あなたは世界の構造変化に気が付いていますか?今までの無駄や利権を排除しようとアメリカが動き出しました。医薬品産業ももちろん、アメリカの影響が出てきます。これまで健康に良くないものが食品などに含まれ、健康を害することでその薬を売って利益を上げてきた、いわゆるマッチポンプが注目されつつあります。
今回、今のバイオベンチャーの立ち位置から、以前ならば製薬会社の利権とそれによって本当に効果のある医薬品は陽の目を見なかったところから潮目が変わりつつあると考えています。そういった前提条件の変化も踏まえながら、日本のバイオ銘柄を分析していきます。
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アメリカHHSとFDAの組織
HHSの組織構造
アメリカ合衆国保健福祉省(HHS: United States Department of Health and Human Services)は、アメリカの政府機関の一つで、全てのアメリカ人の健康を保護し、重要な社会事業を提供することを目的としています。日本の厚生労働省に相当する機関です。
HHSは長官官房と11の部局から構成され、全米が10地区に分けられ、それぞれを地域事務所が所轄しています。主な部局には以下が含まれます:
- 疾病管理予防センター(CDC)
- 食品医薬品局(FDA)
- 国立衛生研究所(NIH)
- メディケア及びメディケイド・サービスセンター(CMS)
- 児童家庭局(ACF)
- 高齢者局(AoA)
- その他の専門機関
HHSは約76,341人の職員を抱え、年間予算は9,409億ドル(2013年度)に達する巨大官庁です。
FDAの組織構造
食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)はHHSの下部組織として位置づけられ、食品や医薬品などの規制を担う連邦政府機関です。FDAの本部はメリーランド州シルバースプリングに位置しています。
2024年10月の組織改編により、FDAは9つの主要センターから構成されています。
- 医薬品評価研究センター(CDER):人用医薬品の評価と規制を担当
- 生物製剤評価研究センター(CBER):ワクチン、血液製剤などの生物学的製剤を管轄
- 医療機器・放射線保健センター(CDRH):医療機器と放射線機器の規制を担当
- ヒューマンフードプログラム:食品安全部門
- タバコ製品センター(CTP):タバコ製品の製造、販売、流通に関する規制
- 獣医学センター(CVM)
- 国立毒性研究センター(NCTR)
- 腫瘍学卓越センター(OCE)
- 運営局(Office of Operations)
また、2024年10月の組織改編により、従来の規制業務局(ORA)は査察・調査局(OII)に再編され、査察・輸入・緊急対応を一元的に統括する組織として機能しています。
RFK Jr.の考え方
ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(RFK Jr.)は、2025年2月にHHS長官に就任しました。彼の主な考え方は以下の通りです。
ワクチンに関する見解
RFK Jr.はワクチンに懐疑的な姿勢で知られています。彼は長年にわたり、科学的根拠なく一部のワクチンと自閉症を結びつけるなどの発言をしてきました。また、反ワクチン団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」の創設者でもあります。
しかし、HHS長官就任に向けた上院公聴会では、「ワクチンは医療において極めて重要な役割を果たしている」「私の子どもも全員ワクチンを接種している」と述べ、自身が反ワクチン派ではないと主張しました。
FDAに対する見解
RFK Jr.はFDAに対して批判的な立場を示しており、「FDAの公衆衛生に対する戦争は間もなく終わる」と発言しています。彼はFDAを「粛清」すると言明し、FDA職員と業界との関係を調査する意向を示しています。
具体的な改革案としては:
- FDA職員と製薬業界との関係調査と透明性の確保
- 製薬会社の広告規制の強化
- 化粧品や栄養補助食品に対する規制緩和
- 代替医療に対する規制の撤廃
- ポリオワクチンの承認取り消し要請
健康・医療に関する見解
RFK Jr.は「アメリカを再び健康に(Make America Healthy Again)」をスローガンに掲げ、以下のような考え方を示しています。
- 慢性疾患(肥満、糖尿病、自閉症など)の蔓延に対する取り組み
- 食品に含まれる化学物質、農薬、添加物の削減
- 肥満症治療薬への批判(「食糧システムを改善して肥満の根本に対処する代わりに、薬に焦点を当てている」)
- 公共水道からのフッ化物除去の推奨
- 生乳(未殺菌牛乳)の摂取推奨
製薬業界に対する見解
RFK Jr.は製薬業界に対して批判的な立場を取っており、「巨大製薬会社の独占を是正する」と主張しています。彼は製薬会社がFDAに過度な影響力を持っていると考え、製薬会社からFDAへの「ユーザーフィー」(審査料)の支払いシステムを問題視しています。
また、製薬会社のテレビ広告禁止を検討していることを明らかにしています。
RFK Jr.のHHS長官就任による影響
RFK Jr.のHHS長官就任は、アメリカの医療・公衆衛生政策に大きな影響を与える可能性があります。
- ワクチン政策の変更:ワクチンの検証強化や、市場に出されるワクチンの減少、販売開始後のモニタリング増強
- FDA改革:FDA職員の入れ替えや一部組織の解体
- 製薬業界への規制強化:製薬会社の広告規制や業界との関係調査
- 代替医療の推進:怪しげな治療法や医療器具にもメディケアを使えるようにする可能性
- 栄養補助食品や化粧品に対する規制緩和
これらの政策変更に対して、製薬業界や医療専門家からは懸念の声が上がっています。一方で、全米コミュニティ薬剤師協会などの一部団体は、RFK Jr.の企業に対峙する姿勢に勇気づけられたと述べています。
以上のような状況から、筆者はこれまでの利権構造によって守られてきた大手製薬企業の医薬品の承認状況が見直されたり、製薬企業の開発の在り方も変わらざるを得なくなると予想します。
ここからは、日本の上場バイオ銘柄について、その開発パイプラインや提携関係、今後の展望を見ていきます。この記事の指針は、AI分析によって大枠を知ることであり、その中で各種情報をご自身で確認していただくことにあります。主に時価総額順に記載しています。
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ペプチドリーム(4587)2025年3月9日時価総額2875億円
売上の主軸
ペプチドリームの売上の主軸は、主に以下の収益源から構成されています。
- 契約一時金:提携先との契約時に支払われる金額で、2024年においてはNovartis社との提携拡大による契約一時金(約280億円)が売上の大半を占めました。
- マイルストーンフィー:開発が一定の段階に進むことで支払われる成功報酬です。典型的なマイルストーンフィーの設定ポイントには、臨床候補化合物の選定、フェーズ1試験の開始、フェーズ2試験の開始、フェーズ3試験の開始、承認取得などがあります。
- ロイヤルティー収入:開発に成功し製品化された後に、製品の正味売上高の一定割合として設定されます。
- 研究開発支援金:共同研究を行う対価として支払われるもので、共同研究期間を通じて一定額が計上されます。
2024年第3四半期の創薬開発事業の収益内訳は、契約一時金・マイルストーンフィー・ロイヤルティー収入が287億円(収益全体の95%)、研究開発支援金が10億円(収益全体の3%)となっています。
主要パイプライン
放射性医薬品(RI)領域
- 177Lu/64Cu-PSMA I&T:前立腺がんを対象とし、Curium社と提携してフェーズ3段階にあります。
- 177Lu-IntegrinFF58:悪性神経膠腫を対象とし、ペプチドリーム自社でフェーズ1段階にあります。
- 177Lu/68Ga-NNS309:膵がん/肺がん/乳がん/大腸がんを対象とし、Novartis社と提携してフェーズ1段階にあります。
- 225Ac/64Cu-CA9 PD-32766:腎細胞がんを対象とする自社プログラムで、IND-enabling/フェーズ0段階にあります。
- 225Ac/64Cu-CLDN18.2 PD-29875:胃がんを対象とする自社プログラムで、IND-enabling段階にあります。
診断薬
- 18F-Flortaucipir (Tauvid):アルツハイマーを対象とし、Eli Lilly社と提携して承認済みです。
- 18F-PD-L1 BMS-986229:がんを対象とし、Bristol-Myers Squibb社と提携してフェーズ1段階にあります。
Non-RI領域
- GhRアンタゴニスト AZP-3813:先端巨大症を対象とし、Amolyt Pharma/AstraZeneca社と提携してフェーズ1段階にあります。
- CD38-ARM BHV-1100 + NK Cells:多発性骨髄腫を対象とし、Biohaven社と提携してフェーズ1段階にあります。
- S2-protein阻害薬 PA-001:COVID-19を対象とし、ペプチエイドと提携してフェーズ1段階にあります。
- マイオスタチン阻害薬:肥満症、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、SMA(脊髄性筋萎縮症)などを対象とする自社プログラムで、臨床候補化合物選定中です。
提携による売上
ペプチドリームの提携による売上の中で特に重要なものは以下の通りです:
- Novartis社との提携:2024年4月に発表されたNovartis社との提携拡大により、180百万ドル(約282.5億円)の契約一時金が支払われ、2024年12月期Q2の売上収益として認識されました。また、最大27億ドル(約2,710億円)のマイルストーンフィーとロイヤルティー収入が見込まれています。
- その他の主要提携先:Bristol-Myers Squibb社、Eli Lilly社、Amolyt Pharma社、Biohaven社、Genentech社(Roche)、Merck社などと提携しており、これらの提携からもマイルストーンフィーやロイヤルティー収入を得ています。
