を提出済み。会社の2027年3月期計画には「ANKLの医師主導治験を終了(2027/3)」とあわせて「PMDA相談を実施」が明記されており、治験終了後に次段階の規制協議へ進む工程が公表されている。また、AMED「希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択(2022年3月・2025年2月)と、2028年3月期のオーファン申請計画が、希少疾病用医薬品指定に向けた道筋を示している。PV適応については、第I相CSRが完成しているものの、具体的な相談区分・実施時期の開示は確認できない(未確認)。
米国(FDA)
現時点でFDAへのIND申請は確認されていない。用途特許の米国特許査定(2026年7月3日)は権利面の整備であって、規制当局との協議の進展を意味するものではない。PV適応の導出が成立した場合、導出先が米国での開発を担う構造が想定される。
競争環境(今回の改稿で最も大きく変わった論点)
初版公開後の2026年8月28日、米国FDAは武田薬品工業/Protagonist Therapeuticsのrusfertide(商品名MIMRYLO)を、真性多血症に伴う赤血球増加症の成人患者を対象に承認した。rusfertideは鉄代謝を制御するホルモン「ヘプシジン」を模倣するペプチドで、赤血球産生に必要な鉄の供給を絞ることで瀉血の負担を軽減する。米国での新薬承認申請は2026年1月に公表され、同年3月に優先審査が指定されていた。承認は現地時間2026年8月28日付で、武田薬品は同月29日に公表している(出典: 武田薬品工業プレスリリース、米国FDAプレスアナウンスメント、日本経済新聞2026年8月29日)。日本国内での承認・申請状況は、2026年9月1日時点で公表を確認できていない(未確認)。
この承認がペルセウスの評価に与える意味は両面ある。
- ネガティブ: PPMX-T003が主戦場としてきたPV領域に、承認済みの新規作用機序薬が出現した。導出交渉において「未充足の空白市場」という説明は成立しにくくなり、後発参入としての差別化立証を求められる。rusfertideは皮下投与の自己注射ペプチドである一方、PPMX-T003は静注抗体であり、投与利便性でも比較にさらされる。
- ポジティブ: 「瀉血依存の軽減」という評価軸でFDAが承認を与えたこと自体が、PPMX-T003が2026年7月に示した17ヶ月以上の瀉血不要期間というデータの規制上の位置づけを明確にする。また、PV市場に商業的価値があることを大手が資本で証明した形であり、導出先候補にとって市場性の説明コストは下がる。
すなわち、rusfertideの承認は「市場の実在を証明したが、席を1つ埋めた」出来事として読むのが妥当であり、rNPVの想定ピーク売上とシェアを引き下げる一方、導出そのものの可能性を消すものではない。
競合パイプライン比較
| 適応 | 企業 | 化合物 | 作用機序 | 状況(2026年9月1日時点) |
|---|---|---|---|---|
| PV | 武田薬品/Protagonist | rusfertide(MIMRYLO) | ヘプシジン模倣ペプチド(皮下投与) | 米国FDA承認済み(2026年8月28日)/日本は未確認 |
| PV | Disc Medicine | DISC-3405 | 抗TMPRSS6抗体 | Phase 2(RESTORE-PV)。2026年7月30日に組入れ完了を開示し、初回データの学会発表を予定と発表 |
| PV・骨髄線維症 | Ajax Therapeutics(Eli Lillyが買収) | AJ1-11095 | 経口Type II JAK2阻害薬 | Phase 1。2026年4月にLillyによる買収が公表、6月に初回臨床データ公表 |
| PV(既承認) | ノバルティス | ruxolitinib(ジャカビ) | JAK1/2阻害薬 | 日本で既承認(2015年)。2025〜2026年の新規動向は確認されず |
| PV(既承認) | ファーマエッセンシア | ropeginterferon alfa-2b(BESREMi) | ペグ化インターフェロンα | 日本で既承認。2026年8月25日に本態性血小板血症の適応追加承認を同社が公表(二次情報) |
| PV・ANKL | ペルセウス(4882) | PPMX-T003 | 抗TfR1完全ヒト抗体(鉄枯渇) | PV: Phase I完了/ANKL: Phase I/II(5例登録) |
