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ペルセウスプロテオミクス(4882) TfR1抗体rNPV分析

※ 本記事はバイオ医薬品パイプライン調査レポート一覧の一つです。

ペルセウスプロテオミクス(4882)は、東京大学先端科学技術研究センター発の抗体医薬品開発企業である。主力パイプラインPPMX-T003は、トランスフェリン受容体1(TfR1)を標的とするFirst-in-classの完全ヒト抗体で、真性多血症(PV)のPhase I試験を終了しCSRが完成、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)では医師主導Phase I/II試験が進行中である。本記事では、2026年5月14日公表の決算短信を含む最新開示資料をもとに、パイプライン進捗・規制当局協議状況・rNPV試算・カタリストカレンダーを独自に整理した。なお、本記事は調査分析の情報提供であり、投資判断の最終責任は読者にある。

目次

会社概要

項目 内容
会社名 株式会社ペルセウスプロテオミクス(Perseus Proteomics Inc.)
証券コード 4882(東証グロース)
設立 2001年2月1日
上場 2021年6月22日
本社 東京都中央区日本橋箱崎町30-1
研究拠点 名古屋ラボ(愛知県名古屋市千種区、2019年開設)
代表取締役社長 横川拓哉
従業員数 34名(2025年9月末)
事業内容 抗体医薬品開発(がん・血液疾患)、抗体研究支援、試薬販売
出自 東京大学先端科学技術研究センター(児玉龍彦・浜窪隆雄教授らの技術基盤)
主要連携先 広島大学(ANKL治験)、大阪大学(TfR1研究)、UBE(ADC共同研究)
時価総額 約25.7億円(2026年6月、株価151円参考)
発行済株式数 16,999,600株
PBR / PER 約1.6倍 / N/A(赤字)

パイプライン一覧

パイプライン 標的 タイプ フェーズ 適応症 共同研究先 導出状況
PPMX-T003 TfR1 完全ヒト抗体 Phase I 完了 真性多血症(PV) 導出活動中
PPMX-T003 TfR1 完全ヒト抗体 Phase I/II 実施中 アグレッシブNK細胞白血病(ANKL) 広島大学 自社(医師主導治験)
PPMX-T002 CDH3 225Ac標識抗体(RIT) 非臨床 卵巣がん・胆道がん・頭頸部がん 導出活動中
PPMX-T004 CDH3 ADC 非臨床 固形がん UBE 共同研究中

PPMX-T003 — First-in-classの抗TfR1抗体

作用機序

トランスフェリン受容体1(TfR1)に結合し、鉄の細胞内取り込みを阻害する完全ヒト抗体である。がん細胞は正常細胞と比べて鉄の需要が高く、鉄枯渇により選択的にがん細胞を死滅させる。ファージディスプレイ法で取得され、臨床で使用可能なレベルのTfR1阻害抗体は世界で他に報告されていない(同社公表ベース)。2024年6月には大阪大学との共同研究で、PPMX-T003の治療効果がアミノ酸輸送体LAT1の発現量に規定されることが発見され、Leukemia誌に発表された。

真性多血症(PV)Phase I 試験結果

2019年11月に日本で第I相試験を開始し、6名の被験者に投与。2024年6月に試験終了、2025年3月18日にCSR(治験総括報告書)が完成した。2024年12月の第66回米国血液学会(ASH)年次総会で発表が採択されている。最高用量群(0.25 mg/kg)でレチクロサイト50%超の低下、ヘマトクリット・ヘモグロビンの持続的低下が確認された。安全性に重大な問題は報告されていない。CSR完成を受け、大手製薬企業への導出活動が本格化している。

ANKL Phase I/II(医師主導治験)

2023年3月にPMDAへ治験計画届を提出し、広島大学病院を中心に9施設で実施中。超希少疾患(日本で年間数十例、FDA承認薬ゼロ、OS中央値5.5ヶ月)のため被験者登録が難航し、治験期限を2027年3月31日まで2回延長している。目標症例数は7名。2025年2月にはAMED「希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業(プレオーファン)」に採択され、将来のオーファン指定への布石が打たれている。

CDH3標的パイプライン(PPMX-T002 / T004)

PPMX-T002(225Ac標識抗体・放射線免疫療法)

カドヘリン3(CDH3)を標的とした放射線免疫療法(RIT)。2016年に米国でPhase Iを実施したが、富士フイルムからの返還後に標識核種を90Y(ベータ線)から225Ac(アルファ線)へ変更し、より高い殺細胞効果を目指して非臨床段階で再開発中。2024年EANM(欧州核医学会)でポスター発表済み。アルファ線標的治療はPluvicto(177Lu-PSMA-617)の成功を受けて世界的にホットトレンドであり、225Acベースの治療薬は次世代の中心となる可能性がある。

PPMX-T004(CDH3-ADC、UBE共同研究)