今後の展望
ペプチドリームの今後の展望は以下の通りです:
- 臨床パイプラインの拡大:2024年には臨床パイプラインが11個から17個に大幅に増加しました。今後も新たな臨床候補化合物の選定や臨床試験の開始が期待されています。
- 放射性医薬品事業の拡大:放射性医薬品(RI)領域において、新たなRI-PDCプログラムの臨床試験入り、海外上市品の導入、PSMA I&Tプログラムの日本における臨床試験の開始などが期待されています。
- Non-RI領域の進展:GhRアンタゴニスト(AZP-3813)のフェーズ2試験入り、マイオスタチン阻害薬の提携、新たな臨床候補化合物の選定などが期待されています。
- 業績予想:2025年12月期の連結業績予想は、売上収益490億円、営業利益216億円と、過去最高を更新する見通しです。
- マイオスタチン阻害薬の提携:肥満症治療薬市場は2024年の売上が140億ドルに到達するなど近年巨大化しており、ペプチドリームの経口マイオスタチン阻害薬の提携が期待されています。
- 技術の進化:PDPSの進化と計算科学の進化の相乗効果により、創薬にかかる時間の短縮が期待されています。また、AIとPDPSの相性の良さを活かし、薬の体内での安定性の予測や、生成AIを活用したペプチドのデザインなど、データの活用を推進していく方針です。
ペプチドリームは、独自の創薬開発プラットフォームであるPDPSを活用し、環状ペプチドを基盤とした革新的な医薬品の開発を進めることで、今後も持続的な成長を目指しています。
ペプチドリームIRサイト
筆者の個人的な見解としては、そろそろ配当を期待できる収益になっている段階ですが、市場評価はそれによって大きく変動しそうに見えます。収益性は非常に高いと言えます。
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GNIグループ(2160)2025年3月9日時価総額1230億円
組織構成
GNIグループ(株式会社ジーエヌアイグループ)は、2001年11月に米国法人Gene Networks, Inc.の日本法人として設立された創薬企業です。本社は東京都中央区日本橋本町に所在し、2024年6月末時点での連結従業員数は960名となっています。GNIグループは日本、中国、米国に経営基盤を置く多国籍企業であり、主要な子会社・関連会社は以下の通りです。
GNI Hong Kong Limited(香港、100%)- 持株会社
- GNI Tianjin Limited(中国、100%)- 臨床開発
上海ジェノミクス有限公司(中国、100%)
- 上海ジェノミクステクノロジー有限公司(中国、80%)- ゲノム関連試薬
- 上海リーフ国際貿易有限公司(中国、80%)- ヘルスケア製品の輸入・販売
Continent Pharmaceuticals Inc.(ケイマン諸島、56%)- 持株会社
- BJContinent Pharmaceuticals Limited(香港、100%)- 持株会社
- 北京コンチネント薬業有限公司(中国、100%)- 医薬品開発・製造・販売
GNI USA, Inc.(米国、100%)- 持株会社
- Berkeley Advanced Biomaterials LLC(米国、70%)- 医療機器製造・販売
- Cullgen Inc.(米国、54%)
- Cullgen (Shanghai), Inc.(中国、100%)- 新規化合物探索・前臨床開発
Gyre Therapeutics, Inc.(医薬品事業)
売上の主軸
GNIグループの事業は、医薬品事業と医療機器事業の2つのセグメントに分かれています。
医薬品事業
医薬品事業は同社の主力事業であり、2023年12月期の売上収益は22,976,201千円(前期比53.3%増)、セグメント利益は12,026,795千円(前期比2,687.3%増)となっています。
アイスーリュイ(中国語:艾思瑞®)の販売
- 特発性肺線維症(IPF)治療薬として中国で販売されており、2014年2月にクラス1.1薬剤として販売開始
- 北京コンチネント薬業有限公司の主力製品として、中国での売上収益が好調に成長
提携による収益
- Cullgenにおけるアステラス製薬とのタンパク質分解誘導剤創出共同開発に伴う3,500万米ドルの契約一時金および共同開発費用
医療機器事業
医療機器事業は、Berkeley Advanced Biomaterials LLCとマイクレン・ヘルスケア株式会社、Berkeley Biologics LLCが担当しており、生体材料や医療機器選任製造販売業者サービスを提供しています。2023年12月期の売上収益は3,034,369千円(前期比25.0%増)となっています。
主要パイプライン
アイスーリュイ(ピルフェニドン)
特発性肺線維症(IPF)
- 2013年12月に中国で製造販売許可を取得し、2014年2月から販売開始
- 中国で唯一販売・承認されている特発性肺線維症治療薬
放射線性肺炎
- 第3相臨床試験前のパイロット試験を実施中
糖尿病腎症(DN)
- 第1相臨床試験を完了
結合組織疾患に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)
- 2018年6月に第3相臨床試験を開始
- 皮膚筋炎および強皮症に対する第3相臨床試験を実施中
F351(ヒドロニドン)
肝線維症
- アイスーリュイの誘導体で、ピルフェニドンに比べ線維症の減少に強い作用を持つ
- 2021年1月に第3相臨床試験を開始
- 中国国家医薬品監督管理局から「画期的治療薬」に指定(2021年3月)
- 第3相臨床試験のトップラインデータは2024年末または2025年初めに入手予定
慢性腎不全(CKD)
- 前臨床段階
- 動物実験で腎線維症に対する有効性を確認
F573
急性肝不全/慢性肝不全急性化(ACLF):
- 2023年3月に第2相臨床試験を開始
- 肝細胞死を強力かつ不可逆的に阻害するジペプチド化合物
- カスパーゼ(細胞死と炎症反応に中心的役割を果たす酵素)に対する阻害効果を持つ
Cullgenの開発パイプライン
CG001419(Pan-TRK分解薬)
- 疼痛治療向けの経口薬
- 変異型と野生型の両方のTRKタンパク質を選択的に分解するよう設計
- 2025年1月にオーストラリアで第1相試験を開始
提携関係
GNIグループは国内外の企業と様々な提携関係を構築しています
アステラス製薬
- Cullgenが革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた戦略的提携を締結
- 3,500万米ドルの契約一時金および共同開発費用を獲得
日本アジア投資株式会社
- 2024年8月に業務提携を締結
- 国内外企業を投資対象とするファンド組成と管理運営、GNIグループの成長戦略に資する国内外企業のファンドを通じた株式保有などが提携内容
- 中国無錫市の無錫市濱湖産業投資開発(グループ)有限公司とWuxi Innovation Investment Group Co., Ltd.との3社間で、1億米ドル規模のファンド「GNI中日産業基金」の組成に向けた協定を締結(2024年4月)
株式会社オルツ
- 2024年4月に創薬分野および投資分野におけるAI活用に関する協業を開始
- AIによる新薬開発候補化合物の探索や基礎研究のAIによる効率化などを目指す
子会社の上場
GNIグループの連結子会社であるCullgen Inc.は、2024年11月に米国ナスダック市場に上場するPulmatrix, Inc.(ナスダック市場コード:PULM)とリバースマージャー(逆さ合併)に関する契約合意に達しました。これにより、Cullgenはナスダック市場への上場を果たす見込みです。
Cullgenは、タンパク質分解誘導技術を活用した創薬開発を行っており、がん、疼痛、自己免疫疾患などを対象とした複数の開発候補化合物を有しています。
今後の展望
東証プライム市場への変更
- 現状の東証グロース市場からプライム市場への変更に向けた準備を進めている。
- JPX日経中小型株指数への選出を目指している。
パイプラインの拡充
- F351の第3相臨床試験のトップラインデータを2024年末または2025年初めに入手予定
- アイスーリュイの適応症拡大(放射線性肺炎、糖尿病腎症、結合組織疾患に伴う間質性肺疾患など)を推進
- Cullgenの開発パイプラインの進展(CG001419の臨床試験など)
投資事業の拡大
- 日本アジア投資との提携を通じた投資事業の確立
- 中国無錫市との1億米ドル規模のファンド「GNI中日産業基金」の組成
- 日本国内でのM&A機会の探索
AI技術の活用
- オルツとの協業によるAI技術を活用した創薬プロセスの効率化と最適化
- AIによる配列シミュレーションなどの最新技術を活用した新薬候補の探索から臨床試験への移行までのフロー最適化
業績予想
- 2025年12月期の連結業績予想は、売上収益28,733百万円(前期比21.7%増)、営業利益23,217百万円(前期比1,556.0%増)、経常利益22,541百万円(前期比9,371.0%増)、当期利益12,058百万円(前期比998.2%増)と、過去最高を更新する見通し
GNIグループIRサイト
筆者の個人的見解としては、医薬品の投資事業のような企業形態になりつつあるようです。投資会社はオーガニックな成長をする企業と比べると不安定要素もあり、株価PERなどの評価は比較的低くなる傾向があります。
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サンバイオ(4592)2025年3月9日時価総額794億円
主要パイプライン
サンバイオは再生医療分野、特に細胞治療薬の開発を行うバイオベンチャー企業です。同社の主要パイプラインは以下の通りです。
SB623(アクーゴ®脳内移植用注)