| ANKL | — | — | — | 2025〜2026年に新規の承認薬・参入は確認されず。FDA承認薬ゼロという構図は維持されている |
| CDH3 | BioCity Biopharma | BC3195 | CDH3標的ADC(MMAE) | Phase 1。2025年3月にMSDとの併用試験開始を発表。以降の更新は確認できず(未確認) |
| CDH3 | CytomX Therapeutics | CX-908 | P-cadherin×CD3 二重特異性(Probody) | Phase 1(詳細な進捗は未確認) |
出典: rusfertideは武田薬品工業プレスリリース・米国FDAプレスアナウンスメント・日本経済新聞(2026年8月29日)。Disc Medicine・Ajax Therapeutics・ファーマエッセンシア・BioCity Biopharma・CytomX Therapeuticsの各行は各社リリースおよび報道に基づく二次情報であり、一次資料での再確認は行っていない。
PVでは承認薬・後期開発品が複数存在する競合市場である一方、ANKLは依然として承認薬が存在しない領域であり、PPMX-T003は「競合が少ない」というより「開発している企業が実質的に同社のみ」という位置づけにある。CDH3ではBioCityのBC3195が臨床段階(Phase 1)にあり、非臨床のPPMX-T002/T004は開発段階で後れを取っている。
rNPV試算
今回の改稿にあたり、rNPV試算の前提を全面的に見直した。初版(2026年6月10日)は企業価値51.2億円・1株301円と算出していたが、以下の4点を反映した結果、数値は大きく低下している。
- PVのピーク売上想定を引き下げた(rusfertideの米国承認により、後発参入としての想定シェアを縮小)
- R&D・販管費のNPV控除を会社ガイダンスに置き換えた(初版は年7億円想定。会社は2027年3月期の販管費を971百万円、うち研究開発費663百万円と開示している)
- 発行済株式数を18,429,500株に更新(第29回新株予約権の行使完了により初版比+8.4%)
- 現預金を2026年6月末実績の15.92億円に更新
したがって、初版の51.2億円と今回の数値を「価値が下がった」と単純比較することはできない。前提を変えた結果であり、その前提自体も筆者の仮定である。
試算の前提条件(すべて筆者の仮定・推計)
| 項目 | 設定 | 根拠・注記 |
|---|---|---|
| 割引率(WACC) | 12% | 小型バイオテックの標準的水準として設定(筆者の仮定) |
| PV適応のPoS | ベア6% / ベース10% / ブル20% | Phase I完了段階からの承認確率。血液領域の一般的水準を参照した筆者の仮定であり、特定の統計値の引用ではない |
| PV導出の成立確率 | ベア25% / ベース40% / ブル60% | 2025年3月期を目標とした導出が3期連続で未成立である一方、CSR完成・17ヶ月瀉血不要データ・米国用途特許査定・導出コンサルタント起用という材料が揃った状況を織り込んだ筆者の仮定 |
| PV導出時の一時金 | 20億円(1.5年後) | 筆者の仮定(会社は導出条件を一切開示していない) |
| PV開発・承認マイルストーン | 合計40億円(6年後) | 筆者の仮定 |
| PVロイヤリティ | ピーク売上の10%、上市8年後から10年間、平均係数0.65 | 筆者の仮定。ピーク売上はベア150億円/ベース300億円/ブル500億円 |
| ANKL | ピーク売上ベース30億円、企業帰属35%、PoSベース30%、6年後から10年間 | 超希少疾患・承認薬ゼロ・AMED支援を踏まえPoSを高めに設定。自社販売と海外導出の混合を想定(筆者の仮定) |
| PPMX-T002 / T004 | 非臨床のPoSベース3%。ピーク売上ベース500億円/600億円、帰属8%/6%、10年後から10年間 | 筆者の仮定。T004はUBEとの共同研究であり帰属率を低く設定 |
| 既存事業(抗体研究支援・試薬・PTX3) | 3.0億円 | 年商1.4億円・粗利率90%超の継続事業として簡便法で評価(筆者の推計) |
| R&D・販管費のNPV控除 | 年9.71億円 × 3〜4年 | 2027年3月期の販管費見込み971百万円(会社開示)を、導出成立または資金再調達までの自己負担期間として控除 |