2024年10月にUBEと共同研究契約を締結。UBEのADCリンカー技術を活用し、薬物・リンカーの最適化を進めている。ADC市場はエンハーツ(第一三共)やパドセフの成功を受けてグローバルで急拡大中であり、CDH3は卵巣がん・胆道がん・頭頸部扁平上皮がん等の複数固形がんに発現する有望な標的である。

規制当局(PMDA/FDA)との協議状況

日本(PMDA)

PPMX-T003のPV適応ではPhase I CSRが完成しており、PMDAへの次フェーズ相談(Phase II/III相談)が準備されていると推定される。ANKL適応では2023年3月にPMDAへ治験計画届を提出済み。また、AMED「プレオーファン」採択により、将来的な希少疾病用医薬品指定に向けた規制当局との対話が進んでいると見られる。

米国(FDA)

現時点でFDAへのIND申請は確認されていない。PV適応の導出が成立した場合、導出先が米国での開発を担う構造が想定される。

rNPV試算

割引率(WACC)12%、開発段階別の成功確率(PoS)を適用したrNPV試算結果を以下に示す。

パイプライン 開発段階 PoS ピーク売上(億円) NPV(億円) rNPV(億円)
PPMX-T003 PV Phase I完了・導出活動中 8.6% 465.0 152.3 24.2
PPMX-T003 ANKL Phase I/II 実施中 30.0% 77.5 94.9 28.5
PPMX-T002 CDH3-RIT 非臨床 3.0% 775.0 134.4 4.0
PPMX-T004 CDH3-ADC 非臨床 3.0% 1,240.0 147.0 4.4
抗体研究支援・試薬販売 事業化済 100% 3.2 2.2 2.2
パイプラインrNPV合計 63.3
R&D費NPV控除(年間7億円 × 6年) -28.8
現預金(FY2025末) +16.7
企業rNPV 51.2億円
rNPV/株(基本: 16,999,600株) 301円
rNPV/株(希薄化後: 1,800万株想定) 285円

rNPV試算の前提条件

  • 割引率: WACC 12%(小型バイオテック標準)
  • PV PoS 8.6%: BIO統計に基づくPhase I→承認の成功確率(血液がん)。導出一時金30億円を導出確率50%で加算
  • ANKL PoS 30%: 超希少疾患でFDA承認薬ゼロ。標準治療なしの高アンメットニーズ、AMED採択、加速承認の可能性を考慮して高めに設定
  • PV導出: グローバルロイヤリティ10%+マイルストーン(Phase 2/3/承認時の段階的支払い)
  • ANKL: 日本自社販売+海外導出で実質50%の売上貢献を想定

Peer Valuation(競合比較)

企業 化合物/ターゲット フェーズ 適応 時価総額 備考
ペルセウス(4882) PPMX-T003 / TfR1 Phase I完了 PV・ANKL 約25.7億円 First-in-class TfR1抗体
Disc Medicine(DISC) DISC-3405 / TMPRSS6 Phase 2 PV 大型(米NASDAQ) FDA Fast Track指定
Ajax/Eli Lilly AJ1-11095 / JAK2 Phase 1 PV 超大型(23億ドル買収) Type II JAK2阻害剤(経口)
BioCity Biopharma BC3195 / CDH3 Phase 1 固形がん 非上場 CDH3-ADC、ASCO 2025で発表
Delta-Fly Pharma(4598) DFP-10917 Phase 1/2 血液がん 小型 同じ血液がん領域の国内バイオ

ペルセウスの時価総額25.7億円は、rNPV試算値51.2億円に対して約50%のディスカウントとなっている。PV領域にはDisc Medicine(Phase 2、FDA Fast Track指定)やAjax/Lilly(23億ドル買収)といった大型プレイヤーが参入しており、競争環境は厳しいが、TfR1という独自ターゲットによるFirst-in-classポジションは差別化要因となる。導出契約の成否がバリュエーションの分岐点である。

カタリストカレンダー(2026年6月〜12月)

時期 イベント インパクト 注目点
2026年6月下旬 株主総会(定款変更議案あり) ★★ 定款一部変更の内容確認
2026年下半期 PPMX-T003 PV導出契約の可能性 ★★★★★ CSR完成済み。大手製薬への導出成立で一時金+財務改善
2026年8月頃 FY27/3 Q1決算発表 ★★ 現預金水準、導出活動進捗
2026年10月 EANM(欧州核医学会) ★★★ PPMX-T002(225Ac-RIT)非臨床データの可能性
2026年11月頃 FY27/3 Q2決算発表 ★★★ 上期実績、導出進捗が焦点
2026年12月 ASH(米国血液学会) ★★★★ PPMX-T003のPV/ANKLデータ発表の可能性(2024年ASHでも発表実績あり)
2026年下半期 ANKL Phase I/II 中間データ ★★★★★ 治験期限2027年3月。症例登録進捗と初期有効性データが最重要
2026年下半期 PPMX-T002導出の可能性 ★★★★ 225Ac変更完了後の導出活動
2026年下半期 UBE ADC共同研究の進展 ★★ PPMX-T004のリンカー・薬物最適化