SB623は同社の主力開発品であり、健康成人骨髄液由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作製されたヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞(国際一般名:バンデフィテムセル)です。脳内の損傷した神経組織に移植することで、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、失われた機能を回復させる効果が期待されています。
作用機序
SB623は抗線維化作用を持つ低分子化合物で、TGF-βシグナル伝達を阻害することにより、線維芽細胞の増殖を抑制し、コラーゲンの産生を減少させます。これにより、脳などの臓器における線維化の進行を抑制し、神経細胞の再生を促進します。
開発状況
- 外傷性脳損傷(TBI): 2024年7月に厚生労働省より「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」を効能・効果として、日本における条件及び期限付き製造販売承認を取得しました。
- 放射線性肺炎: 第3相臨床試験前のパイロット試験を実施中。
- 糖尿病腎症(DN): 第1相臨床試験を完了。
- 結合組織疾患に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD): 2018年6月に第3相臨床試験を開始し、皮膚筋炎および強皮症に対する試験を実施中。
- 慢性期脳梗塞: 米国でのフェーズ2b臨床試験では主要評価項目を達成できませんでしたが、追加解析の結果、脳梗塞サイズが50cc以下の患者群において有意な効果が確認されました。2024年7月には、この追加解析結果に基づく特許が米国で許可通知を取得し、適応追加を目的とした治験について日米規制当局との協議を再開する予定です。
その他のパイプライン
- SB618(機能強化型間葉系幹細胞): 末梢神経障害等を対象
- SB308(筋肉幹細胞): 筋ジストロフィー等を対象
- MSC1(間葉系幹細胞): がん疾患を対象
- MSC2(間葉系幹細胞): 炎症性疾患を対象
また、OcuMension社との共同開発や、D&P Bioinnovations社と食道再生インプラントの開発及び商業化に関する業務提携も行っています。
日米での開発状況
日本での開発状況
- SB623(アクーゴ): 2024年7月に条件及び期限付き製造販売承認を取得しました。
- 承認条件: 治験製品と市販品との品質の同等性/同質性を評価し、結果を報告すること。また、承認事項一部変更承認申請が承認されるまでの間、出荷を行わないことなどの条件が付されています。
- 出荷計画: 2回程度の市販品製造を行い、同等性/同質性を確認する予定でしたが、第1回目の製造結果は不適合でした。第2回目の製造では収量は予定通り確保できましたが、規格試験、特性解析の結果が明らかになるまでには数カ月を要するため、出荷可能時期は当初想定していた2025年2~4月から、2025年5~7月に遅れる見込みです。
- 製造体制の強化: JCRファーマと商用製造を検討するための試製造に係る製造委受託契約を締結し、製品供給の安定化・複線化を図っています。
米国での開発状況
- SB623: 日本での承認取得にリソースを集中させるため一時停止していた米国事業を再始動する方針です。
- 脳梗塞への再挑戦: 過去にフェーズ2b試験に失敗した脳梗塞での開発について、追加解析結果に基づき、日米規制当局との協議を再開する予定です。
- 特許戦略: 2024年7月にSB623の慢性期脳梗塞を対象にした米国でのフェーズ2b臨床試験を基に出願した特許が許可通知を取得し、米国における用途特許の期間を大幅に延長することができました。
販売への展望
- 対象患者数: 外傷性脳損傷の患者数は米国で約530万人、日本で約4万人、慢性期脳梗塞の患者数は米国で約574万人、日本で約78万人と推定されています。
- 競合状況: 外傷性脳損傷向け医薬品の臨床段階の競合品は限られており、特に慢性期を対象とするSB623の競争優位性が高いとされています。
- 販売戦略: 日本では自社販売、それ以外の地域では提携と自社販売の両軸で進める方針です。
- 流通体制: スズケンと共同開発した「R-SAT」を用い、患者登録から製品配送、投与・投与後のフォローまでの情報を一元管理する体制を整備しています。
- 普及活動: 疾患啓発・支援サイト「TBIナビ」の開設や、医療関係者向けの講演会、学会でのセミナー開催など、普及に向けた活動を加速させています。
- ビジネスモデル: 「他家移植」の細胞治療薬を量産化し、「薬」として供給することを想定しています。一人のドナーから多くの治療薬を製造することが可能であるため、自家移植に比べて、より低コストで治療でき、収益性も高いことが期待されています。
- 売上目標: 森敬太社長は、ピーク時年間売上高1000億円超の「ブロックバスター」にする目標に手応えを感じていると述べています。
- 製造コスト: 製造における収量に関する課題(申請時点と比較して収量が減少)については、施策を講じた直近の製造において、収量の改善を確認することができたとのことです。
- 薬価: 薬価基準への収載時期は、出荷が可能となった承認事項一部変更承認後の60日から90日以内を想定しています。
今後の展望
日本をマザー拠点化: アクーゴの承認取得及び上市により、日本を今後のさらなる成長のためのマザー拠点として位置付け、再生医療のノウハウ蓄積を進めていく方針です。
適応症の拡大:
- 脳梗塞への再挑戦
- 放射線性肺炎、糖尿病腎症、結合組織疾患に伴う間質性肺疾患などへの適応拡大
グローバル展開:
- 米国事業の再始動
- 日本での自社販売、海外での提携と自社販売の両軸での展開
パイプラインの強化:
- SB623以外のパイプライン(SB618、SB308、MSC1、MSC2)の開発加速
- 社外からの製品開発権導入やM&Aによるパイプラインの拡充
製造体制の強化:
- JCRファーマとの提携による製品供給の安定化・複線化
- 製造ノウハウと特許による二重のプロテクション戦略
サンバイオは「再生医療のグローバルリーダー」というビジョンを掲げ、アクーゴの日本での承認取得を足がかりに、適応症と地域の拡大という掛け算による成長を目指しています。特に、製造ノウハウによる参入障壁の構築と特許戦略による保護を重視しており、長期的な競争優位性の確立を図っています。
サンバイオIRサイト
筆者の個人的見解として、現在時価総額が約794億となっています。今後の売上期待がどこまであって、どこまで織り込まれているのかは不透明なところもあると感じます。
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ネクセラファーマ(4565)2025年3月9日時価総額752億円
ネクセラファーマは「Next Era(次の時代)」のリーダーになるという意気込みを込めて社名を変更し、テクノロジーに根ざした製薬会社として新たな成長戦略を展開しています。同社は2つのビジネスモデルを融合させた独自の戦略を推進しています。
2つのビジネスモデルの融合
プラットフォーム型
- 他社へのライセンス提供によるマイルストーン・ロイヤリティ収入
- 契約一時金、開発進捗に応じたマイルストン、製品販売後のロイヤリティ収入
- ローリスク・ミドルリターンの特性
パイプライン型
- 自社製品の開発・販売による収益
- 日本・APAC市場での製品販売
- ミドル・ハイリスク・ハイリターンの特性
数値目標
ネクセラファーマは2030年までに以下の目標を掲げています。
- コア売上高: 少なくとも500億円
- 現行製品: 300〜350億円
- 新製品: 100〜150億円
- 契約一時金+マイルストン: 100〜150億円
- 平均成長率: 26%
- 利益率: 30%プラスアルファ
さらに、日本をマザー拠点として位置づけ、韓国、台湾などAPAC地域への展開を進め、「ピヴラッツ」と「クービビック」に加えて3つの新製品を発売し、総売上高500億円を目指しています。
現行製品
ピヴラッツ(クラゾセンタン)
- 脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮発症抑制薬
- 2022年4月に発売開始
- 2024年の売上目標: 薬価ベースで150〜160億円
- ピーク時の売上予想: 160〜200億円
- 市場シェア: 急速に拡大中(標準治療薬になりつつある)
クービビック(ダリドレキサント)
- 不眠症治療薬(デュアルオレキシン受容体拮抗薬/DORA)
- 2024年9月に承認取得、12月に発売
- 塩野義製薬が日本での独占的販売権を取得
- ロイヤリティ収入として40億円以上を想定
- 欧州の不眠症ガイドラインで唯一使用できる薬剤として推奨
COPD治療薬(ウルティブロ、シーブリ)
- ノバルティス社へライセンス供与
- 年間約23億円前後の安定的なロイヤリティ収入
- 特許期限は2026年まで(一部延長の可能性あり)
主要パイプライン
M4作動薬(NBI-1117568)
- 統合失調症治療薬
- ニューロクライン社と提携
- 2024年8月にフェーズ2試験で良好な結果を達成
- 2025年前半に統合失調症を対象としたフェーズ3試験開始予定
オレキシン2受容体作動薬(ORX750)
- ナルコレプシーなどの睡眠障害治療薬
- センテッサ社と提携
- フェーズ1試験進行中
- 2025年頃に結果が出る見込み
GPR52作動薬
- 統合失調症治療薬
- フェーズ1b相試験が2025年下期に完了予定
NxWave™プラットフォーム
ネクセラファーマの強みは、GPCR(Gタンパク質共役受容体)を標的とした構造ベース創薬プラットフォーム「NxWave™」にあります。
- 375以上の分子構造を解明
- 標的の鍵穴にだけしっかりと結合し、他のものにはほとんど結合しない化合物の設計が可能
- 世界で最も包括的なGPCR創薬プラットフォームを保有
技術戦略の拡張
モダリティの拡張
- 低分子以外のモダリティ(抗体医薬、ペプチドなど)への進出
- Antiverse社との提携による生成AIを活用した抗体設計
創薬ターゲットの拡張
- GPCR以外の膜タンパク質(イオンチャネル、トランスポーターなど)への展開
- PrecisionLife社との提携による自己免疫疾患における創薬ターゲット探索