試算結果(感度レンジ)
| 項目 | ベア | ベース | ブル |
|---|---|---|---|
| PPMX-T003 PV(導出モデル) | 4.9 | 9.6 | 22.5 |
| PPMX-T003 ANKL | 2.2 | 6.6 | 14.6 |
| PPMX-T002(225Ac-RIT) | 0.6 | 1.6 | 4.2 |
| PPMX-T004(CDH3-ADC) | 0.6 | 1.4 | 3.6 |
| 既存事業 | 3.0 | 3.0 | 3.0 |
| パイプラインrNPV合計 | 11.4 | 22.1 | 47.9 |
| R&D・販管費NPV控除 | -29.5 | -23.3 | -23.3 |
| 現預金(2026年6月末) | +15.92 | +15.92 | +15.92 |
| 企業rNPV(億円) | -2.2 | 14.7 | 40.5 |
| rNPV/株(18,429,500株) | -12円 | 80円 | 220円 |
| 時価総額26.5億円(144円)との比較 | -108% | -44% | +53% |
単位は億円。ベース想定では、時価総額26.5億円はrNPV14.7億円を約80%上回っており、市場は筆者のベース前提より導出成立確率あるいはピーク売上を高く織り込んでいることになる。逆にブル想定(導出成立確率60%・PV PoS 20%・ピーク売上500億円)では1株220円となり現在値を53%上回る。レンジが-108%〜+53%と極端に広いこと自体が、この銘柄のバリュエーションが「導出が成立するか否か」という二値の事象にほぼ支配されていることを示している。前提を1つ動かすだけで結論が反転する構造であり、点推定を根拠にすべきではない。
カタリストカレンダー(2026年9月〜2027年3月)
| 時期 | イベント | インパクト | 織り込み度 | 注目点 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年9月24日 | 第85回日本癌学会学術総会でPPMX-T004b-PGAP-1のポスター発表 | ★★★ | 一部織込(7/31開示済み) | 先行ADCに対する差別性データの中身 |
| 2026年9月まで | PPMX-T004の非GLP毒性試験終了・薬効と毒性のバランス見極め | ★★★ | 未織込 | 結果次第でGLP毒性試験・MCB製造へ進むか決まる |
| 2026年10月頃 | EANM(欧州核医学会) | ★★ | 未織込 | PPMX-T002(225Ac-RIT)非臨床データ発表の可能性(発表採択は未確認) |
| 2026年11月頃 | 2027年3月期第2四半期決算発表 | ★★ | 概ね織込(定例) | 現預金水準、導出活動の記述 |
| 2026年12月 | ASH(米国血液学会)年次総会 | ★★★★ | 未織込 | PV臨床研究の詳細データ(17ヶ月瀉血不要)発表の可能性。演題採択は未確認 |
| 時期未定 | PPMX-T003 / PPMX-T002 の導出契約 | ★★★★★ | 未織込 | 最大の分岐点。3期連続で未成立であり、時期の見通しは会社も示していない |
| 2027年1月 | PPMX-T004の抗体MCB製造着手 | ★★ | 未織込 | 会社計画に明記された工程 |
| 2027年3月 | ANKL医師主導治験の終了(治験期限) | ★★★★★ | 未織込 | 目標7例に対し登録5例。3回目の延長となるか、未達のまま終了するかが最大の論点 |
| 2027年3月期内 | ANKL治験に関するPMDA相談 | ★★★★ | 未織込 | 会社計画に明記。オーファン申請(2028年3月期計画)への布石 |
| 時期未定 | PTX3迅速計測キットの製造販売承認 | ★★ | 未織込 | 申請済み。承認されれば創薬以外で初の規制下収益源 |
本カレンダーのうち日付が確定しているのは日本癌学会(9月24日)と決算発表のみで、それ以外は会社計画上の時期または筆者の推定である。臨床データの読み出しは成功・失敗の両方向に株価を動かしうる点に留意されたい。
経営陣の自信度・コミットメント
以下は経営陣の見解であり、客観的事実ではない。出典を明記のうえ、コミットメントの具体性・検証可能性で強弱を判定した。
| 発言・コミットメント | 出典 | 判定 |