財務・資金リスク分析

業績推移

項目 FY23/3 FY24/3 FY25/3 FY26/3(実績)
売上高(百万円) 94 100 120 135
営業損益(百万円) -698 -895 -826 -744
純損益(百万円) -787 -1,104 -905 -718
EPS(円) -66.9 -93.7 -63.4 -48.2

資金状況

項目 数値 評価
現預金残高(FY25/3末) 16.68億円 新株予約権行使による補填あり
バーンレート(FY25/3ベース) 約7.2億円/年 FY26/3は損失縮小
ランウェイ 約2.3年 2027年中頃まで(追加調達なし前提)
自己資本比率 74.4% 有利子負債なし
増資リスク 中〜高 ランウェイ18-36ヶ月、導出未成立の場合追加調達必須
継続企業の前提注記 なし(推定)
累積欠損 -38.09億円 資本剰余金で補填

FY26/3は売上1.35億円(前年比+12.6%)、純損失7.18億円(前年比21%改善)と損失縮小トレンドにある。抗体研究支援事業が前年比65.4%増と好調だが、R&D費(年間約6億円)を自力でカバーするには程遠い。上場以来の発行済株式数は11,686,400株→16,999,600株と約45%増加しており、継続的な希薄化に注意が必要。導出一時金が得られなければ、2027年中に追加資金調達が必要となる見通し。

リスク要因

1. 導出未成立リスク

PV適応のCSRは完成したものの、大手製薬への導出契約は未成立。四季報は「大型導出迫る」と報じているが、導出交渉は競合状況(Disc Medicine、Ajax/Lilly等の大手参入)にも左右される。導出が長期化した場合、資金繰りに直結する。

2. ANKL治験の症例登録遅延

超希少疾患のため被験者登録が極めて困難で、既に2回延長。目標7名の登録が2027年3月までに完了しない可能性がある。

3. PV領域の競合激化

Disc MedicineのDISC-3405(FDA Fast Track指定、Phase 2)やEli LillyによるAjax買収(23億ドル、Type II JAK2阻害剤)など、大手資本がPV領域に本格参入。First-in-classの差別化は維持しているが、開発スピードで後れを取るリスクがある。

4. 継続的な希薄化

上場以来5年で発行済株式数が約45%増加。導出一時金なしでの事業継続には更なる資金調達(新株予約権行使・増資等)が必要で、1株当たり価値の希薄化が続く構造にある。

5. 監査法人変更

2026年3月期より監査法人がKPMGあずさ監査法人から史彩監査法人に変更。大手から中小への変更は市場から注視される可能性がある。

6. 富士フイルム返還パイプラインのリスク

PPMX-T002/T004はいずれも2022年に富士フイルムから返還されたパイプラインであり、返還の経緯(開発断念の理由)が新たな導出先の評価に影響する可能性がある。

まとめ

ペルセウスプロテオミクスは、TfR1を標的とするFirst-in-classの完全ヒト抗体PPMX-T003を擁し、PV(Phase I完了)とANKL(Phase I/II実施中・AMED採択)という2つの血液疾患で独自のポジションを確立しつつある。rNPV試算では企業価値51.2億円(1株301円)と算出され、現在の時価総額25.7億円(151円)に対して約2倍のアップサイドを示す。

最大のカタリストはPV適応の導出契約である。CSRが完成し導出活動が本格化しているが、PV領域への大手参入(Disc Medicine、Lilly/Ajax)は競争環境を厳しくしている。一方、ANKLは承認薬ゼロの超アンメットニーズ領域であり、オーファン指定を取得できればバリュエーション上の大きな転換点となる。CDH3標的のPPMX-T002(225Ac-RIT)とPPMX-T004(ADC)は非臨床段階だが、核医学治療とADCというグローバルのメガトレンドに合致しており、中長期的なパイプライン価値を底上げする可能性を持つ。

財務面ではランウェイ約2.3年・損失縮小トレンドにあるものの、導出一時金なしでは2027年中に追加資金調達が必要となる見通しであり、導出の成否が事業継続の鍵を握る。

免責事項・ディスクレーマー

本記事は特定企業のパイプラインに関する調査分析の情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。rNPV試算は独自の前提条件に基づく推計であり、実際の企業価値を保証するものではありません。バイオ医薬品の開発には高い不確実性が伴い、臨床試験の失敗、規制当局の判断、競合状況の変化等により開発品の価値が大幅に変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任において、十分な情報収集と専門家への相談のうえで行ってください。

本記事の情報は2026年6月10日時点の公開情報に基づいています。筆者は本記事で言及した銘柄のポジションを保有している可能性があります。

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