提携関係と外部連携
塩野義製薬
- クービビック(ダリドレキサント)の日本における独占的販売権
持田製薬
- クービビックの共同開発パートナー
- 持田製薬工場が独占的に製造を担当
ニューロクライン社
- M4作動薬(NBI-1117568)の開発パートナー
- ムスカリンポートフォリオの開発
センテッサ社
- オレキシン2受容体作動薬(ORX750、ORX142、ORX489)の開発パートナー
- 2024年6月に$4.6百万のマイルストーン支払いを受領
その他の提携先
- Cancer Research UK(EP4拮抗薬)
- 武田薬品、ファイザー、アッヴィ、イーライリリーなど
競合他社との比較
- 日本の製薬企業の中では中小規模だが、研究開発投資比率では最上位
- 欧米のバイオテック企業と同様のビジネスモデルを目指している
- GPCR創薬に特化した企業としては、米国のスライドストラクチャー・セラピューティクス(時価総額約3,000億円)などが競合
リスク要因と課題
医薬品開発の不確実性
- 医薬品の研究開発は長期間を要し、多額の投資が必要
- 成功確率は他産業に比べて極めて低い
- 大手製薬・バイオ医薬品企業は定期的に事業戦略の見直しを行っており、その影響を受ける可能性がある
特許期限の問題
COPD治療薬の特許期限が2026年に迫っており、これに代わる安定的な収益基盤の確保が課題
今後の展望
中期的展望(〜2030年)
- 少なくとも500億円のコア売上高達成
- 平均成長率26%、利益率30%以上の維持
- 日本・APAC市場での新製品3品目の導入
- 欧米企業と同等の高い利益率(営業利益率20%超)を目指す
長期的展望(〜2035年)
- 日本発の国際的なリーディングバイオ企業を目指す
- 創薬プラットフォームの拡張によるパイプラインの持続的な拡充
- M&Aによる非連続的な成長の追求
総括
ネクセラファーマは、プラットフォーム型とパイプライン型の2つのビジネスモデルを融合させた独自の戦略により、持続的な成長を目指しています。GPCR創薬に強みを持つ技術基盤と、日本・APAC市場での製品販売の両輪で、2030年には少なくとも500億円のコア売上高、平均成長率26%、利益率30%以上という高い目標を掲げています。
現在の主力製品であるピヴラッツとクービビックの販売拡大に加え、M4作動薬やオレキシン2受容体作動薬などの有望なパイプラインの開発進展により、中長期的な成長が期待されます。また、技術基盤の拡張や提携関係の強化により、創薬プラットフォームの価値向上も見込まれます。
ネクセラファーマIRサイト
筆者の個人的な見解としては、COPD治療薬で黒字化し、イギリスのヘプタレス社買収から企業価値は大きな変動をしていないと感じています。次の成功が待たれるところです。
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クオリプス(4894)2025年3月9日時価総額457億円
主要パイプライン
PJ1:ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート(虚血性心疾患・国内)
- 概要:ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工された心筋細胞を患者の心臓に移植
- 対象患者:心臓移植や補助人工心臓の装着までには悪化していない重症心不全患者(日本で約5,000人)
- 治療メカニズム:心筋シートを心臓表面に貼付することで血管再生因子が放出され、患者の心臓の血管再生を促進
- 臨床試験状況:医師主導治験の8症例全ての移植を2023年3月に完了
- 承認申請状況:2024年12月2日に臨床パートの申請資料を提出、2025年にかけて段階的に書類を提出予定
- 特徴:開胸手術ではなく、左肋間に7cm程度の隙間から挿入する低侵襲手術(約50分で完了)。常温で2日程度の期間はシートの形状を保ったまま輸送可能。
PJ2:ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート(拡張型心疾患)
- 概要:PJ1と同様の技術を拡張型心筋症(DCM)に適用
- 開発状況:大阪大学が進める医師主導治験のプロトコル設計を支援
- 進捗:2024年5月に大阪大学が進める拡張型心疾患の医師主導治験に心筋細胞シートを提供
PJ3:ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート(虚血性心疾患・海外)
- 概要:PJ1と同様の適用対象で、米国および欧州での製造販売承認取得を目指す
- 進捗状況:経済産業省が米国シリコンバレーに開設したビジネス拠点に入居企業として選定
- 現地研究機関と研究開発計画について協議中
- スタンフォード大学心臓胸部外科との共同研究契約を2024年12月に締結
PJ4:カテーテル
- 概要:軽度の心疾患に対応するパイプラインとして、カテーテルによる新たな血管内アプローチでヒトiPS細胞由来細胞を心臓へ移植する治療技術
- 開発状況:朝日インテック株式会社との共同開発により進行中
- 対象疾患:急性心筋梗塞(AMI)・慢性完全閉塞性病変(CTO)
- 市場規模:日本におけるカテーテル治療の市場規模は年間30万件超
PJ5:体内再生因子誘導剤
- 概要:小野薬品工業が開発したオキシム誘導体(YS-1301)を低用量で使用し、組織再生を促進する体内再生因子を誘導
- 期待される効果:細胞保護、抗線維化、抗炎症作用による血管新生、組織再生
- 対象疾患:肝硬変・NASH、ASO、CKD、COPD等
PJ1(虚血性心疾患・国内)の承認申請状況
- 当初計画:2024年6月中の申請を予定
- 変更後:臨床データの更新・追加が必要と判断し、2024年内の申請に延期
- 最新状況:2024年11月から2025年にかけて段階的に書類を提出する計画に変更
- 進捗:
- 2024年12月2日に臨床パートの申請資料を提出済み
- PMDAから追加質問事項を受領し、回答事項と追加の臨床関連申請資料を提出予定
- 承認制度:条件及び期限付承認制度の活用を目指している
- データ追加:当初予定していた移植26週目までのデータに加え、より改善効果が見られた52週目までのデータを追加
- 見通し:2025年の承認を目指す方針に変更はない
市場規模の推定
- 日本の対象患者数:約5,000人
- 米国の対象患者数:約25,000人(日本の5倍)
- 心不全患者の内訳:
- 日本:全体で130万人、うちNYHA心機能分類Ⅲ度が32.5万人、Ⅳ度が6.5万人
- 米国:全体で600万人、うちNYHA心機能分類Ⅲ度が150万人、Ⅳ度が30万人
- 全世界:全体で2,600万人、うちNYHA心機能分類Ⅲ度が650万人、Ⅳ度が130万人
業績予想
- 2025年3月期の業績予想
- 売上高:1億7,500万円(前期比7.6倍)
- 営業損失:7億100万円
- 経常損失:7億5,000万円
- 最終損失:7億5,400万円
事業戦略
製造販売体制の整備:
- 再生医療等製品製造販売業の許可申請準備
- 商用製造に向けた製造販売体制の準備
- 販売人員等の確保および販売開始後の有効性と安全性の調査実施体制の整備
販売戦略:
- 自社での販売およびプロモーション活動を行い、販売先を確保
- 第一三共株式会社が日本国内での販売権のオプションを保有(オプション期間:2025年3月19日まで)
海外展開:
- 米国シリコンバレーの「ジャパン・イノベーション・キャンパル」を拠点に米国でのビジネスチャンス獲得に注力
- 欧米の製薬企業等へのライセンス供与または米国での治験実施後のジョイントベンチャー設立を検討
- 中近東や東南アジアでのパートナー探索も継続
技術応用の拡大:
- 心臓以外の他臓器への再生医療事業への展開
- より低侵襲性の心不全への治療製品の開発
- 心筋細胞だけでなく、その他の細胞にも技術を応用し、様々な部位の疾患に対する治療製品の開発
CDMO事業の拡大:
- ベンチャー企業の非臨床・臨床製品を中心に製造受託
- 細胞培養後の培養液を有効活用する取り組みを開始(2023年12月に「クオリプスヘルスケアサイエンス株式会社」を設立)
大量製造技術の開発:
- 次世代モダリティ開発を促進する細胞大量製造システムの共同開発を開始
- 細胞の大量製造装置やシステムの開発を通じて、商業化および海外展開を見据えた体制構築
今後の課題と展望
- 承認取得後の普及:条件及び期限付承認取得後、医療機関での採用拡大が課題
- 製造能力の拡大:商業化および海外展開を見据えた大量製造技術の確立
- 収益化:現在は赤字が続いているが、製品承認後の収益化を目指す
- パイプラインの拡充:心筋細胞シート以外の製品開発を進め、事業ポートフォリオを拡大
- アライアンス戦略:大手製薬企業との研究開発アライアンスによるマイルストーン契約的な事業モデルの可能性も検討
クオリプスは、世界初のiPS細胞由来の再生医療等製品の実用化を目指し、特に重症心不全患者に対する新たな治療選択肢の提供を通じて、医療の発展に貢献することを目指しています。現在は開発段階で赤字が続いていますが、主力製品の承認取得と販売開始により、今後の成長が期待されています。
クオリプスIRサイト
筆者の個人的見解としては時価総額もやや過大評価のように感じます。「世界初のiPS製品」ということだからだと思いますが、承認申請して承認が取れたら、その後は「売れるかどうか」という市場評価に変わるため、3Dマトリックスを例によく考えないと難しい株じゃないかと考えます。
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ハートシード(219A)2025年3月9日時価総額370億円
主要パイプライン
HS-001(他家iPS細胞由来心筋球・開胸手術)
- 概要:他家iPS細胞から作製した心筋細胞を微小組織(心筋球)にして、冠動脈バイパス手術時に心臓に直接移植する治療法
- 対象疾患:収縮不全による心不全(拡張型心筋症、陳旧性心筋梗塞、拡張相肥大型心筋症など)
- 作用機序:移植した心筋球が患者の心筋と結合して再筋肉化(Remuscularization)し、心収縮力を改善