|---|---|---|
| 「各パイプラインともに導出には至らず、現在も導出活動を続けており、みなさまのご期待に添えず申し訳なく思っています」(横川拓哉社長) | 2026年3月期決算説明会(2026年5月18日開催)/ログミーFinance書き起こし(2026年5月26日公開) | 未達の明示的な認識。楽観的な言い換えをしていない点は評価できるが、自信のシグナルではない |
| 「2025年3月までに導出予定とうかがっていましたが、未達に終わりました。その後も導出活動を継続し、1年が経過しています」(質疑応答の質問部分) | 同上(回答本文は会員登録が必要な範囲のため未確認) | トラックレコードの裏づけ。期限を切ったコミットメントが1度外れている |
| 導出活動について「今期から医薬品導出を担うコンサルタントと契約し活動を加速」 | 事業計画及び成長可能性に関する事項(2026年6月25日) | 中。体制変更という検証可能な行動を伴う。ただし成果の期限は示していない |
| PPMX-T002について「本剤に興味を持つ企業はある」 | 同上 | 弱。相手先・段階・時期のいずれも非開示で検証不能 |
| PPMX-T004の非GLP毒性試験を2026年9月までに終了、抗体MCB製造を2027年1月に着手 | 同上(2027年3月期計画) | 強。年月を切った工程コミットメントで、達成・未達を外部から検証できる |
| ANKL医師主導治験を2027年3月に終了、2028年3月期にオーファン申請 | 同上(2028年3月期までの成長計画) | 中〜強。期限は明確だが、症例登録が5/7例にとどまり、既に2回延長した実績がある |
| 2027年3月期の業績予想は「導出による一時金等の金額が確定していない」ため未定 | 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月13日) | 導出の時期・規模について会社自身が予測を放棄している状態 |
トラックレコードとの突き合わせ: 導出は2025年3月期を目標に掲げて未達、以後も未成立のまま3期目に入っている。事業計画資料自体が「FY2025/3を目標に活動していたが導出には至らず、活動継続中」と2件(PPMX-T003・PPMX-T002)について明記している。一方で、ANKL治験の症例追加(+2例)、施設拡大(大阪大学病院の参加)、AMED助成金1億円の獲得、PPMX-T004の非GLP毒性試験開始、Eurus・あすか製薬との共同研究進捗は、いずれも計画通りに実行されている。「導出以外の工程は計画どおり進み、導出だけが3期連続で外れている」というのが、この経営陣のトラックレコードの要約である。
財務・資金リスク分析
業績推移
| 項目 | FY24/3 | FY25/3 | FY26/3 | FY27/3 Q1 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 100 | 120 | 135 | 35 |
| 営業損益(百万円) | -895 | -826 | -744 | -204 |
| 経常損益(百万円) | — | -830 | -680 | -201 |
| 純損益(百万円) | -1,104 | -905 | -718 | -202 |
| EPS(円) | -93.7 | -63.4 | -48.2 | -11.85 |
百万円未満切捨て(決算短信ベース)。第1四半期の売上高35,184千円は前年同期比+49.9%で、内訳は抗体研究支援3,788千円(+24.2%)、抗体・試薬販売31,396千円(+53.7%)。売上総利益率は90.9%と高いが、絶対額が小さく研究開発費を賄うには遠い。販売費及び一般管理費は236,262千円(前年同期比-1.5%)、うち研究開発費149,554千円(同-9.2%)で、コスト規律は効いている。四半期純損失202,603千円が前年同期(176,073千円)より拡大したのは、前年同期に営業外収益として計上されていた助成金収入52,426千円が当四半期はゼロだったことが主因である。
資金状況
| 項目 | 数値 | 評価 |
|---|---|---|
| 現預金残高(2026年6月末) | 1,592百万円 | 前事業年度末1,515百万円から+77百万円(新株予約権行使による払込) |
| 年間費用見込み(会社開示) | 販管費971百万円(うち研究開発費663百万円) | 2027年3月期の会社計画 |