- 臨床試験状況:国内最終治験(LAPiS試験)が進行中で、10例中9例の投与が完了(2024年12月時点)
- 開発目標:2026年内に承認申請、2027年内の承認・販売開始を目指す
- 特徴:
- 移植後、心筋球は約30倍の大きさに成長
- 患者自身の心筋細胞と一体化して拍動
- 組織が定着し、消滅しない持続的な「組織の再生」を実現
HS-005(他家iPS細胞由来心筋球・カテーテル投与)
- 概要:HS-001と同じ細胞を使用するが、より低侵襲なカテーテルを用いて投与
- 開発状況:複数社と並行してカテーテルの共同開発を進行中
- 開発目標:
- 日本:2025年内に治験届提出、2026年内に組み入れ開始を目指す
- 海外:ノボノルディスク社が担当し、欧米当局との相談が進行中
- 戦略的位置づけ:HS-001で実証した効果をもとに、ノボノルディスク社と共同でグローバル展開を図る戦略品
HS-040(自家iPS細胞由来心筋球)
- 概要:患者自身のiPS細胞から心筋球を作製するテーラーメイド医療
- 開発状況:国からの補助金を受けて開発中、細胞製造に関する基礎的な技術開発を進行中
- 特徴:
- 免疫拒絶反応がなく、免疫抑制剤が不要
- 当社がグローバルでの権利を保有
- より付加価値の高い治療法として位置づけ
ノボノルディスク社との提携
- 契約内容:2021年6月に全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約を締結
- 対象製品:HS-001およびHS-005を含む他家iPS細胞由来心筋球
- 契約規模:契約一時金とマイルストーンを合わせて約5億9800万ドル(約885億円)
- 権利配分:
- 日本以外の全世界における開発・製造・販売権をノボノルディスク社に付与
- 日本ではハートシードが製造販売権を保持し、両社で収益を50:50でプロフィットシェア
- マイルストン:開発進捗に応じたマイルストン収入を受領(2024年10月期に前倒しで達成したマイルストンあり)
- ロイヤリティ:海外の年間純売上高に応じて漸増する1桁後半~2桁前半パーセントのロイヤリティを受領予定
その他の提携関係
- カテーテル開発:HS-005のカテーテル開発において、ノボノルディスク社以外の複数のパートナーとも共同開発を検討中
- 研究機関との連携:大学病院や公的研究機関等との共同研究を通じて最先端の研究を遂行
事業戦略
国内展開
- HS-001の治験完了後、条件及び期限付承認の取得を目指す
- 2027年内の販売開始を目標に、製造販売体制の整備を進める
グローバル展開
- ノボノルディスク社の世界168カ国の販路を活用し、世界展開を加速
- 日本での治験経験を踏まえた世界共同治験の実施
- 日本発の治療法を世界に普及させる先駆者を目指す
製品ポートフォリオの拡充
- 開胸手術(HS-001)→カテーテル投与(HS-005)→自家iPS細胞(HS-040)と段階的に展開
- より低侵襲で多くの施設で実施可能な投与方法の開発
- 免疫拒絶反応のないHLAをノックアウトしたiPS細胞の研究も進行中
市場展開戦略
- 大衆向け製品(他家iPS細胞由来)とオーダーメイド製品(自家iPS細胞由来)の両方を展開
- 心臓以外の臓器への再生医療事業への展開も視野に
市場規模と成長見通し
- 対象患者数:心不全は日本で約120万人、重症心不全患者が主な対象
- 業績予想:2025年10月期は売上高23億9,400万円(前期比174%増)を予想
- ノボノルディスク社からのマイルストン収入により赤字幅の縮小を見込む
- 収益化:現在は開発段階で赤字だが、製品承認後の収益化を目指す
競合優位性
- 心筋細胞のみを純化精製する技術、生着率を高める技術など多数の独自技術を保有
- 心筋球にすることで細胞の強度が増し、バラバラの心筋細胞を移植した時の約20倍以上の効率で患者の心筋に取り込ませることが可能
- 世界の競合を大きくリードしており、心臓の筋肉内に直接移植する治験は日本でしか行われていない
- 米国の競合2社は前臨床試験で不整脈などの副作用が発生し、開発が停滞または中止
ハートシードは、世界初の心筋再生医療の実現を目指し、重症心不全患者に対する革新的な治療選択肢の提供を通じて、医療の発展に貢献することを目指しています。ノボノルディスク社との大型提携を活かしたグローバル展開と、段階的な製品ポートフォリオの拡充により、持続的な成長を実現する戦略を推進しています。
ハートシードIRサイト
ハートシードもクオリプスと類似銘柄という印象。グローバルにおいてはノボルディスク主導ということもあって時価総額はクオリプスの方がやや高いか。今期はマイルストーン収入を見込むとのこと。
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ヘリオス(4593)2025年3月9日時価総額260億円
主要パイプラインと開発状況
MultiStem®(HLCM051)
ARDS(急性呼吸窮迫症候群)治療薬
- 開発状況:
- 日本国内で完了した第2相試験(ONE-BRIDGE試験)と米英で実施した第2相試験(MUST-ARDS試験)で良好な結果を獲得
- 2024年1月に日本で第3相試験を開始
- 2024年9月に米国FDAとグローバル第3相試験(REVIVE-ARDS試験)のデザインについて協議し、同社の要望に沿った形で合意
- 承認申請状況:
- 日本では条件及び期限付承認申請を行う方針を決定
- 2024年12月にPMDAと承認後の製品の製造法や品質管理等に関して協議
- 2025年1月に臨床パートに関して概ね合意
- 早ければ2025年内にも国内で上市される可能性あり
- 市場規模:
- 全世界での患者数は年間110万人以上と推定
- 米国を含めたグローバルでの上市に成功すればピーク時で30〜50億ドルの売上規模になる可能性
脳梗塞急性期治療薬
- 開発状況:
- 米欧で治験を継続中
- 日本でもアメリカでのデータをもとに第3相試験を実施
- 現在、規制当局と日本における承認申請に向けた方針を相談中
外傷治療薬
- 開発状況:
- 米国にて第2相試験(MATRICS-1試験)を実施中
- 2024年4月にライセンスパートナーの米国Athersys, Inc.より、米国における外傷の第2相試験(MATRICS-1試験)の権利等を含むほぼ全ての資産を取得
iPSC再生医薬品分野
eNK®細胞(HLCN061)
- 概要:遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞を用いた次世代がん免疫細胞療法
- 開発状況:
- 固形がんを対象に研究開発を推進中
- 様々な病態モデルマウスを用いてeNK細胞の抗腫瘍効果の評価を実施
- 効率的かつ安定的に作製する大量培養の製造技術も開発中
- 2024年度の臨床試験開始を目指している
- 提携関係:
- 2025年1月にAkatsuki Therapeutics社と共同事業契約およびライセンスオプション契約を締結
- Akatsuki社が他家iPS細胞から分化誘導して機能を増強した独自のeNK細胞を用いたがん免疫細胞療法の研究開発を推進
ユニバーサルドナーセル(UDC)
- 概要:遺伝子編集技術を用いた免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞
- 開発状況:
- 新たな治療薬の研究や細胞置換を必要とする疾患に対する治療法の研究を進行中
- 海外企業とのライセンス契約の締結
- 国内外の企業・研究機関にUDCやiPS細胞を提供し、様々な疾患への適応可能性について評価を進行中
網膜色素上皮(RPE)細胞
- 開発状況:
- 住友ファーマと共同で、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた治療法開発を推進
- 網膜色素上皮裂孔の患者を対象とする第1/2相試験の患者組み入れが開始
- 2024年6月にアステラス製薬の子会社(Astellas Institute for Regenerative Medicine)との間で締結したRPE細胞製造方法等に関するライセンス契約に基づく一時金として3百万米ドルを受領
臓器原基技術(肝臓)
- 概要:2014年より横浜市立大学と共同研究を実施している技術
- 開発状況:
- 第1世代から第2世代、第3世代と、さまざまな機能が改善
- 生まれつき肝臓のある1種類の酵素がなく生まれてくる方に投与し、治療を目指す
- 長期的には肝硬変や肝がんといった疾患への治療法提供、最終的には臓器移植の代替を目指す
新規事業展開-医療材料事業-
- 概要:細胞培養時に産出される上清を原材料とした医療材料の開発・販売
- 開発状況:
- 2024年4月に一般社団法人AND medical groupと共同研究契約を締結
- 契約締結時に一時金0.60億円、2024年第4四半期にマイルストーン0.60億円を受領
- 2025年1月に原材料を同社からAND medical社に供給するための供給契約を締結
- 初回発注分として4億2,000万円相当の対象製品を受注
- AND medical社より2億円を先払いで受領し、加えて、共同研究における最終マイルストーン達成の対価0.60億円を5月に受領予定
- 市場見通し:
- 2025年度中に供給を開始する計画
- 2026年12月期には数十億円の売上規模に育つ見通し
業績と今後の展望
2024年12月期実績
- 売上収益:5.60億円(前期比361.6%増)
- 営業損失:28.43億円(前期は33.79億円の損失)
- 税引前損失:40.61億円(前期は36.26億円の損失)
- 親会社の所有者に帰属する当期損失:42.35億円(前期は38.23億円の損失)
2025年12月期予想
- アナリスト予想では売上高15.95億円、当期損失27.77億円と予測
- 会社側は現時点で合理的な業績予想の算定ができないため、予想を公表していない
成長戦略
ハイブリッド戦略
- ARDS治療薬を中心としたHLCM051やeNK細胞によるがん免疫療法の開発
- アジアや欧州地域でのライセンス活動
- 早期収益化が可能な医療材料事業の拡大により黒字化を目指す
資金調達戦略
- 各パイプラインの研究開発資金については、今後、子会社を通じて投資ファンド等から調達する計画
- 2024年6月にアルフレッサとの間で、同社の取り扱う製品等の流通、販売に関する業務提携基本契約、並びに総額16億円の第1回普通社債及び第2回普通社債買取契約を締結
事業体制の適正化
- 経営資源の再配分
- 固定費削減を中心とした合理化施策の実施
- 財務基盤の強化を目指した資金調達等に継続的に取り組む
今後の展望
ARDS治療薬
- 米国での臨床試験は2〜3年程度で終了予定
- 日本では早ければ2025年内に上市される可能性
医療材料事業
- 2025年度中に供給開始
- 美容クリニックや化粧品メーカーへの販売を計画
長期ビジョン
- 「『生きる』を増やす、爆発的に。」というミッションのもと、いまだ有効な治療法のない疾患に苦しむ世界中の患者さんに新たな治療法や希望を届けることを目指す
- 短期的には比較的早期に製品化が見込める「パイプライン」を複数取得し、新規治療法の実現と収益化を推進
- 長期的には再生医療産業を革新的に発展させる「プラットフォーム技術」の獲得・開発を目指す
ヘリオスは、体性幹細胞再生医薬品分野とiPSC再生医薬品分野の両方で複数のパイプラインを持ち、特にARDS治療薬の開発が最も進んでいます。今後は医療材料事業による早期収益化と、主力パイプラインの承認取得・上市による中長期的な成長を目指しています。
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ステムリム(4599)2025年3月9日時価総額205億円
主要パイプライン
PJ1:レダセムチド(HMGB1ペプチド)
- 概要:生体内タンパク質HMGB1の生理活性ドメインから創生したペプチド製剤
- 作用機序:静脈内投与により患者の骨髄内間葉系幹細胞を末梢血中に動員し、損傷部位に集積させることで、患部の組織再生と治癒を促進
- 適応症:組織損傷を伴う幅広い疾患(表皮水疱症、脳梗塞、心筋症など)
- 開発状況:
- PJ1-01(表皮水疱症):追加第Ⅱ相試験実施中
- PJ1-02(急性期脳梗塞):日本、米国、欧州及び中国においてグローバル後期第Ⅱ相試験実施中
- PJ1-03(心筋症):虚血性心筋症・拡張型心筋症を対象とした医師主導第Ⅱ相試験実施中
- PJ1-04(変形性膝関節症):医師主導第Ⅱ相試験完了
- PJ1-05(慢性肝疾患):医師主導第Ⅱ相試験完了
- 提携状況:2014年11月に塩野義製薬とライセンス契約締結
PJ2:TRIM3、TRIM4(全身投与型再生誘導医薬新規ペプチド)
- 概要:大阪大学と共同で開発したスクリーニング法によって発見した、静脈内投与により末梢血中の間葉系幹細胞を増加させる作用を有するペプチド
- 適応症:複数の組織損傷疾患
- 開発状況:非臨床試験段階、複数種類の疾患モデル動物を用いた薬効試験データの拡充中
- 提携状況:現時点では自社で開発を進め、GLP非臨床毒性試験~早期臨床試験の段階まで自社開発後、製薬企業にライセンスアウトする方針
PJ3:TRIM5(局所投与型再生誘導医薬新規ペプチド)
- 概要:損傷組織部位が小さく、時間が経過している損傷部位に対して局所的に再生誘導医薬を投与
- 適応症:複数の組織損傷疾患
- 開発状況:探索段階
- 提携状況:自社(提携予定)
PJ4:治療用自己細胞採取デバイス
- 適応症:難治性潰瘍、骨軟骨性疾患
- 開発状況:非臨床段階
- 提携状況:自社(提携予定)
PJ5:SR-GT1(幹細胞遺伝子治療)
- 概要:表皮水疱症患者の水疱から間葉系幹細胞を採取し、レンチウイルスベクターを用いてⅦ型コラーゲン遺伝子を導入、水疱内へと戻して持続的Ⅶ型コラーゲン供給を可能にする根治的表皮水疱症治療技術
- 適応症:表皮水疱症
- 開発状況:第I/II相試験段階
- 提携状況:自社(提携予定)、AMEDの「難治性疾患実用化研究事業」に共同研究企業として参画
塩野義製薬との提携
- 契約内容:2014年11月にライセンス契約締結
- 対象製品:レダセムチド(PJ1)
- 契約範囲:全世界における独占的開発・製造・販売権
- 収益構造:
- 契約一時金(既受領)
- 開発進捗に応じたマイルストーン収入
- 製品上市後のロイヤリティ収入及びマイルストーン収入
- 追加契約:2020年6月に新たな疾患(慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症)を対象とした医師主導治験実施のための新契約締結
マイルストーン収入と業績
2023年7月期
- 事業収益:23億5,000万円(開発マイルストーンの達成による収入)
- 当期純利益:1億6,800万円(黒字達成)
2024年7月期
- 事業収益:0円(研究進捗に係るマイルストーン収入や契約一時金の計上なし)
- 当期純損失:20億2,200万円
財務状況:
- 2024年7月末時点で84億円の現預金を保有
- 2028年まで安定的に研究開発活動を行える見込み
開発戦略
レダセムチドの開発推進
- 表皮水疱症:追加第Ⅱ相試験の結果を踏まえ、希少疾患として承認申請を目指す
- 急性期脳梗塞:グローバル後期第Ⅱ相試験を推進
- 心筋症:医師主導第Ⅱ相試験を継続
次世代パイプラインの開発
- TRIM3、TRIM4の非臨床試験データ拡充と最適な開発対象疾患の選定
- 早期臨床試験までの自社開発後、製薬企業へのライセンスアウト
知的財産戦略
- レダセムチドの用途特許取得(日本での炎症性腸疾患治療薬としての特許登録)
- オーストラリアでのHMGB1ペプチド関連物質特許の取得
事業展望
- アナリスト予想:2025年7月期は売上高10億円、当期純損失10億円と予測
- 中長期的な収益化:
- レダセムチドの承認・上市による収益化
- 次世代パイプライン(TRIM3、TRIM4)の導出によるマイルストーン収入
- 市場規模:
- 表皮水疱症:日本国内で約400名前後の患者
- 慢性肝疾患:国内40~50万人の肝硬変患者
- 脳梗塞、心筋症など大規模市場への展開可能性
ステムリムは、「再生誘導医薬」という革新的なプラットフォーム技術を基盤に、従来の再生医療が抱える課題(高コスト、細胞培養の複雑さなど)を克服し、幅広い疾患に対する治療法の開発を目指しています。塩野義製薬との提携を軸に、レダセムチドの開発を進めるとともに、次世代パイプラインの開発と導出による持続的な成長を図る戦略を展開しています。
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アンジェス(4563)2025年3月9日時価総額198億円
主要売上の状況
アンジェスの売上高は近年徐々に増加傾向にあります。2023年12月期の売上高は1億5,200万円でしたが、2024年12月期には6億4,300万円(前期比320.7%増)と大幅に増加しました。この増加の主な要因は以下の通りです。
- 「ゾキンビ」(ロナファルニブ)の販売開始
- 希少遺伝性疾患に関するオプショナルスクリーニング検査の手数料収入の拡大
- 研究開発事業収入の増加
特に、アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)での検査業務の受託件数は順調に伸び、2024年12月期の手数料収入は3億1,100万円(前期比1億9,600万円増)を計上しました。
主要パイプラインの現状
核酸医薬事業(ゲノム創薬事業)
HGF遺伝子治療用製品(ベペルミノゲン ペルプラスミド)
- 適応症: 慢性動脈閉塞症
- 開発状況:
- 日本: 2019年に「コラテジェン」として条件及び期限付承認を取得したが、2024年6月に承認申請を取り下げ、販売を終了
- 米国: 後期第II相臨床試験を実施中。2024年に良好な結果が得られ、今後第III相試験に進む可能性
- イスラエル: 提携先のKamadaが製造販売承認申請中
- トルコ: 提携先のEr-Kimが申請準備中
NF-κBデコイオリゴDNA
- 適応症: 椎間板性腰痛症
- 開発状況: 日本で第II相臨床試験実施中。結果は2026年前半に判明予定
エメンド社パイプライン(ゲノム編集技術)
- 適応症: ELANE関連重症先天性好中球減少症
- 開発状況: 米国で開発中
- 血液学・眼科・免疫腫瘍学などの疾患に対する治療法開発
- 2023年から事業再編成を実施し、研究開発体制を変革
成長戦略
アンジェスは「遺伝子医薬のグローバルリーダー」を長期ビジョンとして掲げ、以下の戦略を推進しています。
「コラテジェン」の製品価値最大化
- 米国での臨床開発を成功させることが最重要課題
- 後期第II相臨床試験の良好な結果を受け、第III相試験に向けた準備を進行中
パイプラインの継続的拡大
- 治療法がない疾病分野や難病、希少疾患を対象とした革新的な遺伝子医薬の開発
- スタンフォード大学との新規ゲノム編集がん治療法の共同研究など
欧米を中心としたグローバル展開の推進
- 米国市場を重視(潜在市場規模が大きい)
- 大手製薬企業とのライセンス契約を目指す
希少遺伝性疾患への取り組み強化
- 検査受託サービスの拡充(「ゾキンヴィ」関連の検査にも対象を拡大)
- 検査事業を通じて新たな開発品候補を見出す好循環の創出
黒字化への道筋
アンジェスは2015年に策定した「2025年ビジョン」で「2019年をめどに黒字化」「2025年に売上高500億円以上」を目標としていましたが、これらの目標は一旦取り下げられています。現在の黒字化の見通しは以下の通りです。
- 短期的な収益源:
- 希少遺伝性疾患の検査受託サービス(2025年には収益が2倍になる見込み)
- 「ゾキンヴィ」の販売拡大
- 中長期的な収益源:
- 米国でのHGF遺伝子治療用製品の開発成功による数十億円規模のマイルストーン収入
- NF-κBデコイオリゴDNAの臨床試験成功と塩野義製薬への導出可能性
- Emendoのゲノム編集技術のライセンスビジネスによる収益化
- 黒字化時期の見通し:アナリスト予想では、これらの取り組みが順調に進めば2020年代後半には連結業績も黒字化する可能性があるとされています。
資金調達戦略
アンジェスは研究開発活動と事業基盤の拡大を推進するため、状況に応じた機動的な資金調達を行っています。