| 純消費額(筆者推計) | 約8.4億円/年 | 販管費971百万円 − 売上総利益の年換算約128百万円 |
| ランウェイ(筆者推計) | 約1.9年(約23ヶ月) | 増資リスク「中」(18〜36ヶ月)。ただし下限に近い |
| 自己資本比率 | 68.5% | 有利子負債なし。前事業年度末70.1%から低下 |
| 純資産 | 1,222百万円(うち自己資本1,140百万円、新株予約権81百万円) | — |
| 利益剰余金 | -920百万円 | 第1四半期に純損失202百万円を計上し拡大 |
| 長期預り金(AMED補助金) | 365百万円 | 第1四半期に25百万円増加。収益化されていない(費用充当の性格) |
| 未行使新株予約権(資金調達目的) | ゼロ | 第29回新株予約権は2026年6月25日をもって全て行使完了 |
| 継続企業の前提に関する注記 | 該当なし | 2027年3月期第1四半期決算短信で明記 |
希薄化の状況
第29回新株予約権(2025年12月17日に第三者割当で発行決議、2026年1月5日発行、36,800個=3,680,000株分)は、2026年6月25日をもって全て行使が完了した。2026年6月中だけで1,429,900株が交付され(行使価額139〜145円)、発行済株式数は16,999,600株から18,429,500株へ8.4%増加した。上場時(11,686,400株)と比較すると57.7%の増加である。
この事実は二面で読む必要がある。短期的には、行使価額修正条項付新株予約権という需給の重石が外れたことになる。一方で中期的には、次の資金調達手段が手元に無い状態に戻ったことを意味する。ランウェイが約23ヶ月である以上、2028年3月期中には導出一時金かあらたな資金調達のいずれかが必要になる公算が大きい。株価が144円と行使価額帯(139〜145円)と同水準にあることは、次回調達時の希薄化率が前回より大きくなりやすい条件でもある。
株主構成
2026年3月期有価証券報告書における大株主上位10名の合計持株比率は約14.3%で、筆頭株主は大和証券(2.93%)である。三菱UFJキャピタル1.68%、富士フイルム1.39%(PPMX-T002/T004の旧導出先)が残る。支配株主・親会社・創業家による大株主が存在せず、上位が証券会社の名義口となっている構成は、安定株主が薄いことを意味する。なお、有報記載の比率はその時点の発行済株式数ベースであり、第1四半期の新株発行後は比率が低下している。
リスク要因
1. 導出未成立リスク(最大のリスク)
PPMX-T003・PPMX-T002ともに導出は3期連続で未成立。会社は業績予想を「導出一時金の金額が確定しない」ことを理由に開示していない。rusfertideの米国承認により、PV領域の導出交渉は「空白市場への一番乗り」ではなく「承認薬が存在する市場への後発参入」という条件で行われることになる。
2. ANKL治験の症例登録リスク
目標7例に対し登録5例。治験期限は2027年3月31日で、既に2回延長している。3回目の延長、あるいは目標未達のまま終了する可能性がある。医師主導治験であるため、症例登録の進捗を会社が直接コントロールできる構造ではない。
3. 単一化合物への依存
rNPVのベース想定で、PPMX-T003(PV+ANKL)が全パイプライン価値の約73%を占める。PPMX-T002・T004はいずれも非臨床段階であり、PPMX-T005は標的の評価・検討段階にすぎない。PPMX-T003に関する否定的なイベントは、企業価値の大部分を直接毀損する構造にある。
4. 資金調達と希薄化
ランウェイ約23ヶ月。第29回新株予約権の行使完了により、未行使の資金調達目的の新株予約権はゼロとなった。導出一時金が得られない場合、2028年3月期中に追加調達が必要となる公算が大きく、株価が上場来安値圏(2026年8月3日に年初来安値134円)にある局面での調達は希薄化率を押し上げる。
5. 監査法人変更
2026年3月期より監査法人がKPMGあずさ監査法人から史彩監査法人に変更されている。大手から中小への変更は市場から注視されうる論点である。
6. 富士フイルム返還パイプラインの経緯
PPMX-T002/T004はいずれも2022年3月に富士フイルムから実施権が返還されたパイプラインであり、返還理由(同社の事業方針変更と開示)が新たな導出先の評価に影響する可能性がある。
7. 流動性・需給