- 2024年9月に発行した第三者割当による第45回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により事業活動資金を調達
- 調達資金の使途は、HGF遺伝子治療用製品のグローバル展開のための研究開発費用、「ゾキンヴィ」の製造販売費用、NF-κBデコイオリゴDNAの第2相臨床試験費用、検査事業の能力増強投資など
アンジェスは、治療法がない疾病分野や希少疾患を対象とした革新的な遺伝子医薬の開発・実用化を通じて、「遺伝子医薬のグローバルリーダー」を目指しています。特に米国でのHGF遺伝子治療用製品の開発成功と希少遺伝性疾患検査事業の拡大が、今後の成長と黒字化への鍵となるでしょう。
アンジェスIRサイト
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キャンバス(4575)2025年3月9日時価総額191億円
主力のCBP-501は、キャンバス社が開発している抗がん剤候補で、カルモジュリン結合ペプチドとして機能し、腫瘍における免疫状態を改善する作用があります。
- 膵臓がん(主要ターゲット):3次治療として第2相試験を完了し、主要評価項目を達成
- その他の固形がん:非小細胞肺がん、中皮腫、頭頸部がん、卵巣がん、子宮内膜がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫など
最近の進捗
- 2023年1月:米国FDAから膵臓がんに対するオーファンドラッグ指定を受領
- 2023年10月:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会でポスター発表を行い、大きな反響を得る
- 2024年2月:米国FDAから膵臓がん3次治療での臨床第2b相試験開始承認を受領
- 2024年8月:欧州医薬品庁(EMA)から膵臓がんに対するオーファンドラッグ指定を受領
開発戦略の転換
当初は米国での第3相試験開始を目指していましたが、FDAとの協議が長期化したため、戦略を変更しました。
- 米国での第2b相試験開始承認は取得済み(保険として保持)
- 欧州での第3相試験開始を優先的に進める方針に転換
- 欧州での第3相試験が成功した場合、そのデータをもとに米国でも追加試験なく承認申請を目指す
今後のスケジュール
- 当初目標:2027年までの承認・上市
- 現状:欧州での第3相試験開始が2024年中から2025年初頭以降に遅延
- 理由:臨床試験に使用する薬剤の製造・製剤化工程に関する欧州の諸規制への対応
しかし、キャンバス社は「2027年承認・上市」という中長期目標については、現時点で影響はほぼないとしています。組入開始から2年半程度での承認・上市には十分に実現可能性があると考えています。
想定されるシナリオ
- ベストシナリオ:欧州での第3相試験が順調に進み、2025年早期に開始、2027年までに承認・上市
- セカンドシナリオ:欧州での第3相試験準備がやや長期化し、米国で第2b相試験の中間解析を行い、2025年央から欧州での第3相試験を開始
- ワーストシナリオ:欧州での第3相試験に関する協議が長期化し、米国での第2b相試験をStage2まで行う必要が生じる
市場規模
- 米国市場:3次治療の膵臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は約2万人、ピーク時売上高約1,060億円と予測
- 欧州市場:3次治療の膵臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は約1万3千人、ピーク時売上高約560億円と予測
- 合計市場規模:米国と欧州を合わせて約1,600億円の市場規模
パイプライン価値
- 欧州市場のみ:300〜400億円程度と試算
- 米国市場も含む:欧州での承認後、米国でも追加試験なく承認された場合、合計1,000億円のパイプライン価値も展望可能
競争優位性
独自の作用機序
- カルモジュリン結合ペプチドとして機能
- シスプラチンのがん細胞への取り込みを促進
- 腫瘍の免疫原性を高める
3剤併用療法の有効性
- CBP-501、シスプラチン、ニボルマブの3剤併用
- 第2相試験で主要評価項目を達成
- ESMOでの発表で専門家から高い評価
競合状況
- 膵臓がん3次治療では既存の承認薬がない
- 競合開発品の多くが開発中止
- GlobalDataによると、膵臓がんに対する第2相試験から第3相試験への移行成功率は25%
知的財産戦略
- 物質特許(2003年出願)
- 用途特許の取得
- オーファンドラッグ指定による排他的期間の延長
キャンバス社は、CBP-501の開発を最優先課題として位置づけ、2027年までの承認・上市を目指しています。欧州での第3相試験の成功が、米国市場を含むグローバル展開の鍵となります。また、CBP-501の後継として「CBP-A08」や「CBT005」などの次世代パイプラインも開発中であり、長期的な成長戦略を構築しています。
キャンバスIRサイト
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オンコリスバイオファーマ(4588)2025年3月9日時価総額173億円
テロメライシン(OBP-301)
テロメライシンは、オンコリスバイオファーマの主力開発品であり、5型アデノウイルスのDNAにヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)のプロモーターを挿入した腫瘍溶解ウイルスです。がん細胞特異的に増殖し、溶解させる作用を持っています。
開発段階と適応症
- 食道がん:国内Phase2試験を完了し、2025年12月期に承認申請を予定
- 胃がん:米国でMSD社と費用を折半し、コーネル大学でペムブロリズマブ併用のPhase2試験が進行中
- 肝細胞がん:開発進行中
規制上の地位
- 日本:厚生労働省より食道がんに対する「先駆け審査指定」を取得
- 米国:FDAからオーファンドラッグ指定を取得
OBP-601(センサブジン)
当初はHIV感染症治療薬として開発されていましたが、現在は神経難病治療薬として開発が進められています。
開発段階と適応症
- 進行性核上性麻痺(PSP):Phase3開始に向けた準備が進行中
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)/前頭側頭型認知症(FTD):Phase3開始に向けた準備が進行中
- アルツハイマー病:年内にPhase2を開始する可能性あり
その他のパイプライン
- OBP-702(次世代テロメライシン):OBP-301にp53遺伝子を組み込んだもので、前臨床からGMP製造段階
- OBP-801:ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、米国で第I相試験実施中
- OBP-2011:新型コロナウイルス感染症治療薬(現在は優先順位を下げている)
- テロメスキャン(OBP-401):遺伝子改変ウイルスを用いた腫瘍細胞検出技術、順天堂大学で臨床研究中
テロメライシン関連の提携
富士フイルム富山化学との販売提携契約(2024年2月)
- 日本における販売提携契約を締結
- 契約一時金は発生せず
- 承認取得時や販売達成に応じたマイルストーン収入として総額17億円を受け取る予定
- 販売提携のため、売上からの経費支払い後の収入はオンコリスに帰属
台湾Medigen社との提携(2024年12月)
- 台湾での販売権に関するライセンス契約を締結
- 開発協力金を受領
MSD社(メルク)との提携
- 米国での胃がん2次治療患者を対象としたPhase2医師主導治験の研究開発費を折半する共同開発体制
OBP-601関連の提携
Transposon社とのライセンス契約(2020年6月):
- 神経領域の開発に対して全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約
- 契約一時金及びマイルストーン収入の合計額は総額3億米国ドル以上
- 上市後の売上高に応じたロイヤリティ収入を別途受領
- Transposon社がOBP-601を第三者の製薬会社等へサブライセンスした場合、サブライセンス収入の一定割合を受領
テロメライシンの市場展望
- 承認申請スケジュール:2025年上半期に「先駆け総合評価相談」を開始し、2025年12月期に承認申請を予定
- 市場規模予測:発売後5年間の累積売上は保守的に見積もって約50億円。効能追加や市場浸透が進めば135億円の累積売上が見込まれる。発売10年目までには年間売上100億円が安定して見込める可能性。
- 適応拡大戦略:投与回数の増加(現在は2週間おきに3回投与)。化学放射線療法や放射線単独療法後の残存がんへの適応拡大。舌がんや歯肉がんなどへの効能追加
OBP-601の展望
- Transposon社を通じた価値最大化を目指す
- PSPでのPhase3開始に向けた準備が進行中
- ALSやFTDのPhase3開始に向けた準備が進行中
- アルツハイマー病での新たな臨床試験計画が立案中
ビジネスモデルの転換
- 研究開発中心のベンチャー企業から、製造販売体制を兼ね備えた製薬企業型への変貌を目指す
- ライセンス型モデルから製薬型モデルへの転換期にあり、人材も増強中
- 製造販売業許可取得に向けた体制整備を進行中
財務見通し
- 2025年12月期の業績見通しは、テロメライシンの富士フイルム富山化学との販売提携契約やTransposon社とのライセンス契約に基づくマイルストーン収入が主な収入源
- マイルストーン収入の発生時期や金額が不確定なため、業績予想は非開示
- 2024年に行った増資により、現金及び預金残高は24億1,100万円(2024年12月末時点)
オンコリスバイオファーマは、テロメライシンの承認申請と上市、OBP-601の開発進展を通じて企業価値の向上を目指しています。特にテロメライシンについては、富士フイルム富山化学との販売提携を通じて日本市場での展開を進め、将来的には効能追加や適応拡大により売上の最大化を図る戦略を採用しています。また、OBP-601については、Transposon社との提携を通じて神経難病領域での開発を加速させ、大きなマイルストーン収入とロイヤリティ収入の獲得を目指しています。