3ヶ月平均の1日売買代金は約7,600万円と推計され、流動性は低位にある。信用買い残は約191万株(2026年8月28日時点)で発行済株式数の約10.4%に相当する一方、信用売り残はゼロであり、需給は買い残の一方向に偏っている。時価総額26.5億円という規模は、好材料でも悪材料でも株価が大きく振れやすいことを意味する。
総合評価(レーティング)
採点基準は equity-rating-framework v2.2 に準拠する。品質・価格・オーバーレイは別々に提示し、合計点に混ぜない。本レーティングは公開情報に基づく独自の定量評価であり、投資判断を推奨するものではない。
品質 ★★★☆☆(36/70) / 価格 E(大幅割高・ベース想定でアップサイド -44%)
資本イベント素地 2/10(低い) / 国策アライン 6/10(やや高い) / テーマ適合 21/40(中程度)
上抜け素地 2/6(⑥カタリストに調整なし)
品質スコア(7軸・各10点)
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①成長性 | 4 | 売上高は135百万円→Q1で前年同期比+49.9%と高成長だが絶対額が小さい。パイプラインはPV Phase I完了(2024年6月)以降2年間フェーズが進んでおらず、導出は3期連続未成立。ANKLは5/7例で期限を2回延長 |
| ②収益性 | 5 | 営業赤字が常態のためN/A(5点固定)。バーンの質は良好で、販管費-1.5%・研究開発費-9.2%とコスト規律が効いている。従業員35名・平均年収7,778,263円(+3.21%)、研究開発部24名に対し年間研究開発費663百万円=一人当たり約27.6百万円(推計) |
| ③収益の質・連結範囲 | 6 | 単一セグメント・持分法適用会社なし・非支配持分なしで連結範囲は極めて透明。売上は抗体研究支援と試薬販売の実需で、ライセンス一時金ゼロ。AMED補助金は長期預り金365百万円として計上され収益化しておらず、会計処理は保守的。ただし利益は出ていない |
| ④競争優位性 | 6 | 臨床段階のTfR1阻害抗体は世界で他に報告がない(同社公表ベース)First-in-class。多血症治療用途特許が日本・中国で成立し米国で査定、名大との薬効・感受性判定特許も成立(特許第7875530号)。一方でPVはrusfertideに先行され、CDH3もBioCityがPhase 1で先行しており、市場での相対順位は追随側 |
| ⑤需給ポジション(直近3ヶ月) | 5 | 3ヶ月平均の1日売買代金が約7,600万円(推計)で1億円未満のためN/A規定により5点固定。参考として3ヶ月騰落率-7.1%(5/29 155円→9/1 144円)、1年で-58.1%、8月3日に年初来安値134円。信用買い残191万株=発行済の10.4%、売り残ゼロ |
| ⑥カタリスト(今後3ヶ月) | 7 | 日付が確定した材料は日本癌学会(9月24日)と第2四半期決算の2件。会社計画上の期日を持つ材料としてPPMX-T004非GLP毒性試験の完了(2026年9月まで)があり未織り込み。導出は日付未定のため件数に算入せず。上抜け素地2/6のため調整なし |
| ⑦リスク耐性 | 3 | 自己資本比率68.5%・有利子負債なし・継続企業の前提に関する注記なしだが、ランウェイ約23ヶ月で調達目的の未行使新株予約権はゼロ。rNPVベース想定でPPMX-T003が価値の約73%を占める単一化合物依存 |
| 合計 | 36/70 | ★★★☆☆ |
価格判定の根拠
手法はrNPV対時価総額(赤字企業のためPER/PBRは機能しない)。ベース想定の1株80円に対し現在値144円でアップサイド -44% → 判定E(大幅割高)。ただしレンジはベア-12円(-108%)〜ブル220円(+53%)であり、ブル想定なら判定Aに相当する。この判定は「導出が成立する確率を40%と置いた場合」の帰結であり、確率の置き方一つで反転する。点推定を根拠にせず、前提の妥当性そのものを読者が判断すべき性質の数値である。
資本イベント素地(TOB/MBO)2/10 — 低い
該当は「ネットキャッシュが時価総額の50%以上」(現預金15.92億円÷時価総額26.5億円=60%)と「流動性が低い」の2項目のみ。PBRは2.33倍で1倍割れではなく、支配株主・親子上場・創業家の大株主・アクティビストの大量保有報告はいずれも確認できない。なお、バイオ企業では会社の買収より個別パイプラインの導出・取得という形をとることが一般的であり、その意味では本項の枠組みで捉えきれない論点である。本項は素地の項目数の集計であって、資本イベントの発生を予想・示唆するものではない。