オンコリスバイオファーマIRサイト
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Chordia Therapeutics(190A)2025年3月9日時価総額163億円
CTX-712(rogocekib)- CLK阻害薬
開発段階:
- 日本で第1相臨床試験を完了
- 米国で第1/2相臨床試験を実施中(2025年後半に中間成績公表予定)
- 2026年中に上市に必要なデータ取得を目指す
適応症:
- 再発難治性の急性骨髄性白血病(AML)
- 骨髄異形成症候群(MDS)
- 卵巣がん
作用機序:
- CLKを阻害することで異常なmRNAを蓄積させ、がん細胞に負荷をかけて選択的に死滅させる
- RNA制御ストレスを標的とした新しい作用機序
臨床成績:
- 日本での第1相試験では、再発難治性AMLおよびMDSの患者14名中6名でがん細胞の減少を確認
- 米国では希少疾病用医薬品指定取得を目指す(2024年12月〜2025年1月頃を想定)
CTX-177(ONO-7018)- MALT1阻害薬
開発段階:
- 小野薬品工業に導出済み
- 米国で第1相臨床試験実施中
適応症:
- 再発または難治性の非ホジキンリンパ腫
- 慢性リンパ性白血病
作用機序:
- MALT1を阻害してNF-κBの活性化を抑制することで抗がん作用を生み出す
- 免疫チェックポイント阻害薬の不応答性の要因となる制御性T細胞を減少させる効果も有する
CTX-439 – CDK12阻害薬
開発段階:
- 前臨床段階
- 臨床試験開始に必要な安全性試験や原薬製造が完了
- GMP基準に準拠した治験薬の製造など第1相臨床試験開始に向けた準備を進行中
適応症:
- 固形がん
作用機序:
- CDK12を阻害することによってRNAの転写を抑制し、がん細胞に負荷をかけて死滅させる
- 転写だけでなく、輸送にも影響する可能性を新たに発見
CRD-1968099 – GCN2阻害薬
開発段階:
- 前臨床段階
- 第1相臨床試験の開始に向けて非臨床研究を実施中
適応症:
- 固形がん
作用機序:
- tRNAの輸送に異常を生じさせ、異常なtRNAが蓄積し、がん細胞に負荷をかけて死滅させる
小野薬品工業との提携(CTX-177/ONO-7018)
契約内容:
- 2020年12月に締結
- MALT1阻害薬CTX-177(ONO-7018)の全世界における開発・販売権を導出
経済条件:
- 契約一時金:8億円(2021年8月期に受領済み)
- 第1相臨床試験開始に伴う開発マイルストン:25億円(2023年8月期に受領済み)
- 今後の開発マイルストン及び商用マイルストン:最大496億円
- 売上高に応じたロイヤリティ:1ケタ後半から2ケタ前半パーセント
事業戦略
短中期的な戦略:
- CTX-712(rogocekib)の開発を最優先し、2026年中に上市に必要なデータ取得を目指す。
- 再発難治性AMLでの承認取得後、卵巣がんなど他のがん種への適応拡大を目指す。
- 3号パイプライン(CDK12阻害薬)と4号パイプライン(GCN2阻害薬)の早期導出を検討中。
長期的な戦略:
- アムジェン社やバイオジェン社のような世界的な製薬会社への成長を目指す。
- 「日本発の研究開発型の製薬会社になる」を2030年ビジョンとして掲げる。
資金調達計画
今後の資金調達手段:
- 上場時(2024年6月)に調達した資金で約2年間の研究開発資金を確保
- 自社パイプラインの海外権利をグローバル製薬メーカーにライセンス導出することで資金調達
- 小野薬品工業からのマイルストーン収入(最大496億円)
- 戦略的事業提携による資金調達
- エクイティファイナンスによる市場からの調達
市場展望
CTX-712の市場可能性:
- AML市場はグローバルで約2,000億〜4,000億円規模、その半分程度をCTX-712がカバーできれば年商2,000億円も視野に
- 卵巣がん(プラチナ製剤抵抗性)の市場規模は日米欧で1,000億円強、その半分程度を獲得できれば500億から1,000億円の売上増加が期待できる
事業モデルの展望:
- 研究開発型バイオベンチャーから製薬会社への転換を目指す。
- 自社での製造販売も視野に入れつつ、ライセンス契約による製薬会社との提携など経済合理性を考慮して柔軟に選択する方針。
- M&Aによるセカンドエグジットも選択肢として検討。
Chordia Therapeuticsは、RNA制御異常に着目した独自の創薬アプローチで、ファーストインクラスの抗がん薬開発を進めています。CTX-712を筆頭に複数のパイプラインを持ち、小野薬品工業との提携で得たマイルストーン収入を活用しながら、日本発の研究開発型製薬会社としての成長を目指しています。
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スリーディーマトリックス(7777)2025年3月9日時価総額161億円
スリーディーマトリックスは、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)発の「自己組織化ペプチド」技術をプラットフォームとして、外科領域、組織再生領域、DDS(ドラッグデリバリーシステム)領域において医療製品を開発しています。
外科領域
止血材「ピュアスタット/PuraStat」
- 開発状況: 日本、米国、欧州(CEマーク適用国)で承認取得・販売中
- 特徴: 消化器内視鏡領域での止血に使用され、米国では特に高い成長を維持
- 適応拡大: 後出血予防材として欧州では承認済み、米国でも承認取得
次世代止血材(TDM-623)
- 開発状況: 欧州で製造販売承認申請済み
- 特徴: 原価低減を実現した新製法の製品
粘膜隆起材「ピュアリフト」
- 開発状況: 日本で承認取得・販売中
- 特徴: 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの手技をサポート
- 保険適用: 2022年12月に保険適用を取得
組織再生領域
癒着防止材「PuraGel」
- 開発状況: 米国で承認取得・販売中
創傷治癒材「PuraDerm」
- 開発状況: 米国で承認取得・販売中
- 適応拡大: 美容整形向けの臨床データ収集中
直腸粘膜炎治癒材
- 開発状況: 米国で承認取得・販売中、欧州と日本では開発中
炎症性腸疾患治癒材
- 開発状況: 欧州、日本、米国で開発中
- 臨床研究: 日本で医師主導特定臨床研究が進行中
DDS領域
siRNA核酸医薬(TDM-812)
- 開発状況: 日本で開発中
- 対象疾患: 治療抵抗性の乳がんなど
悪性胸膜中皮腫治療薬(MIRX002)
- 開発状況: ライセンス契約先にて開発中
- 臨床試験: 医師主導治験(第I相)の第1症例への投与完了
ワクチンデリバリー
- 開発状況: 米国で開発中
- 共同研究: 北海道大学ワクチン研究開発拠点との国産ワクチン開発を目的とした共同研究を開始
売上高の推移
- 2022年4月期: 約12億円
- 2023年4月期: 約23億円(前期比約2倍)
- 2024年4月期: 45億円強(期初予算37億円から23%増)
地域別売上状況
- 米国: 消化器内視鏡領域の販売が高い成長を維持
- 欧州: 主要製品である消化器内視鏡領域の止血材の販売が好調
- 日本: 2022年4月期から販売開始、今後の成長が期待される
財務状況
- 時価総額: 約161億円(2025年3月7日時点)
- 営業損益: 2024年4月期は約20億円の赤字(前期比10億円改善)
- 経常損益: 2024年4月期第2四半期は7億9700万円の赤字
- キャッシュポジション: 事業拡大に伴い流動資産と流動負債が増加
- PBR: 12.21倍(2025年3月7日時点)
- 倒産確率: 0.55%(低リスク)
資金調達状況
- 新株予約権: 第39回新株予約権(行使価額修正条項付)などによる資金調達を実施
- 転換社債: 無担保転換社債型新株予約権付社債の発行
- 業務提携: メディパルホールディングスとの業務提携に伴う第三者割当増資
事業戦略
- プラットフォーム技術の強み: 自己組織化ペプチド技術を用いた製品開発により、適用拡大が容易で開発期間の短縮が可能
- グローバル展開: 先行地域(欧州)の成功事例を他地域(日本、米国)に展開する戦略
- 製造原価低減: 原価低減を目的としたスケールアッププロジェクトを完了
- 販売提携: 富士フイルム富山化学との販売提携契約締結(日本)、FUJIFILM Europe BVとの欧州全域における独占販売権契約締結
成長戦略
- 適応拡大: 止血材「ピュアスタット」の胃外科領域への適応拡大に向けた医師主導特定臨床研究を開始
- 新規用途開発: 食道狭窄予防、炎症性腸疾患領域など新たな適応症への展開
- 新製品開発: 次世代止血材(TDM-623)の開発推進
- ワクチン開発: 北海道大学との共同研究による国産ワクチン開発
中長期的な展望
- 2030年ビジョン: 「日本発の研究開発型の製薬会社になる」を掲げる
- 事業モデル転換: バイオベンチャーから製薬会社への転換を目指す
- グローバル視点: 最初からグローバルな視点を持ち、欧米を重視した事業展開
- 競争優位性: 中長期的な競争力を基盤とした持続的な成長を目指す
リスク要因
- 財務リスク: 継続的な赤字計上による資金調達の必要性
- 開発リスク: 臨床試験の遅延や承認取得の不確実性
- 為替リスク: 外貨建て取引による為替変動リスク
- 市場リスク: 競合製品の参入や市場環境の変化
スリーディーマトリックスは、独自の自己組織化ペプチド技術を基盤として、止血材「ピュアスタット」を中心に事業を拡大しています。米国と欧州での売上が好調であり、日本市場でも今後の成長が期待されています。研究開発型バイオベンチャーから製薬会社への転換を目指し、グローバルな事業展開を進めていますが、継続的な赤字計上による資金調達の必要性が課題となっています。
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免責事項
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