国策アライン度 6/10 — やや高い
該当項目: ①AMED「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」への採択(所管を特定できる公的事業)、③2022年3月・2025年2月・令和8年度と複数年度にわたる採択、⑦当該企業が採択事業者として社名で確認でき令和8年度の治験費用として助成金1億円を獲得、⑧過去に助成金収入52,426千円を営業外収益に計上した実績(2026年3月期第1四半期)、⑨政策の複数年度継続、加えて東京都中小企業振興公社「TOKYO戦略的イノベーション促進事業」(令和5年度採択)の完了。
進行段階と業績寄与: ANKL治験は「③実証」段階にある。助成金は治験費用の補填であって売上ではなく、貸借対照表上も長期預り金365百万円として負債計上されている。オーファン申請は2028年3月期の計画であり、仮に指定・承認まで至るとしても売上計上は数年先である。現時点で国の支援が売上として業績に寄与する見込みはない。
テーマ適合度 21/40 — 中程度
テーマの定義: 「次世代モダリティ(ADC・アルファ線放射性医薬品)とAI創薬による抗体医薬の高度化」。認定根拠として、政策の裏付け(AMED創薬支援)、技術的非連続性(鉄枯渇という新規MOA、90Y→225Acのアルファ線転換)、第三者TAM推計(会社が引用するTowards HealthcareのADC市場予測)、実装マイルストーンの公開(非GLP毒性試験2026年9月、MCB製造2027年1月)、複数の大手・公的機関の資金投入(UBE・あすか製薬・Eurus・AMED)の5項目を満たす。
| 軸 | 点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①量的寄与 | 1 | テーマ由来の売上・契約一時金はゼロ。全社売上1.4億円は抗体研究支援と試薬販売であり、UBE・Eurusとの共同研究について会社自身が業績影響を「軽微」と明記している |
| ②純度 | 9 | 時価総額26.5億円の超小型で、抗体医薬創薬が主業。テーマの成否が企業価値を直接左右する |
| ③サイクル位置 | 4 | ADC・アルファ線放射性医薬品はエンハーツ・Pluvictoの成功を経て世界的には成熟〜拡大局面にあり初動ではない。当該銘柄自体も株価が1年で-58%と剥落している |
| ④希少性 | 7 | 臨床段階のTfR1阻害抗体は世界で他に報告がなく標的としての希少性は高い。ただしADC・放射性医薬品関連を標榜する国内上場銘柄は多数存在する |
🔴 ①量的寄与1点と②純度9点の乖離が、この銘柄の性格を最も端的に表している。テーマとしての純度は極めて高いにもかかわらず、テーマ由来の売上寄与はゼロである。すなわち株価はテーマとして反応しうるが、その値動きは業績の裏付けを伴わない。また、純度の高さ・時価総額の小ささ・流動性の低さはいずれも両刃であり、好材料で大きく動くのと同じ幅で悪材料でも下に振れる。これは「上がりやすさ」ではなくボラティリティの高さを意味する。
上抜け素地 2/6 — ⑥に調整なし
該当は「浮動株・時価総額が小さい」(時価総額26.5億円)と「未織り込みの材料がある」(日本癌学会・PPMX-T004非GLP毒性試験・導出)の2項目。非該当は、売買代金の減少(直近1ヶ月平均約2,500万円÷3ヶ月平均約7,600万円=約0.33倍・いずれも筆者推計)、年初来高値340円まで136%の距離、信用買い残が発行済の10.4%と重い、信用売り残ゼロで踏み上げ余地がない、の4項目。本項は需給構造の観察であり、株価の方向を予想するものではない。時価総額が小さく流動性が低いことは、下方向にも同じだけ振れやすいことを同時に意味する。
解釈
品質★3・価格Eの組み合わせは、v2.2の解釈マトリクスでは「品質★3 × 価格D・E=期待先行の可能性」に位置づけられる。もっとも、ここでいう「期待」の中身は明確で、市場は筆者のベース前提(導出成立確率40%)より高い確率で導出成立を織り込んでいるということである。導出が成立すれば前提そのものが置き換わり、価格判定は即座に意味を失う。逆に導出未成立のまま2028年3月期を迎えれば、資金調達に伴う希薄化がベア想定に近い状況を作る。
まとめ
強気材料
- PV第I相参加者を対象とした臨床研究で、6例中4例に投与終了後17ヶ月以上の瀉血不要期間を確認(2026年7月1日開示)。効果の持続性という、抗体医薬ならではの差別化軸が示された
- 多血症治療用途特許が日本・中国で成立、米国で特許査定。名古屋大学との薬効・感受性判定特許も成立し、導出交渉の資産が厚みを増した
- 大腸がん転移・胃がん腹膜播種の抑制という前臨床成果がSignal Transduction and Targeted Therapy誌に掲載され、適応拡大の可能性が示された
- ANKLは登録5/7例まで進み、施設が10医療機関に拡大、AMED助成金1億円を獲得。2028年3月期にオーファン申請を計画
- PPMX-T004b-PGAP-1が日本癌学会に採択(9月24日発表)。UBEとの共同研究が学会発表段階まで到達した
- PTX3診断薬が製造販売承認申請済みで、創薬以外の規制下収益源となる可能性がある
- 自己資本比率68.5%・有利子負債なし・継続企業の前提に関する注記なし。販管費・研究開発費ともに前年同期比で減少しコスト規律は効いている
弱気材料
- 主戦場のPVに承認薬が出現した。rusfertide(MIMRYLO)が2026年8月28日に米国FDA承認。導出交渉の前提が「空白市場」から「後発参入」へ変わった
- 導出は3期連続で未成立。会社自身が「ご期待に添えず申し訳なく思っています」と未達を認めており、業績予想も導出一時金が確定しないことを理由に開示できていない
- ランウェイ約23ヶ月。第29回新株予約権の行使完了で調達目的の未行使新株予約権はゼロとなり、次の調達手段が手元にない
- 第1四半期に発行済株式数が8.4%増加(上場来では57.7%増)。株価が行使価額帯と同水準にあり、次回調達時の希薄化率は前回より大きくなりやすい
- rNPVのベース想定でPPMX-T003が価値の約73%を占める単一化合物依存。PPMX-T002/T004は非臨床、PPMX-T005は標的評価段階
- ANKL治験は目標7例に対し5例で、期限を2回延長済み。2027年3月の期限までに登録が完了しない可能性がある
- 流動性が低く(3ヶ月平均で1日約7,600万円と推計)、信用買い残が発行済の10.4%と需給の重石になっている
ペルセウスプロテオミクスは、TfR1という世界で他に臨床段階の競合がいない標的を握り、PVでは効果の持続性という新しい武器を、ANKLでは承認薬ゼロの領域での唯一の開発者という立場を得ている。基盤技術(抗体ライブラリ2、シングルBセルプラットフォーム)と提携網(UBE・あすか製薬・Eurus・EirGenix)も初版時点より確実に厚みを増した。それでもなお、この銘柄の企業価値を決めるのは、導出が成立するか否かという一点である。rNPVの感度レンジが-108%〜+53%と極端に広いのは、分析の精度が低いからではなく、対象そのものが二値的だからである。読者が判断すべきは筆者の点推定ではなく、導出成立確率を何%と置くかであり、その確率を最も左右するのが2026年8月28日のrusfertide承認をどう評価するかである。
免責事項・ディスクレーマー
本記事は特定企業のパイプラインに関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、
特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。rNPV試算・レーティングは独自の前提条件に
基づく推計であり、実際の企業価値を保証するものではありません。バイオ医薬品の開発には
高い不確実性が伴い、臨床試験の失敗、規制当局の判断、競合状況の変化等により
開発品の価値が大幅に変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任において、
十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。
本記事の情報は2026年9月1日時点の公開情報に基づいています。
経営陣の発言は当該経営陣の見解であり、将来の結果を保証するものではありません。
筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。
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